絵画展に行く

 
 学生時代から気の合う遊び友だちだった後輩から、
 「油絵の展覧会に絵を出品しているから、よろしければお越しを」
 と、招待状をもらいました。

 「ほぉ、絵なんか描く人間だったかいな」

 とにかく、遊び心の豊かな男だったので、絵ぐらい描いたって別に驚くことはないのですが、招待状を同封した手紙の末尾に、
 「将来は、ブータン王国に行って画塾を開き、ブータン芸大を創設し … 」
 などという気宇壮大な夢が書かれていて、お茶目な大言壮語は相変わらずだな … と懐かしい気分になりました。

 彼は無類に、照れ屋。
 だからこそ … というべきなのか、素の自分を見せないような人を煙に巻くウソ話の妙手で、話を聞いていると、あれよあれよという間に、荒唐無稽なホラ話の世界に引きずり込まれてしまいます。

 それが楽しいんだな。
 妙にウマが合って、よく酒場で、周りの人間を巻き込んだ寸劇なんかやってましたな。

 たとえば、飲み屋のカウンターなんかで、わざと隣りのサラリーマンに聞こえるように、
 「こうなったら ○ ○ 組のタマ取っちゃるきに、お前んところからも兵隊出さんかい」
 「おお、貸したるわ。うちの組にはいつでも鉄砲玉になろうとしている威勢のいい若いもんがたくさんおるきに、何人欲しいんや?」
 … なんてね。

 ま、バカですね。
 『仁義なき戦い』 の見過ぎですかね。
 隣りの人、「こいつらアホかいな」 と思ってたでしょうね。

 で、そんな友人からの久々の手紙。
 その絵を見るために、カミさんといっしょに出かけました。

 場所は、六本木にある 「国立新美術館」 。
 なんせ、六本木なんていう、テレビに出てくるような有名な街に出かけるのが久しぶりなんで、地下鉄の出口から街を見上げた瞬間に、もう 「ここはどこ? 私は誰?」 状態です。

▼ 六本木は街自体が、なんだか劇場空間みたいなところで …

▼ 歩道を歩いても、意味の分からないオブジェばかり

▼ さすがにどの店も洒落てまんがな

▼ ようやくたどり着いた 「国立新美術館」

▼ 美術館の中は、SF映画の未来都市みたいだった

▼ 友人が絵を出品していた 「第47回 たぶろう展」 の会場

▼ 友人 太刀川浩二さんが描いた 「大手町通り」

 この絵 (↑)、なんとこの 「たぶろう展」 で、秀作賞を受賞した絵だったんですね。
 雨上がりの一瞬の情景を描いたのでしょうか。
 濡れた車道の上に、湖面に影を落とすようなビルの姿が映り、とってもみずみずしい情感をかもしています。
 雲の切れ目から、夕暮れの日差しが街に差し込んできたときの、光の回り方が実にきれい。

 “画家さん” の話を聞くと、銀行の入り口を背にした場所でデッサンを重ねたそうです。
 「ここの場所を占領されたら困るなぁ」
 と、ガードマンに何度も怒られたとか。
 でも、そのうちガードマンと仲良くなって、最後は、
 「あんたも頑張っていい絵描きになりなさいね」 と、励まされたそうです。

 それには、理由があるとか。
 漂泊の天才画家として知られる山下清とそっくりの姿で、… 短パンとランニングシャツに麦わら帽子 … っていうことなんでしょうか。

 で、山下清みたいに、すこしどもりながら、
 「お、お、俺は、こ、こ … こう見えても、が、が、 “画伯” なんだな。で、こ、こ … この景色が大好きで、そ、そ … それを絵にして、お、お、おふくろに … み、み、見せて、元気にしてやりたくて」
 … とか言ってたんですって。

 ま、ホラの好きな人ですから、その話も本当かどうか。

 とにかく、人気のある人で、私たちと話しているときにもファンのオバサマたちがひっきりなしに声かけてくるので、あまり 「独り占め」 してもいけないと思い、遠慮して退散することにしました。

 梅雨の合間のつかぬ間の晴れの日。
 新国立美術館の周りの木々は、みずみずしい緑に溢れていました。
 

 
 彼との逸話は下記の話 (↓) にも出てきます。
 参考記事 「ニセ台本作家」
 
 

カテゴリー: アート, ヨタ話   パーマリンク

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">