フューチャーが 「モノづくりブランド」 に認定

 
 埼玉のキャンピングカービルダー 「ビークル」 が開発したフューチャーは、「バンコンの永遠のスタンダード」 といわれるくらい人気が高い。
 初代が誕生して、ほぼ30年。
 以来、ビークルというショップの屋台骨となって好評を博し、今日に至っている。

 20年~30年の歴史を誇るキャンピングカーはほかにもあるが、中にはブランド名だけを維持しつつも、レイアウトや装備類などは初代の面影をとどめないものも多い。

 しかし、フューチャーは一貫して、同じコンセプトを守り続けている。
 それなのに、ユーザーから飽きられることなく、魅力ある商品としての生命力を維持し続け、かつ新しい顧客の目には、新鮮なキャンピングカーとして映る。
 こういうクルマというのは、他にない。

▼ フューチャー外装 (左)/内装 (右)
 

 そのフューチャーが、平成23年 (2011年) 度の埼玉県草加市が認定する 「草加モノづくりブランド」 に認定されて、平成24年 (2012年) 2月に表彰された。

 この 「モノづくりブランド」 というのは、草加市が、市内で製造された優れた特徴のある工業製品を選んで全国に広く情報発信し、市内産業の活性化をめざすために設けられた制度で、2007年度からスタートし、今年で6年目。
 これまでは、工業製品の一部を構成するパーツ単体が表彰されることが多く、キャンピングカーのように、パーツの総合体のような商品が認定されるのははじめてのケースだという。

▼ 「モノづくりブランド」 の盾

 フューチャーのどういうところが 「モノづくりブランド」 として表彰されることになったのか。
 ビークル本社をお訪ねして、濱本繁美代表と製作部門を担当する笹原充雄氏にその経緯を聞いた。

▼ ビークルの濱本代表 (右) と笹原氏 (左)

【町田】 草加市が 「モノづくりブランド」 というものを設けて、それを表彰するというシステムが生まれてきた背景を、まず、ご説明いただけますか?
【笹原】 もともと、草加市は、江戸時代から宿場町として栄えた場所なんですね。
 宿場町ともなれば、当然、交通の要所となるわけですから、人の往来が激しくなります。
 そうすると、人と物の流通を見据えて工業製品も発達してくる。この町にはもともとそういう伝統があったわけですね。
 それと、「草加せんべい」 に代表されるような、全国ブランドとして通用する商品も多い。最近では、草加せんべいを砕いて、その粉をコロモにした鶏の唐揚げのような新しい製品も登場して、人気を集めています。
 そういう地場産業の広報を意図し、特に工業製品に限って表彰しようというのが、この 「モノづくりブランド」 なわけです。  

【町田】 どのくらいの数の製品の中から選ばれるのですか。
【笹原】 草加市で登録されている約1,400件ぐらいの事業所の製品が対象となるわけですが、その中で、毎年 3~4個ほど認定されるわけですね。
 もちろんこれは、事業所の方から申請された製品に限定されるわけですが、商工会議所の役員や専門家たちによるそうとう厳しい審査があって、それにパスしなければならないことになっています。

【町田】 フューチャーがその審査基準に適合したというのは、どういう部分が評価されたのですか?
【濱本】 ひとつは、その製品の先進性とオリジナリティですね。それと、現在までの販売実績、またその将来性。
 あとは、工業製品ですから、当然安全性への配慮とか、社会や環境への取り組み姿勢なども審査基準になります。
 それと、他の地場産業との連携できるかどうか、というのも大事なポイントになるようです。

▼ フューチャーのフロアベッド (左) /リヤベッド (右)
 

【町田】 フューチャーの場合、他の地場産業との連携というのは、どういうところをいうのでしょう?
【濱本】 ひとつは家具ですね。特に木工部分。それと座席の骨組みなどもそれに入ります。
 これらの素材はみな地場の企業から調達していますので、その生産量が伸びていけば、草加市全体の興隆につながる。そういうところも評価されたのだと思います。
【町田】 なるほど。確かにキャンピングカーのなかで木工部分の占める率は高いですものね。
【濱本】 ええ。コストを抑えるならば、海外で調達できるものに頼った方がいいのでしょうけれど、うちはあくまでも、すべて自社内でまかなうという方針でやっていますから、できるかぎり市内で調達し、自社で製造するということにこだわっています。

