風鈴の音はほんとうに涼しいのか

 
 夏の暑さを乗り切るために、昔から日本には、さまざまな伝統的風習がある。
 打ち水を撒くとか、かき氷を食べるなどというのも、その一つ。

 ま、そのへんは物理的・科学的根拠がすぐ理解できるが、たとえば 「風鈴の音を聞いたり、怪談話を聞くと涼しくなる」 というのは、はたして科学的な根拠があるのだろうか。
 
 実は、それをテレビのワイドショーで実験をしていた。
 30代、40代、50代、60代の男女4人を被験者にして、まず風鈴の音を10分間聞かせる。
 次に、落語家をスタジオに招き、怖い話を10分聞かせる。
 そして、サーモグラフィーを使って、被験者たちの人体の熱分布を調べたのだ。

 まず風鈴の音を聞かせる前と、聞かせた後の人体の熱分布を測ったところ、個人差が出たが、だいたい2~3度ほど体熱が下がるという結果が出た。

 スタジオに招かれた専門家の説明によると、日本人の感覚には、 “風鈴の音は涼しいものだ” という刷り込みがあって、風鈴の音が耳から入ると、日本人の脳は、体全体に 「涼しいぞ」 という信号を送るのだとか。
 解説した専門家は、もう少し科学的な言い回しを使っていたけれど、私の粗雑な頭で再現すると、ま、そんなところだ。

 次に行われたのは、
 「怪談のような怖い話を聞くと涼しくなるというのは本当か ? 」
 という実験。

 この実験でも、やはり被験者たちの体熱分布図では、身体の中心部が2~3度ほど低くなった。

 これはどういうことかというと、人間は恐怖を感じると、腕や脚の部分に血液が集中するからだそうだ。
 つまり、怖い目に遭うと、人間はまず本能的に逃げる準備をするために、身体全体に回っていた血液が腕と脚に集中して、すぐ走れる状態になるのだという。
 この四肢に回っていく血液が体の中心部の熱を奪っていくために、胸、背中などが涼しさを感じるようになるとか。
 「背筋が寒くなる」 というのは、そういう状態を指す言葉なのだろう。

 ただ、この実験でも、個人差が出た。
 たまたまかもしれないが、30代の人は、 “風鈴テスト” でも、 “怪談テスト” でも、あまり体熱が下がらず、高齢者の方が予想どおりの反応を示した。

 専門家がいうには、「疑り深い人には、あまり効果が現れない」 とのこと。
 つまり、「風鈴の音で涼しさを感じるなんて、錯覚だろう」 とか最初から疑っている人には効果が出ないのだという。

 聞いていて、「そうかもしれない」 とも思ったが、もしかしたら、そこには世代の差みたいなものも関係しているかもしれない。

 つまり、夏には窓を開け放ち、戸外の風で涼をとっていた 「エアコン世代」 と、密閉した空間に身を置き、空調のコントロールで涼をとることを覚えた 「エアコン世代」 とでは、風鈴に対する感受性に違うということだ。

 エアコンの冷風で暑さをしのぐことを覚えた 「エアコン世代」 には、たぶん 「風鈴が涼しい」 という刷り込みが希薄になっているのではなかろうか。

 数年前のテレビで、「風鈴の音がうるさい」 と感じた人が、隣の風鈴を撤去させたという隣人トラブルの例が紹介されていた。
 確かに、「風鈴という文化」 に無縁な人にとって、あの金属がリンリンと鳴る音は “雑音” 以外のなにものでもないかもしれない。
 
 うちのカミさんなんかは、昔、受験勉強の最中に庭のセミが鳴き始めると、気持ちが集中できないといって、セミの止まっている木にホースの水をかけて、セミを追い払ったという。
 ろくな受験勉強もしたこともない私には、その感覚が分からない。
 セミの鳴き声なんて、いかに夏らしくて素敵だと思うのに。

 音の好みは千差万別。
 誰にとっても、「好もしい音」 と 「不快な音」 がある。 
 自分の基準で、他人の好みを判断してはいけない。

 でも、「風鈴の音を雑音として捉える」 という感覚には、ちょっとさびしさを覚える。
 あくまでも、個人的な感慨にすぎないが。

 私からすれば、それは 「想像力の欠如」 だ。
 つまり、 “頭の中に風を吹かせる” というイメージを思い浮かべられない人。
 
 「自分の基準で、他人の好みを判断してはいけない」
 と言っておきながら、傲慢に断定しちゃうけどね。
 
 

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風鈴の音はほんとうに涼しいのか への2件のコメント

  1. スパンキー より:

    ブログの下書きに風鈴のこと書いていまして、

    町田さんのコレ読んで、驚きましたよ。お互い、

    連休の中日に考えそうな事柄なんですかね?

    年いっている人は、割とみな風鈴好きですよね。

    情緒ありますし。が、近所に一年中風鈴をぶら下げている家がありまして、

    これって真冬に聞くとイラッとします。よけい寒いし…

    でですね、いまの若い人はね、風鈴とかのこの「粋」な風情が分からないのですかね。

    こうした細かい感覚が、世界のグローバル化のなかで、日本人として逆に活きるように思うのですが…

    まっ、これも自分勝手な私の基準ですがね。

    • 町田 より:

      >スパンキーさん、ようこそ
      猛暑が続く夏の昼下がり、「涼しい風でも来ないかな」 と思うとき、誰もが風鈴のことを思うのでしょうかね。
      風と風鈴は相性がいいですから。

      でも、「音」 の好みは人によって千差万別。
      また、時と場合によっても、感じ方が異なります。
      真冬の風鈴には、本当にイラッとしますよね。

      確かに風鈴の音は 「粋」 ですが、その風鈴が日常生活の中から遠ざかっていれば、そこに風情を感じることもないかもしれません。

      でも、この日本の文化は絶やしたくないとは思います。
       

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