「アバター」 と 「エイリアン」

 
 一週間ぐらい前だったかな…。
 どのくらい経ったか忘れちゃったけれど、3 D で話題になった映画『アバター』をテレビで見た。
 ものすごく魅せられている自分と、失望していく自分に引き裂かれていた。

映画アバター001
 
 結局、語るべき言葉も浮かばなかったので、そのときはブログの記事にまとめる気にもならなかったけれど、この映画を受け入れるか否かで、その人の感性が「時代に合っているか、いないか」が試されそうな気がしている。
 で、今の気分をいうと、「時代の感性に合っていない自分」の方を選ぶ気分に傾いている。

 判断留保のニュアンスを残しているのは、これを 3 D で観ていないからだ。
 
 3 D …。
 あいかわらず、私はこれを「サンデー」と発音してしまうので、いつもカミさんにバカにされるのだけれど、「スリーディー」とかいうと、舌を咬みそうなので、まぁ「サンデー」で通しているんだけど、…で、サンデーで観ても、あまり印象は変わらないんではないか、という気がしている。

 「魅せられた自分」というのも、確かにあった。
 特に、「うまく計算されているなぁ!」と感心したのは、ポスターなんかでは気持ち悪い印象しか持ち得ないパンドラの住人の顔が、見ているうちに、みるみるチャーミングになっていくところ。
 最後なんかは、すっかり感情移入して、涙が出そうなくらい応援しちゃったりしたわけ。

 そういった意味で、最近のハリウッド映画は、観客の「視覚の慣れ」みたいなものまで巧妙に計算しているな、と思った
 舞台となる惑星パンドラの風物もみな映像的には美しく、映画的リアリズムよりも、ゲーム的リアリズムのようなものに貫かれていて、それが「アート」になっていると感じた。

 しかし、「じゃ、その映像は新しかったのかい?」と問うと、まったく NO 。

 どこを観ても、既視覚感(デジャブ感?)でいっぱい。
 どの映像を切りとってみても、古典絵画から近代美術、現代アートでさんざん見尽くした世界ばかり。

 結局、この映画は、その映像表現に「ワンダー!」を感じなければ、意味のない作品であると思った。
 だって、ストーリーは、これまでも何度も描かれたきた「白人帝国主義」と「土着原住民」の争いをテーマにしたもので、侵略するものを告訴する勧善懲悪ドラマに過ぎないわけだから。

 これと、つい対比したくなってしまうのが、リドリー・スコットのつくった『エイリアン(Ⅰ)』である。

エイリアン002

 あそこに出てくる「人間にとって未知なる生物」には、心がない。意志もない。
 映像的には “恐怖の大魔王” として登場するけれど、実は、 “彼” は暴力をむさぶる快楽も知らない。
 つまり、それと対峙する人間にとって、彼の「生きる意志」というものが何に由来するのか分からない存在として登場する。
 「きっとあの生物も本能に従って生きているのだろう」
 などと思うのは、人間の勝手な想像にすぎない。

 そういうのが、私にとって「ワンダー!」なんである。
 “未知との遭遇” とは、そういうことであって、人間の「存在理由」とか、人間の「倫理」とか、「愛」とか、そんなものを “もの凄い風圧” でなぎ払ってしまうモノと出遭うことである。

 『アバター』と『エイリアン(Ⅰ)』では、どっちが映画の醍醐味を教えてくれるかというと、もう圧倒的に『エイリアン』の方に (あくまでも個人の趣味だけど) 軍配が上がる。
 最近のハリウッドSF映画は、「視覚のワンダー!」を過剰に追求する方向に舵を切った。
 それはそれで、意味のあることかもしれないけれど、肝心の「視覚のワンダー!」が通じない人には何を訴えるのだろう。
 「アバターの美学が分からない人は時代に取り残された人」と言われるとしたら、それでもけっこう。
 
 映画というのは、「言葉で表現できないもの」を語るもんだと思うし、パンフレットの解説とか、映画評論とか、ネット上の言論で言い尽くされないものを突きつけるもんだと思う。
 私はそういう映画が好き。

 ちなみに、『エイリアン』に登場するあの異星の生物がいったい何なのか。
 それを「比喩」とか「象徴的言語」などを使わずに語れる人っている?
 私は語れない。
 だから、一生気になってしまう映画になっている。
 
 
関連記事 「ハートロッカー」
 
参考記事 「ブレードランナーの未来世紀」
  
  
 

カテゴリー: 映画&本   パーマリンク

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">