車中泊の社会実験 (実態調査)

 
 「道の駅」 などにおける車中泊が急増し、トラブルなども表面化したことを踏まえ、 「車中泊利用者のニーズ」 と 「道の駅としてできるサービス」 の共生点を探ろうという動きが昨年 (2010年)から活発になっている。

 このような研究を進めている団体の一つに 「東北 『道の駅』 車中泊研究会」 がある。
 同研究会の目的は、 「車中泊」 を、利用者側と管理者側に分けて考えることにより、利用者側には守るべきマナーやルールづくりための啓蒙を行ない、受け入れる側には、 「車中泊」 をきっかけに地域の観光産業を活性化させる可能性を提案するなど、両者の利益が合致するポイントを探るところにある。

 構成メンバーも、アカデミズムと行政のバランスを巧みにとり、大学教授、特定非営利活動法人 「東北みち会議」 、東北各県自治体の土木課、道路整備課、観光産業振興課などのスペシャリストたちが顔を揃えるという “厚み” を持ったもの。
 行動としては、まず車中泊利用者の実態調査が必要であるという考えに立ち、昨年秋に、東北の 「道の駅」 における車中泊利用者の実態調査を行なっている。

▼ 聴き取り調査の行なわれた東北の道の駅 「いいで」 (上)
  と 「よつくら港」 (下)

道の駅いいで
道の駅よつくら港

 この新春、その結果を紹介するプレスリリースが発表されたが、そこから、車中泊利用者たちのニーズや行動形態、さらに 「道の駅」 管理者たちの希望や心配事など、日本の 「車中泊」 ブームを支えるさまざまな興味深いデータが浮かび上がってきた。
 
 具体的な調査方法や数値の解説は、同研究会のリリースに任せるとして、ここでは、おおまかな傾向だけを紹介する。

 熟年層の利用者が6割

 まず、車中泊利用者の年齢では、50代~60代の熟年層が 6割を占め、その同行者のほとんどは夫婦で、それが全体の 5割に達することが分かった。

 一方、 「同行者なし」 という単独旅行者も24%存在したが、その場合は、車中泊の目的もはっきりしており、登山、釣りなどの趣味を極めるための宿泊であることが明白で、旅の日程も長くなる傾向があるという。

 職業では、会社員が38%と最も多く、次が自営業の22%。3 番目は自由業の17%であった。
 また、比較的最近になって始めた人が多く、車中泊歴としては 「5 年以内」 と答えた人が47%に達した。
 それを見ても、車中泊という旅のスタイルがここ数年内に急速に確立されてきたものであることが見て取れる。

 最も多いのは車中泊用の改造車両

 宿泊に利用している車両に関しては、 「車中泊用に改造された車両」 というものが大きな比重を占め、それが全体の34パーセントに達した。

 “車中泊用の改造車両” というのは、オーナーが車中泊用に自分で室内改造を施したもので、いわば 「乗用車以上・キャンピングカー未満」 といったもの。作り込みは個人によって差が出るが、いずれもその1台で 「継続して車中泊を行える」 仕様になったものを指す。

 車種としては、ワンボックスカー (48%) を主体としながらも、ミニバン、ステーションワゴン、軽自動車など多岐にわたるという。

 2番目に多かったのは、やはりキャンピングカーで、これが全体の32%に及んだ。
 種類別に見ると、キャブコンが多く、キャンピングカーのなかでは46%を占め、次がバンコンの24%だという。軽キャンパーは9 %、フルコンは6%であった。 (※ キャンピングカーの種類別調査では、特にお願いし て詳しい調査結果を別に用意してもらった)

▼ 湯YOUパークのキャブコン
湯YOUパークのキャブコン

 3番目は、 “ノーマル普通車” 。
 これが29%。
 リリースでは、単に 「普通車」 としてしか書かれていないが、一般の乗用車のシートをリクライニングしたぐらいの形で仮眠を取った人々のことが想定される。

