キャンカー1人旅

 
 「まもなく定年を迎える夫が、 『長いこと苦労をかけたから定年後はキャンピングカーで全国を回ろう。楽しい旅行をしような』 と言うんです。どうやって断ったらいいんでしょう?」

 いきなりそんな主婦の会話から始まる記事があったので、ギョッとした。
 『週刊朝日』 の1月28日号に掲載されたもので、シニアルネサンス財団事務局長の河合和さんという方に取材した記者が、それをまとめたものだった。

 河合さんは、定年後のライフスタイルをコンサルティングする仕事に携わる方で、各地でいろいろな講演する機会があるらしい。
 ある講演が終わった後、一人の主婦が河合さんに質問した内容が、上記のものであったという。

 先を少し読んでみると、どうやらその主婦の方は、 「キャンピングカー旅行」 そのものを拒否しているのではないらしい。
 旅行に付随する料理や洗濯。
 そのような家事を、旅行先でも自分が負担しなければならないことを危惧しての発言だったようである。
 だから、それに対する河合さんの反応も、
 「家庭において、一切の家事を妻に任せていた夫の方に問題がある」
 という常識的なコメントで結論をまとめていた。

 しかし、家族に協力しながらキャンピングカー旅行を楽しんできた夫族においても、 “妻の離反” は進んでいるようだ。
 それが、昨日のカッチさんのコメント。
 家族が次第にキャンピングカー旅行に付いてこなくなり、一人旅をしては、夜は独りで酒を飲むことが多くなっているという。
 「さびしい~」 といいながら、でも、カッチさんの文面からは、それはそれで味わいがある…というニュアンスが伝わってきた。

 たぶん、そういうことはこれからは増えていくだろう。
 家族単位で旅を楽しむことが理想であるかもしれないが、家族の構成員にもそれぞれの考え方があり、それぞれの価値観があり、それぞれの生活がある。

 さらに、ある程度の年齢になると、伴侶の死別や離婚という問題を抱えることもあろう。
 だから、 「おひとりさまライフ」 は、今後キャンピングカー乗りの間でも大きなテーマになりそうな気がする。

 大事なことは、 「それでもキャンピングカーに乗り続ける」 ということなのだ。
 一人旅がさびしいというのであれば、そのさびしさの中にも新しい楽しみを見つけてくれるのがキャンピングカー旅行だと思うし、また、同じ境遇にいるキャンピングカー乗り同士がどこかで出会い、他者と交わることから新しいライフスタイルを見つけ出すこともあるだろう。

 むしろ、 「一人でいることにも耐えられる文化」 をキャンピングカーがつくり出していくという、そのポテンシャリティに注目すべきだと思う。
 そして、そういう 「一人」 同士が集まって、今までとはまったく異なるコミュニティを形成する可能性だってある。

ハイマーキャンプ風景……

 キャンピングカーの家族旅行というと、元ハイマージャパンの安達二葉子社長が話していたことを思い出す。
 安達さんは、家族というものが必ずしも 「妻と夫と子供二人」 という標準世帯の形態をとる必要がないことを、ヨーロッパ旅行の体験から悟ったという。

ハイマーJ安達社長

 ドイツのハイマー社のキャンピングカーを25年間輸入してきた安達さんは、若い頃、今は亡くなられたご主人と一緒に、ハイマー社のモーターホームを使ってヨーロッパのキャンプ場を回った。
 そのとき驚いたのは、屈託のない表情で、子供たちをキャンプ場に連れてきて楽しませているシングルマザーたちの多さだった。

 「向こうでは、親がシングルでも “家族は家族” なんです。
 親が一人欠けていても、キャンプ旅行そのものが楽しければ、子供は幸せなんです。
 そのことをヨーロッパの人たちはよく理解しているから、そういう家族に対しても、周りの人の目が温かいんです」
 安達さんは、そういう。
 たった一人でキャンピングカー旅行をしている男の人たちは、さらに多いという。

 「日本では、一人でキャンピングカー旅行をしている男の人に対して、 “奥様にフラれたのかな?” 、 “ずっと淋しい独身生活をしているのかな?” などと要らぬ目で見る人たちが多いのですが、ヨーロッパ人はそうは考えない。
 向こうでキャンピングカー旅行を楽しむ人たちは主にシニア層ですが、そうなると奥様に先立たれる旦那さんも増えてくる。
 そういう人たちが、一人になってもキャンピングカーを捨てなくてすむ風土が形成されているということは、私は素晴らしいことだと思う」
 そう語る安達さんの心には、すでにご主人を亡くされたという切ない気持ちが去来しているのかもしれない。

ハイマーキャンプ風景2

 もちろん安達さんも、キャンピングカーが家族同士で楽しめる格好のアイテムであり、それによって家族間の絆が深まることを前提として話している。
 
 しかし、家族の形態は、ずっと不変であるとは限らない。
 父親と母親が二人ともしっかりそろい、そこに子供たちが配されるという 「標準世帯」 の構造が絶対的に正しいものであるのかどうか。
 それが 「家族」 のスタンダードだとしたら、たとえば両親のどちらかを亡くしたり、あるいはやむを得ない事情によって離婚してしまった家庭は 「家族」 ではないのか?
 どうやら、ヨーロッパ人たちは、昔からそのような固定的な家族観から脱出していたようなのだ。

