キャンピングカーと風景と音楽の相関関係

 
 人は、キャンピングカーの室内で、何をしているのが一番楽しいのか。
 たとえば、キャンプ場、RVパーク、湯YOUパークなどの宿泊施設において車内でくつろぐ場合、一番多い過ごし方はどのようなものか。
 
 ① 旅の印象や過去の思い出などを夫婦で語り合う。
 ② 夫婦(もしくは一人で)テレビを観たり、映画・音楽などを鑑賞する。
 ③ 子供たちと語り合ったり、ゲームをしたりする。
 ④ 他の親しい家族や仲間たちと語らい合う。
 ⑤ 車外に出て、星座観察などを行う。
 ⑥ 釣りや自然観察などの趣味を実現させるための準備を行う。
 (※ 日本RV協会ホームページ2015年 3月のアンケートコーナーより)

 このRV協会のアンケート調査では、3月17日の締め切り時点で、「夫婦(もしくは一人で)テレビを観たり、映画・音楽などを鑑賞する」という回答が238票のうち112票(46.7%)を獲得し、トップに立った。
 
 テレビや映画・音楽の鑑賞。

 「キャンピングカー」という言葉とは裏腹に、またなんと “インドアっぽい” 答が一位に浮上したではないか。
 まるで、大都会の中でも使える “モバイバルオフィス” であるかのようだ。

 しかし、キャンピングカーをシアタールームとして使っている人が多いということは、それがいかに “視聴覚空間” として高い完成度を誇っていることを物語ってはいないか? 
 
 キャンピングカーは、一般的な住居よりもさらに密室性が高い。
 つまり、外界からの刺激を遮断して、音や映像に対する人間の意識を研ぎ澄ませやすいシチュエーションが確保されているのだ。

 言葉を変えていえば、“意識の覚醒空間” である。
 一見、インドア的な状況を色濃く保持しながらも、キャンピングカーの室内においては、人間の意識が車外に飛び出し、“宇宙” と直接交信する。

 家にいるときは、テレビ、映画、音楽の鑑賞というのは、あくまでも日常性の領域にとどまっている。
 しかし、キャンピングカーにおけるテレビ、映画、音楽の鑑賞は、単なるヒマつぶしではなく、非日常への飛翔である。

 なぜ、そうなのか?

 それは、キャンピングカーが絶え間ざる移動を繰り返していく乗り物だからだ。
 車中泊時にテレビを観ていても、映画を鑑賞していても、音楽を聞いていても、窓の外に広がる風景は、毎日けっして同じではない。

 あるときは木々の緑が鮮やかなキャンプ場であったり、湯けむりがたなびく湯YOUパークやRVパークの駐車場であったり、また海を遠望する駐車場であったりする。
 
 居住空間の外に広がる景色が変化していけば、人間の感受性はそれだけ刺激を受けて鋭敏になる。
 感性が研ぎ澄まされてくれば、車内で映画を観ても、そのテーマの本質にずばり肉薄できるだろうし、音楽を聞いても、それが琴線をかき鳴らすように響いてくる。
    
 そんなわけで、私はキャンピングカーの中で過ごすときは、常に「車外に広がる風景」にこだわる。
 どんな風景を眺めながら、室内でくつろぐか。
 個人的には、それがキャンピングカーライフの最重要課題だと思っている。

 たとえば、中央高速の諏訪湖SAの上りの駐車場。
 ここは、一番長野寄りのはじっこにベストビューが凝縮している。
 そこに頭から突っ込むと、フロント席と左側ウィンドウに諏訪湖の大パノラマが広がる。
 湖と山並みの調和を楽しめる昼間もいいし、対岸の灯りが湖面に写り込む夜景も素晴らしい。

 このベストスポットが他の車両に占領されているときは、辛抱強く待つ。
 その場所の近くにいったん車両を止め、運転席で待機しながら、その場が空くまでじっと待機する。
 バカバカしい話に思えるだろうが、それくらいのこだわりがなければ、キャンピングカーの室内空間を、夢の広がる異次元空間に変貌させる魔法は生まれない。

 たとえ、車内でコーヒーを一杯飲むだけであっても、車を止める場所や角度には慎重になる。
 大昔は、3ウェイ冷蔵庫の吸排気のルーバーが日陰になる場所とか、寝るときに地面が水平になる場所、(発電機を積んでいた時代は)騒音で周囲に迷惑をかけない場所、あるいはトイレが近い所などにこだわっていたが、今は景色が最優先。
 キャンピングカーにおける休憩では、景観の良い場所を確保することが何よりも非日常性を手に入れることだと思っている。

