焚き火で育つ感性

 
 一般社団法人 「日本RV協会」 (JRVA) のHPに掲載されているプレスリリースを読むと、
 「親子でキャンピングカー旅行することで、子供の情操を高めたり、しつけを学ばせることができる」
 と思う親たちが増えているという。
 これは、同協会が運営しているHPを閲覧するキャンピングカーユーザーを対象に行ったアンケート調査から判明したもの。

 それによると、全体の75.3%の人が、 「キャンピングカーは子供の情操教育やしつけに有益」 と考えている様子が浮かび上がってきたと伝えている。

 その理由としては、
 「 1台のクルマの中で話す機会が作れたので、家族の団らんが得られたから」 。
 あるいは、
 「旅先で自然に接し、自然に対する理解が深まったから」 という回答が寄せられている。

大野路キャンプ場

 キャンピングカーは、必ずしも自然を求める旅ばかりを得意とするわけではないが、それでも、普通の乗用車旅行に比べると、自然とのマッチングはいい。
 実際に、子供を自然の中で遊ばせるためにキャンプ場を利用しているファミリーは多い。
 そういう親たちに話を聞いてみると、たいてい 「自然と接することの楽しさ、面白さを学ばせたい」 という答が返ってくる。

 その理由というのが、まさにRV協会の調査で分かったととおり、
 「子供の情操が高まるから」
 というものだった。

 こういう話を聞くたびに、私はある映像ジャーナリストの人が話してくれた 「焚き火の話」 を思い出す。
 まさに、キャンプを楽しむ親子でなければ得られないような体験だと思うからだ。
 話してくれたのは、坂田和人さん。

 以前、このブログでも紹介した 『キャンプに連れていく親は、子供を伸ばす!』 という本を書かれた方である。

坂田和人氏
▲ 坂田さん近影

 坂田さんは、キャンプライフを繰り返すたびに、焚き火というものの “不思議な力” にますます心を奪われてきたという。

 焚き火には、人間の心を開かせる力がある。
 家族同士でも。
 友達同士でも。
 あるいは、見知らぬ人同士でも。
 炎を見つめる瞳を通じて、心と心が共振していく。

焚き火043

 実際に、直火を禁止するキャンプ場でも、 「焚き火台」 を使う焚き火はたいてい許可されており、近年のキャンプ場では、その焚き火が静かなブームとなっている。

 焚き火のいったい何が、人の心を捉えるのか。
 坂田さんは、大勢の子供たちを連れてキャンプを楽しんでいたとき、焚き火の中を双眼鏡で覗き込んでいた子供が、 「あっ!」 と叫んだときの声を聞き逃さなかった
 「私、火の中に入っちゃったぁ!」
 と、その子はいった。
 それをきっかけに、子供たちが割れ先にと、次々と双眼鏡を回して、焚き火の中を覗き込んだ。
 「すっげぇ、火の国の探検だぁ!」
 どの子も、感嘆の声をあげた。

焚き火068

 その光景に接した坂田さんは、それを思い出しながら語る。
 「焚き火の中で発見した世界は、きっとテレビゲームのバーチャル世界をも凌駕する光景だったんでしょうね。
 僕も覗いてみて、テレビを見るより面白かったですから。

 つまり、自然の中には、どんな映像文明よりも人間を感動させるヴィジュアルが潜んでいるはずなんですが、われわれがそれを見つめる目を曇らせているだけなのかもしれません」
 そう語った後で、坂田さんは、
 「キャンプをすると親子の対話が生まれるということは、焚き火をするとよく分かるんです」
 とも。

焚き火と子供(塩原GV)

 実際に、キャンプ場で焚き火を囲んでいるうちに、いつのまにか、家庭で話さないような会話を交わしていた、と述懐するファミリーは多い。
 子供は、焚き火を囲むことによって、親に対するわだかまりが消えていくことを感じ、親は親で、子供を支配して説得しようという気持ちを忘れる。

 「やっぱり、焚き火は人類が最初に手に入れた “文明” なんでしょうね」
 と坂田さんはいう。
 「人類は、火を確保し、それをコントロールすることによって、はじめて野生動物の恐怖などから逃れることができたわけですね。
 そのとき人間は “温かさ” や “明るさ” と同時に、はじめて “安全” 、 “安心” などという概念を手に入れたのかもしれません。
 だから、焚き火には、人間同士の緊張を解いて、お互いにホッとさせる力があるんです」