足柄山SA車中泊の朝

 観光・温泉などの目的が目立つ

 車中泊をすることの目的としては、リリースでは次のような結果が報告されている。
 「観光」          31%
 「温泉・保養」  17%
 「レジャー」      11%
 「ドライブ」        8%
 「食事」             7%、
 「祭り・行事」   7%
 「ビジネス」       3%
 「ショッピング」   2%

 やはり、 「観光」 と 「温泉」 が目立つが、それ以外は個別の目的が僅差で並び、突出したものを探し出すのは難しい。ここからは自動車旅行の目的が多様化しているということを読みとればいいのかもしれない。

車中泊中国自動車道

 最大の理由は “自由な旅” の実現

 「車中泊による旅行の理由」 を尋ねたところ、 「自由な旅のプランを求めるため」 という回答が全体の29%を占め、2番目の 「宿泊費の節約」 (27%) をわずかだが上回って、一番の理由として挙がった。

 さらに 「趣味として」 という回答も21%を占めて 3番目になった。この中には 「クルマの中で寝ること自体が趣味」 という答も含まれるという。

 「車中泊」 という言葉の響きから、 「ホテル代を節約するため」 というイメージを浮かべる人が多いだろうが、この調査を見るかぎり、必ずしもそうとは言い切れない。
 「節約」 よりも、むしろ 「パック旅行とは違う自分だけのオリジナル旅行をしている」 という満足感の追求みたいなものが、ここからは浮かび上がってくる。
 これに 「趣味として」 という答を合わせて考えると、今までの自動車旅行とは全く異なる、新たな旅のスタイルが生まれつつあるようにも思う。 

 マナーについては温度差が

 「車中泊」 においては、マナーの問題がよく採り上げられる。
 今回の調査でも 「道の駅利用でマナー違反と思う行為は?」 という設問を設け、利用者のマナー意識を調査している。
 それによると、 「ゴミの投棄」 と答えた人が最も多く、19%に達した。

 以下、次のようになった。
 「 (洗面所等での) 炊事」         15%
 「 (洗面所等での) 食器洗い」  13%
 「 (洗面所等の) 電源の利用」   12%
 「 (洗面所等での) 洗濯」         10%
 「発電機の利用」                       11%
 「給水」                                       9%
 「バーナーの使用」                       7%

 これを見る限り、車中泊利用者のマナー意識はけっして悪くない。特にキャンピングカーユーザーの場合は、日本RV協会などが鋭意 「マナーキャペーン」 などを行っているため、そのルールを熟知しているユーザーが多いからかもしれない。

 もっとも、 「道の駅」 側から見ると、必ずしも利用者のマナーは及第点に達してない。
 道の駅の駅長さんたちから寄せられたアンケート調査の回答では、 「車中泊利用による問題点」 として、次のようなものが挙がった。

 「ゴミの投棄」  27%
 「テーブルを車外に持ち出したりする駐車場の占有」 22%
 「洗面所での炊事、洗濯、給水等」  19%
 「火気の使用」  15%
 「電源の無断利用 (盗電) 」  15%

 マナー問題に関しては、まだまだ両者の間には開きがある。
 「車中泊」 のルールやマナーをどう擦り合わせていくか。これは今後の大きな検討課題となりそうだ。

 それでも、今後 「車中泊を積極的に受け入れていきたい」 と答えた道の駅が9 %。
 「受け入れることができる」 という道の駅は31%。 「条件付きで受け入れる」 という駅は44パーセントとなり、回答駅の8割は、受け入れに好意的な姿勢を示した。

 その理由は、下記のような答に代表される。
 「駐車場・トイレを24時間使えることが道の駅の条件なので、積極的に利用して満足していただきたい」
 「道の駅には、安全、安心のイメージがあり、夜間の防犯を考えても、駐車台数が多い方がよい」
 「道の駅が地域の (観光の) 拠点となるように、積極的に考えていきたい」
 現状では問題があることを認めつつも、 「車中泊」 が地域の観光産業を活性化してくれるかもしれないと期待する各管理者たちの願いが反映されているように思う。

