ザ・ストリート・スライダーズ

 
 「日本のロック」というのが、実は、私がいちばん知らない領域なのだ。
 特に、80年代以降になると、どんなバンドがいて、どんな曲を演奏しているのか、まったく “カヤの外” 。

 基本的に、ロックの人たちって、テレビに出ない。
 テレビに出ないと、家と会社の間だけを往復している30過ぎの子持ちのオヤジなどは、その存在を知るすべを持たない。家で夕飯なんか食いながら、テレビの歌番でクリスタルキングの「大都会」とか、もんたよしのりの「ダンシング・オールナイト」なんか聞いていたわけだからさ。

 そんなふうに、30ヅラを下げて80年代を生きてしまった私などになると、その頃の「ロック」といえば、あいかわらずレッド・ツェッペリンやクリーム、ザ・バンド、ローリング・ストーンズになってしまうわけである。せいぜいゴールデン・カップスやキャロルとか。

 しかし、最近、その時代に活躍していた日本のロックバンドで、かなり気に入ったグループを発見した。
 1980年に結成され、2000年に解散したバンドであるという。
 その名は「The Street Sliders(ザ・ストリート・スライダーズ)」。

 80年代当時、こんなバンドがいたなんて、まったく知らなかった。
 知ったきっかけは、YOU TUBE。
 たまたま拾った曲がとてもよくて、次々と「お気に入り」に登録して、ときどきウィスキーなど飲みながら、しみじみと一人で聞いている。

 彼らのアルバムは、ライブも含めて全部で16枚あるようだが、(全部まだ完全に聞いたわけではないけれど)、おおむねどれをとっても良い。しかもアルバム収録曲のレベルがみな均等で、“捨て曲”がない。

 いったい何が良いのか。
 (これから書くことはコアなファンたちからはバカにされそうだけど、好きなものは好きだから、臆せずに書く)

 まずノリがいい。
 私の好きな “横揺れ” のグルーブ感がなんとも心地よい。
 全体的にミディアムテンポのヘビーな曲が多いのだが、スローテンポの曲でも、グルーブ感がまったく崩れない。
 どれもみな、「ROCK」を感じてしまうのだ。

 音自体は驚くほどシンプルで、まさにピュアモルトの「ROCK」である。
 そして、70年代ロックのように、ギターのインプロビゼーションを大げさに強調することなく、2本のギターのアンサンブルを大事にしているところがいい。
 
 もちろん、全盛期のツェッペリンとかジミ・ヘンドリックスなどの “神がかった輝き” というものがあるわけではない。
 サウンドは、ローリング・ストーンズ風だとよく指摘されるらしく、福生のライブスポットで活躍していた頃は、実際に「リトル・ストーンズ」と言われていたらしい。

 ちなみに、下にリンクを張った『WRECKAGE』というアルバムの02)「BABY BLUE」(6分10秒から)などからは、「ストーンズのコピーもさんざんやったんだろうな」という雰囲気が伝わってくる。
 が、私が聞く限り、ストーンズよりセンシティブである。
 
 ああいう “洋もの” が、砂漠の疾風を感じさせるとしたら、ストリート・スライダーズの音は、どちらかという日本の湿潤な風土に適合する水気を含んだ音であるように思う。
 メロディーも、スローな曲になると、どこか和風。… というか、日本語の響きに無理なく乗れるメロディーラインが自然に生まれている。
 特に、『聖者のラプソディー』のようなスローな曲がかもし出す、そんな和テイストの湿り気がなんとも心地良いのである。


  
 で、このバンドの音を聞いていると、歌詞からもサウンドからも、「やさぐれた少年のさびしさ」というものが浮かんでくるのだ。
 都会の裏町をあてもなくさまよい、惚れた女に愛を告白することもできず、受験競争を戦い抜いて「勝ち組」になる路線からは落ちこぼれ、かといってヤンキーになる気もなく、薄汚れた都会の空を所在なさそうに見上げている “やさぐれた少年” のヒリヒリするような孤独感というものが、じんわりと聞く者に迫ってくる。

 どこか、投げやりで。
 無愛想で。
 大人なんか信用していなくて。
 でも、ポケットの中で、好きな女にあげて突き返されたペンダントなんかをそっと握りしめている少年って感じのね。

 詞もなかなか。
 言葉の使い方はつたないけれど、詩人の感性を持ち、詩人の言葉も知っているくせに、詩人の成り方を知らないという不器用さが、逆に、ストレートな抒情に転化している。
 まったく客に媚びない素っ気ないライブパフォーマンスもカッコいい。
 
▼ 下のアルバムでは、04「聖者のラプソディー」(16分08秒から)、07「FEEL SO SAD」(33分36秒から)が特に気に入っている。

▼ 「すれちがい – The Street Sliders 」 ヘビーだけど、すごく抒情的な感じがする。テンポやギターワークに、ふと山口冨士夫が率いていた村八分の「水たまり」を思い出した。

【日本のロックについて】

ラフィンノーズという生き方

山口冨士夫(村八分)の精神

チャットモンチー 「満月に吠えろ」

ゴールデンカップスの栄光

サザンオールスターズを愛した世代

ロックって何よ?
 
