カンフーファイティング

 
 元気の空回り。
 
 なんか、そんな感じが漂う画像をYOU TUBEで見ることがある。
 
 歌い手は、周りに元気を与えたくって必死にパフォーマンスを繰り広げるけれど、観客は “笛吹けど踊らず” 。
 結局、歌い手の 「元気」 だけが、空回り。
 
 カール・ダグラスの歌う 『カンフーファイティング (Kung Fu Fighting) 』 。

 YOU TUBE で、その画像を探しだしたとき、「これほど観客に見放された悲しいステージというものを観たことはない」 とため息が出た。

 ま、ステージというより、テレビ局のスタジオで、サクラとして集められた聴衆の前で歌っているという何かの音楽番組の1シーンなんだけど、カンフーポーズを次々と繰り出し、目玉をむいて虚空をにらみながら歌うカール・ダグラスに対し、その聴衆のシラッとしていること。

 「俺たち、たまたまここに集められたんだけど、この曲好きでもねぇ~し、どう反応すればいいんだ?」
 ってな戸惑いが、周りに集まっている聴衆全員の顔に書いてある。

 曲自体は、1970年代中頃に、ディスコなどで連日流れていた大ヒット曲だ。
 もちろん、自分はその時代にはディスコなんて通っていなかったから、現場でそれを確認したわけではない。
 だけど、FMやFENでは、よく流れていた。

 70年初期のソウル・ミュージックは大好きだったけれど、途中からディスコ・サウンドが全盛を極めるようになり、私はブラック・ミュージックから徐々に後ずさりするようになっていた。

 しかし、ラジオから流れてきたこの曲だけは好きだった。
 レコード屋まで足を運んで、LPまで買った (当時CDはまだなかった)。
 結局、聞いたのは、LPを通じて、この曲だけだった。

 オホホホ~ … と、アルプスに向かって叫ぶような、牧歌的な掛け声から始まる。
 そして、チャイニーズムードの笛 (みたいな) エキゾチックな音が被さる。
 すると、一転。
 ギターがしゃきしゃきと小気味良いリズムを刻むディスコ調R&Bになる。

 チャイニーズR&B?
 なんとも奇妙な取り合わせで、キワモノ的な不気味さと滑稽さが漂う。

 このカールさん。
 Wikiによると、イギリスで音響工学を学んだインテリのジャマイカ人であるそうな。
 歌手として身を立てるというよりも、音楽プロデューサーとしての能力を発揮し、現在は、ドイツ・ハンブルクで映画や広告に音楽を供給する制作プロダクションを経営しているらしい。

 だけど、そんな事情は、この曲が流行っていた当時は知らないから、どうせキワモノ狙いの一発屋シンガーがヤケクソ的につくった歌った曲が、たまたまヒットチャートに登っただけだろう … ぐらいの認識しかなかった。

 実際、LPのジャケットでは、赤いハチマキだか、バンダナだかを巻いたカールさんが、まさにカンフーの試合で敵を威嚇するように、白い歯を剥き出して、吼えている。
 ジャケットそのものが、もう一発屋のジャケットなのだ。
 

 
 「吼えろドラゴン」
 そんなふうな邦題も付けられていた曲だ。
 1974年。
 当時アメリカを席巻したブルース・リー主演の 『燃えよドラゴン』 に触発されて作られた曲だと聞く。

 このB級のノリ … というか、キッチュなセンスというか、「笑いを取っているぞ!」 ふうのとぼけた味を持ちつつ、けっこう大真面目な迫力もあって。
 なんとも奇妙な歌だ。
 歌っているカールさんも、マジなんだか、とぼけているのか。
 
 で、その姿が下の映像。

 「元気の空回り」

 カールさんが、お得意のカンフーポーズを振りかざして熱演するんだけど、周りはほとんど無反応。
 歌手と聴衆の温度差が、なんとも奇妙な空気を漂わす。

 ひょっとして、カールさんも適度に飽きていて、ルーティンワークをこなしているだけなのかな … って気もする。
 口パクだしね。
 とにかく大ヒット曲だから、ここに来るまでに、もうさんざん演じているんだろうからね。
 
 で、歌が終わると、ようやくみんな拍手するのだけれど、なんだか、
 「やっと終わったか」
 と喜んでいるような拍手なのである。
 
 悲しいライブ。
 でも、そこに、そこはかとない可笑しさが漂う。
 
 で、正直に告白すると、けっこう、この映像好き。
 
▼ Carl Douglas 「Kung Fu Fighting」

  
  
 参考記事 「70年代スイートソウル」
 
 

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カンフーファイティング への2件のコメント

  1. スパンキー より:

    この曲は思い出深いですな。
    私のなかでは、「ソウルドラキュラ」と並ぶ名曲です。
    20代初頭、我がディスコ時代と被っています。
    で、カールダグラス?っていうんですね、この人。初めて知りました。
    顔もね、初めてのような…
    あ、俳優のカークダグラスなら知っているんですけれどね。
    あとは、そうですね、セクシーバスストップ。これはかなりお宝曲でして、
    これを踊りながら、かなりいろんな子と知り合いになりました。
    いずれB級なのかも知れませんが、私にとってはA級の思い出曲です。

    • 町田 より:

      >スパンキーさん、ようこそ
      そうですか、スパンキーさんは、この曲あたりのディスコ世代なんですね。
      私は、これが流れているような現場にはもう通っていませんでしたけれど、この曲はダンスミュージックの枠に収まらない、しっかり聞ける曲になっているように思います。
      単純な曲なんですけどね。
      でも、やっぱり名曲だと思います。
      「ソウル・ドラキュラ」 は残念ながら知らないんです。
      でも、「セクシーバスストップ」 は浅野ゆう子が歌っているのが可愛くて、けっこうお気に入りでした。
      スパンキーさんの青春時代の一コマが、なんとなく目に浮かぶようです。
       

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