男の顔 (ジミー・ペイジとジミ・ヘンドリックスの顔)

 
 今週号の 『AERA』 (2012年12月3日号) を手にとってみたけれど、表紙を飾った男の顔に見覚えがなかった。
 

 
 気にもとめず、インデックスのページを開いて、表紙の男性がジミー・ペイジであることを知った。
 
 なんという変わりよう !
 これが、1970年代のロック世界に君臨した王者の “46年後の顔” だったとは。
 
 レッド・ツェッペリンのリーダーであり、伝説的なギタリスト、作曲家、プロデューサーとして知られたジミー・ペイジ。
 私たちの世代で、ロックに興味を持っていた人はもちろん、興味のなかった人も含めて、下のような写真を見なかった人はいなかったと思う。
 

 
 右から 2人目が、そのジミー・ペイジ。
 若い頃にギターに目覚め、バンドを組んだりした中高年の中には、いまだに彼を “神様” として崇めている人も少なくないはず。
 もちろん、彼が率いたレッド・ツェッペリンの “音” は、20代になったばかりの私の心に落雷のような衝撃を残している。
 
 私は、その前のビートルズやローリング・ストーンズの時代の子だったが、今の世でいう 「ロック」 らしい音を最初に聞いたのは、このツェッペリンからだった。
 
 大げさにいえば、「ロックの創始者であり、完成者」 だったかもしれない。
 しかし、68歳になったジミー・ペイジの顔からは、「ROCK」 の文字が消えているような気もする。
 
 もちろん、 “いい顔” である。
 成功者の顔だ。
 品格もあり、強さもあり、穏やかさもあり、… 要するに、いい人生を送ってきたという豊かさが 「顔」 に表れている。
 美青年だった若い頃 (右) の写真と比べてみても、今の方が風格があるようにも思う。
 

 
 しかし、この顔には、「ROCK」 がない。
 これは、大成したビジネスマンの顔か、功成り名を上げた医者か弁護士の顔か、殿堂入りして 「大家」 と呼ばれるようになった芸術の顔だ。
 
 晩年、こういう表情を保てる人間は、幸せ者である。
 たとえ、実生活にどのような懊悩を抱えているにせよ、これは 「幸せ者」 の顔である。

▼ 「ロックの冒険者」 というよりも、今や 「ロックビジネスの成功者」 という風格を持つジミー・ペイジ
 

 このジミー・ペイジの現在の顔を見て、ふともう一つの顔を思い出す。
 

 
 こちら名も 「ジミ」 。
 たぶん、こっちのジミは、ジミー・ペイジのような教養も、戦略眼も、ビジネス感覚もなかったに違いない。
 写真だけ見ても、粗野でワイルドな “野人” の風貌を伝えてくる。
 
 だが、この顔には 「ROCK (狂気) 」 がある。
 そして、この男は、ジミー・ペイジのような “晩年に備わる風格” を持つことなく、この顔のまま死んでいった。
 彼の残した “音” は、まさに彼の風貌と同じく、不定形で暴力的な混沌に満ちたものでしかなかった。
 だが、私にとっては、それが 「ロック」 なのだ。
 

 
 このワイルドな野人の相貌を持った男の名は、ジミ・ヘンドリックス。
 68歳のジミー・ペイジに比べ、わずかその2年前に生まれたジミ・ヘンドリックスの人生は、ジミー・ペイジの半分にも満たなかった。
 ポップスという若者音楽からロックという異端児が生まれ、それがようやく世間的にも広まりつつあるさなかの1970年に、彼は27歳の生涯を閉じている。
 
 だから、ジミ・ヘンドリックスは、ジミー・ペイジたちの業績が評価され、ロックが若者音楽の主流となり、巨大なビジネスにまで成長していった世界を知らない。
 
 そして、ロックの未来を予言する “シャーマン” のような存在であった彼が、そのままロックの世界を生き続けたとしたら、その後のロックがどういう形をとっていったのか、それは誰にも分からない。
 
 もっとハチャメチャなものになっていったかもしれない。
 あるいは、もっと知的で冒険的なものになっていったかもしれない。
 答は誰にも出せない。
 
 もしかしたら、「レジェンド (伝説) 」 というのは、その答を誰も出せないという一種の “空白“ から生まれるものではなかろうか。
 夭逝した人間が、しばしば高貴な 「レジェンド」 のベールに包まれるのは、誰にも答を見出すことのできない巨大な 「空白」 が、それを満たそうとする人々の心を吸い込もうとするからだ。
 ブラックホールのように。
 
 そして、その 「空白」 を満たそうとする衝動のことを、人々は 「ロック」 というのだ。
 
 ロックが 「空白」 を抱え込むのは、それが永遠に未完の音楽だからだ。
 68歳のジミー・ペイジの顔から 「ロック」 が消えてしまったのは、彼が、まがりなりにも、ロックを完成させてしまったからかもしれない。
 
 ロックを完成させたジミー・ペイジは、米国 『ローリング・ストーンズ』 誌が行なう 「歴史上最も偉大な100人のギタリスト」 では、2011年に 3位にまで上り詰めたが、自分のロックを未完のまま放置して逝ったジミ・ヘンドリックスは、あいかわらずその上を行く 1位に輝き続けている。

▼ Led Zeppelin 「How Many More Times」 (from YOU TUBE)
  一番好きだった頃のツェッペリンの音

▼ Jimi Hendrix 「Foxy Lady」 (from YOU TUBE)
昔、新宿のディスコでよく踊った曲

 
 
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参考記事 「吉祥寺ビーバップ (Be Bop) 」
 
参考記事 「キツネ目の女 (フォクシー・レディ)」 
  

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男の顔 (ジミー・ペイジとジミ・ヘンドリックスの顔) への2件のコメント

  1. オクラの花 より:

    何日か前の「胸キュン美女図鑑」をみていて、
    「やっぱり女の趣味はいろいろさまざまだなぁ~」
    「自分とは全く重なる部分がなくて、町田さんとは争うところがなくて・・??」
    なんて思っていたところ、ジミー・ペイジですか!

    いつも楽しく拝見させていただいております。

    昭和26年生まれなんですが、やはり高1か高2の時にZepの1stのGood times Bad times
    にはやられましたね。いまでも大好きなんです、幼いなぁ~ ←自分
    同年代の方が語られるROCKのお話になると何かワクワクしてきます。

    もっと、ZepやHendrixの話、聞きたいですね。
    よろしくお願いします!

    • 町田 より:

      >オクラの花さん、ようこそ
      昭和26年生まれというと、ほぼ私と同世代ですね。
      やはり、こういう話題に関心を持っていただけるというのは、心強い限りです。
      ツェッペリンの「Good times Bad times」 。
      確かに、A面の1曲めから、いきなりこれを聞かされたとき、頭の中に 「雷が落ちた」 ような衝撃を受けました。
      あの “ガンガン” っていうギターのカッティングは、ベートーベンの 『運命』 の “ジャジャジャジャーン” に匹敵するくらいの名フレーズだと思います。

      >> 「美女の好みが重ならない」
      そうですか。
      争うことがなくて、こちらもホッとしています ! (笑) 。
       

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