夢十夜 (2)

 
第4夜 見ているうちに形が変わる建物

 夢の話だ。
 私は、地下街から地上に上がった場所に立っている。

 目の前に、ネオンがきらめく繁華街の夜景が広がっている。

 正面に見えるビルのさらに後ろ側に、インドのヒンズー教の寺院のような建物が巨大な屋根を見せている。
 その屋根が、下からの強烈なライトに照らされて、毒々しいほど鮮やかに光り輝いている。
 まるで、大きな羽を広げて、周囲に金粉をまき散らす、南国の見知らぬチョウか蛾のような雰囲気だ。

 ふと気づくと、屋根自体が生き物のようにくねくねと首を振り回している。
 しかも首が回るごとに、建物の形が変わって、近代的な高層ビルになったり、宇宙人の乗る円盤のような形になる。

 それを見上げている二人の男たちが、
 「やっぱりこうしたら目立つようになったね」
 などと話し合っている。

 二人はパチンコ屋の関係者らしい。
 私は、その建物が、新装開店のパチンコ屋であることを理解する。
 
 
 
第5夜 中南米の古都に行く

 私は、登山者たちのグループに交じって、山の頂上に立っている。
 目の前に、銀色に光る山の峰が連なっている。

 見る者の居ずまいを正すような、荘厳にして厳粛な光景に、私は息を呑んでいる。 
 山の峰が、金属の反射板のような光りを放ち、空気が銀色に光り始める。
 
 美しい光景だが、まばゆい光の反射のため、目を開けていることが苦しいほどだ。

 ふと見ると、向こう側の山肌に、何本かの黒い影が走っている。
 見ているうちに、私たちの影だと気づく。

 自分たちの影とは知りつつも、太古の神々の立像にこちらが監視されているような気分だ。

 山頂からは登山電車が出ていて、まもなくそれに乗り込んで、町の観光に向かうことになっている。
 
 場面が変わって、町にいる。
 南米の古いインディオ文化が今も残された古都 (マチュピチュとかクスコなのだろうか ? ) … だという。

 岩をくり抜いた町並みが続き、迷路のように入り組んだ道路がその奥まで伸びている。
 その岩が透明なので、遠くまでくっきり見渡せる。
 周囲には、ガラスを連ねたような飾り物を売っている店が果てしなく続いている。

 しかし、人の影は見えない。
 ふと気付くと、私の仲間たちの姿も見えない。

 出口はどちらなのだろう。
 このまま死ぬまでさまよい続けるような気がして、ようやく出口を探し始める。
 
 
 
第6夜 自転車に乗ったまま橋から落下する

 友人の漕ぐ自転車の後ろに乗せてもらって、田舎の夜道を走っている。

 漕いでいる友人が、はたしていつの時代に付き合った人間なのかは分からない。たぶん実生活上では会ったことのない、夢の中にだけ登場する人物なのだろう。

 その人間とどこかにラーメンを食べに行くという状況であったと思う。

 光源が定かでない光が私たちの周囲を照らし、夜なのに、道の彼方がはっきりと見通せる。
 小砂利の混じったデコボコ道がどこまでも続いていて、道路脇には木製の電信柱が並んでいる。

 不意に舗装された道に出る。

 前方に人が立っている。
 子供のようだ。
 頭が五分刈りぐらいのずんぐりした体躯をしている。
 
 その子供がいきなり両手を広げて通せんぼをする。

 自転車を漕いでいた友人が、あわててハンドルを右に切る。

 次の瞬間、体がフワっと宙に浮いた。
 舗装された道だと思ったのは橋だったのだ。
 欄干がないために、そのまま外に飛び出してしまったわけだ。

 下を見ると4階建てのビルぐらいの高度がある。地面はコンクリートで固められた道路のようだ。これは助からないな … と思う。

 しかし、ふと前方を見ると木がある。
 その木につかまることができれば助かる可能性も生まれてくる。
 木の枝をつかめなくても、枝と葉がクッションになれば、まだコンクリートの上に直接落下するよりましかもしれない。

 そう判断して、自転車を漕いでいる友人に 「あの木を目指して!」 と叫んだところで、目が覚める。

 体が宙に浮く感覚や、落ちる先の地面を観察したときの映像があまりにもリアルなので、目が覚めてからもはっきりした記憶として残る。

 それにしても、夢には現実世界で知っている人間と、まったく知らない人間が出てくる。
 知らない人間たちは、いったいどこから来るのだろう。
 目が醒めると、いつもそのことを不思議に思う。
 
 
夢十夜 (1)
   
 

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