やさぐれの歌 2曲

 「パクリ」 っていう言葉には、どこか侮蔑的な響きがある。
 「盗作」 という言葉よりも、さらに “品性の下劣さ” みたいなニュアンスを込めた表現になっている。

 だけど、自分の場合は、好きな音楽があれば、それをパクった曲に対しても親近感を抱くことが多い。

 特に、洋楽と邦楽の場合、向こうのアーチストが作った曲に似せたメロディ、アレンジ、唱法を持つ邦楽を聞くと、「よく頑張って似せたじゃない!」 ぐらいに、むしろ評価してあげたい気分になる。

 もちろん、それが許されるのは、オリジナルの方がはるかにメジャーで、誰にでも親しまれている曲に限られる。

 無名のアーチストが一生懸命つくった曲を、メジャーなアーチストが、さも自分がつくったような顔をして売り出すのは、それはやはり犯罪行為だろう。

 でも、オリジナル曲を愛するあまり、ついついその一部のアイデアをそっくりいただいてしまうというのは、なんか、気持が分かるのだ。
 そういう “パクリ曲” を聞くと、オリジナルのアイデアを盗んだというネガティブな印象を受けるよりも、むしろオリジナルへのリスペクトがあるのだろう … ぐらいに思ったりする。

 ニール・ヤング 『アウト・オン・ザ・ウィークエンド』

 Buzz (バズ) 『ケンとメリー 愛と風のように』

 この二つの曲のイントロは “パクリ” というよりも、もう音的にまったく同じものだ。
 歌が始まってからのメロディー展開はもちろん異なる。
 しかし、リズム感やら唱法やら、ギターアレンジなど、背後に流れる空気のようなものは、まったく同じ。

 つくられたのは、ともに1972年。
 どちらが先かといえば、当然ニール・ヤングの方で、ウィキペディアによれば 『アウト・オン・ザ・ウィークエンド』 の入ったアルバム 『ハーベスト』 のリリースは同年2月14日。

 一方の 『ケンとメリー』 は、曲がつくられた日付が何月か分からなかったが、4台目の日産スカイライン (C110型) のCMのためにつくられたことから考えて、スカイラインのデビュー以降にテレビに登場したとなれば、それは9月以降ということになる。

 バズは、当然ニールの曲を聞いただろう。
 そして、大いに触発されただろう。
 「俺たちも、こんな曲をつくってみたい!」 と願っただろう。

 そのほとばしるような思いが、まさにイントロにそのまま流れ込んだ。

 ドットントン、ドットントン … と、バスドラとベースが同じテンポで泥臭いリズムを刻む。
 レールの上を貨物列車がのんびり走っていくような、物憂い単調な滑り出し。

 この二つの曲は、まさに、そのイントロこそが、曲の思想をすべて語っている。

 ともに、「あてのない旅」 に出るときの “投げやり感” や、故郷に対する未練を捨てたときの解放感と虚脱感。そんな “やさぐれ” の気分が、のっけから全開となるイントロなのだ。

 歌詞にも、それは横溢している。
 ニールは、
 「荷物をまとめて、ピックアップトラックでも買って、とりあえずダウンタウンLAでもめざそう」
 と歌う。

 バズは、
 「見慣れた時計を部屋に残して、朝が来たら出かけよう」
 と歌う。

 どちらも、「風の止まった家を出て風吹きすさぶ荒野に出よう」 という気持ちを、そのイントロに込める。

 家に戻ることをあきらめた旅。
 やさぐれ (放浪) の精神。
 故郷を振り返ることのない、さばさばした爽やかさ。
 目の前に広がる、埃の舞い散る田舎道。
 茫洋 (ぼうよう) と広がる青空。

 あのドットントン、ドットントン … と単調な時を刻むバスドラとベースは、家に背を向けて、埃っぽい未舗装の道を歩き出したときの “足取り” を表現している。
 1972年。
 誰もが、そんな気分になる時代だったのだ。
 
 ▼ ニール・ヤング 『Out On The Weekend』
 
 
 ▼ バズ 『ケンとメリー 愛と風のように』

 
 参考記事 「ニール・ヤング的哀愁」
 
 

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やさぐれの歌 2曲 への2件のコメント

  1. スパンキー より:

    この歌は大好きですが、パクリというのは知りませんでした。

    洒落ているなとは思っていましたが…。

    ケンとメリーといえば、クルマは前のハコスカの方が良かったですが、

    あのCMで、イメージはグンと上がりましたね?

    ケンとメリーとなるモデルさんも映像も秀逸でした。

    で、この二人をみせながら、日産は「でかけよう」という

    生き方にも聞こえるメッセージを発信した。

    当時、とても印象に残るものでした。

    しかし、聴き比べると、バズの方が良いのは皮肉です。

    • 町田 より:

      >スパンキーさん、ようこそ
      2つとも、もう古い歌なんですけど、この2曲には独特の空気 … それもちょっと泥臭いような田舎っぽい空気なんですけど、(あの “ドットントン” というぎこちないリズムが…) 。それが逆になんかすごく新鮮で、とても印象に残っていました。
      当時、「都会志向」 がカッコよさの原点でしたからね。

      で、スカイラインって、自分の印象では (都会志向の) トヨタのセリカに比べて硬派のイメージが強すぎて、ちょっととっつきが悪かったんですね。
      だけど、このケンメリのCMで、クルマそのものに対する印象もガラッと変わってしまったのが自分でも驚きでした。「あなおそろしや、CMの魔術」 。

      曲に関しては、>「バズの方が良い」 というのは皮肉でもなんでもなく、ご指摘のとおりですね。
      つまり、それだけバズの 「ニール・ヤングに対するリスペクト度」 が高かったということなんでしょうね。

      ただ、リスナーというのは、先に聞いた方の曲にたぶんに影響される傾向があって、私の場合は 『アウト・オン・ザ・ウィークエンド』 が先でしたから、やはり、ニール・ヤングの干からびたような、埃っぽい感じに惹かれるものを感じます。
       

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