基地の街の思い出

  
 所用があって、東京の福生市へ行った。
 中央線に乗って、立川から青梅線に入ると、とたんに視界が開ける。
 緑が多い。
 西立川あたりから、昭和記念公園が広がるからかもしれない。
 
 拝島で降りて、川越行きの電車を待った。
 電車が来るのに20分かかった。
 
 せせこましい中央線の風景に比べると、ここらの駅から眺める風景は、とりとめもなく広い。
 ただ、広い。
 
 
  
 線路の隙間に、雑草がこんもり生えている。
 「鉄道」 という近代文明のもたらした空間に、気前よく 「自然」 がのさばっているという感じがする。


 
 ローカル電車の駅の旅情もなく、かといって都市空間を貫く鉄道の幾何学的な緊張感もなく、… ただ、ぼんやりと広がっているホームの外の風景を眺めていると、面白いのか、退屈なのか、寂しいのか、自分の気持ちの整理がつかなくなる。
 
 東福生で降りた。
 
 乗る人もなく、降りる人もいない、静かな日曜日の午後。
 ホームにいるのは、立川方面に行く電車を待つ若いカップルだけ。


 
 この駅も、 「自然」 がおおらかにはびこっていくのを、そのまま放置しているように思える。
 
 
 
 駅員のいないシンプルな自動改札を通る。

 
 
 少し歩くと、16号線に出た。
 片道 2車線の道路を挟んで、向こう側には米軍基地が広がる。

 
 
 アメリカ兵を対象にした輸入雑貨屋や衣料品店が、7~8 軒連なっている。
 ベトナム戦争が継続していた時代には、きっと多くの米兵でにぎわったのだろうけれど、今は散歩に来た日本人のファミリーの姿が目立つ。
 
 
 
 それでも、ちょっと見は、どこかアメリカ風。
 古いアルバムの中にしまわれた、少し色あせた写真のようなアメリカ。
 
 
 
 昭和の匂いを残した 「テーラー」 があった。
 看板の絵は、黒人。
 こういう匂いは好きだが、お客は来るのだろうか。
 
 
 

 
 目的地の福生駅方向に向かう。
 
 坂を降りると、スナック街が広がる。
 旧 「赤線通り」 。
 「歓楽街」 という古典的な響きを持つ言葉が、ここではまだ生きているようだ。
 

 
 昔、このへんでよく遊んだ。
 30年以上も前の話。
 今はどうなのかよく分からないが、夜になると、ここらあたりを歩くのは、 “チンピラ” スタイルの日本人のあんちゃんと、米兵ばかりだった。
 
 当時は、黒人兵が入る店と、白人兵の入る店がくっきりと分かれていた。
 かかる音楽も、鮮やかなくらい分かれていた。
 白人の店にはカントリーがかかり、黒人の店には R&B が流れていた。
 
 でも、今は、そういう区分も消え失せているようだ。
 日本風の居酒屋もあれば、 「コリアン料理」 や 「タイ式マッサージ」 の看板を掲げる店も多い。
 かろうじて、昔の雰囲気をとどめた看板 ( 「JAZZ R&B」 ) もあったけれど、今はテナント募集中らしい。
 
 

 写真を撮ってみたけど、別に何の感慨もわかない。
 自分の記憶の中に残っている街とは、もうここは別の世界のように思える。
 
 用を済ませてから、立川駅構内の名物 「焼きそば」 をテイクアウトしてもらって、家に帰ることにした。
  
 

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基地の街の思い出 への2件のコメント

  1. solocaravan より:

    職場がこの沿線なのですが、これでも平日の通勤時間帯はそれなりに混雑してますよ。たしかにローカル線ののどかさには隔たりがあるし、都心の満員電車のようなストレスとも無縁です・・・本数が少ないのと悪天候によわいところは十分にローカル線と肩を並べていますが。

    横田基地はむかし仕事で出入りしていましたが、いまとなっては基地の街の精彩は失せてしまったように感じます。

    • 町田 より:

      >solocaravan さん、ようこそ。
      そうなんですかぁ、よくご存知なんですね。青梅線。
       
      この路線にはけっこう思い出があります。
      なにしろ、まだ昔の、外装がチョコレート色で、車内にポールが立っているような電車の頃から乗っていましたから。
       
      でも、久しぶりに乗って、しかも日曜日の午後だったので、けっこう “のんびり” した雰囲気を味わうことができました。
       
      福生の街にも遊びに行ったけれど、そのひとつ隣りの牛浜に通っていました。
      『BP』 という SOUL BAR があったので。
      でも、もうそうとう昔の話です。
      電車が牛浜を通過するとき、昔 『BP』 があった頃の風景を追って見ましたけれど、随分変わっていましたね。
       

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