NHK朝ドラ 「マッサン」

  
 いつの間にか終わっていたNHKの朝ドラ 『花子とアン』 。
 毎朝、このドラマを見てから出勤していたわけだが、今日気づいたら別のドラマに変わっていた。

 もちろん、『花子とアン』 に関しては、映像だけは流し続けていたので、画面を眺めれば 「あ、いま戦争だな … 」 、「空襲かぁ … 」 ぐらいのことは把握できた。
 でも、それが面白いという印象にまでは至らない。
 けっきょく画面は見ていても、ストーリーは上の空。
 そんなわけで、最終回も観たはずなのに、どんな終わり方だったのか、思い出せない。

 部分的には、面白いと思うところもあった。
 たとえば、九州の“炭鉱王”のお父さんをやった役者は、さすがあちこちで話題になるぐらいの存在感があって楽しめた。
 
 けれど、ヒロインの花子に映像が切り替わると、“劇団一期生か二期生の練習公演” というレベルに思えてくる。
 吉高由里子は、確かに美人かもしれないけれど、演技力がなぁ … 。
 妹役をやっていた黒木華のほうがはるかに演技がうまい。美人度では吉高に劣るかもしれないけれど、チャーミングさでは上。私はこっちの役者のほうを主人公に据えてもいいと思ったくらいだった。

 で、あのドラマで炭鉱王の次に面白かった人物は、意地の悪いアナウンサーとして花子をいじめる有馬次郎。要は、プライドだけが高い、融通の利かない、了見の狭い人なんだけど、その病的な一徹さによって、花子をいじめるだけでなく、軍部に対しても批判的という愚直な姿勢を貫くところが潔いと思えた。

 NHKの朝ドラには、面白いと思えるものと、つまらないと思えるものがある。
 ま、誰だって、好き嫌いはあるだろうけれど、自分の場合は、世間の称賛度が高いドラマになればなるほど、つまらないように感じる。

 社会現象にまでなった 『あまちゃん』 は、いったいどこが面白いのか、自分にはさっぱり分からなかった。
 全編に漂うのは、バブルっぽい80年代的狂騒。
 80年代というのは、地球上の物事がドラスティックに変わっていく人類史的な転換点だったのに、その大変化を “ジュリアナ東京お立ち台” 的な空騒ぎで見過ごしてしまった80年代エンターテイメントに対する嫌悪感は、今でも胸の奥から去らない。

 この80年代的なアイドルになじんだ人は、『あまちゃん』 に対しても、“当時のアイドル文化が思い出されて懐かしいですねぇ” なんていう人が多かったけれど、こっちは80年代アイドルそのものが好きじゃないんだから、もう話が合わない。
 自分の場合、アイドルといえばバスボンのCMに出ていた松本ちえこか、せいぜい 『サンタフェ』 までの宮沢りえ。
 現在でいえば、かろうじて、はるな愛なんだけど、はるな愛は「アイドル」とは言いがたいし、まず女じゃない。

 話が逸れたけれど、 … んなわけで、私にとって、最近の朝ドラで出色のドラマといえば、『カーネーション』 なのだ。
 あれはストーリーそのものが面白かったし、演出も小気味よかった。
 でも、最大の魅力は、やはりヒロインを演じた尾野真千子の存在。
 私はあのドラマで尾野真千子という役者を知り、以来 “魂の恋人” だと思うようになった。

 だから、私の朝ドラの評価基準は尾野真千子の 『カーネーション』 であり、それが、朝ドラを評価するときのスタンダードとなっている。
 となると、『あまちゃん』 は、小学校の学芸会。
 『花子とアン』 は、二流劇団が親戚縁者に券を買ってもらって、地方の公民館などで公演する “素人演劇” 。

 ま、こんなことを書くと、ますます世のなかの主流派を自認する人たちからバッシングを受けて、炎上しそうな気もするけれど、でもやっぱり朝ドラって、ヒロインの魅力がすべてを決定するから、存在感のない女優では務まらない … と私はきっぱりと言いたいのだ。
 女優としての訓練を積むことによって生まれる演技力はもちろんのこと、さらに人生経験とか、度胸とか、個人の胆力の強さとか、そういった総合力がヒロインの存在感を生むと思うわけ。

 能年玲奈じゃ、まだ無理でしょ。
 吉高由里子も、淡白な、浅漬けの白菜みたいな演技をやらされていたなぁ ……。定食の小鉢にちょっと添えられたお新香みたいな演技。脚本のせいか、演出のせいか知らないけれど。

