AKB48はなぜ集団なのか

 
 「AKB48」 に限らず、Kポップの 「KARA」 や 「少女時代」 など、今や歌謡界の女性アイドルはグループの時代。
 
 その昔、女性アイドルといえば、ソロであるのが当たり前であった。
 70年代の天地真理、南沙織などから始まり、80年代の松田聖子、中森明菜、小泉今日子など、かつての女性アイドルといえば、舞台でもポスターでも、一人でたたずみ、一人でニッコリするのが定番スタイルだった。
 例外的に、キャンディーズ (1972~1978年) がいたが、あれはグループというより、ラン、スー、ミキといった個性の際立った単独アイドルたちの集合体であった。
 
 そこに変化の兆しが現れてきたのは、1985年の 「おニャン子クラブ」 あたりからではなかったか。
 つまり、総合体としての個性が、個々のユニットの個性を超えて突出していくようなアイドルグループの時代が80年代から始まったのである。
 その流れがどんどん加速化され、90年代の 「モーニング娘」 を経て、現在の 「AKB48」 に至るようになる。


 
 現在のアイドルグループが、過去のキャンディーズのようなアイドルグループと違うところは、メンバーの代替が可能であるという点にある。
 メンバーが一人でも欠ければ、グループとしては存続できないキャンディーズ型グループとは異なり、すでに 「おニャン子」 では、個々のメンバーに流動性を与え、そのことによって、グループとしての “個性” を永続化させるような発想が生まれていた。
  
 このような、現代型女性アイドルグループの進化は、そのまま男性ファン層の “草食男子化” と歩調を合わせている。
 つまり、女性アイドルグループ人気上昇の裏では、男の求めるアイドル像の “非セックス化” が進行していたのだ。
 
 《 肉食獣は “群れ” を無視する 》
 
 アフリカのサバンナなどで繰り広げられる肉食獣の狩りには、ゆるぎない法則性が存在している。
 ライオンにせよ、豹にせよ、チーターにせよ、肉食獣は、エサとする草食獣たちの 「群れ全体」 を襲ったりはしない。
 必ず、群れの中の 1頭だけに狙いを定める。
 そして、その 1頭が、群れから離れた瞬間を見極めるか、もしくはチームワークによって、1頭だけを群れの中から追い出してから襲う。
 
 つまり、肉食獣の “欲望” の対象は必ずシングル (個体) に限定されるのである。
 彼らは、グループ (群れ) そのものには関心を持たないのだ。
 
 「草食系男子」 は、それとは逆行する。
 ここ最近際立ってきた、若い男のたちのアイドルグループ崇拝というのは、生物界の法則からすれば、異例のことかもしれない。
 つまり、男性が (性欲や見せびらかし欲なども含め)、女性を 「所有欲」 の対象として見なくなってきたことが、そこに反映していそうだ。
 
 もちろん、ファンたちの大半は、グループの中で自分の “お気に入り” のアイドルをたいてい一人はしっかりと定めている。
 しかし、それはグループを離れた存在として見ているのではなく、あくまでも、グループの中の 1ピースとして、愛し、尊重し、応援を繰り返すにすぎない。
 
 個体を一つだけ取り出して観察するのではなく、「群れ」 として全体を眺めるということは、「距離感」 手に入れるということである。
 その距離感は、「片思い」 の心理状況ときわめて酷似している。
 
 男が、恋愛感情を抱いて女性にアプローチした場合は、「相思相愛」 になるか 「拒絶」 されるかのどちらかである。
 そのどちらにおいても、両者の間の距離感は、ぐっと近づいた状態になっている。
 相思相愛状態であったとしても、この距離があまりに近い状態が続くと、人間はけっこうシンドイ気分になる。
 
 しかし、片思いは、恋する者が、相手との間に任意の距離を取ることができる。
 距離があるゆえに、相手の 「とまどい」 や、相手の 「拒否反応」 など、こちらが見たくないものが一切視覚に入ってこない。
 
 統一体としてのアイドルグループを愛することは、単独者を限定するときに生じる面倒を背負わないという意味で、「片思い」 の距離の保ち方と似ている。
 そこでは、恋の成就も、セックスによる征服もあきらめた代わりに、決して潰える (ついえる) ことのない恋のトキメキが保証される。
 
 このようなトキメキは、とかく 「実態がない」 とか 「生産性がない」 などという批難を受けがちだが、ステージの上に立っている誰かにトキメクというのは、立派な文化現象である。
 
 私は、アイドルグループに思い入れるような年でもないし、そもそもそういう嗜好が最初からないのだが、若い男の子たちの恋愛文化は、今まったく新しい方向に舵を切ろうとしているのかもしれない。
 
 
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