ウルトラキャパシタによる新しい電装システムの開発

 
シリーズ 日本のキャンピングカーはどこへ向かっているのか
 
キャンピングカーの電気革命4

 キャンピングカーが現在抱えている問題で、もっともドラスティックに変わりつつあるのは電装システムである。特に、高温多湿傾向を強める夏場のキャンピングカー旅行を快適なものにするために、搭載機器の中でもエアコンの比重が高まりつつある。
 
 これに関しては、消費電力の少ない家庭用セパレートエアコンを採用するケースが増えており、それを駆動させるためにサブバッテリー、インバーター、ソーラーパネルなどを組み合わせた高度な電装システムが組まれるようになってきた
 
 また、バッテリーそのものの機能を見直そうという動きも台頭してきて、キャンピングカーではこれまで試みられることのなかったリチウムイオンバッテリーを搭載するという動きも出てきた。 
 
 しかし、ここにきて今までとはまったく違う仕組みで電気を溜める装置が浮上してきており、すでに自動車をはじめ事務機器などに応用され始めている。
 一般的に「ウルトラキャパシタ」と呼ばれるもので、「コンデンサーを大容量化したもの」などと説明されることもある。
 
 このウルトラキャパシタをキャンピングカーに組み込み、バッテリーの消耗などを防ぎながらクーラーの駆動時間などを大幅に伸ばし、かつ燃費の向上やエンジンの出力アップなどを実現したキャンピングカーメーカーがある。いすゞ自動車とのコラボによって「Be-cam (びぃーかむ)」というキャンピングカー専用シャシーを開発した埼玉県の「エートゥゼット (AtoZ )」である。
 
 ウルトラキャパシタとは何か。
 また、それはどのような作動原理を持ち、キャンピングカーの電装システムにどういう変化をもたらそうとしているのか。
 同社の渡邉崇紀常務に尋ねてみた。

Interview
エートゥゼット 渡邉崇紀さん


 
【町田】 まず、「ウルトラキャパシタ」とはどういう機能を持つ装置なのか、そのへんからご説明いただけますか。
【渡邉】 ウルトラキャパシタのことを、うちでは「ビーアシスト」という商品名で呼んでいるのですが、大雑把にいうと 「電力を電気で貯える装置」ですね。
 今までは「コンデンサー」という名前で呼ばれていましたが、それが巨大化し、従来の1000倍以上の電力を扱える装置になったものを、ウルトラキャパシタという新しい名前で呼ぶようになったのです。
 
【町田】 その装置を、どこに取り付けたのでしょうか?
【渡邉】 キャンピングカーの電気の流れというのは、まず走行充電の場合ですと、ベース車のオルタネーターから発電された電気がメインバッテリー → サブバッテリーとつながっていって、いったんサブバッテリーに蓄えられた電気がキャンピングカーの各設備へ供給されるということになるわけですね。そのメインとサブをつなぐリレー周辺にキャパシタを噛ませてあります。

【町田】 それによって、どういう効果が?
【渡邉】 一般的な走行充電では、突入電力から保護するために充電量を絞っているんですよ。つまり、メインバッテリーとサブバッテリーの間にバッテリープロテクターを入れて電流を制限しているんですね。通常のキャンピングカーなどでは、オルタネーターの能力を本来の1/3ぐらいまで絞ってしまうんです。
 しかし、当社で扱うものは、ウルトラキャパシタを付けることによって、オルタネーターの発電する電気を安定させ、大容量の電力でもバッテリーに充電できるようにしています。

【町田】 その場合の充電効率は、具体的にはどのくらいになるのでしょう。
【渡邉】 それにお答えするのは、うちがいすゞ自動車さんとの共同開発によって供給できるようになった「Be‐cam (びぃーかむ) 」 というキャンピングカー専用シャシーを持った車に限定されたものなりますね。
 というのは、「びぃーかむ」を開発するときに、とにかく電気が大量に必要になるというお話をいすゞさんに差し上げていたので、オルタネーターの容量を大きくしてもらっているんです。
 本来のエルフのオルタネーターの電気供給量は50アンペア程度なんですよ。それがカーナビやライトなどで電気を消費するため、さらに30アンペア以下まで絞られてしまう。
 そこで「びぃーかむ」では、オルタネーターの容量を80アンペアまで増やしています。24ボルト80アンペアというのは、いすゞ車の中では冷凍車クラスで使っている大型オルタネーターなんですね。
 だから、同じエルフベースのキャンピングカーがあったとしても、「びぃーかむ」とそうでないものは、オルタネーターの発電量が最初から違うのです。
 それに加えて、ビーアシスト(ウルトラキャパシタ)の働きがありますから、オルタネーターで発電される80アンペアの電流がそのままサブバッテリーに供給されるようになっています。

