キャンピングカーで行く軽井沢

 キャンピングカーで観光地を回るというのは、車両サイズが大きすぎて一般の駐車場に入らないというような大型車を除けば、けっこう気楽なものである。

 歩き疲れたら、車内に戻って、昼寝ができる。
 冷蔵庫があれば、生鮮食品などのお土産も気楽に買える。
 場合によっては、その駐車場に1泊料金を払って宿泊する覚悟を決め、近くの居酒屋などに繰り出せる。
 天気予報をチェックして、目的地が雨ならば、自由に行き先を変えることもできる。
 まあ、フレキシブルな旅ができるというわけだ。

 夏休みをとった8月の後半は天候不順だったので、まさにそんな旅になった。
 朝、目が覚めてから天気予報をチェックし、雨の降らない場所を求めて出かける。
 気に入った場所があれば、高速のSAでも道の駅でも休憩・仮眠ができる。
 そもそも宿をとっていないので、予約に拘束されることがない。
 
 8月下旬のウィークデイ。
 中央高速の諏訪SA(上り)で目覚め、須玉インターまで下りてきたところで、
 「さて本日雨の降らない場所はどこだ?」
 と天気予報を調べてみると、軽井沢方面が晴れていると分かった。
 犬も含めた家族会議で相談し、
 「じゃ、そっちへ行ってみるか」
 と決まった。

 車中泊に飽きた犬だけは反対して、「もう帰ろうよ」と訴えたが、人間たちに押し切られた。
 しょせん自活能力のない飼い犬の悲しさだ。
 無慈悲な旅である。
 
 須玉から軽井沢に至るには、国道141号を北上する。
 左手に八ヶ岳山麓。
 高原の夏は短く、空にはすでに秋の気配がみなぎっている。

 途中、JRの駅としては “最高峰” を謳う小海線の野辺山を通る。
 最高峰 !!
 ホームに行くには、天まで続くような階段を、ヨッコラと登ることになるのだろうか。
 駅舎から、眼下に広がる雲海を眺めることができるかもしれない。
 私は “鉄ちゃん” ではないが、駅を見物をすることにした。
  
 マチュピチュに登る高原列車が走るような駅を想像していたが、着いてみたら、普通の駅だった。
 しかし、駅舎の形は、確かにユニーク。“遊園地感” がたっぷり。

 駅前ロータリーの「標高1,345.67m」と書かれた案内塔の前では、観光に訪れたオバちゃん3人組が、「やっぱ涼しいわ」などとはしゃぎながら、代わる代わる写真を撮っていた。

 運よく上りと下りの列車が入ってくる時間帯で、ホームには乗客が並んでいる。
 カメラを構え、列車の入線を待つ。
 東京の山手線などを走っている電車と顔つきが違うので、なかなか面白い。

 野辺山から走ること2時間ばかり。
 いよいよ天下の避暑地、軽井沢だ。
 トイレ休憩も兼ねて、目に飛び込んできたスーパーに入る。
 おやおや … お客がみなセレブっぽい。
 このへんに別荘地をかまえるお金持ち向けのスーパーという雰囲気で、買物かごを下げている奥様が、上品に頬に手を添えて、「オホホホ」と笑いそうな感じ。

 アルプスの岩塩というのが売っていて、珍しいから買う。
 うちの近くのスーパーなどでは目に入らない珍品。
 さすが、軽井沢のセレブ系スーパーだ。

 軽井沢駅近くの駐車場にクルマを入れて、町を歩くことにする。
 犬はまたキャンピングカーの中で留守番。
 「だから嫌だって、言ったのに … 」
 運転席の窓から、去っていく人間たちをうらめしげに見送っている。

 旧軽井沢方面に向かって歩くことにする。

 途中、「軽井沢チーズ熟成所」という看板を見つける。
 フランスのチーズの本場で修業したご夫婦が30数年前に開いた「アトリエ・ド・フロマージュ」という店の軽井沢店だとか … ということは後で知ったのだけれど、チーズ専門店というのが、いかにも軽井沢っぽいと思って、中に入る。

 試食したチーズがとてもうまい。
 コンビニでよく買っている6Pチーズとは大違いだ。
 よって、一かたまり買うことにする。

 さらに旧軽方向に歩く。
 「三笠ホテルカレー専門店」という看板を見つける。

 上手に撮影されたカレーの写真が、食欲をそそる。
 三笠のカレーといえば、昔とてもおいしかったという記憶がよみがえった。
 値段は、1,400円。
 「きっと、うまいんだろうなぁ …」
 と期待させる、絶妙の値付けだ !!

