AtoZの 「Be-cam (びぃーかむ) 」

 
 国産キャブコンを開発する場合、まずどこのビルダーも悩むのは、ベース車の選択肢が限られてしまっていること。
 たとえば、アメリカン・クラスCモーターホームでは熟成度の高いフォードE350、E450などのカットウェイシャシーがベース車として安定供給され、ほかにワークホースなどがあり、ヨーロッパではアルコシャシーを採用したフィアット・デュカトやメルセデス、フォルクスワーゲンなど、信頼性の高いベース車が広くEU圏内に普及している。
 
 しかし、日本の場合は、ほぼトヨタのカムロードが中心。
 架装重量も車両サイズも異なる各ビルダーのキャブコンを、ほとんどこのベース車が支えてきたことになる。
 
 それだけに、カムロード車では、架装部分の設計とベース車のキャパを調整する必要が出た場合は、独自に足回りをチューニングするなど、ビルダー単位で個別に走行性能や乗り心地をサポートするための努力が続けられてきた。
 
 そのような流れの中で、キャブコンメーカーとして知られるエートゥゼット (AtoZ) が自社のオリジナルキャブコンであるアルビオンならびにアラモに採用した 「Be-cam (びぃーかむ) 」 といういすゞ製シャシーが話題を呼んでいる。


 
 これは、同社が、いすゞ自動車の協力を得て世に送り出した新しい 「キャンピングカー専用シャシー」 。
「Be-cam」 とは、Be a camper! Be camping! Became など 「本格的なキャンピングカー専用ベース車を目指す!」 という意味を込めた造語で、対象となるのは、商用トラックとして定評あるいすゞエルフの1.5トン車および2トン車。
 トヨタ・カムロードと同じように、商用トラックをベースにしながらも、キャンピングカービルダーが架装することを前提に専用設計されたシャシーであり、一般には市販されない特殊な車両であるところに特徴がある。


 
 「びぃーかむ」 開発の狙いは、どんなところにあったのか。
 いすゞ自動車にさまざまな要望を出し、その開発の一端をも背負ってきたエートゥーゼットの渡邉常務に聞いた。
 
 「狙いは、乗り心地の飛躍的な向上にあります。昔から、キャンピングカーに使用する2トン車というのは、だいたい “跳ねるクルマ” でもあったわけですね。ヘビーデューティーな使い方を想定して作られたトラックなので、後部に人間が乗るようには設計されていなかったわけです。
 そこで、2トン車の強靭なシャシーをそのまま生かしながら、十分な乗り心地を確保する目的で開発したのが、この 『びぃーかむ』 というわけです」
 
 では、どのくらいの乗り心地を追求しようとしたのか。
 
 「理想は “乗用車のような乗り心地” です。この 『びぃーかむ』 ではさまざまな人に携わってもらったことで、ほぼそれに近いところまでできたように思います。」
 と、渡邉常務 (↓) は語る。


 
 メインは、リーフ、ショックなどのリヤサスペンションのチューニング。
 リーフは、枚数を重ねるトラックのリーフとはまったく異なる 1枚もの。
 それによって、しなやかな乗り味を確保し、スタビライザーを付けて、ロールや揺れを防ぐようにしている (2WD) 。

 
 
 なんといっても、大メーカーのいすゞが直接開発に携わったというのが大きい。 
 メーカーならではの緻密なテストを積み重ね、さらにキャンピングカーとして様々な機能を考慮に入れながら、地道に、しかし粘り強く、2年半かけて完成形にまで持っていったというこのシャシーは、間違いなく日本のキャンピングカー史上のエポックになるだろう。
 
 渡邉常務がいうには、
 「ベースはエルフでも、このシャシーはエルフとは別物。トヨタのカムロードがダイナではないのと同じように、これは 『Be-cam (びぃーかむ) 』 というキャンピングカー専用設計シャシーです。」
 
 『びぃーかむ』 専用サービスとして、いすゞのユーザーサポートサービスが受けられることも特徴の一つで、この 「ELFサポート」 に入会すればいすゞディラーでの法定12ヶ月点検および車検を条件に、最長 8年もしくは16万kmの延長保証や、その他さまざまなサービスがつくという。
 
