キャンピングカーに乗る人はどんな人たちか ?

 
 「お宅で売っている一番高いキャンピングカーを持ってきてくれ」
 
 キャンピングカー販売店のスタッフたちが、お客さんからそんな注文を受けていた時代があったらしい。
 言わずと知れた “バブル” 真っ盛りの時代だ。
 
 「どのようなレイアウトのお車をご希望でしょうか ? 」
 「レイアウト ? 何でもいいから、とにかく一番高くて、一番豪華なやつね」
 
 日本に外国製のキャンピングカーがぽつりぽつりと導入されるようになった1980年代。キャンピングカーはリッチな人々のステータス性を誇示できる格好のアイテムだったようである。
 その時代には、先に述べたような、今では笑い話となるようなオーダーをするお客さんも実際にいたらしい。
 
 当時は国産車を開発するビルダーはほとんどなく、キャンピングカーに関心を持ち始めた庶民は、ハンドメイドで自分の乗るキャンピングカーを作るしかなかった。
 もちろん、外国のプロが手がける立派なキャンピングカーを手に入れることは、庶民にとっては、夢のまた夢。
 それを買える人たちは、芸能人か、商売で儲かっている企業経営者といった、ごく限られた人でしかなく、「キャンピングカーを持っている」 ということは、成功した人間の証 (あかし) であったという。
 そのため、一部の顧客にとっては、キャンピングカーは 「乗って使うモノ」 ではなく、「家の前に飾っておくモノ」 であった。
 
 今はもうこのような “思い出話” を語るキャンピングカー販売店のスタッフも少なくなった。
 時代が変わり、ユーザーも、販売店スタッフもすっかり様変わりしたからだ。
 
 そのような時代から30年過ぎて、キャンピングカーは一部のお金持ちのアイテムから、庶民のレジャーをサポートする普通のアイテムになっている。
 
 では、現在、キャンピングカーというのは、どのような人々が乗るクルマになっているのだろうか。
 
購入者の約4割はサラリーマン
 
 まず、「職業」 でいえば、その 4割は会社員だという。
 日本RV協会が発表した 『キャンピングカー白書2012』 によると、キャンピングカーユーザーの職業構成比率は次のようになっている。
 
 ① 会社員  (38.9%)
 ② 無職 = 定年による退職 (23.8%)
 ③ 会社役員 (11.5%)
 ④ 自営業  (11.5%)
 ⑤ 公務員  (10.3%)
 以下、「その他 = 団体職員、バイト・パート等」
  
 2番めの 「定年による退職」 と答えた人も含めると、その6割以上が普通のサラリーマン世帯であることが伝わってくる。要はキャンピングカーが 「一部の特別なお金持ちのクルマ」 というイメージからずいぶん遠ざかってきていることが分かる。

熟年層への浸透
 
 注目していいのは、定年退職者の比率が高まっていること。
 今回の23.8%という率は、2年前に行われた前回の調査時より、さらに4.4ポイント上昇しているという。
 これは、キャンピングカーユーザーのメインが、徐々に定年を迎えるぐらいのシニアユーザーに移行しているということを物語っている。
 
 ちなみに、キャンピングカーの世代別購入率を多い順に、以下に記す。
 
 ① 60歳代 (34.3%)
 ② 50歳代 (26.7%)
 ③ 40歳代 (26.0%)
 ④ 30歳代 ( 6.9%)
 ⑤ 70歳代 ( 5.3%)
 ⑥ 20歳代 ( 0.2%)
  
 増えているのは60歳代だけではなく、70歳代も前回調査より2.1ポイント上がっているとか。
 こうしてみると、40歳代から70歳代だけで全体の92.3%を占めることが分かる。
 
 キャンピングカー先進国の欧米においては、もうそうとう昔から、「キャンピングカーは、仕事に明け暮れていた人生をハッピーリタイアした人たちが “第二の人生” を楽しむクルマ」 という認識が浸透していたが、ようやく日本にもその傾向が生まれつつある様子が伝わってくる。
 
