『Rの法則』 高校生の読む本

 最近の高校生は、どんな本を読んでいるのか。
 また、本についてどんな情報を欲しがっているのか。

 そんなことをテーマにしたテレビを、夕飯を食いながらたまたま観ていた。
 すぐチャンネルを変えようと思ったが、観ているうちに、どんどん面白くなった。

 NHK Eテレ東京の 『Rの法則』 という番組 (2011年11月放映) 。
 今の中高生が興味を持っている話題を、スタッフがテーマごとに調査し、それを人気順にランキングして、スタジオに招いた中高生とゲストの解説者が、その結果を語り合うという構成になっている。
 
 

 たまたま観たのは、 「聞きたい! 本の謎」 という特集。
 司会を務めるTOKIOの山口達也さんと、ゲストの石田依良さんに、さっそくスタジオに来た利発そうな女子高生から質問が飛ぶ。
 
 「よ~くぅ、本の帯とかに、これは泣ける小説です、とか、感動ドラマです、とか書いてありますけど、ああいうのは、書く人が最初から狙っているんですか?」
 
 うん、いい質問だよな。
 
 小説家の石田依良氏が、間髪を入れずに答える。
  
 「狙ったものは、まずダメですね。必ず外します」
  
 この当意即妙の解答が面白かった。
 
 「あらかじめ用意したジョークって、まずウケないでしょ。それと同じなんです。
 それに、 “いま泣ける本がブーム” だといっても、世の中の流れはすぐ変わる。
 感動小説が流行っているからといって、それを意識して書き始めても遅いんです。書き終わった頃には、もうそのブームが去っているかもしれない」
 
 いい答だと思った。これは小説に限らず、広く商品開発全般に及ぶ話だ。
 
 次の質問も、いいところを突いていた。
 これも女子高生だ。
 
 「小説を書くときは、最後の結末までしっかり計算して書くんですか?」
 
 きょうびの高校生は、なかなか鋭い。
 それって、本の読者よりも、これから小説を書こうと思っている人たちの方が興味を持つテーマではなかろうか。
 
 石田氏の答では、 「それは半々」 だという。
 彼の場合、恋愛小説を書くときは、ほぼ結末を考えないまま書き始めるらしい。
 だから、清純派として登場した少女が、途中からバリバリの悪女になったりすることもある、とか。
 
 「でもそれって、人生そのものが、そうなんではないですか。人間はいろいろな事件を経験して成長していく。しかし、どのような人生を歩んでいくかは、本人にも分からない」
 
 石田さん、言うなぁ!
 受け答えが面白い。
 
 この石田さんのように、小説家の中には、最初から結末を考えずに書き始める人たちも多いらしい。
 村上春樹も、そういう作家の一人であると聞いたことがある。
 
 しかし、緻密な構成を要求される推理小説のような場合は、登場人物がどんな行動を取るかは、最初から計算していないと、ストーリーそのものが破綻する。
 …… と思い込んでいたが、どうもそうでもなさそうだ。
 
 ある推理小説家は、昔こんなことを言っていた。
 「作家が、あらかじめ真犯人を用意して書き始めると、どうしても読者にはバレてしまうものなんです。
 だから、作家でさえ真犯人は知らない方がいい。
 その方が、意外性が生まれる」
 
 ほんとかいな? … と思って聞いていたが、ま、そういう推理作家もいるようだ。
  
 で、 『Rの法則』 の話に戻るけれど、
 「男の子は、恋愛小説を読むと、女の子と張り合うことができるようになる」
 という話も出て、これも面白かった。
 
 少年は、恋愛小説をあまり読まない。まどろっこしいし、かったるい、 … と敬遠しがちになる。
 
 「だから、女の子と恋愛を始めると、いいように “転がされる” 」
 と、石田さんは言う。
 
 「女の子は、物心がついた頃から、恋愛に関心を抱く。少女漫画などでもその大半は恋愛もの。
 そういうものに、小さいときから接してきた女の子は、いわば恋愛のプロ。
 だから思春期を迎えた頃になると、恋愛能力においては、男の子と女の子の間には “天と地” ほどの差が開く」

 ふぅ~ん …… 。そういうものか。
 よく解かった!
 といっても、私なんかはもう遅いけれど。
 
 番組途中で、最近の高校生によく読まれている小説のベスト 5が発表された。
 
 1位 夏川草介 『神様のカルテ』
 2位 車川篤哉 『謎解きはディナーのあとで』      
 3位 夏目漱石 『こころ』
 4位 あさのあつこ 『No,6』
同4位 湊かなえ 『告白』
 
 意外だったのは、3位の夏目漱石。
 最近の高校生は、けっこう日本の古典も読んでいるらしい。
 高校生たちの本棚を紹介する画像も出てきたが、その中には東野圭吾や山田悠介、美嘉などに混じって、夏目漱石や太宰治の本も見えた。
 
 ある女子高生は、 「すごくハマった作家」 として谷崎潤一郎の名を挙げた。
 
 「だーれも、賛同してくれないんですけどぉ、表紙が素敵だから買った谷崎潤一郎という人の 『痴人の愛』 って本が面白くってぇ …… 」
 
 これには、作家の石田さんも絶句。
 「それはいい、すごくセンスがいい!」
 と驚く。
 
 なにしろ、大正13年に発表された、 「小悪魔的な娘の色香に、真面目な独身サラリーマンがいいように翻弄される」 話。
 
 こういうのを読んでいる女子高生がいるかぎり、確かに、同世代の男の子は、いいように “転がされる” んだろうな。
 
 

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