 国産キャブコンは、その架装技術やレイアウト、デザインにおいて、すでに相当高度なレベルに到達してきたが、いよいよその土台ともなるシャシー部分での革命が始まったようだ。
 
 
 AtoZ (エートゥゼット) HP
 http://www.atozcamp.com/
 

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AtoZの 「Be-cam (びぃーかむ) 」 への8件のコメント

  1. 犬飼@岐阜 より:

    理想に叶ったベース車ができたと楽しみにしていましたが、一年経ってもAtoZさん以外から採用される様子はないですね。

    バンテックさんのZiLクルーズもびぃーかむではないようです。

    日本RV協会さんのHPにもベースシャシーの欄でも紹介されていませんんし。

    なにか事情があるのか採用に値しないのでしょうか?ちょっと残念な状態に思えます。

    • 町田 より:

      >犬飼@岐阜さん、ようこそ
      AtoZさん以外のメーカーがこのBeCam を使うのは、今のところちょっと敷居が高いと感じているのではないかと推測します。

      というのは、これはエートゥさんが、いすゞと共同開発したシャシーで、いわばいすゞ自動車としては、エートゥさんのキャンピングカー製造技術を評価して信頼したからこそ商品化できたというところがあります。
      だから、他のビルダーが名乗りを挙げても、いすゞさんとしては、そのビルダーの技術力などを一から検討し直さなければならないという事情があるように思います。
      また、エートゥさんとしても、今のところは、「Be-camブランド」 で、他のエルフシャシーとの差別化を図りたいというところもあるでしょう。

      そういうわけで、「採用に値しない」 という問題はまったくないはずです。
      RV協会さんのHPにも情報がないとすれば、それは協会さんも、今のところ、「Be-camはエートゥさんというビルダー単独の技術である」 と認識しているからではないでしょうか。

      ただ、これだけ信頼性の高いシャシーが誕生したわけですから、ユーザーの立場からすれば、もっと広く普及してほしいとは思いますね。
       

      • 犬飼@岐阜 より:

        町田さん

        早速の返事をありがとうございます。

        普及の第一歩はまず自分がユーザーになることなんでしょうね。
        買い替えのときには、是非検討したいです。

        • 町田 より:

          >犬飼@岐阜さん、ようこそ
          わざわざご丁寧な返信、ありがとうございます。

          おっしゃるとおりかもしれませんね。
          「まず自分がユーザーになる」。
          すべてそこからスタートかもしれません。
           

  2. 木挽町 より:

    詳しくはないのですが、ダイナもデュトロもエルフもいいクルマですね。中央アジアやアフリカ、中南米などでは数十人乗りのバスとして走っていますし、東南アジアでもトラバスとしてもお馴染みです。空車重量と積載重量の幅の持たせ方でキャンピングカーシャシーとしても活用できることも理解できます(通常であればバスのほうが積載重量は大きいので)。そのためのサイドメンバー、クロスメンバー、アクスル、バネ、ブレーキ、操舵など様々な部位に手を入れる必要はあるようですが、モノコックボデーをカットするよりは車両全体としての走安性、操舵性、制動性などは確保しやすいのではないかと思います。問題はパワートレーンですが、ディーゼルエンジンのトルク、熱効率を活かす走りであれば長い登坂路でも充分だと思います。最近の低回転で過給するダウンサイジングエンジンでは排気量こそ少なくなっていますが、パワー(トルク)はかえって増していますよね。従来のようにエンジンの最高出力は意味が薄れてきました。エンジンの性能曲線では表せない「トルクカーブ」(細かく出力トルクを計測して回転数に関わらず最高発生トルクの点をつなぎ合わせた線)をベースに、ダブルクラッチ(デュアルクラッチ)トランスミッションとの組み合わせで最もトルクフルで合理的なところ(回転数、ギア段)を使って走ることができます。結果的に無駄に燃料を消費しないので高燃費ですよね。逆に言えば、たえずノッキング寸前のところで走っているわけですから、トルク低下時(負荷増大時)に瞬時に対応(一速落とす)できるようにクラッチのスイッチ操作が必要でしょう。走行中はたえず一速下のギアもメインシャフトに噛んでいることが必要になります。トルコンやCVTとは違った発想ですが、走行中のギアがガチンと噛んでいるフィーリングが好きな方は喜ばしいはずです。長くなってごめんなさい。