熟年ユーザーの目的は 「夫婦の二人旅」
 

 
 このユーザー層の特徴は、「夫婦の二人旅」 を楽しんでいるところにある。
 仕事も定年を迎え、子育ても無事に終えたシニア夫婦というのは、いわば、「第二の新婚時代」 を迎えたともいえる。
 そうなると、馬車馬のように働いてきた自分たちの人生を振り返って、お互いの労をねぎらうような気持ちも湧いてくるのだろう。
 それが、「キャンピングカーによる二人だけの気楽な旅」 がブームになっている理由かもしれない。
 
 それを裏付けるデータが 『キャンピングカー白書2012』 にある。
 同白書によれば、ユーザーがキャンピングカーを購入しようと思った動機を多い順に並べると、次のようなものになるという。
 
 ① 夫婦二人で旅行を楽しむため    (50.0%)
 ② ペット連れの旅行に最適と判断   (33.3%)
 ③ 子供とキャンプや旅行を楽しむため (31.2%)
 ④ テントキャンプでは不便と感じた   (23.6%)
 ⑤ 釣り、バイクなどの趣味を生かすため(15.5%)
 ※ 以上は複数回答による
 
 この 「購入動機」 のアンケート結果を裏付けるように、「キャンピングカー旅行における同行者」 を尋ねた結果も、同じようなものになった。
 
 ① 夫婦二人   (56.9%)
 ② 家族      (35.4%)
 ③ 単独=一人  ( 5.2%)
 ④ 友人・知人   ( 1.9%)
 
 この傾向は、ここ 4~5年同じように推移してきたが、1番の 「夫婦二人」 という答は、前回調査よりも 4ポイントアップ。逆に、子供を含めた 「家族」 は3.8ポイント下がっているという。
 これは、前回調査では家族連れで旅行していた人々が、いよいよ子育てを終了し、「夫婦の二人旅」 へとそのまま移行したことを物語っているといえよう。
 
世帯収入400万円未満の層にもキャンピングカーが普及
 
 今回の調査で面白いのは、ユーザーの 「世帯収入」 で大きな変化が起こったことである。
 具体的にいうと、調査開始以来トップを続けていた 「1,000万円以上」 という回答が2.7ポイントダウンの17.6%となって2番目に下がり、代わりに 「400万円未満」 という回答が4.0ポイントアップの19.4%となってトップに上がった。
 
 以下、世帯収入の少ない方から多い方へと、その比率を記してみる。
 
 ① 400万円未満  (19.4%)
 ② 400万円台   (10.2%)
 ③ 500万円台   (12.8%)
 ④ 600万円台   ( 9.8%)
 ⑤ 700万円台   ( 9.8%)
 ⑥ 800万円台   ( 9.5%)
 ⑦ 900万円台   ( 7.5%)
 ⑧ 1000万円以上 (17.6%)
 
 以上の数値を並べてみると、一見、キャンピングカー購入者の間で、収入格差が広がっているような感じを受けるが、これもまた 「シニアユーザーの増加」 を裏付けていると、白書は分析する。
 
 つまり、「400万円未満」 という層が厚くなってきたことは、ユーザーの年齢構成比率で、定年退職を迎える 「60歳代以上」 が増えてきたことと関係しているというのだ。
 定年を迎え、それまで勤め上げていた企業をリタイヤした人でも、最近は年金が支給される65歳まで他の企業が再雇用してくれる率が高まっている。しかし、その場合は、一般的に給与額が低下する。
 そういう状況でも、以前からキャンピングカーを所有している人は多いだろうから、その場合は 「400万円未満」 という申告になるというわけだ。
 
 また、世帯収入というのは、額面として支給される家族全員の給与の総和であるから、子供たちが親元から出て独立した世帯を持ち、定年を迎えた夫婦二人暮らしの家庭が増えてくれば、当然インカムとしての数値は減少する。
 ただ、その分支出も減少するから、キャンピングカーを維持するのは難しいことではない。
 
 厚生労働省の発表した 「国民生活基礎調査」 (平成22年) によると、全国平均で見た 「世帯収入400万円以下」 の世帯は、総世帯数の半数に近い45.1%であるという。
 同白書では、そのことから、
 「世帯収入400万円未満というユーザーが増えたことは、キャンピングカーがようやく日本の世帯収入の中軸を占める層にも普及してきたといえる」
 と結論づけている。
 
