若気の至り

  
 ちょっと部屋を整理していたら、若いときに撮った自分の写真が出てきた。
 たぶん、26~27歳ぐらい。
 今の会社に入社して、1~2年目っていうところだ。

 凄いぜぇ、バカさ加減が 。
 まともなサラリーマンやっていたとは思えない。

 もっとも、自由な気風に満ちた大らかな会社だったから、仕事場にも 「編集者は街に出てネタを拾う現場労働者」 っていう空気が漂っていて、衣装に対する規制は厳しくなかった。
 
 いちおう大手自動車メーカーのクライアントとの折衝があったので、そこの広報部に出向いて編集会議をやるとき、もしくはそうとう偉い人のインタビューに出向くときぐらいはネクタイにスーツ。

 しかし、それ以外は、夏はTシャツにジーンズ。
 冬は革ジャン。
 靴は軽薄な白革のデッキシューズ。(自分では餃子皮靴と呼んでいた)
 頭は、…… この頃パーマをかけたりしていて、そのかけ方がきついときは、アフロヘアになっていた。

 自分で鏡を見ていて思う。
 「こいつ、頭ワルソー」

 でも、そういうふうに見られることを、むしろ望んでいたんだな。
 自分が入社した年が、1976年。
 この年、若者雑誌の 『ポパイ』 が創刊される。
 ピンクレディーが 「ペッパー警部」 を歌っていた年だ。

 その前年に、ベトナム戦争が終わって、「反戦」 というテーマもなくったために、学生運動が急速に終焉し、「政治運動」 的な言論や行動がダサさの頂点に達し、それに代わって “カリフォルニアの青い空” がもてはやされた時代。
 若者たちは、ゆる~い結合で群れ集うサークル活動に熱心になり始め、アメカジファッションに身を包み、サーフボードを抱えて海に向かい、あっけらかんと陽気なディスコミュージックの流れるディスコで汗をかくようになった。

 俺、そういうのが気分的に合わなかったの。
 その時代、自分が好きな映画は東映の 『仁義なき戦い』 。ドライブ中に流している音楽はキャロルの 『ルイジアンナ』 。カラオケで歌う曲はクールファイブの 『中の島ブルース』 だったからね。
 読んでいる本は、時代に背を向けたような作家のものばかりで、吉行淳之介、安部公房、井上靖、古井由吉、立原正秋、野坂昭如、澁澤龍彦。
 ぐだぐだと飲み屋のママさんの愚痴を聞きながら、始発電車で帰ったりするような不健康な生活が好きだったから、世の中が明るい健康志向に染まっていくのに馴染めなかったんだね。

 あの頃、「時代に背を向けてやる」 という気分が、確かに、ないことはなかった。
 「美」 と「憂愁」 に染まったデカダンスの世界。
 それを生き抜くことが、俺にとっての 「文学」 だと思い込んでいたから。

 そんな気分のときの自分のファッションが下の 1 枚。
 『仁義なき戦い』 にハマって、文太や梅辰のセリフなんかを暗記していた頃だ。
 こんな格好で出社するのを、よくそのときの編集長が許してくれたと思うよ。
 駅のホームで電車を待っていたら、さぁーっと自分の周りの人たちが引いたのを見たこともあったしな。

 下の写真は、いちおう撮影のモデルを自分から申し出たときの格好。
 大げさな口髭は、撮影用に買った付け髭。 
 精一杯気取ってポーズをとってみたけれど、けっきょくこの写真はボツになった。
 「これじゃ宣伝する商品に傷がつく」 という当時の編集長の判断だったのだろう。
 いま見ると、中南米あたりの裏町に出没する “ヤクの売人” やってるプレイボーイという感じに見えないこともない。後にカミさんに見せたら 「単なるアホか」 とバカにされた 1 枚だ。

 さすがに、今はこういう格好はしない。
 スーツを着てネクタイを着用するということは年に 1~2回もないけれど、人が気味悪がって振り向くような衣装を着ることはなくなった。
 今、昔の写真を眺めて思う。
 若気の至り …。
 
 
 
「仁義なき戦い」
 
「GOLD ☆ RUSH (キャロルと矢沢永吉)」
  
 

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若気の至り への8件のコメント

  1. 刀猫 より:

    これは確かに苦笑いですね、撮影用との事ですが(マークⅡ?チェイサー?)
    昔は車の前でポーズとって写真を撮るって良くやってましたよね。
    (今見ると恥ずかしい!)
    今みたいに車が白物家電の様な扱いになってしまうと
    こんな事無くなってしまうわけで
    車がステータスだったり自分の主張を表す物だったりと
    車が輝いていた時代が懐かしいです。

