ものを作るということは “想い” を込めること

  
カトーモーター 加藤社長インタビュー Ⅱ
 
【町田】 キャンピングカーメイカー 「カトーモーター」 の開発するキャンピングカーが、どのようなものであるのか、かつてお話をうかがって、このblogでも紹介させていただいたことがあります ( → 「カトーモーター 加藤社長インタビュー」 ) 。
 今回は、1人の経営者として、加藤さんが考えていらっしゃる企業理念のようなものをお聞かせ願えれば … と思っています。
 その場合、どうしても、その会社の伝統とか、歴史のようなものは外せないと思いますが、まず御社の歴史はどのくらいなのでしょうか ?
 
 ▼ カトーモーター 加藤社長
 

【加藤】 創業は先代からで、60年を迎えようとしていますが、キャンピングカー中心の業務を始めたのは私の代からで、それでももう30年ぐらいになりますかね。
 だから、社員のなかには、かなりのベテランがいます。製作の方ではもう70歳ぐらいの人が3人おりますね。
 営業の方でも10年選手が何人もいて、安定した力を発揮してくれています。
 そういった意味で、社員とのコンセンサスは取れているので、 “企業理念” といった硬いことをことさら強調しなくても (笑)、自然に会社が回転しているという状況ですね。

【町田】 どのように “自然に回転” しているのか、まずそのへんを (笑) 。

【加藤】 キャンピングカーショーの展示会などでも、うちのブースに寄られた客様から、よく 「ここのブースは何だか雰囲気がいいね」 、「落ち着けるね」 、「温かい感じがするね」 などというお言葉を頂くことが多いんですよ。
 その理由には、クルマそのものが醸し出す雰囲気と、クルマの配置も含めたディスプレイなど、さまざまなものがあるでしょうけれど、基本的には、「人」 だと思うんですね。
 押し付けがましくなく、それでいて、優しく、ウエルカムな雰囲気を醸し出す …。スタッフたちのそういう態度が評価されているのかな、と思います。
 つまり 「人に優しくあれ」 。
 そういう接客姿勢が、うちのスタッフはできているのかな、と思っています。

【町田】 そういうものを 「自然に出す」 というのは、案外むずかしいことかもしれませんね。

【加藤】 そうなんですね。つまり “バランスの良い余裕” がないと生まれないんですね。「どうしても、このイベントで1件でも成約を取りたい ! 」 という姿勢が前面に出すぎると、気後れした来場者は引いてしまう。
 それよりも、「ゆっくりとくつろいで行ってください」 … ぐらいの方が、クルマをしっかり見てもらえる。
 では、スタッフのそういう余裕はどこから生まれてくるのか。
 それこそ、「黙っていても、その良さが伝わる商品」 を持っているとか、買っていただいたお客様には万全なサービス体制を構築しているとか、そういういろいろなバックヤードに自信を持っているところから生まれてくるように感じます。
 つまり、目に見えないところの開発力、技術力の厚み。また社員の経験値。そういった総合的な裏付けがないと、余裕というものは生まれないと思うんですよね。

 ▼ カトーモーター社屋&スタッフ
 

【町田】 なるほどね。激化する競争社会のなかで、その “渦” に巻き込まれてしまうと、その余裕も失われるということですね。

【加藤】 企業経営を続けるかぎり、競争社会のなかで生き延びていかなければならないのは当然のことなんですが、もしその “競争社会” がすごく苦しいと感じられるようであったなら、それは無理な 「拡大路線」 を取ろうとしているからではないでしょうか。
 いまは 「グローバル経済の時代」 といわれて、企業も、商品も国を超えて拡大の一途をたどろうとしていますよね。
 でも、規模を拡大していった先に何があるのか ?
 その先には、「苦しさ」 も待っているということなんですよ。

【町田】 どういうことでしょう ?

