プリウス・リラックスキャビン

 「東京オートサロン2012」 でデビューしてカスタムカーファンの熱い視線を浴び、「ジャパン・キャンピングカーショー2012」 では、キャンピングカーファンの度肝を抜いたプリウス・リラックスキャビン。
 エコカーとして一番人気を誇るトヨタ・プリウスのルーフに、FRP一体成型シェルを搭載した独自のフォルムは、次世代の自動車の姿を示唆するものとして、どちらのショーにおいても見学者の熱い注目を集めた。

 この近未来フォルムを身にまとった自動車は、はたして乗用車なのか、それともキャンピングカーなのか。
 そのどちらの分類に入れようとも、今までの概念をくつがえす画期的なコンセプトを秘めたクルマだけに、市場の評価によっては、これが引き金となって 「自動車革命」 が起きる可能性は十分。

 そんなプリウス・リラックスキャビンの驚くべきキャパシティについて、開発を指揮した 「かーいんてりあ高橋」 の高橋宣行社長に、その誕生にまつわる秘話を聞いた。

▼ かーいんてりあ高橋 高橋代表

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ボディカットをせずに近未来フォルムを創造

【町田】 キャンピングカーのベース車といえば、今まではトラックかバンが中心で、せいぜいがミニバンだったわけですね。
 ところが、今回のリラックスキャビンでは、ハイブリッド乗用車の、しかもプリウスをベースにしたわけですが、その狙いは、どんなところにあったのですか?
【高橋】 最近、お客様の間で、乗り心地とか燃費を気にされる方がものすごく増えてきたんですよ。乗り心地にこだわるのなら、やはり乗用車。さらに燃費の良さを追求するとなるとハイブリッド車。
 トヨタのプリウスは、性能的にも、人気の面においても、その両方の条件をぴったり叶えるクルマだったんですね。
 
【町田】 ただ、あの複雑な三次曲面に満ちたプリウスのボディに、シェルをドッキングさせるというのは、デザイン的にもそうとう冒険だったのじゃないですか?
【高橋】 ええ。だからまずプリウスのプラモデルを買ってきてね、その上に粘土を盛りつけながら 「ああでもない、こうでもない」 と、いろいろな形を模索してみたんです。その繰り返しのなかから、ようやく納得のいくフォルムが少しずつ見えてきたんですね。

【町田】 オリジナルのラウンドしたフォルムに合わせるのが大変だったでしょうね。
【高橋】 とにかく、シェルの部分には平面を使いたくなかったんです。キャンピングカーをつくるには平面がいちばん楽なんですよ。
 しかし、そういう処理をしてしまうと、とたんに不細工になる。いかにベース車のフォルムと違和感のないキャビンをつくり上げるか。それがデザイン上のいちばんの苦労でしたね。

【町田】 このクルマの特徴は、ボディカットをせずに、そのままシェルを載せるだけの構造を維持したところにありますね。
【高橋】 そうです。ボディカットをしてしまえば、ある意味、どんな形でもつくれてしまうんです。
 しかし、モノコックボディの乗用車でそれをしてしまえば、剛性の確保がむずかしくなる。特にこのクルマは、相当な軽量化を推し進めて設計されているだけあって、切ってしまうと剛性を極端に落としかねない。だから、ボディカットは最初から念頭になかったんです。

 

【町田】 そうすると、構造的には、プリウスのオリジナルルーフの上にシェルがそのまま載せてあるということなんですね?
【高橋】 そうです。プリウスのリヤハッチを取って、その部分にFRP製シェルを接合させているんですね。要は、エアロパーツのような位置づけです。だから、剛性確保にはまったく問題がない。むしろ、ねじれや振動には強くなっています。
 また、シェルがリヤ部分を覆うことになったので、万が一追突されたとしても、そこがクラッシャブルゾーンとなって衝撃を吸収するでしょうから、室内の乗員を保護する率は高くなったと思います。
 それでいて、室内は乗用車のプリウスのまんまですから、シート構造やシートベルトの取り付け方なども、メーカーが保証したものがそのまま付いているので、メーカーメイドの信頼性の高さは維持されてますね。

プリウスの機能はそのまま維持してキャンピング機能をプラス

【町田】 このシェルを架装することによって、キャンピングカーとしての機能はどのくらい確保されたのでしょうか?
【高橋】 まず、ルーフベッドが設定できましたので、マットを埋め込んで作るフロアベッドと合わせ、大人4~5名が寝られるスペースが確保できました。それプラス、リヤ側に食事などもできる簡単なスペースが加えられたということですね。
 このリヤスペースは、収納スペースとしても使えます。高さも確保されていますから結構な収納容量があります。たとえば、ゴルフバックなら 4個分収納できるので、大人 4人が乗って、ゴルフに行くなどということが、楽にできるようになりました。

 

