ノット・マイ・ベイビー

 
 1964年にキャロル・キングが作った 『オー・ノー・ノット・マイ・ベイビー (Oh No、Not My Baby ) という曲がある。
 まだ、キャロル・キングがソング・ライターとして活躍していた時代の曲だ。

 後に、『つづれおり』 (TAPESTRY = 1971年) で、シンガーとしても確固たる地位を築き上げたキャロルだが、それまではジーン・ピットニー、ボビー・ヴィー、アレサ・フランクリン、ザ・モンキーズといったメジャーミュージシャンに曲を提供する有能なライターであった。
 彼女は、R&B系の曲にも優れた才能を発揮し、有名なところではリトル・エヴァの歌った 『ロコモーション』 (1962年) や、アレサ・フランクリンの 『ナチュラル・ウーマン』 (1967年) という大ヒット曲がある。

▼ キャロル・キング

 『オー・ノー・ノット・マイ・ベイビー』 は、そのキャロル・キングが1964年に、R&Bシンガーのマキシン・ブラウンに提供した曲で、同年から65年にかけて、「全米トップ40」 の24位あたりまで登った。

▼ マキシン・ブラウン

 必ずしも “大ヒット” とは言いがたい。
 ましてや、当時の日本ではほとんど知られなかった曲であると思う。
 それは、歌手のマキシン・ブラウンの知名度が日本ではあまりなかったこととも関係するが、しかしこの曲は、後になって、じわじわと人々の心に浸透していくことになる。
 マキシン・ブラウン以外のさまざまな歌手に気に入られ、数多くのカバーが出回るようになったからだ。
 有名なところでは、ロッド・スチュワート、リンダ・ロンシュタット、アレサ・フランクリン、ダスティ・スプリングフィールドなどがカバーしているし、何よりも歌を作ったキャロル・キング自身が、1980年と2001年の 2度にわたって、自分のアルバムに収録している。

 名曲といっていい。
 ほのかな哀愁を込めた美しい旋律を持つ曲で、歌い手の感情移入によって、いかようにも変化する奥行きの深さがある。 
 だから、最初に歌ったマキシン・ブラウンの歌がポップ・ソング調の明るさと軽さを持っているとしたら、作者キャロルの歌はしっとりとした叙情性を帯びた枯れたバラードの響きを持つ。

 しかし、私がいちばん好きなのはメリー・クレイトンの歌った 『ノット・マイ・ベイビー』 なのだ。
 なぜかというと、彼女の歌が、私のいちばん好きなR&Bのテイストを色濃く持っているからだ。

 もともと、この曲は、キャロル・キングがR&B歌手のマキシン・ブラウンに歌を提供するために書いたものだから、そもそもR&Bとして作られている。
 まさに、R&Bのバラードとはこういうふうに作られるべきだ、という完璧なフォーマットにのっとって作られた曲のように思えるのだ。

 ただ、マキシン・ブラウンのバージョンは、当時のアメリカン・ポップスシーンの流れにのったものであり、白人マーケットを意識したこともあって、アレンジなどの作りが軽い。

 それに比べ、メリー・クレイトンのバージョンは、「これぞSOUL MUSIC ! 」 といわんばかりのディープな味わいがある。
 マキシン・ブラウンの曲がメイプルシロップをふりかけたホットケーキのようなものだとしたら、メリー・クレイトン仕様は、苦味の効いた高級ブラックチョコレートのように思える。

▼ メリー・クレイトン

 
 それが、キャロル・キングの歌になると、繊細に作られた上品な和菓子という感じ。派手さはないけれど、いろいろな甘みを経験した大人にしか味わえないような深さが漂ってくる。
 
 また、ロッド・スチュワートが歌うと、これまた黒っぽい … つまりR&B風味が濃厚に流れだす。だから、(R&Bの好きな私としては) 個人的に、このバージョンも好き。
 
▼ ロッド・スチュワート
 

 あまり知られていない曲かもしれない。
 でも、1年の終わりを迎える季節の静かな午後には、こういう曲が心にしみる。
  
 
▼ メリー・クレイトンの 「Oh No、Not My Baby」

▼ マキシン・ブラウンの 「Oh No、Not My Baby」

▼ キャロル・キングの 「Oh No、Not My Baby」

▼ ロッド・スチュワートの 「Oh No、Not My Baby」

他に、Linda Ronstadt、The Partridge Family、Cher、Aretha Franklin、Dusty Springfield、The Shireilles、Manfred Mann、Fontella Bass、The Sensations などのバージョンがYOU TUBEで見られる。
 
 

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