レクビィの 「T-スタイル」

 
 バンコンビルダーの老舗 「レクビィ」 の人気車種ハイエース・プラスのキャッチコピーには、さりげなく 「T-style (T-スタイル) 」 という言葉が添えられている。

 T-スタイル

 新しい 「くるま旅」 のかたち … なのだそうだ。

 はて 「T-スタイル」 なる言葉に集約される旅のスタイルとは、いったいどのようなものなのか。
 レクビィの代表、増田浩一社長 (↓) に聞いてみた。

 「T-スタイルとは、ずばり言ってしまえば “車中泊” です。でも、その車中泊という言葉に “夢” はあるのか?」

 増田さんは、
 「車中泊という言葉には夢がない」
という。
 「車内で寝る」 という行為が、むき出しのままゴロンと転がっている感じで、旅のワクワク感も、ときめきも、高揚感もない。

 「出張中のビジネスマンが、疲れてクルマの中で眠るのも “車中泊” 。長距離運転を強いられるトラックドライバーが、サービスエリアで、ハンドルにもたれかかって寝るのも “車中泊” 。
 そのような休憩のとり方と、キャンピングカー旅行中の休憩のとり方は、同じ “車中泊” という言葉を使いながら、まったく別物」

 そう感じた増田さんは、 “車中泊” という概念をチューニングして、そこに 「キャンピングカーによる旅のワクワク感」 や 「旅への期待」 を盛り込み、車中泊というイメージそのもののクオリティアップを試みることにした。

 こうして 「車中泊」 という概念のバージョンアップとして生まれた言葉が 「T-スタイル」 となった。

 「T」 には、英語のツアー (tour) 、トラベル (travel) 、トリップ (trip) などの意味が込められると同時に、日本語の 「旅 (tabi) 」 という語呂も生かされている。

▼ T-スタイルとは 「旅の楽しさ」 意味する造語

 その 「T-スタイル」 という言葉を与えられたハイエース・プラスの新型車とは、どういうものか。

 「基本的には、気楽に使えるライトな感覚を持ったバンコンです。食事や入浴などはファミレス、居酒屋、温泉で楽しみ、車内ではテレビを観たり、軽く飲んだり、音楽を聞いてくつろぎ、あとは快適なベッドでゆったり寝る。
 そういうライトな使い方を得意とするクルマなのですが、ただし、 “ライト” ではあっても、 “チープ” ではない。
 内装の雰囲気などは、今までのシリーズよりもリッチ感を増しています。さらに、装備類も充実させ、 “車中泊” という言葉から漂ってくる無味乾燥な匂いをできるだけ払拭するようにしました」
 と、増田浩一さんは語る。

▼ ハイエース・プラス T-スタイル 室内

 彼は、なぜ、「車中泊」 という概念が浸透していくことに、ためらいを感じたのか。

 「日本のキャンピングカー産業は、いまちょうど、『機能のアピール』 から 『夢のアピール』 に軸足を移そうという、その転換点に立っていると思うんです。
10年ほど前のわれわれだったら、キャンピングカーをつくる自社の技術力の高さだとか、充実した装備類、あるいは自社製品の安全性の高さなど、そういう製造面でのクオリティばかり訴求していたでしょう。
 でも、もう時代が違う。
 ある意味で、われわれの業界は、技術的なクオリティを追求することに対して一定程度の成果を上げてきたと思うんです。
 今は、『キャンピングカーのある生活がいかに人間に夢や元気を与えるか』 ということをアピールする時代になったのではなかろうかと … 」

 そういう時代に、「車中泊」 という言葉はそぐわない。
 「車中泊」 には、人間の情感やうるおいよりも、企業的な機能や効率を優先していた時代の響きがある。
 だから、 “ただ寝られればよい” といった素っ気なさを拭いきれず、みなが同じ駐車場を共有するときのマナーを守るというニュアンスも薄れるんではないか。

 … という思いが、増田さんにはあるようだ。

 彼には、「キャンピングカーは人間の情感を豊かにするもの」 という信念がある。
 キャンピングカーは、けっして 「人を運んで、ただその中で寝かせる道具」 ではない。