▼ 濱本繁美 代表

【濱本】 草加市というのは、けっこう家具屋さんが多い町なんですよ。うちもそういう家具屋さんとの連携によって、伝統のあるつき板などの勉強もさせてもらいましたね。
【町田】 つき板というのは歴史の古いものなんですか?
【笹原】 つき板というは、本来薄く削られた銘木のことなんですけど、それをベニヤ材などの合板の表面に貼り合わせた 「天然木化粧合板」 のことを総称して呼んでいます。そういうものはもともと家具屋さんから来ているんですね。
【濱本】 一般的にはコストを抑える目的で使われると思われがちですが、もともとは昔の職人さんが、良い天然木を大事にしながら少しずつ使うというエコロジーの精神から生まれてきたものなんです。
 良い木というのは、資源として考えると限りがあると昔の職人さんは考えたんでしょうね。
 だから、ベニヤ材を核に、その表面に薄く削った天然木を貼って高級感を出す。もちろんコスト的にも安くなるんですが、その根本精神は、限りある森林資源を有効に使うという発想から生まれたものなんです。

【笹原】 あとは強度を出すという意味がありますね。ムク材だと気候の変化で反ってしまうこともありますから。
 特にクルマの中は湿度が非常に高いですから、梅雨時期などは木工家具にとっては過酷な条件が重なるわけです。
 その点、ベニヤ材は薄いものを何層も重ねて強度を出していきますから反りに強い。そしてその表面を天然木で仕上げれば、美観も損なわれないし、強度も確保できます。

▼ 笹原充雄氏

【濱本】 木材というのは、薄くしても、もともとその木の持っている性質は変わらないんです。たとえばチーク材だと油分が多く、耐水性がある。
 タモ材とかニヤトーなどは、歪みが少ないので芯材に適している。うちの場合は、高級家具の芯材として使われるニヤトーを芯材として使っています。
 そういう木工の基本的な勉強を、地場の家具屋さんから教えてもらっている。
 逆に、家具屋さんの方も、それを応用しているうちの工場がどんなふうに製作しているのかなどを学びに来てくれます。

【町田】 そういうところで、他の地場産業との交流が生まれ、それが 「モノづくりブランド」 としての評価ポイントになったということなんですね。
 ところで、ビークルさんの商品には、いろいろなものがありますが、その中で、特にフューチャーをノミネートした理由は?
【濱本】 やはり、歴史でしょうね。なにしろ、うちの社歴と同じくらいの歴史を背負ったクルマなんですね。
 だから、造っているわれわれの方は、正直、飽きてしまったと思うこともあるんですよ(笑)。
 だけど、お客様の中には、もうこのクルマだけで3台も乗り継いでくださる方もいらっしゃいます。それに、中古車市場にもあまり出てこない。大切にしながら長く乗っていらっしゃるお客様が多いということなんですね。
 また、はじめてキャンピングカーを見られるお客様にとっては、新鮮なクルマに映るらしいんです。
 造っているわれわれは、いつもそのことを忘れず、30年造り続けてきたクルマであったとしても、常に新しいクルマを開発したときの情熱を持って接するように心がけています。

【町田】 確かにフューチャーは、そのコンセプトが独特ですものね。その象徴的な例が、あのリビングとリヤのキッチン部分を分けるアーチだと思うんですが、アーチの上端の左右には、スピーカーが埋め込まれていて、アーチ自体がオーディオのスピーカーボックスのような役目を果たすわけすよね。
 また、アーチを支える柱の部分には、効率的にテレビや冷蔵庫が収められるようになっている。
 こういうデザイン的な美しさと、実用性の高さが両立する企画こそが永遠の生命力を保つ秘密になっているんでしょうね。

▼ アーチの見えるダイネット部分

【濱本】 ありがとうございます (笑) 。実際に、あのアーチは他社さんからも真似されたことがありました。
 でも、社員にはいつも言うんですよ。
 「他社さんに真似されるようなものをつくれ。しかし、真似されても絶対同じものはできないようなものをつくれ」
 
【町田】 なるほど。… では、「真似されても同じような物はできないようなもの」 というときの、その核心となるものは何でしょうか?
【濱本】 やはり、精密度でしょうね。たとえば、走行中に家具の揺れが出て、室内にきしみが発生するようなクルマがありますよね。
 きしみの出るクルマというのは、家具と家具の間の隙間が埋まらず、走行中にそこが触れ合ってきしみ音が生まれるわけですけれど、うちでは、絶対そういうことが起こらないように、家具の造り込みの精度を上げていって、その問題に対処しています。

【町田】 けっこう手間と時間のかかる作業ですね。
【濱本】 ええ。でも、走行中にギシギシと音が発生するキャンピングカーだと、お客様も不安な気持ちになりますよね。
 実際に、家具が浮いていると、そこから緩みが出たりして、けっきょくクルマ自体が長持ちしないようになってしまうんです。
 音が出ないキャンピングカーというのは、やはり剛性も高いことを証明することになりますから、きしみ音が出ないということが、そのキャンピングカーが頑丈であることの目安になると思っています。