 そして、運よくキャンピングカーの室内から、美しい夜景などを眺められる機会を得たときなどは、こんな素敵な乗り物に出会えた運命に感謝したくなる。

 そういう “異次元空間” に入り込んだとき、中で何をしているのが楽しいのか。

 私の場合は、音楽である。
 目の前に現われた “天然スクリーン” をより効果的に堪能するには、音楽というBGMは欠かせない。

 ドライブしているときに、車内で流れる音楽が変わるだけで、同じ景色が違ったように感じられることは誰でも経験しているはずだ。
 キャンピングカーの室内でも、しかり。  
 車中泊するときも、私の場合は、気に入った音楽を楽しむために風景を選ぶ。あるいは、風景に見合った音楽を選ぶ。

▼ 緑豊かなキャンプ場で、朝目覚めた時ときに聞く音楽なら、「Goodtime Charlie’s Got The Blues」(Chet Atkins & Earl Klugh)

 
 上の「Goodtime Charlie’s Got The Blues」を演奏しているのはチェット・アトキンスとアール・クルーだが、もともとはアメリカのシンガーソングライターであるダニー・オキーフが1971年に発表した曲。
 アール・クルーのギターも爽やかな響きがあるが、オリジナルの方はもっと牧歌的な作りになっていて、キャンプ場で朝を迎えたときなどに聞くと、コーヒーがうまくなる。
 ※ 興味がある人は、こちらを。 → 「Good Time Charlie」

  
 先週、名古屋のポートメッセなごやで開かれた「名古屋キャンピングカーフェア」に取材しにいったとき、案内された駐車場が「あおなみ線」の金城ふ頭駅前だった。
 取材が土・日にまたがるため、土曜の夜はこの有料駐車場で一泊することになった。
 
 土曜の夜、名古屋駅近辺で食事してから、「あおなみ線」に乗り、また会場近くの駐車場まで戻る。
 昼間、場内を埋め尽くしていたキャンピングカーや乗用車も、さすがに夜が更けてくると、ほとんど姿を消している。

 埠頭近くの人気のない駐車場。
 普通だったら、そこで一人で寝るのは淋しくもあり、恐くもあり …
 … といったところだが、私は淋しい場所が嫌いではない。
 
 往々にして、“淋しい場所” というのは、景観には案外恵まれたところが多いのだ。
 むしろ、周囲に車などが止まっていない方が、夜遅くまで音楽を聞いていても気兼ねすることがないし、何よりも、周りに遊ぶ施設などない方が、キャンピングカーという空間の自己充足性を実感できて、そのありがたみが身に染みてくる。

 窓のカーテンを開け、買っておいたウィスキーの封を切り、炭酸や「午後の紅茶」のレモンティーなどで割りながら、室内の灯りを落とす。
 ガラス窓の向こうでは、埠頭を照らすライト群が、暗闇に慣れた目にはまぶしいくらいの光彩を放ち始める。
  
 ハーバーライト。
 そして、ウィスキー。

 そうなれば、やはりシルクのようななめらかな輝きを放つソウル・ミュージックで決まりだ。
 ベタベタに甘いコーラスグループのバラードが、芳醇な香りを漂わすウィスキーの苦みと身体の奥で “ブレンド” されて夢見心地になっていく。
 至福の時。
 
▼ 「Am I Losing You」(The Manhattans)

 
 上のマンハッタンズは、1960年代から活躍しているソウル・コーラスグループ。日本ではそれほどメジャーではないが、ソフィストケイトされた都会的なおしゃれ感では、他のコーラス・グループを寄せ付けないセンスの良さを見せる。
 エグさがないので、さらっと聴けるけれど、噛みしめるように聞いていると、次第に目頭が熱くなるほどセンチな気分になってくる。
 キャンピングカーの中の “独り宴会” は、酒が進んでしまうなぁ … 。
 
 少し酔った身体を風にさらすために、ドアを開けて、埠頭に降り立ち、深夜の海を眺める。

 海から流れてくる微風が、首筋をなでていく。
 静寂の底に沈んだ官能的な春の気配。
 宇宙のため息をはらんだ沈黙が、空からゆっくり降りてくる。

 街路灯に照らし出された自分の影の異様さに驚く。
 宇宙人の影?
 なんだか、地球を離れた別の惑星の海にたどり着いた気分だ。
 ひょっとしたら、キャンピングカーは未知の星を探索するために生まれてきた「宇宙船」なのかもしれない。