 でも、それがいまの日本人のマジョリティーの求めるものなんだろうね。
 特に朝ドラのヒロインには、演技力とか存在感を浮き上がらせる女優よりも、むしろ、「キャラ立ちの希薄なヒロイン」を据えるほうが一般受けするということを、NHKもよく分かっているようだ。

 で、話がようやく本題に入るのだけれど、今回のNHKの朝ドラ 『マッサン』 はとてもいい滑り出しだったと思う。
 こいつは久しぶりに楽しめそうだな、という予感が働いた。
 なんといったって、子役から始まらずに、いきなり大人のヒロインが登場するところがいい。
 亀山エリーを演じるシャーロット・ケイト・フォックスさんという女優は、顔がアップになると、ちょっと目元のシワなどが目立つけれど、演技力はありそうだし、存在感もありそう。

 NHKも、異文化の「衝突」とその「調和」という、最もドラマが生まれそうなテーマに対し、ようやく本腰を入れて挑む気になったようだ。
 『花子とアン』 でも、英米文学と日本語という異文化の接触がテーマになっていたが、しょせんは、翻訳を通じて外国語を日本語に訳すという程度の異文化交流にすぎなかった。

 それに対し、異文化のもとでそれぞれ育った人間同士が「夫婦」になるときに飛び散る火花の激しさは、翻訳などの比ではない。
 同じ日本人同士だって、それぞれ育つ家庭が異なれば、結婚したときは小さな異文化対決が生まれる。
 ましてや、言葉も、習慣も、宗教も異なる外国人同士となれば、それぞれの背負った「文化」と「文化」の激突となる。

 しかし、それだけに、異文化を背負った夫婦が理解し合って、その波長がうまく合ったときのパワーは、日本人同士の結婚などとは比べ物にならないほど強靭になるだろう。
 そこをうまく描けるかどうかが、このドラマの勝負どころ。

 泉ピン子さん、どうか意地悪なお母さん役の手を緩めないでくださいね。
 ピン子さんが視聴者に嫌われれば嫌われるほど、このドラマは面白くなっていきそうだから。

 
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NHK朝ドラ 「マッサン」 への8件のコメント

  1. タイムジャンクション より:

    久々に朝のドラマ見てます。亀山エリー(役)・・・何故か若い頃の義姉そっくりなんで、近々日本に来るので見せてやろうと録画しながらみています。が、ニッカ・ウイスキーも好きなので楽しめそうです。

  2. 町田 より:

    タイムジャンクションさん、ようこそ

    亀山エリーを演じる女優さんと義姉さんがそっくり … ということは、ずいぶん美人のお姉さんなんでしょうね。
    わぅ !!

    タイムジャンクションさんがウィスキー好きなのは、blogを拝読しているとよく分かります。
    私は、サントリー党なんですけど、たまにブラックニッカも飲んでます。
    このドラマは楽しみですね。
     

  3. ムーンライト より:

    町田さん。お久しぶりです。

    「朝ドラ」は確かに子供時代から始まるのが多いですよね。
    「朝ドラ」を見ていると朝の仕事が進まないので、何年も見ていなかったのですが、
    ふと「今度のドラマはどうかな?初回だけ見てみよう」
    ・・・それで、子役の可愛さにはまってしまう。

    「花子」の子役は可愛かった!
    「がんばれ!はな!」って見ていました。
    大人になった花子が登場した時は違和感がありましたけれども。

    『マッサン』は子供時代から始まらない点で珍しいですよね。
    ちょと騒がしいけれど、楽しく見ています。
    泉ピン子さんて、少々苦手なんですが、今回「うまいな~」と思いました。
    存在感がスゴイ。
    主役は勿論ですが、脇をかためる方もとっても大事ですね。

  4. 町田 より:

    >ムーンライトさん、ようこそ
    お久しぶりですね。お元気でしたか。
    NHK朝ドラの『マッサン』は、私などにはとても面白く感じられるのですが、どうも「面白くない」と感じられる方も多いらしく、このブログのアクセス検索を見ると、「マッサンつまらない」、「マッサン面白くない」という言葉を打ち込んでこられる方ばかりなんですね。