車中泊の朝三重県

 このほかにも、車中泊利用者たちがつかう 「交通費の額」 、 「食事、お土産などに使う費用」 、 「食事形態」 などの面白いデータが数々アップされたリリースだが、長くなるので割愛する。

 生まれつつある新しい観光スタイル

 このような調査結果から、いったいどのようなことが分かってくるのだろうか。
 リリースを精査したある専門家は、こう語る。 

……………………………………………………………………………… 

 「車中泊」 というブームを、単なる表面的な現象として捉えることは、もうできないのではないか? これは、もっと大きな流れの中で見なければならないものかもしれない。
 つまり、いま 「車中泊」 という現象の中で起こっていることは、日本の経済や文化、社会制度などがドラスティックに変化していることをそのまま忠実に表現しているともいえそうだ。

 具体的には、 「失われた20年」 といわれるような経済的停滞が長く続いたために、人々の意識の中に 「節約はカッコよく、浪費はカッコ悪い」 という価値観が育ってきたことも反映されているだろう。
 さらに、 「情報氾濫社会」 の中で、メディアから垂れ流される情報に飽きたらず、情報を主体的に獲得し、さらに自分自身が情報発信元になりたいという人々が増えてきたことも要因となっているように思う。

 道の駅における車中泊利用者たちの目的を尋ねると、 「同じ嗜好を持った人たちと情報交換することが楽しい」 という声がけっこう挙がっている。
 これは、メディアを経由した既成の情報に飽きたらなくなった人々が、 「車中泊グループ」 を中心に “生きた旅の情報” を求め始めたということを意味するのではないか?

車中泊の朝山口県

 車中泊利用者のインターネットリテラシーは高いといわれている。
 多くの人は自前のブログ、ツィッターなどで、車中泊で泊まり歩いた場所などを質の高い情報に加工して発信している。

 そして、お互いのネットワークを密に保っているから、 「口コミ」 の浸透度も早い。車中泊情報はネット空間においても、そうとう浸透してきたといわねばならない。

 こう考えると、彼らの求めているものは 「道の駅」 ではない、という言い方も成り立つ。
 彼らが欲しているものは、雑誌などには載っていない 「中身の濃い情報」 であり、 「新しい人間関係の構築」 であり、従来の旅では実現できなかった 「新しい刺激の獲得」 である。
 だから、道の駅の利用規約を厳密に法定化したり、魅力ある設備づくりを怠ったりすれば、彼らは別のところに行くだけかもしれない。

 「車中泊」 とは、そういう激しい流動性をはらんだ旅行スタイルであり、施設提供者には多大な緊張感をもたらすと同時に、フレキシブルな旅の提案を可能にするものである。
 だから車中泊は、新しい観光のスタイルを創造するかもしれない。

………………………………………………………………………………

 このように、専門家の中には、 「車中泊」 を新しい旅のスタイルとして見ようとする人たちが現れている。
 もしそのような仮説が正しいのならば、ますます利用時のマナーやインフラ整備、地域の観光資源とのリンクなどが討議されなければならなくなるだろう。
 「東北 『道の駅』 車中泊研究会」 の今後の研究成果を期待したい。
 
 
 参考記事 「車中泊研究会」
  
 参考記事 「NHKラジオの車中泊報道」
 

カテゴリー: コラム&エッセイ   パーマリンク

車中泊の社会実験 (実態調査) への6件のコメント

  1. 町田編集長さま。寒中お見舞い申し上げます&ご無沙汰しています。このところタ◎スのクラブキャンプも行ってないですし、キャンカーで家族ともココ1年以上キングでお出かけしていません。なのでキングは、ちょい乗りでパチンコ屋に行くぐらいです。グ◎ーバルも天に召されてしまったし、売るに売れないけど。今だ乗っているのは、ナゼだか?わかんないですが、乗れるだけ乗ろうって思ってます。
    本題の車中泊ですが、車中泊で旅したくてもカミさんが飽きちゃってるんですよ。だから、どこか?行こうって思ってもカミさんが、一人で行ってらっしゃい・・・って、ことで何度か男一人旅にも出かけましたが、やっぱりなんだかんなだ言って一人は寂しいですよね。まぁ~酒かっくらがって寝ちゃえば、同じですけど。男一人旅同好会みたいなのがあればいいのですけどね。今度また!一緒に飲める日を楽しみにしています。その時は、また宜しくお願いします。