 埠頭の神秘とメランコリー。
 車内に戻ってから聞く音楽が決まった。 
 
▼ 「And Here You Are」 (Stuff)

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「『都会』の匂い (Jr.Walker&The Allstars)」

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キャンピングカーと風景と音楽の相関関係 への6件のコメント

  1. かたなねこ より:

    自分にとっての音楽は流行歌を聞き流す程度です。
    キャンピングカーの窓から見た風景は町田さんと大差無いと思いますが(勿論キャリアは大きく違いますけど)車内での音は、見るでもなく流れているテレビのお笑い番組だったりします。
    町田さんの記事を読んでいると知識と教養は人生を豊かにするんだなと、つくづく思います。
    今回紹介された曲でも集めておしゃれな車内空間作りに挑戦したいです。
    でも、取り合えずは「午後の紅茶レモンティー」割りから真似させて貰います(笑)   

    • 町田 より:

      >かたなねこ さん、ようこそ
      >>「午後の紅茶レモンティーでウィスキーを割る」
      …… まぁ、本当の通に言わせると、邪道の飲み方なのかもしれませんけれど、ほのかな甘みがあって、喉が渇いているときは、なかなかおいしいです。

      >>「知識と教養は人生を豊かにする」
      これは確かにそうですね !!

      ただ、私がそうだというわけではありません。
      ただの音楽好きなだけで。
      知ったかぶりして、生意気な口調で書いていますけれど、なぁ~に事前にWikipediaかなんかで、にわか仕込みの知識を仕入れているだけなんで、かえって恥ずかしいです。

      でも、キャンピングカーの中で聞く音楽は、確かに家の中で聞いているよりいいですよね。
      今の夢は、多少の改造費をかけて、キャンピングカー内の音響装置をグレードアップすることなんですけどね。
       

  2. solocaravan より:

    車窓から眺める風景はやはりキャンピングカー泊ならでは楽しみですね。これはホテル泊でもテント泊でも味わうことのできない体験だと思います。とくに夜、室内の灯りを消してそうっとロールブラインドを上げておもての様子を覗き見る(?)のは私も嫌いではありません。今やそのような寂れた停泊地を探し求めるのが旅の目的になっていたりします。

    そして、そんなときは私もお気に入りの音楽と、すこしばかり上等のお酒でぜいたくをしていますが、これは一人クルマ旅をする人共通の過ごし方なのかもしれません。

    ちなみにわたしはスコッチ党ですが、高価なシングルモルトをそのままでいただくのはもったいないです。しかし、水割りでは物足らないので、クセのないトリスなどの安酒で薄めていただいてます。こうすると味を落とさずに量を稼げます!

    • 町田 より:

      >solocaravan さん、ようこそ
      私の偏屈な「車内の過ごし方」にご賛同いただいて、とてもうれしく感じます。

      おっしゃるとおり、寂れた停泊地を探して、一人でゆったりと音楽を聞くというのは、キャンピングカー乗りの密かな楽しみですよね。
      そういうときは、やっぱり少しばかり上等な酒を用意したいと思っています。
      この前、高い金を出して「山崎」買いましたけれど、やっぱりあれはうまかった。クセになりますね。
      ま、私は普段は庶民的な「角」か「オールド」で十分です。

      ウィスキーなら、バーボンより私もスコッチ党かな。
      スコッチは、いい酒ならストレートでもいいし、ロックもOK。
      バーボンならコーラで割るような飲み方になってしまいますね。

      ツマミは音楽。
      柿ピーがあれば十分ですね。
       

  3. 木挽町 より:

    朝のアールクルー。さすが。なるほど。たしかに。通でいいですね。

    • 町田 より:

      >木挽町さん、ようこそ
      ねぇ !! いいでしょ? このチェット・アトキンスとアル・クルーの共演。
      ほんとうに、朝いちばんの、それこそ “採りたての” の自然の風に吹かれたような気分になりますね。

      この曲は、ダニー・オキーフの原曲もいいんです。
      そこはかとない白人系の哀調があって、“のんびり・しみじみ” という気分に浸りたいときはぴったりです。
      アル・クルーバージョンが「朝」なら、こっちは「夕暮れ」ですかね。
      https://youtu.be/-YP3pIPp8P8
       

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