▼ びぃーかむシャシーを採用したアルビオン

【町田】 話をうかがっていると、キャパシタもバッテリーと同じように電気を蓄える装置のように感じられますが、従来のバッテリーとはどう違うのですか?
【渡邉】 バッテリーは、電気エネルギーを化学エネルギーに変換して蓄電するため、電気を取り出すときにどうしても化学反応のタイムラグが発生します。
 それに対してキャパシタは、電気を電気のまま蓄えることができるので、出入力の反応速度がとても早い。だからスターターやオルタネーター、インバーターなどの突入電力に瞬時に反応できるんです。
 要するにウルトラキャパシタというのは、「電気を溜めておく貯水池」 のようなものなんですね。そこにあらかじめ電気を溜めておけるから、取り出しも瞬時にできるわけです。
 しかも、バッテリーの負担が軽くなるので、電圧の波形を調べても非常にきれいです。そのため、各電装機器の動きもなめらかになります。

【町田】 いいことずくめですね。
【渡邉】 そうですね。そういう意味では、確かに瞬間的な大電力を放出するのにウルトラキャパシタは非常に適しています。ただ持久力がない。つまり連続運転には向きません。
 そこで、当社では、突入電力のような短時間に電力が発生するときはウルトラキャパシタが受け持ち、その後の安定した連続運転においてはバッテリー側に仕事をさせるようにしています。  

【町田】 そういうシステムを組むアイデアというのは、どこから生まれてきたんですか?
【渡邉】 まず、お客様の要望があって、それに真摯に応えようとしたときに、キャンピングカー作りの発想を転換させなければならないという気持ちがあったからでしょうね。
 お客様とお話をしていると、キャンピングカー旅行中に皆様がいろいろな不便を感じていることが分かってくるんですね。
 その不便さはというのは、シャシー側の問題もあるし、架装部分の問題もある。
 我々は、キャンピングカーというのはベース車と架装部分という異なる構造物が合体したものだと思いがちなんですが、お客様から見ると、“キャンピングカー”というトータルなものなんですよ。
 そう考えると、作り手の方も、シャシーと架装部分を一体のものとしてとして考える必要があるわけですね。
 特に電気的な部分は、そういう発想をしないと対処できない問題がたくさん出てきます。
 それを解決するために、ウルトラキャパシタとしての「ビーアシスト」を発明し、いすゞのトラックで使われている「アイクール」というクーラーも採用することにしたわけです。

【町田】 で、そのウルトラキャパシタを組んだ電装システムにおいて、たとえば電源の取れないところでエアコンを駆動させるというような、多くのユーザーが現在関心を持っているテーマにどう対応できるのでしょうか。
【渡邉】 現在、100アンペアのバッテリー4個を搭載しておりまして、それだけでクーラーの連続使用時間は9時間保証できます。
 さらに、それにソーラーなどを組み合わせると、季節にもよりますが、夜間モードを入れて25時間は大丈夫です。
 ただ、これはいすゞ自動車の「アイクール」というクーラーを使っての話ですね。
 このクーラーは、もともと大型トラックのアイドリングストップを促進させるためにいすゞが開発したもので、車載を前提として設計されているものですから非常に信頼性が高い。家庭用エアコンを搭載するのと違って耐震試験も行っていますから、走行中でも安心して使えます。