 

 オープンテラスがあって、店内の雰囲気も上々。
 昼飯はカレー、と決まった。

 なかなかいい感じのカレー。
 ただし、自分の舌が記憶していた “三笠のカレー” とは異なっていた。
 昔食べたのは東京・銀座の「三笠会館」のカレーで、「軽井沢三笠ホテル」のカレーとは別物だった … ということも、後で調べて分かった。

 三笠ホテルは1906年に創業され、当時 “軽井沢の鹿鳴館” といわれた格式の高いホテルだったらしい。
 もちろん今はない。
 しかし、ここで出されたカレーが評判だったため、町おこしのために、その味を軽井沢全体で復活させようというプロジェクトが組まれたとか。
 しかし、当時のレシピが残っていないので、再現する方法がない。

 そこで、かつてホテルのキッチンで働いたことのあるシェフを探し出し、試行錯誤のうえ、現在のカレーができあがったのだという。
 つまり、「三笠カレー」というのは、いわば軽井沢の町の総力を結集した新しいメニューだったのだ。

 その後歩いていると、「三笠カレー」というメニューを掲げたレストランを何店も発見する。
 値段もまちまち。
 もしかしたら、店ごとに味が違うのかもしれない。

 カレーで腹を満たし、さらに歩く。
 「アラモードカフェ」という店の前に椅子を出し、ギターを弾きながら歌っているオジサンがいた。

 手相を占うシンガー・ソングライター中村羅針さん。
 弾き語りの旅を20年以上続けているという。
 “神秘哲学史” というものを研究しているとのこと。
 夏は、このカフェの店主が親切に場所を提供してくれるので、軒先を借りているのだとか。
 面白そうな人だったが、雨が降ってきそうな空になってきたので、先を急ぐ。

 舗道では、衣装店や雑貨屋、骨董品屋が目立つ。
 売っているものは高級品ではないが、観光地のアクセントとして、にぎわいを演出してくれる。
 たぶん、ここを訪れた観光客が、「お座興」とばかりに、祭りの夜店で射的や金魚すくいを楽しむ感覚で買っていくのだろう。

 ようやく、旧軽井沢のロータリーに到着。
 人、人、人 ……
 この夏の旅行で、最大の観光地に来た気分。
 もう夏も終わりだぜ ?
 なんだってこんなに観光客がいるのよ !!
 長野新幹線が開通してから、観光客も増える一方だという。

 
 
 このロータリーから、旧碓氷峠方面へ向かう約500mのこの区間が、この地域最大のメインストリートであるらしい。
 バブルの頃には “旧軽井沢銀座” などとも呼ばれたらしいが、銀座というより、原宿の竹下通りの大人版といった感じだ。

 10年ぐらい前、やはり夏の終わりに、キャンピングカーでこの地を訪れたことがあったが、こんなに人が溢れてはいなかった。
 夏の終わりの避暑地は閑散としていた方が情緒があると思うのだが、そういうのは、へそ曲がりの発想なのだろう。
 ツルゲーネフの小説 『初恋』 に出てくるような、晩夏のさびしい避暑地の風情を期待していたのに、裏切られる。

 「寺子屋本舗」(↑)の店先で、おかきを1枚買い、歩きながら食べる。
 「一味」という唐辛子つきのおかきを選んだが、口に入れたとたん、舌が大火事 !!  迫力満点のおやつだった。

 有名なパン屋さんの「浅野屋」(↑)に到着。  
 昭和8年に、東京・千代田区で洋酒、食料品などを売る店として誕生。特に自家製のパンが評判となり、外国人の顧客の間に評価が広まったとか。
 そこで、外国人の避暑客も多いこの軽井沢の地で、夏季出張店を開いたのがこの店の始まり。… というのも後で仕入れた知識。

 カミさんに言わせると、ジョン・レノンが生前愛した店で、来日するたんびにここを訪れ、パンを買っていたんだとか。 
 「ここに来たら、買うのは当然フランスパンでしょう」
 とカミさんがいうので、フランスパンを仕入れる。
 チーズとパン。
 これで、明日の朝食のメニューは決まり。

 では、夕食は何にするか?
 「ここまで来たのなら、夕食は当然おぎのやの 『峠の釜めし』 でしょう」
 とカミさんがいうので、上信越自動車道に入り、横川SAで釜めしを買って帰る。

 今回、馬籠、蓼科、清里と高原の観光地を回ってみたが、やはり軽井沢といのは別格。
 見事に観光地化されているので、人工的とはいえ、ファッション感覚では随一。
 ドンキやドラッグストア、コンビニなどが見当たらないので、町の景観としてはかえって新鮮だ。
 若いカップルには楽しいデートコース。
 シニア夫婦も若返った気分になれる。
 今度来たときは、駅前の駐車場にクルマを止め、夜は居酒屋などを探して車中泊しようと思う。  
 
 

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キャンピングカーで行く軽井沢 への2件のコメント

  1. solocaravan より:

    軽井沢にはお盆休みにいってきましたが、悪天にもかかわらず人出が多いのには私も驚きました。ここならだれも来ないだろう、と確信して停泊した穴場も翌朝には満車になるほどでした。軽井沢こそRVパークがあればゆっくりと泊まりで街中を散策することができるのに、とつくづく思うのですけど。

    ちなみにメインストリートから外れた森の中にけっこう有名な美術館があったり、原生林の遊歩道があったりしてこんなところにこんなものが?という意外な発見がありました。

  2. 町田 より:

    solocaravan さん、ようこそ
    軽井沢も変わりましたね。
    旧軽あたりは、いい意味で洗練されてきていますし、まぁ、その分最近のこじゃれた観光地っぽい雰囲気も増して、“どこにも有りげ” な景観にも近づいてきましたが …… 。

    このあたりに本当にRVパークが欲しいところですね。
    そうなると、けっこうキャンピングカーも集まってきそうに思えます。

    >>「原生林の遊歩道」、「美術館」 ……
    軽井沢にはほんとうに楽しめるものがいろいろありそうですね。
    再度訪ねて、ゆっくりの味わいたいと思います。
     

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