    • 町田 より:

      >木挽町さん、ようこそ
      木挽町さんの特装車両に対する知識の深さと幅の広さにはいつも驚嘆させられます。
      たぶんお仕事柄ではないかとお察し申し上げますが、私の周りにいる業界人でも、(キャンピングカーのことならいざしらず)一般的な特装車に関して木挽町さんくらいの知見をお持ちの方は、そう多くはいらっしゃいません。
      私は、自動車の工学的な知識には暗い人間なので、いつも勉強させてもらっています。

      ただ、キャンピングカー関係の方々からいろいろお話をうかがっていると、架装する前のベース車のパフォーマンスがいかに大事であるかということは常々耳に入ってきます。
      というのは、国産キャンピングカービルダーさんたちの架装技術もここのところ飛躍的に向上してきて、居住部分の設計に関しては日本の風土・環境に適したベストのものを開発できるところまで来ているんですね。

      そうなると、ベース車と架装部分をコンプリートした状態で設計を考えなければならないという発想が生まれてくるようです。
      今までは、ベース車のパフォーマンスと居住スペースを切り離してキャンピングカーを考えることもできたのですが、電装系の架装技術なども洗練されてくるにしたがって、どうしてもベース車の能力そのものが架装部分と切り離せなくなってきたわけですね。

      ということは、これからはベース車を生産する自動車メーカーさんといかに協力体制をつくれるかということが大きな問題としてクローズアップされてくるわけで、ここに紹介した「Be-com」というシャシーもその典型的な一つの例ではないかと思っています。
      このような動きが加速化してくれば、日本のキャンピングカーはさらに飛躍のチャンスをつかめるわけで、その伸びしろは大きいと思っています。
       

  3. 木挽町 より:

    まったく同感です。シャシメーカーもビルダーさんと一緒になって開発していくことがいかに大切かよく分かります。電圧とかトルク点やギア比の設定など細かなことはいろいろとありますが、制動、荷重、操舵などは架装物と一緒に考えていくことで完成度の高いクルマになると思います。ともするとシャシメーカーは「量販志向」で大量生産+大量販売。でも、そんな時代は終わったと思います。今は一台一台を大切にしっかり作っていくことが求められていると思います。難しいのはアフターサービス、部品供給(純正)、修理、アフターも含めた品質保証でしょう。瑕疵担保責任やサービスマン教育や標準工賃の設定などいろいろと難しいこともあります。最近ではシャシメーカーでボデービルダー向けのマニュアルも用意しているところが多く、以前より進歩してはいますがまだまだ完璧ではありません。またキャブが無いストリップシャシ車(バスシャシーのような)の設定も増えてきているので今後が楽しみかもしれませんね。なにかございましたらご遠慮なくメールいただければ。

    • 町田 より:

      >木挽町さん、ようこそ
      ありがとうございます。頼りにしております。
      おっしゃるとおり、これからはシャシーメーカーさんとキャンピングカービルダーさんが一体となって車両開発に臨む時代が来そうに思えます。

      もちろん、今現在は、欧米に比べると、日本のキャンピングカーマーケットがあまりにも小さいので、シャシーメーカーさんもキャンピングカーシャシーの供給をメインの仕事として進めておりませんが、どうやらこの業界は微増ながらも毎年確実に生産・販売台数が上昇し続けているので、何かブームのきっかけでもあれば、今の市場の2倍規模ぐらいには一気に膨れあがるような気もします。

      そのときは、もう少し架装に適した機能やら走行性・安全性を考慮したシャシー開発が進むような気もします。
       

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