なんで人間は若い頃聞いた歌が好きなのか

 
 このブログなんて、本当に年寄りのブログだ。
 
 音楽を語れば、二十歳ぐらいの頃に聞いた音楽のネタ。
 映画を語っても、昔観た映画。
 本の話だって、基本的に若い頃に読んだ本の影響が色濃く反映している。
 
 それらはすべて、年をとってきたことの証拠である。
 
 老年になって感受性が枯渇してしまったから、「なんかみずみずしい話題はないものか?」 と苦し紛れに探そうとすると、けっきょくは、感受性がピリピリしていた頃に接した音楽や本の話に行き着いてしまうのだ。
 
 しかし、感覚がピリピリするようなテーマを探すかぎり、それはある程度やむを得ない話だともいう。
 
 というのは、人間は、思春期あたりの脳細胞分裂がいちばん激しく、その爆発的な勢いで生まれてきた若い脳細胞が、そのとき目にしたもの耳にしたものすべてを 「新鮮な情報」 として活発に取り込んでしまうからなのだそうだ。
 
 “若い脳細胞” というのは、ある意味で無防備な脳細胞だ。
 それはまだ、年取ったがゆえに理解できる世間の危険に対して、無知な脳細胞である。
 
 だから、逆に情報を選ばない。
 年をとって、経験を積んだ脳細胞が 「これはヤバい!」 と、防衛的にその回路を閉じてしまうような情報に関しても、好奇心丸出しで食いついていく。

 耳の鼓膜を破るような大音量で鳴り響くロックも、目を覆いたくなるような暴力的な映画の映像も、(後でショックを受けることになっても) 、とりあえず無防備に取り入れる回路を開く。
 
 それゆえに、そのときに受け入れた刺激は、いい意味でも悪い意味でも、一生を支配する。
 そして、それが後の感受性を形づくる土台を形成する。

 だから、この時代に、いい刺激をふんだんに受ければ、それだけその人間の感受性はいい形で研ぎ澄まされていく。
 悪い刺激を受けても、それはそれで、その人間の陰影を深める。
 その振幅が大きければ大きいほど、興味や好奇心を感じる領域の幅も広がっていく。
 
 というわけで、こと音楽に関していえば、けっきょく10代から20代前半ぐらいまでに聞いた音楽が、その人の “好み” の原型を形作ってしまうというわけだ。
 その時代の 「音」 にどっぷり浸かってしまった人ほど、その呪縛から逃れられない。

 それは、ある意味で不自由なことだ。
 しかし、こうも言える。
 その人は、出会うべくして、出会う音楽と、会ったのだ。

 そのことを別の言葉に置き換えれば、「宿命」 というのかもしれない。

 で、実はさっきまでビートルズ番組を観ていたのだ。
 ワイドショーのキャスターとして知られる小倉智昭氏と、ザ・パロッツ (The Parrots) というビートルズのコピーバンドが出ていて、ライブを繰り広げながら、ビートルズサウンドの秘密に迫るという番組だった。
 
 パロッツのメンバーが語る。
 「彼らは、実に淡々と単純な演奏を繰り広げているようでいながら、実は、とんでもなく緻密でマニアックは音作りをやっていたんですよ」
 ベースを担当する人がそう言いながら、ポール・マッカートニーのベースラインを分解する。
 
 毎日のようにビートルズを聞き、かつ演奏から音を拾い、画像から指の動きを追っていたにもかかわらず、10年目ぐらいにして、ようやく解明できたポールの神ワザのような繊細な指の動き。
 
 ドラムス担当の人は、左利きだったリンゴ・スターが、右利き用のドラムセットを組んだときに、どのようなドラミングになるのか、それを実演する。
 
 ジョン・レノンのパートを担当する人は、ジョンがリード・ヴォーカルを担当しているときも、ハモリのときは主旋律を離れ、とんでもない独創的なハーモニーを展開している様子を再現する。
 
 自分は楽器をうまく弾きこなせないから、どれも驚くような話ばかり。
 “ビートルズ通” を自認する小倉さんですら、実際の音を分解してはじめて分かるビートルズサウンドの複雑さを知って、呆然とした表情をしていた。
 