 また、それには、企業側の努力も反映しているとも。
 つまり、キャンピングカービルダーも、最近はユーザーニーズに合わせた低価格車の製作に力を入れており、平均的な収入のサラリーマンでも買える高品質な車両が次々と開発されるようになった。
 このような供給側の努力も重なって、世帯収入が 「400万円未満」 であってもキャンピングカーを維持できる環境が整えられてきた、と白書は見る。
 
“一人旅派” もじわじわと増える気配
 
 前述したように、キャンピングカーの同行者を尋ねる調査では、「夫婦二人」 という回答が半数を超え、さらに 「家族」 という答を合わせると、その割合は 9割を超えるが、「単独=一人」 という回答も、現在はまだ少ないとはいえ、じわじわと増えつつあるようだ。
 今回の調査では、わずか5.2%であったが、それでも前回調査よりは1.4ポイント上がっているという。
 
 その理由として考えられるのは、ひとつは、高齢化に伴う配偶者の死別や非婚率の高まりなどである。
 もうひとつの理由としては、「夫婦の二人旅」 をある程度満喫して人々が、今度は、それぞれ自分の 「趣味」 を追求する一人旅を始めるということも考えられる。
 
 ちなみに、キャンピングカーユーザー層が好む 「趣味」 を、回答例の多い順に紹介すると次のようになる。これは書き込み式の調査だということで、件数で表示している。回答数は358回答だという。
 
 ・ 釣り   (88件)
 ・ スキー (64件)
 ・ 温泉  (27件)
 ・ 登山  (25件)
 ・ 写真  (21件)
 ・ スノーボード (15件)
 ・ 自転車 (11件)
 
 それ以外として、サーフィン、カヌー、ダイビング、キャンプ、アマチュア無線、料理、スケッチ、資料館めぐり、星座観察などが上がっている。
 
 こうして見ると、「釣り」 を好む人が相当数いることが分かる。
 もちろん、夫婦・家族で釣りを楽しむ家庭もあるだろうが、どちらかというと、釣りの場合は旦那さんの “一人遊び” というニュアンスが濃い。
 
 このように、通常は夫婦で楽しみながらも、時に応じて、趣味を極める一人旅を満喫するユーザーも今後は増えそうに思える。
 
3世代で 1台のキャンピングカー楽しむ
 
 今回の白書で浮かび上がってきた傾向のひとつに、3世代で 1台のキャンピングカーを楽しむというものがある。これは、「家族関係の変化」 を調べているうちに明らかになってきたものだという。
  
 白書においては、毎回 「キャンピングカーを購入してから、家族の意識がどう変わったか」 という設問を設け、購入前と購入後の家族の心の変化を調べている。
 

 
 それによると、63.4%の人が 「家族との会話でキャンプ、旅行、温泉など共通の話題を持てるようになった」 と答えており、また、46.9%の人が 「夫婦、子供たちとの団らんの時間が増えた」 という回答を寄せているという。
 
 この設問においては、さらに記述式解答欄を設け、より具体的にユーザーの気持ちをさぐるようにしてあるのだが、そこに寄せられた短文レポートでは、次のような記述が散見された。
 
 「孫が喜ぶようになった」
 「孫との時間が持てるようになった」
 「老親、親子、孫と四世代での旅行が可能になった」
 
 このような 「親、子供夫婦、孫」 といった 3世代の家族旅行に触れる記述が目立ってきたのも今回の白書の特徴であるという。
 
 確かに、子育て真っ盛りのヤングファミリーの場合は養育費や教育費などにも予算を振り向けざるを得ないため、キャンピングカーの購入や維持を検討するほどの余裕がない。
 しかし、その親世代は比較的裕福である場合も多いし、孫の面倒を見るぐらいの時間はたっぷり取れる。
 
 キャンピングカーを 3世代で使用する報告が目立ってきたのは、親世代がキャンピングカーを購入し、それを子供たちと共同使用するケースが増えてきていることを物語っている、と白書は解説している。
  
