今どきオバさんたちの消費パワー

 
 のどかな昼下がり。

 「たまには贅沢してみるか … 」
 というつもりで、高層ビルの上にあるレストラン街に行ってみた。
 窓の外から見下ろす景色がなかなか素晴らしい。
 
 

 その一角にあった、ちょっとハイグレードのレストランで昼飯を食い、食後のコーヒーを味わっていたときだ。
 後ろの席から、オバさん二人の話し声が聞こえてきた。

 「長男が家業を継いだけど苦労しているらしいから、マンションを買ってあげたの」
 「まぁ、優しい」
 「そうしたら、次男も黙っていなくてね、兄貴ばかり優遇されて不公平じゃないかと怒るので、仕方なく次男には家を買ってあげたのよ。
 次男は少し甘えん坊なの。長男にも次男にも結婚式には同じ 1千万円ずつ出してあげたのにね」

 うへ … 。
 どういう人たちなの ?
 と、窓の外を眺めるふりして、チラッと盗み見た。

 小奇麗な衣装で着飾った初老のオバさんたちだ。
 「子供たちにマンションを買った」 と豪語するオバさんの着ている服はシャネルで、脇に置いたバッグもエルメス バーキンだったりして、ちょっと山の手の令夫人を気取っている感じ。

 二人とも、年の頃は50代後半か60代はじめといったところか。
 気のおけない二人同士の会話らしく、あっけらかんと声がでかい。
 
 「娘もディズニーランドでアルバイトしていたけれど、ようやく就職が決まってね、キャビンアテンダントになったの」
 と、バーキンのオバさんが言う。

 「で、この前その娘が、 “お母さん、休みが取れたからヨーロッパ行かない ? ” っていうから、時間作ってあげてね、旅費も私が持ったの。
 音楽家を目指していたのに夢が破れた子だから、親が守ってあげないといけないと思ってね。
 で、娘と二人でお買い物いっぱいしちゃった。
 今はプラダでもフェラガモでも、みんな日本で手に入るけれど、やっぱり海外で買うと気分がいいわね」

 ふぅ~ん …… 。
 要は、お金持ちってことを自慢したいのかな ?
 コーヒーをすすりながら、後ろのオバさんたちの会話に聞き耳を立てる。

 「 … で、行ったのよ。モン・サンミシェルというところ」
 「どんなところ ? 」
 「お城よ。海の中に突き出たお城なのよ」
 「世界遺産になったところでしょ ? 」
 「 … かどうか知らないけれど、とにかく天気が良くてね、中に素敵なお店があって、お買い物いっぱいしちゃった」
 「そこって、昔は満潮になると、大陸から離れた孤島になっちゃうってとこでしょ ? 」
 「いいぇ !! きれいに舗装された道があったわよ。前日が雨だったけど、その日は晴れてくれて、もうほんとにラッキーだったの !! 」

 海外旅行の話は続く。
 
 「 … で、これでフランスは3度目。今度のお正月は、あまり贅沢はせずにハワイですますことにしたのね。
 子供たちも行きたいと言い出したから、次男とその嫁を連れていくの。
 ほら、次男の嫁はビンボーな家の出だから、けっこう次男に “あれが欲しい、これが欲しい” とせっつくわけ。
 だから、嫁もいっしょにハワイに連れていってあげれば、満足して次男に優しくしてくれるだろうと思ってね」

 うへ。
 親が親なら、子も子だな。 
 
 「でも、今はこうして海外旅行もたくさんできるようになって幸せ」
 と、バーキンオバさんの独演会が続いている。
 「それというのも、ほら東北の震災があったじゃない。それでうちの商品の受注がバァーっと入ってね、それでまた会社が好転しはじめたの」
 
 さすがに聞いている方のもう一人のオバさんは、その発言には沈黙を保っていたけれど、バーキンオバさん、次のようなセリフを吐く。

 「けっきょく何が幸いになるか分からないわよね。あの震災がなければ、うちの会社なんか傾いていたかもしれないのに」

 おいおい、「震災」 が 「幸い」 かよ。

 で、ようやくもう一人のオバさんが口を聞く。
 「家族みんなが幸せっていいことね。旦那さんにも感謝しなくちゃね」
 
 「そう見えるかもしれないけれど、私、これでも対人関係では苦労しているのよ。ほら、この前紹介した○○さん。
 あの人、ビンボーになっちゃったでしょ。だから私をやっかむこと、やっかむこと。
 ことあるごとに、自分は語学ができるとか、娘が東大を卒業しているとか、そんな自慢話ばっかりで、会話がみんな “上から目線” 。人に自慢できることしか言えないのよ。
 そんな話ばっかり聞かされると、もうストレスが溜まっちゃって溜まっちゃて。買い物でウサを晴らすしかないのよね」 

 やれやれ。  
 ま、そんな会話ばかり聞いていてもしょうがないと思い、そろそろ店を出ようと思ったところ、オバさんたちの方が先に席を立った。

 「さぁ、これから主人の晩ご飯の買い物しなくちゃ」
 と、バーキンオバさん、面倒臭そうにいう。
 
 「何を買うの ? 」
 「うん、スーパーでお惣菜をね。最近のお惣菜はみんな見栄えがいいから助かるわ。私盛り付けだけは上手だから、お惣菜をきれいな器に入れて食卓に出すと、主人も気づかないのよ。いちいち料理を作っていたら、私の買い物する時間がなくなっちゃうじゃない」

 あはは … 。
 見上げたオバさんだな。
 世の中の “好景気” といわれる気分は、こういうオバさんが作り出しているのだろうな。

 それにしても、「気分がよくても買い物」 、「むしゃくしゃしても買い物」 。
 ほかの楽しみは知らんのかのぉ。
 でも、それで日本経済が回っていくのならいいか。
 
 オバさんたちが、7,000円ほどの昼食代を払って出て行った後に、私は、1,200円の (自分としては豪華な) 定食代を払って店を後にした。
 
 
※ パワーのあるオバさんたちの話
 
「美魔女ブームで “バア高ジイ低” 」
   
「亭主を笑い飛ばす女房たち」
 
  

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