【町田】 緩みをなくすというのは、実際の作業工程としては、どういうことをされるんですか?
【濱本】 床の下地づくりが基本になります。床にただコンパネ貼って済ますだけなら半日で終わります。
 しかし、うちはゲージをつくって、その中にちゃんとスノコを圧着してから乾かして、ゲージが真っ直ぐになるようにしています。その乾かす工程だけで 3日もかかるんですよ。でも、その床板がしっかりしていないと、家具もぴったりつかない。

【町田】 長持ちするクルマをつくるには、いちばんベーシックな部分で手を抜かないと …?
【笹原】 そうですね。だから、内装の傷みと、ベース車の傷みを比べると、うちの場合は、ベースの傷みの方が早く来る、とよく言われます。
 長く乗りたいけれど、クルマの方が先にダメになってしまったとおっしゃるお客様が多いんですよ。

▼ フューチャーキッチン部分

【町田】 それ以外に、長持ちするクルマをつくる秘密というのは、どんなものがあるんでしょうか。
【濱本】 これも基本的なことなんでしょうけれど、電気系統の配線処理ですね。ここで手を抜いてしまうと、クレームが発生するいちばんの要因になります。
 つまり、当たり前のことかもしれないですけれど、いろいろなところで線が挟まれたり、ねじれたりして切れることがないように、その線にもていねいにコルゲートを巻いて、慎重に配線しています。
【笹原】 けっきょく、車載する電化製品そのものが劣化して壊れたりしてしまうことは、もうどうしようもないんですが、それでも器具だけの故障なら、それを取り外して新品に替えることはできますよね。
 しかし、器具に電気を通す配線の不具合は、修理するのもそうとうやっかいです。だから、できるだけ配線におけるトラブルだけは避けたいと思っています。

【町田】 乗用車の純正のハーネスなどは、確かにそう簡単に断線したりしないですものね。
【笹原】 キャンピングカーでもそうありたいと思っています。
【町田】 配線のトラブルを避けるコツのようなものはあるんでしょうか?

【笹原】 けっきょくは、きっちり配線を通さなければならないところは、多少遠回りになっても手を抜かずに回していくとか。
 要するに、配線の部分というのはお客様の目に直接触れるところではないので、手を抜こうと思えばできてしまうんですね。コストのことを考えると、線を細くしたり、兼用したり、リスクを考えずに近いところを通してしまえば、それでも 「形」 は整うんです。バラバラと散らばった線を無造作にビニールテープで束ねるだけで終わりにしても、最初のうちは電気は来る。
 しかし、それでは、そのうち熱によって剥がれてしまい、ショートしてしまうこともありえます。特にクルマの場合は走行中の振動も受けますし、日本の気候は温度の高低差も激しい。
 そういう諸条件を考慮して、どんな状況のときにも接触抵抗を起こさせないような配線に神経を注ぐということが、うちの “こだわり” なんですね。

【濱本】 街のカーショップやスーパーでもカーナビなどを取り付けたりしますけれど、量販店は数をこなさなければならないから、スピードとコストを優先してしまうこともありますよね。
 しかし、配線をしっかり回すということは、そんな短時間でできるものでもないんです。うちは、そういうところには時間と手間を惜しまず、あとあとまでしっかり使えるような状態まで仕上げます。

▼ 濱本代表

【笹原】 キャンピングカーをつくり終えて、お客様の手に渡すときというのは、まさに自分の娘をお嫁さんに出すのと一緒です (笑) 。
 つまり、「もう戻って来なくていいよ」 という気持ちで送り出すんですね。
 もちろん、遊びには来てほしい。しかし、クレームでは戻ってきてほしくない。
 だから、クルマを送り出すときは、「これでお別れ。もう会えないかもしれない」 というぐらいの気持ちでいるんです。
【濱本】 要するに、あとで後悔しないように、万全の気持ちで出荷しているということなんですね。
 つくったクルマというのは、お客様のものでもあるけれど、やはり自分の分身でもあるわけですね。
 だから大切に使ってもらいたいし、製作する方としては、やはり満足のいくものを出したい。いつもそういう気持ちでいます。

【町田】 いやぁ、ビークルさんのキャンピングカーづくりの精神がよく伝わってくるお話でした。ありがとうございました。
 
 
 参考記事 「ビークル 『スウェルム』 」
 
『キャンピングカースーパーガイド2012』 5月18日配本(5月20日発売)

 

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