▼ アイクール

【町田】 ソーラーを併用して25時間の連続駆動というお話でしたが、ソーラーだけで10時間ぐらいクーラーを回すという計算になりますね。
【渡邉】 ソーラーパネルを3枚まで載せると、そのときに発電された電気の方が、アイクールの消費量よりも多くなるんですよ。昼間はソーラーだけで動いてしまいます。
 そして、日が暮れてからはバッテリーを使うことになるわけですが、それでも9時間持つわけですね。9時間回しきってクーラーが止まっても、冷蔵庫やインバーターはまだ使えます。そして翌日の朝からソーラーが使えるようになれば、アイクールはしばらく動きます。
 いよいよバッテリーが減ったという状態になっても、アイドリングをかければ、アイクールを使った状態でも充電できます。さらにそのまま2時間程度走れば、満充電になります。
 
【町田】 現在のソーラーはそれほど性能が上がったということなんでしょうか?
【渡邉】 ソーラーパネルそのものというよりも、コントローラー側の問題ですね。現在私たちが使っているコントローラーは「MPPT」と呼ばれるもので、非常に変換効率が高いんですよ。一般的に使われている「PWM」というコントローラーの変換効率が6割程度だとしたら、当社のMPPTの変換効率は96%になります。
 要するに、PWMというのは、決まった条件で使うように開発されたもので、「南東向きに30度傾けたときに最大の電力が得られる」という性格のものなんです。
 しかし、キャンピングカーの場合は日照条件が刻々と変わりますよね。長時間日陰の場所に停めざるをえないこともあるでしょうし…。
 そういうときにもMPPTは威力を発揮します。気象条件の変化に対応して、常に最適な作動状態を自動的に追尾していくわけです。いわば、それぞれ電圧の異なるPWMを何個も並べているとイメージすれば分かりやすいかもしれません。

【町田】 ずいぶん画期的な電装システムが開発されたわけですね。
【渡邉】 ええ。それもこれもすべて「びぃーかむ」というキャンピングカー専用シャシーをいすゞさんとのコラボで開発した成果のたまものですね。
 私たちも、「びぃーかむ」を披露した当初は、走りの部分で他のキャンピングカーシャシーとの差別化を図らなければならなかったので、あまり電装系に触れる余裕がなかったのですが、実は「びぃーかむ」の大きな特徴の一つとして、このような “電気革命” をも射程においていました。

▼ びぃーかむ エンブレム

【町田】 その成果が実ったと…。
【渡邉】 ええ。やはりこういう電装システムというのは、理論としては成立しても実証されなければ意味がない。そのため「びぃーかむ」を開発してから、ふた夏に渡ってテストを繰り返していたんです。
 その結果、ビーアシストを付けたことによって、アイクールを相当激しく使っても、バッテリーの痛みが少ないことも分かりました。
 ここまで来るには、お客様にもずいぶん協力してもらいました。おかげさまで世に堂々と公表できるレベルまで完成度を高めることができたと思います。協力していただいた方々には、この場を借りて深くお礼を申し上げたい。
 とにかく、「びぃーかむ」を採用した当社のアラモ、アルビオンは安全、安心、簡単便利という4拍子そろった「使える」キャンピングカーです。皆様もぜひ一度運転して試してください。きっと満足されると思います。

▼ アラモ

「びーかむ」の説明 http://www.atozcamp.com/atoz_becam_page.html

関連記事 「AtoZの 『Be-cam (びぃーかむ) 』 」

参考記事 「エートゥゼット 『アルファ』 」

参考記事 「エートゥゼット 『アミティ』 」

参考記事 「キャンピングカーのペット同伴旅行誌 『wancam』 」  
 

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ウルトラキャパシタによる新しい電装システムの開発 への2件のコメント

  1. 井田 一徳 より:

    さすが目の付け所が早いですね! 渡辺さんがキャパシタに目を付けていたのは知ってましたが、車載専用クーラーに応用して、さらにオルタネーターの出力アップとはさすがだと思います。オルタネーターの出力アップは数十万かかるので、この方式は画期的。

    • 町田 より:

      >井田一徳さん、ようこそ
      目の付け所が早いわけではないんです。エートゥさんが、これまでいろいろなテストを繰り返されてきて、ようやく自信を持って公表できるというタイミングにたまたま居合わせただけで。
      でも、ほんとうにこのシステムは素晴らしいですね。
      私も2年前に取材したBe Camの意味がようやく分かりました。

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