「拡大路線」 だけが正しいとはかぎらない

【加藤】 たとえば、今まで “10の市場” があるとしますね。それを自社の頑張りで “100の市場” にまで広げたとしますよね。
 そのときに、儲けは10倍になっているかというと、けっしてそうはならないんです。
 多少の売り上げは伸びるでしょうけれど、広がった市場を目当てに参入してくる新規のライバルも増えるだろから、激戦が始まる。
 売るためにはコスト削減を行って、売価を落とさなければならないときもある。そのためには、経営者も社員も不眠不休で頑張らなければならなくなる。アフターサービスに費やす作業量も当然増えるわけですから。
 それでも、商品が売れているうちはいいですけど、やがてモノが溢れ、市場そのものが冷え込むかもしれない。
 つまり、拡大路線をとると、いっときはものすごい勢いで成長しますけれど、苦しみも大きくなるんですね。
 もともと “10の規模” の会社が現状を維持するよりも、 “100の規模” まで広がった企業の方がより苦しいのではないでしょうか。

【町田】 そういえば、グローバル企業といっても、その栄枯盛衰は激しいですね。

【加藤】 そうでしょ。日本の家電は世界ナンバーワンでしたけれど、そのうち韓国のサムスンなどに抜かれ、見える影もなくなってしまいましたよね。しかし、今度はそのサムスンが厳しくなっている。
規模が世界的になればなるほど、為替などの影響で一夜にして逆風が吹く。
 拡大路線というのは、それだけリスクも大きいというわけですね。

 ▼ カトーモーター 「DD」
 

【町田】 では、どの程度の成長がいいのか。もちろん企業によっても違いますし、商品の性格によっても異なるでしょうけれど、加藤さんが理想とされるところは ?

【加藤】 私は、自分の会社のことしか分かりませんけれど、成長の度合いを社員数で測るとすれば、社員規模が、 “数十人” といったところでしょうか。
 それ以上になると、社長の意を汲んで動いてくれる社員を把握できなくなるように思います。
 もちろん大企業ともなれば、社員の個々のモチベーションなどを管理するためのシステム化を進めることになるわけですが、私の会社の場合は、システムを構築するよりも、「人間」 としての付き合いを通じて、社員とモチベーションを高めあっていきたいと考えているんです。

【町田】 “数十人” という意味は、キャンピングカー産業において … という意味ですか ?

【加藤】 いえいえ、別にキャンピングカーに限らないですけど、それぐらいの規模の方が自分にとって楽しいし、社員の自発性、自主性を引き出しやすいように思います。
 むろん、個別セクションのリーダーやそれを支える人たちの器、能力を活用して、何十倍、何百倍の仕事をやってのける人もいらっしゃいますよね。
 しかし、大企業の場合は、会社規模が大きくなればなるほど、ピラミッド構造のヒエラルキーが固まってしまい、下の方で働いている若い人たちの意見や企画力がストレートに上に上がりづらくなってくる。
 特に大企業になればなるほど、役員たちのなかには関連企業の天下りのような人たちも増えますから、保守的になりやすい。
 そうなると、独創的なアイデアとか冒険的な企画が上に上がりづらくなってきますよね。

【町田】 つまり、社長が個々の社員を把握できるぐらいの規模が、加藤さんの場合は理想的というわけですね。

【加藤】 そう。けっきょく、キャンピングカーというのは、私にとっては 「夢を売る」 商売ですから、やはり 「人の心に届く」 ということが大事だと思っています。
 もちろんそれは、社長だけが考えていればいい問題ではなくて、社員の一人ひとりに持ち続けてほしい課題ですよね。
 では、何をすれば、「人の心に届く」 のか。
 それは、「想いを込めたものを作る」 ということに尽きると思います。これは簡単なことでなはく、終わりのないテーマです。
 “作る” という言葉を使いましたが、何もそれはキャンピングカーを製作することだけを意味しているのではなく、販売したり、サービスするという意味も全部含めてですね。