 安達さんはいう。
 「日本には “片親” などという差別的な言葉が残っており、夫婦のどちらかが亡くなったり、離婚したりした親は、まるで自分が “家族の幸せ” から取り残されてしまったような思いを抱く人たちがけっこういると思います。でもヨーロッパのキャンプ場では、シングルたちへの眼差しがとても温かい」
 もし、シングルマザーが、自分の子供たちを連れて楽しくキャンピングカー旅行ができるような世の中が来れば、 「日本も確実に変わる」 と彼女はいう。
 これから高齢化社会を迎える日本において、シングルのキャンピングカー旅行を快適にするための精神風土をつくっていくことは、避けて通れない課題であるとも。

 一人で旅行していても、その思い出の中に 「家族」 が生きていれば、それは立派なファミリー旅行である。
 誰もがそう思えるキャンピングカー文化が形成されたとき、はじめて 「成熟」 という言葉が使えるのかもしれない。

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キャンカー1人旅 への8件のコメント

  1. おおきに! より:

    町田編集長さん こんにちは
    キャンピングカーに乗り始めて、十数年経ちました。
    当時、小学生だった長男は就職し、当時赤ちゃんだった3男は、今年高校に入学します。
    家族全員で北海道キャラバンをしたり、スノーキャンプをしたり、キャンピングカーに乗り始めたころは、とても濃厚な家族の時間を過ごしてきました。
    長男が、遠隔地の高専に入学した時、キャンピングカーは父母懇談会の宿泊場所として活躍してくれました。
    次男が、高校に進学した後は、スキーが好きな3男と二人でのスキー場キャンプが定番に。
    3男が中学入学後、あまり子供がついてこなくなった頃に、排ガス規制にかかった先代のZILを手放しました。
    でも、10年のキャンピングカーライフを通じて得た仲間たちとの、気楽なつながりを持ち続けたかったので、キャンピングカーには乗り続けました。
    ちょうど、同じ時期に、同じクルマに載っていた仲間は、ほとんど同じ世代でした。家族構成も同じような感じ。でも、住んでいる地域や、仕事がまったく違う、仲間ができていました。そして、その仲間と一緒に歳を重ねてきました。
    昨年、キャンピングカー仲間の子供が何人か、私の現職場の周りの大学に進学しました。遠隔地から来ている子供は、緊急連絡先に私の携帯電話をセットしています。
    現在、家内は公立図書館で司書をしていますので、なかなか週末一緒にでかけることはできません。
    でも、都合がつけば一緒に、そうでなければ私が1人で、新そばを食べに行ったり、旬の果物を仕入れに行ったり、友人宅を訪ねたり、いまでも我が家のキャンピングカーは活躍しています。
    今年の春、3男が遠隔地の高校に入学します。春までは、3男のお供でキャンピングカーに乗って、制服の採寸にいったり説明会に行ったり。また、春からは父母懇談会通いが始まるんだと思います。
    うちの家族形態は、いまだに夫婦プラス子供ではありますが、それでもこの10年ちょっと、時代時代によって家族内の付き合い方が変化しています。
    最近、大学生の次男(今年免許を取りに行く予定)が、キャンピングカーって良いなと言い出しました。
    私がいなくなっても、ひょっとしたらキャンピングカーは残って行くのかもしれませんね。

  2. solocaravan より:

    わたしも数少ない「一人旅」のキャンピングカー乗りなのですが、たしかに奇異の目で見られることは少なくありませんね。でも悪いことをしているわけではないし、最近ようやく慣れてきました。ひとりは気楽でもあり侘しくもあり、おなじ一人どうしが集う同好会があればいいなとも思いますが、自分の性分からして、そうすればそうできっと窮屈になるにちがいありません。折り合いがつかないのは他人とではなく、自分自身とだな、とつくづく思ってしまいます。
    外国のキャンピングカー雑誌を読んでいると、「黒人で差別されてきたが、キャンパーやキャンピングカー乗りからはいっさいそうされたことがない」とか、「同性愛のカップルでもキャンプ場では、差別なく受け入れてくれる」といった記事や読者投稿をよく目にします。差別多き世の中でも、キャンカーやアウトドアという記号が媒介となって特別な連帯感や同類意識を生むのかもしれませんね。

  3. 町田 より:

    >おおきに! さん、ようこそ。
    なんと素敵なキャンピングカーライフを経験されたのでしょう! うらやましい限りです。キャンピングカーの思い出が、そのまま 「家族の思い出」 と重なっているわけですね。本当に理想的なキャンピングカー生活を経験されたと思います。
    実は、先日、うちのカミさんが、息子が高校時代の友人のお母さんと会って、いろいろ思い出話をしたそうです。
    長男が高校生の頃、そのお母さんとその息子さんを伴って、わが家族とキャンプ場に行ったことがありました。
    「また、子供たちと一緒にキャンプに行きたいね」
    母親同士でそんな話に花が咲き、この春、それぞれ成人した息子たちを連れて、またキャンピングカーでキャンプに行くことになりました。
    一度キャンピングカー旅行の楽しさを知った人間は、やはりいくつになっても、また一緒に旅に行きたくなるんですね。
    お母さん同士はクルマの中で。男たちは、今度は酒など飲みながら、オーニングの下で。
    それぞれ郊外の空気を吸いながら、キャンプを楽しみたいと思っています。
     

  4. 町田 より:

    >solocaravan さん、ようこそ。
    外国のキャンピングカー雑誌の話は、とても勉強になりました。いい情報をありがとうございました。
    なるほど。キャンピングカー乗りの間には 「差別がない」 というのは、とても希望の持てる話です。
    格差社会が広がり、ちょっとしたことで他人を見下したり、逆に他人を嫉妬しがちな傾向が進む日本ですが、>「キャンカーやアウトドアという記号が媒介となって連帯感や同類意識が生まれる」 としたら、それはぜひ進めていきたいと思います。
    「一人旅」 は私も好きです。だから、旅先で同じような一人旅をしているキャンピングカーユーザーがいたら、ぜひ情報交換をしてみたいと思っています。
    しかし、お互いに相手を思いやりながらシカトし合う自由さも大切です。
    一人旅にも、いろいろなスタイルがあった方が楽しいと思います。
     

  5. カッチ より:

    どうも!こん××は。
    なにやら、ぼくの一人旅がテーマに入っていて、嬉しいやら恥ずかしいやらですが、キャンピングカー一人旅は、世間にはまだ珍しいようで、だいたいの人が勿体無いと言います。
    恐らく一人で行く旅にキャンピングカーを使うのが勿体無いってことでしょうが、まだまだキャンピングカーは高価な物だとの位置付けでしょうか?
    そうは言っても、クラウンやアルファードも500万円超えるグレードがあるって言うのに・・・
    ところで、最近は伊藤園ホテルグループhttp://www.itoenhotel.com/のように365日同一料金で1泊2食付・バイキングプラン(アルコール・ソフトドリンク飲み放題付き)大人お一人様 7,800円、3名以上6,800円で温泉入って、飲んで食えて朝もバイキングでと・・・
    たしかに、部屋も凄くキレイな高級な部屋じゃないし、食材もその辺の食堂のレベルの食材かも知れませんが、充分と言えば充分なんですよ。
    それを思うと考えが、キャンカーじゃなくてプリウスがいいのかなと思えちゃう時もあります。
    それを思うと、オートキャンプ場に一人で行ってサイト料で5000円を払うのが、なんかバカらしく思えちゃうんです。
    家族4人ならまだしも、一人で行ってもサイト料は同じですからね。
    キャンプ場も運営していく中で固定費があってのコストもわかりますが、これだけ格安のホテルがある以上、やっぱりキャンプ場も価格体系の見直しもないと5000円払って一人でキャンプ場使用も考えちゃいます。
    今度、キャンピングカーで一人旅館旅に行ってみようかな?でも、やっぱり寂しいのかな?

  6. 町田 より:

    >カッチさん、ようこそ。
    カッチさんの提出された “一人旅” というテーマは、これからの旅行スタイルを考えると、けっこう普遍的なテーマになっていきそうな感じもするんです。
    >「キャンピングカーの一人旅なんて、勿体ない」 という感想が生まれるのは、もちろん 「高価なクルマなのに…」 という印象を反映している声とも思われますが、「せっかく家族で楽しめるクルマなのに…」 という気持ちもこもったものかもしれません。
    だけど、キャンピングカーには、 「一人でも楽しめる」 ってところが、やはりあるように思います。
    確かに、今はホテル業者も生き残りをかけていますから、格安な旅行プランというのも当たり前になってきましたね。
    だけど、食堂でメシ食って飲んで、部屋でテレビ見て…ってのを一人で繰り返していると、やっぱりそのうち惨めになっちゃうような気もします。
    キャンピングカーだったら、カッチさんのように、いろいろ自分で使い勝手を工夫して、その効果を点検するみたいな楽しみ方もあるんじゃないでしょうか。
    ま、確かに関東近辺のキャンプ場は、高いことは事実ですね。そのへんは、いろいろキャンプ場でなければできないサービスなんかで工夫を凝らしてもらわないと、旅行客は集められないでしょうね。
    たまには 「旅館に泊まる」 そして、「道の駅」 も活用する。さらに、 「特色を打ち出したキャンプ場があれば、そっちにも泊まる」 …という感じで、そのときの予算とか気分でいろいろな泊まり方を並行して楽しむ時代が来ているように思います。
     

  7. いわちゃん より:

     退職しました、しかし年金がもらえないので夫婦バイトしています。キャンカーを手放して10年。最近中古を手に入れましたが休みがなかなか合わない。せっかくのキャンカーなので一人でと考えています。参考にしたいです。

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