 

カテゴリー: 音楽   パーマリンク

ザ・ストリート・スライダーズ への6件のコメント

  1. 遅まきながら新年明けましておめでとうございます。本年も貴ブログで勉強させてもらいます。
    インプロヴァイゼーションという言葉が琴線に触れてしまい、思わずコメント投稿をしました。いつも町田様のクオリティの高い記事群を読ませていただける事に胸をときめかせております。まずはご挨拶まで。

    • 町田 より:

      >FAR SKY さん、ようこそ
      過分なお褒めを頂戴し、ほんとうに恐縮です。
      気楽な気分で、無責任な記事を書き散らしているだけですので、>>「勉強させてもらいます」などというお言葉をいただくと、かえってプレッシャーがかかります(笑)。
      こちらこそ、新年のご挨拶が遅れましたが、今年もよろしくお願い申し上げます。
       

  2. くどう より:

    はじめまして。スライダーズ全盛時代の80年代後半に中高生だったので、
    世代的には直撃世代なんですが、実は80年代リアルタイム時は曲を全く聞いたことが無く、
    (名前とビジュアル自体は雑誌媒体等でよく目にしていました。
     90年代初頭にアルバム3枚だけ聞きましたが、さほどのめり込まなかった。)
    本格的に聞き始めたのは管理人様と同様に、youtube等の動画サイトで
    過去の動画や音源が多数uploadされるようになったここ数年、というニワカリスナーです。
    管理人さんご指摘の通り、ストリートスライダーズというバンドには、
    (肯定的な意味で)非常に日本人的な要素と言いますか、資質が滲み出ていると思います。
    「和製ストーンズ」の文脈で語られることが多いバンドですが、
    ルーツの一つとしてストーンズはあるとしても、日本的な感性が音楽に自然に反映かつ表現されていることは、もう少し評価されてもいいんじゃないかなと思います。
    アーティスト本人が意図してそうした空気を積極的に取り入れていたのか、
    はたまた、結果的に日本的になったものを本人達が気に入っていたのか、
    その辺りは良く知らないんですけれども。

    • 町田 より:

      >くどう さん、ようこそ
      コメントありがとうございます。
      私はこの「ザ・ストリート・スライダーズ」というバンドには、YOU TUBEで接した動画以上の情報をまったく持っていなかったため、たとえ “ニワカリスナー” であったとしても、スライダーズが活躍していた時代の空気を呼吸されていた方からの情報を頂くことができて、とてもうれしい気持ちでいます。

      おっしゃるように、彼らは 》「ルーツのひとつにストーンズがあるとしても、日本的な感性が音楽に反映されている」というのは、まさにその通りですね。

      そして、それが 》「意図してそうした空気を取り入れていたのか、はたまた結果的に日本的になったのか」というテーマも非常に面白いと感じました。

      彼らの和風テイストというのは、けっして音階とか楽器の奏法とか、そういう形で作られたものではなく、「空気のように滲み出ているもの」ですよね。
      ギターワークもヴォーカルも、パサパサと乾いたものでなく、日本の湿潤な風土を暗示させるような、しっとりした風情がありますよね。

      それがどういう経緯で生まれてきたものであるかは分かりませんが、とにかくそこに魅力を感じます。
       

  3. kazukazu より:

    当時スライダーズはそのカリスマ性から音楽を超えたカルチャーの一部でした、あの「To-y」を手がけた上條 淳士の代表作である「SEX」の主人公はスライダーズのハリーと蘭丸がモデルでした
    東北の田舎者はスライダーズの音と見た目に「東京」を感じていました
    まさに優等生やヤンキー(不良とは言いたくない)とは違った格好良さが憧れでした
    あんな泥臭くてカッコ良いバンドって今あるのかなぁ

    • 町田 より:

      >kazukazu さん、ようこそ
      こちらの旧ブログの方は、なかなか開くことがないため、せっかくのコメントをいただきながら、発見が遅くなってしまいました。
      誠に失礼いたしました。

      kazukazu さんは、漫画のことに関してもお詳しいのですね。
      上條淳士さんの絵はシャープで、なかなかいいですね。
      貴重な情報、ありがとうございます。

      ストリート・スライダーズに関する思いもよく分かります。
      ≫「優等生やヤンキーと違った格好良さ」
      確かに、スライダースには独特のスタンスが感じられましたね。
      あの音、今聞いても新鮮です。
      今は、もうああいうバンドはいないのではないでしょうかね。
       

くどう への返信 コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">