 だから、
 「話さなくてもいい」
 という。

 つまり、焚き火をしていると、普段は 「気まずいもの」 でしかない沈黙が、黙っていることの心地よさも教えてくれる 「豊かな沈黙」 に変わっていく。

 「炎を見つめながら、同じ空間を共有しているだけで、言葉では表現できない気持ちを伝え合っていけるのが、焚き火なんです。
 そういうことは、むしろ大人よりも、子供の方が敏感に感じるでしょうね」
 坂田さんは自信を持って、こう言い切る。
 RV協会のアンケート調査の結果も、このようなことを反映しているのかもしれない。

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焚き火で育つ感性 への4件のコメント

  1. aki より:

    僕は子供を授かってから数年前に子育てを終えるまでの15年ほどを、親子でキャンピングカーで旅をしたり、カヌーやカヤック、あるいはスノーシューを履いて自然の中で一緒に過ごしたりしてきました。たった2人の子供しか育てた経験がない僕に、そのことで子供がどう育つか?を断言することは出来ません。でも、焚き火の魅力については、かなりの自信をもって語ることが出来ます。
    僕ら家族はカヌーで流れ着いた誰もいない山深い河原や島で、夜になると必ず焚き火を囲んで過ごしましたし、10年前から冬の間、毎日毎日薪ストーブという鉄の箱で自分で作った薪を燃やして焚き火をして過ごしてきました。僕ら家族にとって焚き火は特別な存在ではないごく日常的な存在になっています。
    それでも夜、薪ストーブの前に夫婦で、あるいは親子で並んで座って、揺らめく炎を見つめながら、何も話さずに時間を過ごすことがあります。
    焚き火の前で、人は対等になることが出来ます。それが友人であっても夫婦であっても親子であっても。

  2. 町田 より:

    >aki さん、ようこそ。
    素晴らしい 「焚き火」 賛歌ですね。
    aki さんのご家族が、焚き火の前で過ごされている風景が目に浮かんでくるようです。
    短い言葉ながら、10年間、焚き火を囲んで生きてこられた方の凝縮した思いが詰まっているように感じました。
    このブログ記事の中には、昨年の秋、はじめて会った絵描きさんの方と、丹沢の山奥で焚き火を囲んで話し合ったときの写真が混ざっています。
    もちろん最初は初対面のぎこちなさもあったのですが、焚き火の炎がパチパチを爆ぜるようになると、なんだか10年来の知己と話し合っているような気がしたものです。
    そのとき、焚き火は 「他者」 との距離を一気に縮める力があるんだと感じました。
    >「焚き火の前で、人は対等になることができる」
    ほんとうに、そのとおりですね。
    酒があればなおのこと、酒がなくても、人に酔える。
    焚き火には、そんな効果があるように感じます。
     

  3. aki より:

    家の中での“焚き火”を10年と書きましたが、よく考えたらもう13年でした。息子とは0歳から一緒に焚き火を眺め続け、6歳の時からは毎日薪ストーブの炎の前で語り合っています。
    『焚き火はキャンプのテレビジョン』...でしたっけ?
    以前、こういう言葉を耳にしたことがありますが、テレビはそこに映し出される画像だけしか見られませんが、焚き火は揺らめく炎の向こうに未来だったり、隣に座る人の心の内だったりが見えるような...そんな気がします。
    焚き火の前で人が対等になれるのは、焚き火の前で人が正直になれるからなんでしょうね、きっと。
    「そもそもの間違い」(10年前に書いた文章ですが)
    http://www.papapaddler.com/text/essay11.html

  4. 町田 より:

    >aki さん、ようこそ。
    13年ですか。
    ますますもって、その焚き火キャリアの充実度には感心してしまいます。
    >「焚き火はキャンプのテレビジョン」 というのは、本当に言い得て妙ですね。
    そして、>「焚き火は揺らめく炎の向こうに未来が見えたり、隣に座る人の
    心の中が見える」 …という指摘にも納得させられます。
    aki さんは、素晴らしい詩人ですね。
    以前から、そう感じておりました。
     

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