 そんな神の奇蹟のようなサウンドを、まだ10代の自分は、音作りの秘密なんかな~んにも考えることなく、ごく自然に、空気のように吸っていた。
 それは、今から考えると、とんでもなく幸福なことだったのだろうと思うけれど、当時はそれが幸福だなんて思うこともなかった。

 でも、それから50年近く経った今も、パロッツがテレビの中で唄っていたような歌は、ごく自然に自分の口をついて出る。
 英語の意味を日本語に置き換えるなどという思考回路を経なくても、脳の記憶装置が機械的に録音した音を再現するかのように、歌が出る。

 10代のときに、ビートルズと出会ったということは、けっきょく私の 「宿命」 だったということなんだろう。
  
▼ The Parrots 「Drive My Car」

参考記事 「初期ビートルズ」

参考記事 「ジョン・レノンのバラードに潜むエスニックな響き」

参考記事 「ジョン・レノン節」

参考記事 「ビートルズの評価」

参考記事 「リバプール」
 
 

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なんで人間は若い頃聞いた歌が好きなのか への8件のコメント

  1. スパンキー より:

    私の偏った音楽の嗜好も、町田さんの解説で納得しました。
    まるで平均値なし、浪曲もAKBも受け付けないこのアタマは、
    割と頑固です。

    で、私の場合はビートルズより、モップスとかゴールデンカップスとかなのかな?
    いや、吉田拓郎や猫。石田あゆみや黛ジュンか。

    とにかく、なんでも聴きまくった青春時代の音楽は、一生のメロディーのように
    いつもわくわくするし、なんだかとても穏やかになれるんですよね?

    が、燃えよドラゴンのテーマ曲だけは、いまでも聴くと、闘志満々です。

    • 町田 より:

      >スパンキーさん、ようこそ
      なるほど! モップス、ゴールデンカップス、拓郎、猫、石田あゆみ、黛ジュン … 。
      分かりますよ。もちろん、私もよく聞いていました。特にモップス、カップスはお気に入りでしたね。

      誰にも、「青春の歌」 というものがあるんでしょうね。
      私たちの上の世代だと、洋楽ならフランク・シナトラとか、ビング・クロスビーとか、そんな歌手の歌を聞くと “胸キュン” になるらしいですね。
      少し下の世代だと、アリスとか、オフコースの小田和正などになるらしいです。
      うちの息子世代だと、ワンズ、Tボラン、ディーンとかになっていく。
      私が、かろうじて着いていけるのは、そこらあたりまでですね。
      さすがにAKB48の歌はあまり知りません。どこかで聞いてはいるんでしょうけれど、記憶に定着してくれないですね。

      でもKポップスは意外といいかも。
      カミさんの影響で東方神起とか、KARAとか、少女時代なんか耳にしたことがありますが、けっこうシャキシャキ軽快で楽しめました。
       

  2. A より:

     毎回コメに失敗するので今回は成功するかと思いトライします。
     町田さんにここで紹介した曲の感想がききたいです。
     http://www.youtube.com/watch?v=trwJq63IcQc  1989年
     最近気に行った曲。20年以上も前のもので、当時リアルタイムで全くアンテナにひっかかららなかった。
     曲の傾向が、この手のものに自分が弱いのだろうと思う。
     アコースティックのギターの始まりから来る繊細さ(イギリスのイメージ)、ジャパメタの間奏(恐らく逃れられない80年代の音、ここが町田さんの言われる一番影響を受けた音 メロディ)、詞の世界(ナルシスト傾向)、 声(うまい必要はない 少し語尾が半音上がる傾向にあると言われた)、ビュジュアル(耽美派)  なぜか聞いていると テーマ≒ 宿命、運命 という言葉が浮かぶ。
     
     http://www.youtube.com/watch?v=6X_hvUN6Lvc  2008年
     
     最近にしては、揺さぶられた曲ですよ。
      
     この2曲を分析しながら、自分が曲に求めている世界があり(あるのかもしれない)、そこにとどまろうと知る自分に気付きました。

     最近感動する曲が少ない。以前よりも。
     だけれども、流行り物への不快な気分になる。それは今もほとんどかわらない。それは救いかも(もし同年代でそのことに今気付く方々がいたら、そちらの方がまともな人生をあゆんできたということだと思う)

    • 町田 より:

      Aさん、ようこそ
      ちょっと仕事が重なっちゃって、コメントいただきながらお返事を返す余裕がなく、遅くなり、申し訳ございませんでした。

      張っていただいたリンクを頼りに、「デッドエンド」 の2曲、聞いて堪能いたしました。
      特に最初の 『Serafine』 という1989年の曲。
      これは素敵でした。
      教えていただいて、本当にありがとうございました。

      このあたりが、Aさんの “一番影響を受けた音” というわけですね。

      『Serafine』 は、ドラムスから入るイントロが実にカッコいいです !
      この曲、本当に一発で好きになりました。さっそく 「お気に入り」 に入れました。

      ただ、この感じ、私には80年代の音といっても、同時代の洋楽っぽい … 特に 「ティアーズフォーフィアーズ」 あたりのサウンドづくりと似た匂いがあるように感じるのですが、そのへんはどうなんでしょうか ?

      そのせいか、とても聞きやすかったですね。
      まったくはじめて聞いた音なのに、どこか懐かしい感じでした。

      『Prinsess』 の方は、私が “感じる” いわゆる 「ヘビメタ」 のスタイルで、それほど触れてこなかったですね。※ ゴメンナサイ、ヘビメタが流行り始めた頃、自分は一気に黒人ブルースの方に行っちゃっていたもので … 。
      このあたりは、単純にサウンドだけの話で、(いま仕事中なので) ちょっと歌詞まで追う余裕がなく、感想を述べるまでにいたらず、申し訳ないです。

      ただ、「デッドエンド」 には興味を持ちました。
      YOU TUBEにはいろいろ張られているようなので、少し時間ができたときに、ゆっくり聞いてみます。
      そのとき、新たな感想を … 。
      今しばらくお待ちください。
       

      • A より:

         毎回返信どうもです。
         http://blogs.yahoo.co.jp/frictionreck/13777517.html
         デッドエンドはマイブームで最近聞いているのです。
         自分のブログにて紹介しましたが、ジャパメタの中心バンド、ただしメインストリュームからは距離がある気もする。
         紹介した情報からは恐らくわかりにくいと思います。80年代のロックそのものです。 不思議です。当時聞いていないバンドなのに十分きけるのです。

         「デッドエンド」のドラムの湊さんがかなめで、湊さんの脱退が、このバンドの解散になったみたい。 村上ポンタの弟子、もう教えることはないといわしめたきいたことがあるのです。超売れっ子ドラマーです。

         ではでは。

  3. A より:

      先ほどのコメントを訂正します。
      紹介した2曲は、「デッドエンド」というバンド。10年ぶりに再結成活動(ドラマーのみ違う)。
      歌の音程については 「半音下がる」でした。このバンドに限らず、ほとんどのボーカルが
    語尾が下がる傾向にあるようです。 ではでは。

  4. A より:

     別情報です。この女性はわりとメジャーな方。
     http://www.youtube.com/watch?v=IHFH21Ygt3w
     ドラマーがいいんですよ。この女性もこのドラマーと出会い、新たな発見があったと。この曲今知ったのですが、なかなかいいので紹介しました。
     
     このドラマーは、今の最先端の方と思っています。湊さんとおなじぐらい。
     裏ロックをあゆみ、メジャーロックに来ている。
     
     日本の裏ロックバンドを歩み、今も両方を渡り歩く、珍しい方です。中村達也と言います。
     ヒカゲ(「ザスタークラブ」)、ミチロウ(ザスターリン)、レック(「フリクション」)、布袋トモ泰、ベンジ―(「ブランキージェットシティ」)、山下洋輔 共演者まだいそう。

    • 町田 より:

      >Aさん、ようこそ
      コメントいただいてから、1週間経っちゃたんんですね。
      これは、これは申し訳ないです。
      最近ちょっとメールチェックをサボっていたもので … (^_^;)

      YOU TUBEたどって紹介いただいた曲、聞きましたよ。
      すごいですねぇ、この迫力。
      やっぱり、ドラマーの力が大きいんでしょうね。
      こういう “前のめり” のビート感って、私はあんまり好みじゃなかったですけど、聞いているうちに、「やっぱりこういうのもいいな」 と思うようになってきました。

      いつもいろいろ教えていただいて、ありがとうございます。
       

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