    で、ちなみに自分で「マッサンつまらない」で検索してみると、いろいろな意見が出てきて、その一部には、ムーライトさんが指摘されたように、「泉ピン子が苦手」という方がかなりいらっしゃるようでした。
    ま、それは逆に言えば、ムーンライトさんがおっしゃるように、彼女の「役者としての存在感」であるように思います。

    確かに『マッサン』は、朝一番に観るドラマとしては、多少ヘビーかな…という気がしないでもありません。外国人の嫁さんに対する日本人のいびり方は、少し過剰かも。そこが面白いといえば面白いのだけれど、爽やかな朝を迎えたい人たちにとっては鬱陶しいかもしれませんね。

    実際の視聴率はどうなのかな?
    ドラマの行方と同時に、視聴率の推移にもすごく興味があります。
     

  5. ちーちゃん より:

    カナダでも朝ドラを放送していますので、一応毎日見てます。「マッサン」が始まる前に外国人が主人公で出演すると言うので興味しんしん。どんな風に演じるか?下手な演技なら止めとこうと思いながら見ています。
    *カナダ生まれの娘を日本に連れて行った時「靴を履いたまま畳に上がった事」があったのです。しかしその時娘は2歳でした。エリーは大人、マッサンがちゃんと教えているのが常識でしょう!あり得ない!
    *彼女の演技が想像以上に上手いのでこれからもマッサンとお付き合いして行くでしょう。
    日本語をかなり勉強しているのですね。日本語を習った事が全く無かったのであればこれだけの日本語を話しているのはすごい。
    *ストーリー自体はまずまずだと思っています。
    何やかや言いながらもカナダ在住者には「チャンネルを変えられない」と言う鉄則がありますので、これからも見続けるでしょう。 Good Luch every one!

    • 町田 より:

      >ちーちゃん 様 ようこそ
      カナダからのご連絡、ありがたく拝読いたしましたが、尿路結石で七転八倒していたため、返信を差し上げるゆとりがありませんでした。申し訳ないです。

      カナダで日本のNHKの朝ドラが放映されているということ、はじめて知りました。

      立派に成人して、しかもマッサンから日本の習慣を教えられているはずのエリーさんが、土足で畳に上がってしまうというのは、確かに “過剰演出” ですね。
      最近の朝ドラは、どもすれば過剰演出の傾向が強く、無理やりドタバタの面白さを狙っているような感じもありますが、たぶんそれは、ここ最近の日本人の笑いの質が変わってきているせいかもしれません。

      大げさなドタバタで笑いを取る。
      ま、関西系の笑いというのかもしれませんけれど、それくらい派手に明るくしないと、プレッシャーがかかりすぎる最近の勤め先に向かう人たちの意識を鼓舞できないのかもしれません。

      ま、でもマッサンの場合は、それでもいいように感じました。
      “異文化衝突”を深刻にならない程度に描くには、ちょうど良いのかな … と。

      またお越しください。
      カナダからの便り、楽しみにしています。
       

  6. 初めてブログを拝見させていただきました。町田様の文章表現の完成度の高さに素直に感心いたしております。きっと出版界に長くおられた、いわゆる「プロ」の方なんだなあ。と勝手に決めつけております。私も1か月前よりブログの真似事を始めたのですが、その軽薄な内容と稚拙な文章に「穴があれば入りたい」そのものですが、貴ブログを自分自身の研鑽の糧といたしますのでさらなるご活躍を勝手に期待いたしております。また、お体をくれぐれもご自愛のほどを。
    本当に今日は素晴らしいブログに出会えて、良い一日でした。ありがとうございました。

    • 町田 より:

      >FAR SKYさん、ようこそ
      はじめまして。
      キャンピングカーのクラブキャンプの取材に行っておりましたので、メールチェックが遅れ、返信が遅くなったことをお詫び申し上げます。
      また拙文に対し、過剰なお褒めの言葉をいただき、うれしい限りですが、反面、恥ずかしさも感じます。

      FAR SKYさんのブログも拝読いたしました。
      関心領域の幅の広さ、教養の深さ、それをとても軽妙な筆致で綴られていらっしゃること知り、大変感銘を受けました。
      政界批判や社会風刺もあり、文学への深い造詣も感じられ、音楽やテレビドラマに対する省察も素晴らしいですね。
      きっと、いい読者がつく素敵なブログに成長していくことでしょう。
      このような名文を書かれる方から「文章表現の完成度が高い」などというご評価をいただくことは、身に余る光栄というものです。
      せっかくいただいた高評価を損なわないように、気を引き締めてまいります。
       

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