  2. 町田 より:

    >カッチ@キング5.3WD さん、ようこそ。
    お懐かしいです。お元気でしたか?
    私は、相変わらず仕事での “一人旅” は多いんですけど、やはり遊びで “独り” ってのはちょっと寂しい気もしますね。
    まぁ、仕事での独りの夜は、車内で音楽を聞いて酔っ払っていますから、そこはカッチさんと同じかもしれません。
    でも、実際に、キャンピングカーによる 「男の一人旅族」 って増えているらしいですね。優雅か寂しいのか分かりませんが、気楽な旅をしていることは確からしいです。
    だから、「男一人旅同好会」 のアイデアには賛成です。
    夜は、ギターなんか弾きながら、みんなで歌うとか。
    久しぶりにカッチさんのギターを聞きたくなりました。
    また、いつの日かお誘いください。
    一杯やりましょう。
    楽しみにしております。

  3. B作 より:

    車中泊に飽きちゃってる・・・なんか理解できるような気がします。始めた当初は楽しくて毎週のように出かけても数年たつとさすがにそれも飽きてきて私のかみさんもなかなかお出かけしてくれません。だから仕方ないので一人で出かけるかバイクにリターンしてしまって大きい車は必要なくなって。見かけキャンピングカー然としているものと運転が楽なミニバンなどの車内が使いやすくなっている普通車派に分かれるのかなぁと思います。

  4. より:

    道の駅などを中心に、車中泊マナーのグレーゾーンをきっちりサービス(あるいはルール)として提供してくれるとよいですね。電源・水・ゴミなどの処理を会費か都度支払できるような。
    夜中の対応など運用上難しい面もあるとは思いますが、使う側も安心できます。例えば道の駅会員証をICカードにして、コンセントが自動で使えたり、施設のドアが開いて使えるとか。さらにポイントカードとしても使えれば一石二鳥!(ヤバイ、営業モード入ってしまった)

  5. 町田 より:

    >B作 さん、ようこそ。
    「道の駅」 のようなところを回ってキャンピングカー旅行をしていると、ある程度同じパターンの繰り返しになって、どうしても飽きてくるのは避けられないでしょうね。
    だから、うちの場合は、余裕のあるときはキャンプ場に行くようにしています。そうすれば、各キャンプ場ごとに個性があって、あっちこっちのキャンプ場を比較しながら、“キャンプ場批評” に花を咲かせていると、かなり話題が持ちます。
    仕事が絡んだときは、ほとんど独り旅です。私の場合は、高速のSA、PA泊が多いかな。
    そういうときは、音量をしぼって音楽を聞きながら、車内でガンガン飲んでますね。そういうのも、けっこう好きなんです。
     

  6. 町田 より:

    >雷さん、ようこそ。
    「車中泊研究会」 の道の駅調査のリリースによると、東北の道の駅の管理者たちは、マナーやルールの問題が未解決とはいえ、基本的に車中泊をする人たちを歓迎しようという姿勢を持っているようです。
    そして、車中泊利用者の声を聞きながら、必要と思われるインフラがあれば、それを整える気持ちもあるように見受けられました。
    そうなれば、雷さんが希望するようなサービスも、ひょっとしたら具体化していく可能性があるかもしれません。
    管理者たちを動かすには、やはり車中泊利用者たちが、その地域の観光産業などを活性化できるかどうかがカギになりそうです。
    地方経済は、このまま行けばどんどん疲弊していくのは目に見えてますから、車中泊利用者たちが “良いお客さん” になってくれそうだと判断されれば、道の駅なども、今よりもっと使いやすくなっていく可能性は十分あるように思えます。
     

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">