久保田麻琴 「遠い願い」

 
 今、ちょっとだけ … でも集中的に入れ込んでいるのが、久保田麻琴さんの音楽なんだ。
 YOU TUBE で偶然拾った 『遠い願い』 という曲が、実に良いのよ。

 それで、『星くず』 とか、『初夏の香り』 とか、 “久保田麻琴つながり” で、次々にYOU TUBEに出てくる曲をあさってみたけれど、なんかみんな良いんだよね。

 なんていうんだろ。
 「脱ハイテンション」 というか。
 のんびり、ほんわか、レイジー、レイドバック … なんて言葉が浮かんでくるんだけど、でも、決してゆるんでいないんだよね。
 脱力系の “締まった” 感じ ?? …… いやぁ、表現が難しいなァ。

 ま、1曲聞いてみて。

▼ 久保田麻琴 『遠い願い』

 この曲では、ドタドタっていう短いドラミングから、アコースティックなギターのイントロがかぶさり、それをくぐって、ズンタタ、ズンタタというけっこう重いドラムスがビートを刻み始めるのだけれど、もうこのドラムスが凄いのなんの !! 単純なビートなんだけど、すっごく深いの。

 つまり、 “タメ” があるんだよね。
 ズン … と沈んでから、… ンタ と跳ね上がってくるときに、もうとんでもない暗い深淵から、音が、光の世界を目指してグゥワ~と浮上してくる感じでさ。
 
 ちょっと日本人のドラムスじゃないんだよね。
 で、画像を見たら、髪の短い、頬のこけた外人のおじさんが叩いているじゃない ?
 あれ、どこかで見た顔だ、もしかして、この人ザ・バンドでドラムス叩いていたレヴォン・ヘルムじゃねぇ ?
 … と思って、あわててネットで情報を探したら、まぎれもないレヴォン・ヘルムなんだよね。

 俺、ザ・バンド好きだったからさ、このドラムスの音にはずっと昔からなじんでいたの。
 だから、「どおりで、ザ・バンドの匂いがするんだ」と、思ったわけ。
 何度も聞いているけど、やはりこの曲は、もうこのドラムスの存在感によって成り立っているような気がするのよ。 

 もちろん、曲そのものもいいけどね。
 これもネットで調べたんだけど、曲を作ったのは東京ローカルホンクの木下弦二さん。
 それを久保田麻琴さんがカバーしたらしいんだけど、その歌い方で、もう久保田さんがほんとうにこの歌を好きなんだな、ということが伝わってくるんだなぁ。

 メロディーは、日本的な哀愁の漂う昔のフォーク調なんだよね。
 でも、演奏全体から漂ってくる匂いは、まぎれもなく、ザ・バンドが追求していた、 “現実には存在しないアメリカのトラディッショナルソング” の雰囲気でさ。

 ザ・バンドっていう、バンドは … ややこしいなぁ …、アメリカのルーツ・ミュージックに憧れた “アメリカの異邦人たち” だからね。
 彼らのアメリカの音というのは、現実には存在しない 「理念のアメリカの音」 なんだけど、… だからこそ … というべきか、逆にすっごく 「アメリカ」 を感じさせるの。

 で、キーボードを担当しているのが、これもザ・バンドのガース・ハドソンなんだよ。
 途中で、アコーディオンを引き始めるオデコの出たヒゲオヤジさんがガース・ハドソン。

 この人も、ザ・バンドの音を作り出した中軸メンバーの一人でね。
 うれしいなぁ。久保田麻琴さんの交友網ってすごいな、と感心したわけ。

 俺さぁ、実は久保田麻琴さんって、昔から知ってたの。
 でも名前だけね。
 昔、中村とうようさんが編集する 『ニューミュージック・マガジン』 をよく読んでいたけれど、中村さんが好きだったんだろうね、久保田麻琴さんのこと。特集なんかもやっていたように思う。

 でも、久保田さんは、ラジオやテレビの歌番組なんかに出てくるような人じゃなかったから、俺、当時はどんな音楽をやる人か、まったく知らなかったんだよね。
 
 で、それから40年ぐらい経って、YOU TUBEでやっと聞いたわけ。
 「いいなぁ !! 」 と思ったけれど、昔聞いていたら、必ずしも、そう思わなかったかもしれない。俺の音楽の理解度も浅かったからね。
 今なら、久保田麻琴さんの良さが分かるのよ。

 『遠い願い』 という曲は、2000年になって久保田さんが出したソロ・アルバムの 『On The Boader』 に収録されている曲なんだよね。これもネット情報だけど、ニューヨーク州のウッドストック、ルイジアナ州のニューオリンズ、そしてヨコハマで録音されたらしい。
 録音地がどれだけ演奏に影響を与えるのか、自分には詳しく分からないのだけれど、なんか聞いていると、(そういう情報から来る先入観かもしれないけれど) 、アメリカの乾いた空気が伝わってくるような気がするんだな。
  
 
 で、最近この 『遠い願い』 といっしょによく聞いているのが、『ハワイ・チャンプルー』 (1975年) に収録されている 『South Of The Border (国境の南) 』 。

 歌自体は、フランク・シナトラなどがよく歌っていたスタンダード・ポピュラーナンバーで、村上春樹が 『国境の南、太陽の西』 でも取り上げていたやつね。

 彼の小説では、ナット・キング・コールが歌っていることになっているんだけど、音楽に詳しい人の話では、「キング・コールがこの歌を録音した事実はない」 とか、「いやぁ村上春樹は知ってたけど、文学的効果を狙ったんだろう」 … うんぬんかんぬん … てのがあるらしいんだけど、ま、そんな話はどうでもよくてさ。とりあえず 『South Of The Border (国境の南) 』 という言葉そのものが漂わすエキゾチックな雰囲気が気に入っているのね。
 で、曲を聞くと、さらに情景が広がるわけ。

 この久保田さんのバージョンは、フランク・シナトラなんかと違って、スチールギターなども入ったトロピカルなサウンドになっていて、まさに “国境を超えてサボテンとテキーラの国にいくぞ” って感じで、いいんだよね。

 訳詞は、わりと原曲に近いらしい。
 アメリカの旅行者が、メキシコに渡って、現地の女の子を誘惑しちゃう話。
 で、女の子の方はその気になっちゃうんだけど、旅行者の方はいっときのアバンチュール。
 「明日もまた来るね」
 とか調子良いこと言っちゃって、逃げちゃう男の話だけど、まぁ、いい加減で脳天気なアメリカ男の気分が歌われているわけね。

 昔は、こんなオヤジ臭い歌、あまり好きじゃなかったと思う。
 でも、今はこの歌の持つ甘くて、けだるい感じに、妙な異国情緒がくすぐられて、胸がざわつくんだよね。
 この夏は、けっこう聞いたな。
 
 
参考記事 「ザ・バンドの 『ザ・ウェイト』 」
 
参考記事 「アクロス・ザ・ボーダーライン」

参考記事 「国境の南 (ワイルドバンチの夢) 」
 
 

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