 
関連記事 「キャンピングカー白書2012」
 
参考記事 「キャンピングカーはどんなところに泊まれるのか ? 」
 
参考記事 「最も売れているキャンピングカーの価格帯」
 
参考記事 「キャンピングカーユーザーはペットが好き」
 
 

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キャンピングカーに乗る人はどんな人たちか ? への4件のコメント

  1. 渡部竜生 より:

    御無沙汰しています。
    このユーザー像、実情と少しばかり乖離している様な気がしませんか?。
    キャンプ場等で合うユーザーや、ショー会場での商談風景などを見ていると「そんなに熟年ユーザー多いか?」と思うのです。
    アンケートの母集団が「くるま旅クラブ会員」というのが、少なからず影響しているのではないでしょうか。母集団の年齢分布と回答者の年齢分布などを比較して、補正したりする必要があるんじゃないでしょうか。

    • 町田 より:

      >渡部竜生さん、ようこそ
      おっしゃるとおりですね。いいご指摘だと思います。
      現在の白書のユーザーアンケート調査の母体となっている 「くるま旅クラブ」 が現状のユーザーの実態とは微妙にズレがありそうだということは、(このブログでは触れませんでしたが) すでに白書においては指摘がなされています。

      それは、ユーザーの所有するキャンピングカーをタイプ別に見た場合、今回はじめてバンコンの所有率がキャブコンを抜いたわけですが、すでにデータ取りを開始した05年の段階で、国産ビルダーの出荷率ではバンコンがキャブコンの出荷台数を超えていたわけですね。それが今回ようやくビルダーの出荷率に、「くるま旅クラブ」 のユーザー層から得られたデータが追いついたわけです。

      そのことで、白書では 「データを提供いただく 『くるま旅クラブ』 のメンバーが、調査開始時にはベテランで占められていたため、充実した装備を搭載しやすいキャブコン愛好派が多かったことなどが反映されていたと見るべきだろう」 という記述によって、「くるま旅クラブ」 のユーザー層と、現在そこに所属していないユーザー層とは微妙なズレがありそうだということは指摘されています。
      従って、白書の本体においては、「ユーザー全般の調査」 というよりも今回のデータが、あくまでも 「くるま旅クラブ」 のものであるということを強調していますね。
      ただ、ブログではそこまでのことは書きませんでした。そこで誤解が生じたようであったならば、それは当ブログを書いた私の責任であるかもしれません。

      実際に、白書をまとめる前の段階では、すでに渡部さんがご指摘されたようなことに対して、今後の課題が残るという議論がなされていたようです。
      おっしゃるように、補正の検討が必要であることは確かですね。

      ただ、これも、今後 「くるま旅クラブ」 の参加人数が増えて分母が大きくなっていけば、多少のタイムラグは残るにせよ、おのずと解消されていく問題のような気もします。現在は、実態との微妙なズレがありそうに思えますが、だいたいの傾向としては、そんなに間違っていないのではないかと、私は判断しています。

      有益なご指摘をいただき、たいへん感謝しております。
      今後ともよろしくお願い申しあげます。
       

  2. 渡部竜生 より:

    >町田さん
     白書は入手していましたので記述は知っておりました。町田さんの説明が不足しているとか、そんなつもりは毛頭なく 「一般マスコミなどへのキャンピングカー周辺についての説明のベースとなるであろう白書にズレがあるのは、どうなんだろうかなぁ」という個人的呟きです。
     せっかく賑わってきているんですから「なるほど、やっぱり時間がある熟年層の遊びなんだな」なんて、早とちりされてしまうのはつまらないですからね。

    • 町田 より:

      >渡部竜生さん、ようこそ
      そうですね。早とちりされるような愚は避けなければならないでしょうね。
      ただ、白書のデータ的な誤差を 「ズレ」 と言い切るほどのこともないような気もします。
      問題があるとしたら、そのデータを解析する記述が、現状を誤解なく正確に伝えきっているかどうかという点でしょうね。
      それに関しては、渡部さんのおっしゃるように、さらなる精度を上げる工夫が必要かもしれません。
      わざわざ丁寧ね再コメントまでいただき、恐縮です。
      ありがとうございました。
       

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