 「われわれは、もちろん芸術家ではありませんから、映画や音楽のように、ストレートに人間を感動させるようなものを作っているつもりもないんです。
 しかし、ただまったく無味乾燥な道具をつくっているわけでもない。
 微々たるものかもしれないが、われわれの仕事は、人の心を揺り動かすクリエイティブな領域に小指の先ぐらいは突っ込んでいるぞ、という自負があります。
 たとえば、わたしたちのクルマには、『カントリークラブ』 や 『ファイブスターCP』 などという車種がありますが、そのギャレーや手洗いの受け皿などには、さりげなく織部焼きの陶器などを埋め込んだりしているんです。
 気づく人だけが、そこに視線を走らせるだけかもしれませんが、もし使う人がそこに 『洒落っ気』 や、『うるおい』 や、『やすらぎ』 を感じてくれたなら、それは私たちの喜びでもあるのです」

▼ レクビィのバンコンに使われる瀬戸の陶器

 そのような 「やすらぎ」 や 「うるおい」 を生み出すのが、キャンピングカーという商品の豊かさであり、その豊かさを創造することがビルダーの仕事。
 そして、その豊かさが 「旅」 の形をとったものが、「T-スタイル」 。
 増田浩一さんの頭には、その関係図がくっきりと浮かんでいるようだ。

 もともと、増田浩一さんは、RV協会が新しい標語として掲げている 「食、寝、遊、備 ( くうねるあそび) 」 というキャッチを考案した人。
 従来から知られたキャンピングカーの属性を表す 「食」 「寝」 「遊」 という 3要素に、震災などに見舞われたときの緊急避難要素としての 「備」 を加えることによって、キャンピングカーが実現するライフスタイルに新しい項目を導入した人でもある。

 だから、この 「T-スタイル」 という言葉にも、「食、寝、遊、備 ( くうねるあそび ) 」 と通じ合うニュアンスがある。

 そう思いながら、この 「T-スタイル」 をもう一度、舌の上に転がす。
 あら、不思議。
 なかなか含蓄のありそうな響きが伝わってくるではないか。
 きっと、キャンピングカーが約束する 「新しいライフスタイル」 全般を意味する言葉に育っていくだろう。

 レクビィ HP →  http://www.recvee.jp/ 

 参考記事 「レクビィ 『ヴォーノ』 」

 参考記事 「レクビィ 『パークウェイ』

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レクビィの 「T-スタイル」 への2件のコメント

  1. 渡部竜生 より:

    そうなんですよ!『機能のアピール』 から 『夢のアピール』 これです!!
    物を作るのは上手でも寡黙な職人…ビルダーさんにはそんな方達が多いんですよね。モッタイナイ、実に勿体ない。キャンピングカーには、フェラーリにも、ロールスロイスにも真似のできない「夢」がたくさん詰まっているだと思います。高速道路や新幹線では見えてこない日本の良さを味わう、最善のツールがキャンピングカーなんだと!

    一人でも多くの方が「夢」に触れられるように!…そんなお手伝いができたら、実はそんな思いで“Campingcar Evangelist”を目指しています。

    • 町田 より:

      >渡部竜生さん、ようこそ
      渡部さんの著作 『キャンピングカーって本当にいいもんだよ』 は、キャンカーの選び方・使い方ノウハウ集でもありますが、その本質は、まさに “夢のアピール” でしたね。
      だから、そのへんの呼吸において、このレクビィの増田さんとも相通じ合うものが多々あろうかと思います。

      >「キャンピングカーにはフェラーリ、ロールスロイスにも真似できない『夢』が詰まっており、高速道路や新幹線では見えてこない日本の良さを味わえるツール」
      まさに、そのとおりですね!

      それにしても、“Campingcar Evangelist” とは、言い得て妙。
      いい言葉ですね。
      これからは、私も渡部さんのことを 「Campingcar Evangelist」 と呼ばせていただきます!
       

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