趣味人、学者、発明家

 
 今回の都知事選の候補者で、実質上 “一騎打ち” といわれている細川さんと、舛添さん。
 方や芸術家、方や学者。
 細川さんは、かつて首相も経験したが、基本的には陶芸なんかに凝っている 「芸術家」 気取りの趣味人。
 舛添さんは、もともと 「政治学者」 だから、おしゃべりは流暢 (りゅうちょう) だけど、政局の見極めも甘く、素人っぽい。

 それ以外の人たちも、
 ドクター・中松さんは、「発明家」 。
 宇都宮さんは、元 「弁護士」 。
 田母神さんは、元 「自衛官」 。
  
 みな、その道だけで十分活躍の場が保証された肩書付きの人かもしれないが、根っからの政治のプロというのは一人もいない。

 大丈夫なのかなぁ、都知事選。
 東京都に在籍し、いちおう選挙権のある僕なんかは、今回の顔ぶれを見て、なんとなく気分が萎える。

 ま、辞任した猪瀬さんだって 「作家」 だったわけで、さらにいえば石原慎太郎さんだって 「作家」 なわけだし、大阪の橋下さんだって 「弁護士」 。
 知事というのは、政治のプロではない人が立候補をして、「政治家らしくない」 という “新鮮味” を理由に話題を集め、当選するものらしい。

 マスコミなどによると、今回の都知事選は、細川さんと小泉純一郎さんがタッグを組んで出馬することによって 「脱原発」 が主要テーマとして掲げられ、都民は 「脱原発」 か 「原発推薦」 かを問われる選挙になるという。

 そんなこと言われたってさぁ。
 今の都民のレベル …… というか、平均的な日本人の思考水準じゃ、にわかに答なんて出ないって。
 「脱原発」 といったって、「原発推進」 といったって、世界中の民が迷っている問題でさ。
 にわかに、「お前はどっちよ !! 」 って迫られたって、個人レベルで答が出るというような問題でもないしね。

 ひとつ言えることは、「脱原発」 を目指すのなら、「即 !! 原発停止」 にしないと意味がないだろうな、ということ。
 というのは、今の安倍政権が続く限り、原発稼働の動きは日増しに促進されていくだろうからだ。
 たぶん、次のオリンピックが東京で開催される頃というのは、日本の電力事情や産業構造は、もう 「原発抜き」 ではにっちもさっちもいかなくなっているだろう。

 そうなると、「原発は怖いと言ったって、電気が止まったら生活できないじゃん」 というのが、大多数の国民感情となる。
 たぶん、そうなったときには、「原発ゼロ」 という世論はもう盛り上がらないだろう。

 そういった意味で、小泉純一郎元首相が言っているように、
 「原発を、即廃止するという方針が固まれば、それに代わる電力事情を構築する企業がたくさん出て、原発ゼロを維持しながら成長していく社会ができあがる」
 というのは、ある意味、正しい。

 しかし、今の国民の中には、それを 「現実的ではない」 と判断する人がたくさんいるだろうな。
 原発ゼロの代わりとなる火力発電には、コストがかかるし、大気汚染も心配される。
 また、現段階における太陽光、風力などの自然エネルギーでは、いま供給されている電力などとてもまかなえきれないというのは、すでに常識。

 だから、「ゆくゆくは、原発ゼロを目指しながら、それに至るまでに、原発に代わる発電システムを軌道に乗せるか、もしくは原発の安全管理を徹底させる方法を確立する」 というのが、最大公約数としての意見であろう。

 だが、それは、「良識を保持しながら、 “現実問題” を直視している」 という自己弁護にすぎない。
 そう思い込んでおけば、まず、いま現在はややこしい問題に目をつぶることができるからだ。
 「未来の地球に住む人々のために、 “将来的には” 原発を廃止する」 という収まりのいい言葉で自分をごまかしながら、「まぁ、とりあえず目先の仕事や生活が大事」 という人にはうってつけの理屈だ。

 では、どうすればいい !?