 ▼ カトーモーター 「エースリーパー」

人の共鳴を誘うものは作り手の 「想い」

【加藤】 「想いを込めたもの」 を作ったときというのは、必ずその想いに共鳴してくれる人が生まれるんですよ。世界中に。
 それは、百人か、千人か、1万人かは分からない。
 しかし、想いの強さが、強ければ強いほど、共鳴してくれる人が増えます。
 たとえば、新しいキャンピングカーの塗装色に、それまでグレーを使っていたところにオレンジを使うとしましょうか。そのアイデアを考えた人は、そこにどんな想いを秘めたのか。
 そこに確固たる信念や誠意があれば、それは必ず相手に通じます。共鳴してくれる人が現れるものなんです。
 単にマーケティングで、「オレンジ色の商品の売上率が高い」 などと学んで実施しただけでは、 “想い” は込められない。
 「これがいいんだ ! 分かってくれる人がいるはずだ」 という “祈り” のようなものが必要となるわけです。

【町田】 なるほど。大事なことですね。

【加藤】 だからお客様にお手紙を書くときでも、想いを込める。文章や文字が下手でも、とにかく想いを込める。
 それは絶対相手に通じます。
 たとえば、ある会社の損益が出たとしましょうか。ときにトントンだったり、微増だったり、あるいは利益が減少してしまったりするかもしれない。
 しかし、それは致命的な判断ミスがあったり、特別にサボったりしないかぎり、その状態が自然なところに落ち着いた状態なんですね。トントンだったり微増だったとしたら、それは努力している方なんです。
 そして、そこから先、さらに売上を伸ばしていけるかどうかは、もう 「想い」 があるかないかにかかってくる。

【町田】 その社員の 「想い」 を維持させるためには、会社としての適正規模があるということですね。

【加藤】 そうですね。だから、うちの場合は、たとえば納車のときに、お客様の結婚式とか誕生日という記念日と重なるようだったら、何万円くらいならお金を使っていいから、自分で考えて、お客様が喜ぶようなことをしてあげてもいいよと言っています。
 それは 「システム」 の問題ではなく、「何が相手に喜んでもらえるか」 というスタッフの感受性の問題。
 そういう感受性を養えるかどうか。
 会社規模が大きくなりすぎると、それがシステム化されて、ルーティンワークとなる。そこでは 「想い」 が生まれないように感じます。

 ▼ カトーモーター 「アジアン」

何ごともバランスが大事

【町田】 それは、車両開発とか、車両の製作にも通じるものですよね。

【加藤】 そう。うちは一つのクルマを製作するにも、膨大な手間と時間をかけて臨んでいます。もちろん生産効率もしっかり計算していますよ。
 しかし、キャンピングカーというのは、手間と時間をかけて作るものであっていいと思っているんです。
 なぜなら、それが 「想い」 だから。
 だから、中古車を売るときも、まず家具を全部下ろして、裸にして、掃除して、内装下地をもう一回作り直すなどということも、よく行います。作業しながらスタッフといっしょに、「これもう “新車” だよね」 などとよく笑う (笑) 。
 でも、そうやって他社の中古車でも、うちで出すかぎり、お客様に安心して気持よく乗ってもらいたい。
 そういう気持ちは絶対に通じます。そしてそれが 「ブランド」 になる。そう信じています。ブランドというのは、「信用」 のことだから。

【町田】 製造業というのは、生産効率をあげていくことが至上命題になると思っていたのですが、カトーモーターさんの場合は、それだけではないんですね。

【加藤】 ええ。要は 「バランス」 が肝心。生産効率を上げることは当然大事なことですけれど、それによって商品のクオリティが保証されないようでしたら、それは行き過ぎ。
 孔子の教えに 「中庸の徳」 という言葉がありますけれど、「これ以上行くと、行き過ぎになる」 という大事なポイントを経営者は見極めておかなければならないと思います。
 屏風 (びょうぶ) は、縮めると倒れるし、広げすぎても倒れる。
 だから、適切なバランスを保って屏風を広げ置かなければならない。それが商売の基本だと、私は思っているんですけどね。

【町田】 またひとつ勉強になりました。どうもありがとうございました。 

【加藤】 いえいえこちらこそ。ありがとうございました。  
  
カトーモーター HP → http://www.katomotor.co.jp/  
  
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