ロビン・フッド

 
 リドリー・スコット監督の『 ロビン・フッド (ROBIN HOOD) 』
 良かったなぁ! 
 堪能したし、感動したし、涙も出た。

ロビン・フッド001

 でも、リドリー・スコットは、結局『ブレードランナー』を超える映画を、もう創れないんだな … ということも分かった。

 それでもいい。
 この路線のリドリー・スコットも支持するし、応援するし、共感する。
 ここでメガフォンを採る彼は、もう特異な美意識を持ったアクの強い “芸術家” でもなければ、人間存在を根源から問うような “哲学者” でもない。
 代わりに、大衆娯楽としての映画を、極めて洗練されたテクニックで磨き上げた “職人” がそこにいた。

 この映画は、黄金期の「ハリウッド史劇」に対する彼のオマージュであるかとも思う。
 スペクタクルな戦闘シーン、ハッピーな結末を迎える恋愛、庶民を苦しめる国王や悪代官、冷酷非道の裏切り者、主人公を助ける陽気な男たち。
 そういったハリウッド史劇の構成要素をふんだんに使って、映画が「大衆の娯楽」として君臨していた時代の華やかさを再現して見せたのが、この『ロビン・フッド』だ。

ロビン・フッド002
 
 だから、安心して観ていられる。
 とにかく観客が、監督の意図を図りかねて、戸惑うということがない。
 
 悪いヤツは最初から悪役顔で出てくるし、主人公のことを最初は侮蔑していたヒロインが、やがて愛に目覚めるというベタな心理プロセスを忠実にたどっちゃうし、何から何まで娯楽映画の “お約束ごと” で貫かれた構成なんだけど、それを承知で堂々と押し切ってしまったところに、リドリー・スコットの円熟味を感じる。 

ロビン・フッド003

 もちろん凝り性のリドリー・スコットだけあって、ディテールの作り込みはハンパじゃない。
 城攻めのシーンに使われる古風な城も、ケルト的なデザインを盛り込んだ北イングランドの村も、すべて丹念に仕上げられたセット。

 彼の歴史劇では、そのようなセットを組んだとき、どこか “アート” を意識したエキゾチックな映像美が追求されるのだけれど、今回は、驚くほど写実重視。
 神経のつかい方が、絵画的表現にこだわるよりも、リアリティの追求に向かった感じだ。

 だから、『ブレードランナー』の陰鬱な未来都市や『エイリアン』のグロテスクな宇宙船、『ブラックレイン』のシュールな大阪の街、『グラディエーター』の背徳的なコロッセウム、『キングダム・オブ・ヘブン』のエキゾチックなエルサレムといった、映像美にこだわるデザイン造形は影をひそめる。
 代わりに、観客をそのまま中世の時代に誘い入れてしまったような、 “歴史の手触り” が獲得されている。

 ロビン・フッドを主人公にした映画は、今までも数多くつくられてきたが、今回の主人公設定は、いわば異色。
 映画が終わるまぎわになって、ようやく「ロビン・フッド」が誕生する。

 つまり、伝説のヒーローは、どういう経緯で生まれてきたかを語る物語で、いわば “ロビン・フッド前史” 。
 だから、シャーウッドの森に仲間とともに住み、悪代官と戦う「義賊」という昔ながらのイメージを抱いていると裏切られる。
 それをもって、「こういう筋書きなら、別にロビン・フッドを主人公にする必要もないんじゃないの?」と思う人が出てくるのも予想できる。

 でも、私にとっては、きわめてオーソドキシーなロビン・フッド物語に思えた。
 どっちみち、伝説上の人物なんだしさ。
 ショーン・コネリー主演の『ロビンとマリアン』みたいな、よぼよぼジジイのロビン映画だって成り立っているわけだから。
 これはこれで、ひとつのロビン像を確立したのではないかしら。

ロビン・フッド004

 上映時間は 2時間20分。
 それでも時間が足りないと思った。
 続編が観たくなる、娯楽映画の金字塔。
 
 
▼ 予告編
 
 
  
参考記事 「グラディエーター」    
   
 

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