 この問題に、答なんかないよ。
 原発に依存するのか、それとも廃止するのか。
 それぞれに、メリットとリスクがある。

 まず、「原発による発電は、コストが安い」 という説。
 これは、ある意味で詭弁。
 産業育成や成長戦略を重視する人は、よくそう言うけれど、そのコストには原発を維持するための “安全コスト” がまったく含まれていない。
 もし、地震や津波による事故が起きても、それを乗り越えるだけの安全性を備えた発電施設を造るとして、そのときは、どれくらいの規模の災害を考えればいいのか。
 それに対しては、まったく想像がつかない。
 机上の計算はいくらでもできるが、その計算だけで 「完璧」 といえるのか。
 専門家の話では、安全に運転するために、複雑な技術や防護設備建設のコストを計上すると、ベラボーに高いものになるという。

 もうひとつ。
 核廃棄物の貯蔵先に対する目処が何一つたっていない。
 現在、核廃棄物を処理す処置に関しては、その有効性がまだ世界のどこでも実証されていない。
 フィンランドの地下400mにある核廃棄物最終処理場 「オンカロ」 が、世界でも唯一のシステムだが、それは地震がなく、掘っても水が漏れにくい岩盤をもった地層に恵まれた地域での話にすぎない。

 しかし、これに関しては、異論を唱える専門家もいる。
 日本にも10万年動いていない地層はたくさんあって、核廃棄物の地層処分については、立地論的にも技術的にもすでにクリアされている、という話もあるのだ。

 今の技術なら、地下水の侵入を年間 1cm以下に抑えることも可能なのだとか。
 それに、「放射能は10万年経っても消えない」 というのは俗説で、だいたい3,000年も経てば、放射能の強度は100万分の1程度に落ちるという人もいる。
 
 技術の進歩は日進月歩だから、核廃棄物を安全に処理する技術は可能かもしれない。
 だけど、それにはいったい、どのくらいのコストがかかるものなのか。

 一方、重油を焚いたりする火力発電は、地球温暖化を促進すると同時に、化石燃料そのものの枯渇が問題になる時代では将来性が見えないとされてきた。
 しかし、これも近年頁岩 (シェール) 層から石油や天然ガスを採掘する技術が商品化されるようになり、可採埋蔵量が大幅に増えてきたといわている。
 
 かつてローマクラブは、1972年に 「石油の可採年数は、あと20年かもしれない」 と予測し、それがその後のエネルギー問題を考えるときの重要議題となっていたが、それから20年経った90年代においても、ついに 「枯渇する」 というニュースは世界のどこからも流れなかった。

 現在のI EA (国際エネルギー機関) の見解では、石油の可採埋蔵量は、5兆バレル、2世紀分に相当するという。

 世の中の常識はどんどん変わる。
 だから、「脱原発」 がいいのか、「原発推進」 がいいのか。
 そんなこと、誰にだって分かりゃしないよ。

 そうなると、今回の都知事選だって、議論の焦点なんかは原発問題なんかじゃないかもしれない。
 結局は、大局を見誤らない知事を選びたいところだけど、立候補者の中に、そういう人が見当たらないのだ。
 
 

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趣味人、学者、発明家 への2件のコメント

  1. クボトモ より:

    「大丈夫なのかなぁ都知事選」と
    対岸の火事を見ているような神奈川県民でございます。

    誰を選んだら都は良くなるのでしょう、ではなく、
    誰を選んだら最悪なのでしょう?という声が周囲では多いです。
    “明日の暮らしを賭けた理不尽なばば抜き”を強いられている様です。

    私も、原発問題をこの選挙の争点にするのは賛成できません。
    エネルギー問題に対する知識と展望がほとんど無い一般市民に、
    「どっちを支持しますか?」と問うことで都政を決めさせるなんて、
    また長続きしない知事を据えるだけになる予感がします。

    「世の中の常識はどんどん変わる。」
    私もそう思っています。
    エジソンが白熱電灯を灯してから100年程度でこの進歩。
    この先どうなるかなんて予測できませんね。
    ジュール・ベルヌじゃないんですから(笑)

    都知事選とは別に、今後のエネルギーを考える時、
    私は新エネルギーの発展に期待したい派です。
    問題の多い原子力発電に執着するよりも、
    自然エネやバイオマス、コジェネレーションのようなものが
    どんどん生み出される世界。
    そちらの方がワクワクするというだけなんですけれど(笑)

    • 町田 より:

      >クボトモさん、ようこそ
      おっしゃるように、今回の都知事選。ほんとうに “消去法” で選ばざるをえないという感じがいたします。

      原発によるエネルギー供給は、視点を変えればさまざまな見方が成り立つし、考えるべきファクターが多すぎて、そう簡単に答が出ないように思います。おそらく専門家だって 「これで良い」 という方向性を示すのは難しいのではないでしょうか。これは、「将来をどうするか ? 」 という問題であると同時に、人類がエネルギーをどう活用してきたのかという歴史の問題でもあるように感じます。
      ま、そうなっていくと、一種の神学論争になっていくようにも思えて、ますます簡単に答が出ませんね (笑) 。
       

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