    あ、今でも宿泊型特殊車両の前でポーズとって写真を撮っている自分がいる(笑)

    • 町田 より:

      >刀猫さん、ようこそ
      後ろの車はチェイサーですね。
      赤いSGS。
      CMでは、白いスーツを着た草刈正雄が、その前でポーズを取っていました。

      それにしても、同じ白衣装で、草刈正雄とはこうも違うものなのか !!
      おっしゃるように、「確かに苦笑い」です。

      で、刀猫さんは今も「宿泊型特殊車両」の前でポーズを取られるとか。
      刀猫さんの愛車はカッコいいし、ご夫婦ともども美形で、それに耐えられるからいいです。
      でも、私の場合はせいぜいギャグとしてとどまれるか、というぎりぎりの映像ですね。こりゃ今見ると恥ずかしいよね。
       

  2. ようこ より:

    町田さん 今晩わ

    あはは、私も『馬鹿の時代』と 呼んでる過去があります
    70年頃、ソウルトレインを見ていてアフロヘアに憧れ
    美容院で5時間かけてやってもらいました。

    ヤア 当時は日本広しといえども ジャパニーズアフロは
    3人くらいで勝本さんより先ですぜ。

    皮のホットパンツにポックリ靴、大きな耳環をゆらして
    バンバンに日焼けして歩いていると 日本人ばなれしてて
    人間ばなれ、かな ! 人から白い目で見られて、それが快感 笑)

    やあ写真を見せられないのが残念、だって馬鹿の頃が
    一番楽しかったもの。

    • 町田 より:

      >ようこさん、ようこそ
      アフロヘアに革のホットパンツ、ポックリ靴。
      うん ! 確かに70年以降に日本でも見られるようになったファッションですね。その最先端を行っていらっしゃったわけですね。
      カッコいいと思います。

      70年当時の私は、サイケ模様のプリントシャツにベルボトムジーンズか、逆に裾を極端に絞ったマンボズボン。
      サラリーマンになっても白スーツで街を練り歩くような馬鹿ファッションほどではないにしても、学生時代も “頭のかるそ~な” カッコでしたね。

      今は1年中、上はポロセーター(ほとんど黒)で、下は綿パンです。夏でも冬でもほとんど同じ衣装。でも黒のポロセーターだけでも、20枚以上持ってます。
       

  3. ようこ より:

    一匹狼というとかっこ良すぎるけど、フーテンとは違います
    単独行動が好きで 気がむいたらどこにでも行ってしまう
    オールナイトでやくざ映画も見たし、ドヤの百円宿にも
    泊まった事があります。

    はなれて見ると危険な場所も 中にはいってしまえば怖くない 笑)。
    外ではそんなだったけど
    内では 吉行淳之介 安岡章太郎 丸谷才一 塩田丸男 山口瞳 と
    おじさんの本ばかりを明け方まで読む日々でした。

    • 町田 より:

      >ようこさん、ようこそ
      ようこさんの若い頃って、どんな女性だったのでしょう。
      コメント拝読するかぎり、燃え盛るように炸裂していく外面と、ひんやりと沈潜していく深みのある内面が同居していて、人格になんだかすごい広がりと奥行きが感じられますね。
      あの時代、第三の新人とか、丸谷才一なんか読む人、男性でもあまりいなかったように思います。三島、太宰、吉本隆明は人気だったけどね。

      たぶん、当時のようこさんと対等に張り合える日本人男性はいなかったのではないかな。今のご主人のように、国境や文化の差を楽々と超えられるような人じゃないと、ようこさんを理解できなかったのではないかという気がします。

      もし、若い頃の私が、街を歩いているようこさんに声をかけても、当時流行っていた愛川欣也の「なるほど !ザ・ワールド」のセリフのように、「はい! 消えたぁ~」と一括されて終わりだったでしょうね。
       

  4. 木挽町 より:

    若い頃にこういうことをきちんと経験した人じゃないと信用できません。四歳までの砂場遊びでしっかり経験してきた人は社会に出ても立派です。人に好かれます。偉ぶりません。如才なく振舞えます。カッコいいです。若い頃にきちんと馬鹿になったことがある人でなければできません。

    • 町田 より:

      >木挽町さん、ようこそ
      はぁ、なるほど……。
      >>「きちんとした経験」。
      若い頃のやんちゃを、そう表現されるところが、木挽町さんの度量の大きさですよね。

      ま、「偉ぶる人」は、私も昔から私もあまり好きじゃなかったですけど、やはり仕事を通じていろんな方々に会い、しっかりした仕事をされている方の方がみな腰が低いということを見てきたから、なおさらなんでしょうね。
       

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