【町田】 ルーフが高くなった分、入れる駐車場が限られてしまう、などということはないですか?
【高橋】 いえ、だいたいの立体駐車場や地下駐車場はクリアできる数値に抑えてあります。車高は 2m05cm。エレベーター式の立体駐車場は無理かもしれませんが、ショッピングセンターにあるような自走式の立体駐車場は、おおむね2m~2.5mくらいに設定されている場合が多いので、まず入っていけるはずです。

【町田】 プリウスのオリジナル車に比べると、架装した分だけ多少重量が増えたと思うんですが、燃費などには影響が出ませんか?
【高橋】 架装しても、そうとう軽量化されているんですよ。この状態で、車両重量1520kg。キャンピングカーとしては、そうとう軽い。もちろんエコカー減税の対象となる重量はクリアしていますので、経済性においても安心です。
 燃費においても、私たちが実走行で測ったかぎりにおいては、リッター18kmは走っています。プリウスのカタログ燃費 (35.5km/L) には遠く届きませんけど、街中での実測値では、オリジナル車とそう変わらないと思っています。

【町田】 リヤから見たスタイルが、またユニークですね。エントランスドアが、ガラスのシースルーになっているのですが、この意図は?
【高橋】 展示車はシースルーですけど、あそこはお客様の希望に合わせてカッティングシートを内側から貼り、マジックミラー的な処理を施す予定なんです。
 カッティングシートのデザインはお客様の希望があれば、どのような形も作り出せます。再販のときは、そのシートを元に戻せばいいわけですから、中古車としての価値も下がらないようになっています。

【町田】 テールランプには、プリウスのものが流用されているんですか?
【高橋】 そのとおりですね。オリジナルのテールランプを移植することにしました。手間もかかるし、苦労もしますけれど、その代わり、プリウスのデザインイメージをそのまま残せたかな … という気もします。
 それに、純正テールを使ったために、パーツの供給が楽になったこともお客様にとってはメリットになると思います。
 キャンピングカー用テールランプは、製造が終わってしまえば、供給がストップしてしまうこともあるんですよ。しかし、トヨタならそういうことが起こらない。それが純正パーツの強みですね。

プラグイン・ハイブリッド車への期待

【町田】 ハイブリッド車のキャンピングカーというのは、まだそんなに多く出まわっていないですよね。ただ、今後は大きな流れをつくっていきそうに思えます。
 このリラックスキャビンにおいては、今後の展開について、どのような計画をお持ちですか?
【高橋】 次は、ベース車に、プリウスのプラグイン・ハイブリッドを考えています。そちらの方になると、もうベース車本体を “大きな発電機” と考えてもいいわけですから、電源をベース車そのものから引ける。そのための配線を、もうメーカーさんの方が設定している。
 そうなると、もう、サブバッテリーに頼らなくてもいいことになる。キャンピングカーの電装システムが、それを機に大きく変わるかもしれませんね。

【町田】 現在のリラックスキャビンは、まだ “発展途上” ということなんですか?
【高橋】 いえ、現在考えられるものは、これがベストです。しかし、この標準のプリウスをベースにしているかぎり、リチウムイオンの電池から電源を取り出すことがすごくむずかしいんです。ヘタをすると爆発の危険なども伴うから、ビルダーの技術レベルでは扱えないんですね。
 そのため、室内の電装品をまかなうためには、現状では、どうしてもサブバッテリーを搭載せざるを得ない。
 しかし、プラグイン・ハイブリッドになってくれば、サブバッテリーを搭載するといったような、従来のキャンピングカーの電装システムとはまったく違うものが生まれてくる可能性があります。そこにチャレンジしていきたいですね。
 たぶん、そういう時代が来ると、キャンピングカーの市場がまったく違ったものになっていくような気もしますね。
【町田】 なるほど。キャンピングカーが、いちばん近未来的な 「エコカーライフ」 を提唱する自動車になっていく可能性だってありますものね。
  
 
 かーいんてりあ高橋 HP → http://www.canp-inn-japan.com/
 
 

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プリウス・リラックスキャビン への2件のコメント

  1. スパンキー より:

    このクルマは凄いですね?
    キャンカーの革命のようなフォルム。これが他と比べていいものかどうか分かりませんが、
    少なくとも何かエモーショナルで、惹きつけるものがあります。
    私的には、とても気になるクルマです。

    • 町田 より:

      >スパンキーさん、ようこそ
      確かにショー会場で見ても、これは画期的なフォルムのクルマでした。
      しかも、コンセプトがユニーク。
      キャンピングカーの未来像が少しずつ変わっていく時代を捉えているように感じました。

      スパンキーさんのブログもいつも面白く拝読しているのですが、なかなかコメントまで書き込む心理的余裕がない時期でして。
      それにしても、最近のエントリーは奥が深いですね!
      日に日に鋭さを増しているように感じます。

      もう少し余裕が生まれる季節を迎えたら、またゆっくりお話をさせてください。
       

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