黒木メイサの 「野性」

 
 黒木メイサの紅茶の CM (リプトンのスマートタイムズ)を見ていて、「誰かに似ているなぁ … 」 と思った。
 
 
 
 ラファエル前派に属するロンドン生まれの世紀末の画家、ロセッティが描く女たちに似ている。
 
 強い 「意志」 の光を放って、見つめる相手を射すくめる眼差し。
 容易にその内面を明かさない謎めいた口元。
 
 
 
  
 黒木メイサは、最近の若手女優の中では、珍しく、文明社会の中に解き放たれた 「野性」 を感じさせる女優である。
 安っぽい男などには容易に手を触れさせない、「狼の血を引いた女性」 とでもいうべきか。
 その “狼性 ”は、日頃は、エレガントな立ち居振る舞いの奥に隠されているけれども、いざとなったら 「牙をむく」 という感じなのだ。
 
 で、男は、そういう危険な香りを秘めた女が、自分にだけ見せる甘え (ツンデレ) に弱い。
 
 そのような甘えは、 「獰猛な野性の美女を手なずけた」 という、男の征服欲をくすぐるものとなり、 「いつ食われるか分からない」 というスリルを堪能させてくれるものとなり、 「この女と一緒に滅びたい」 という自虐願望を満たすものとなる。
 
 昼は、愛らしく尾を振る、従順なペット。
 夜は、足音もなく忍び寄り、冷たい牙を男の首筋に当てながら、温かい舌をはわす野性のケモノ。
 時間帯によってキャラクターを変えるような “謎っぽい” 雰囲気が黒木メイサの魅力であり、事実、このミルクティの CM でも、 「美しい謎の歌姫」 という役柄を与えられている。
 
 
 
 で、ロセッティの絵である。
 
 最近はあまり使われていないが、 「ファムファタール」 というフランス語がある。
 「運命の女」 と訳される。
 
 「男を破滅に導く運命の女」 …… 「魔性の女」 と訳すと、分かりやすいかもしれない。
 
 冒頭に紹介したロセッティ (ダンテ・ガブリエル・ロセッティ) という画家は、この 「ファムファタール」 を描く画家として知られている。
 
 
   
 ロセッティは、画壇の流派でいうと、 「ラファエル前派」 に属する。
 「美と調和」 に満たされたラファエロ流の絵画に反発し、 「ラファエロ以前の絵に戻ろう」 という芸術運動を起こした一派だ。
 彼は、その中でも代表格であった。
 
 「美と調和」 への意義申し立てがテーマになるのだから、当然その絵には、美は美でも 「不吉な美」、静謐に満ちた 「調和」 よりも、燃え立つ 「官能」 と 「誘惑」 が色濃く立ちのぼる。
 まさに、 「ファムファタール」 を描くには、ぴったりの筆致というほかはない。
 
 実際に、ロセッティは、自分の妻をもつ身でありながら、終始、他の男性の妻となった別の女性に思慕を抱き、そのため、彼の妻は薬物の採り過ぎで早世したという。
 そして、ロセッティ自身も、人妻のことが忘れられず、酒と薬に溺れた寂しい晩年を迎える。
 
 だから、彼の描く女性たちの像には、どこか 「男を狂わせる女」 の面影がチラつく。
 まさにそれは、クールな眼差しの奥に、肉食獣の気配を漂わせる黒木メイサの凄みにも近い。
 
  
  
 考えてみると、最近このような若手女優はほかにいない。
 
 上戸彩、深田恭子、長澤まさみ、宮崎あおい、井上真央、堀北真希、綾瀬はるか、石原さとみ、上野樹里 ……
 思い浮かべるままに、名前を列記してみたけれど、美人や演技達者はいても、 「怖さ」 がない。
 大人の女を演じていても、どこか 「お子ちゃま」 という感じなのだ。
 
 ま、男の好みが、それだけ “ロリコン化” してきたことを物語るのだろうけれど、このまま男たちのロリコン化が進めば、日本から、ファムファタールを演じられる女優の姿が消えていくことになるだろう。
  
 その点、黒木メイサには、交尾の後に、オスの頭をボリボリと噛み砕いてしまうメスカマキリの匂いがあるなぁ。
 こんな女にだったら食われてもいい … と思う男たちも多いだろう。
 
 でも、私は、この女はちょっと怖そうで、苦手。
 私の好きな女性は、テレビカメラが回り続ける限りは、「あっきゃー  ! 」 とハイテンションでしゃべりまくってくれる、平野レミさんのようなタイプなのである。
  
 
 
  
参考記事 「美人と悪女の関係」
 
参考記事 「尾野真知子に漂う 『昭和』 の匂い」  
 
 

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黒木メイサの 「野性」 への2件のコメント

  1. しんのすけ より:

    初めまして!
    ネット見ていてたどり着きました。
    黒木メイサちゃんのファンでファンブログやっているものです。
    別の切り口でのメイサ評、とてもためになりました。
    確かにメディアなどに出てくるメイサは怖いイメージはあるかと思います。
    でも内面はそうでもないですけどね。
    突然のコメント、失礼しました!m(_ _)m

    • 町田 より:

      >しんのすけ さん、ようこそ。
      UP して、まだ間もない記事なのに、コメントを頂き、ありがとうございました。黒木メイサさんのファンの方に読んでいただけるなど、光栄です。
       
      おっしゃるように、テレビや雑誌グラビアのようなメディアに登場するときのメイサさんは、クールな雰囲気を漂わせていることが多いですが、実際はかなり明るい方のようですね。無防備に笑ったときに、“人の良さ” みたいなものがこぼれる時があるので、「おっかない雰囲気」 というのは、かなりメディアが求めるものに合わせているんでしょうね。
       
       それにしても、あの “クール” な雰囲気は、最近の女性歌手、役者、モデルの中では出色です。ドラマでは、彼女だけにしかできない役柄があるように思います。
      いい役者さんに育っていきそうですね。

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