追悼ジョンレノン

 2010年12月8日は、ジョン・レノンの「没後30周年」に当たる。
 同時に、この2010年という年は、彼の「生誕70周年」でもあり、さらに「ビートルズ解散40周年」なのだとか。
 そういった意味で、2010年は、ジョン・レノンファンにとってはメモリアルな年だったのだ。
 
 自分にとっても、ジョン・レノンというミュージシャンには、特別の思いがある。
 ビートルズの中でも、特に気に入った歌はジョン・レノンが作った曲だし、オリジナルでなくても、彼が歌うR&Bのカバー曲も好きだ。
 ちなみに、自分が恣意的に選んだジョン・レノンのベスト10となると、こんな感じだろうか。
 
 ① NO REPLY
 ② YOU’VE GOT TO HIDE YOUR LOVE AWAY
 ③ YOU CAN’T DO THAT
 ④ NORWEGIAN WOOD
 ⑤ ANNA
 ⑥ YOU REALLY GOT A HOLD ON ME
 ⑦ MONEY
 ⑧ ALL I’VE GOT TO DO
 ⑨ IF I FELL
 ⑩ I’LL BE BACK
 
「ザ・ビートルズ」ジャケ
 
 すべて、「初期ビートルズ」である。
 それも、必ずしもジョンのオリジナルばかりではない。
 ⑤ 『アンナ』は、アーサー・アレキサンダーが作詞・作曲したR&B。 ⑥ 『ユー・リアリー・ゴット・ア・ホールド・オン・ミー』は初期のモータウンサウンドを支えたスモーキー・ロビンソンの曲。 ⑦ 『マネー』も、これまたバレット・ストロングの歌ったR&B。
 
 オリジナルにおいても、 ③ 『ユー・キャント・ドゥ・ザット』などのように、ブルースコードを使ったブラック・ミュージック系の曲にジョンの真骨頂がうかがえる。
 私は、そういう “黒いジョン” が好きなのだ。
 
 彼のヴォーカルは、野太くシャウトする声に、ちょっと鼻に抜けるようなかすれた音が混じる独特のもので、なんとも色気がある。
 その “鼻に抜けるようなかすれ声” で歌われるミディアムテンポの名バラードに、 ① 『ノーリプライ』がある。
 曲のつくりもいいし、歌もいい。
 
 スローなものでは、 ⑥ 『ユーブ・ゴット・トゥ・ハイド・ユア・ラブ・アウェイ = 悲しみをぶっとばせ』がある。
 
 これと似たつくりの名曲は ④ 『ノルウェイの森』。
 ⑧ 『オール・アイブ・ゴット・トゥ・ドゥ』もお気に入りの曲。
 
 自分の好きなジョンの曲は以上のような感じなのだが、オリジナルに関しては、いずれも「レノン=マッカートニー」のクレジットが入ったものばかり。
 
 つまり、ジョンとポールという、センスも、好みも、発想も異質な才能がぶつかりあって火花を散らすときに、ジョンの最良の作品が生まれているように思う。
 ポールという稀代のメロディーメーカーに対する嫉妬心や対抗心。
 その劣等感と優越感が交じり合った心の振幅の激しさが、ジョンのつくる曲に一種の異様な緊張感を与えている。
 
 ところが、ポールとの距離が遠のくにしたがって、ジョンの曲からその「緊張感」が薄れていく( … ように自分は思う)。
 特に、ソロ活動に入って、純度100%のジョンが生まれてから、逆に  “ジョンらしさ”  がなくなった(…ように自分は思う)。
 
 ソロ活動に移ってからの代表作といわれる『イマジン』は、確かに、「聖歌」にも似た荘重さとクリアな透明感に包まれた曲だが、自分の「名曲セレクト」には入らない。
 
 この曲は、一般的には、アーチストとしてのジョン・レノンが頂点を極めた曲として評価されるが、自分は逆に、ジョン・レノンの「成熟」よりは「衰弱」を感じる。
 
 「哲学的なメッセージ性がある」と評価される歌詞にも、ナイーブさが露呈しているように思う。
 そこにジョン・レノンの「イノセンス」があるとしても、それは「大人の葛藤を知らない」という仮定のもとに空想された、虚構の「少年のインセンス」である。
 
 早い話、楽になりたかったのだ。
 政治や思想的に激動期を迎えつつある時代だというのに、そういうことに無関心なポールたち他のメンバーへのいらだち。
 「ビートルズ」というフォーマットをいつまでも求め続ける市場のニーズへの反発。
 衰えゆく自分の声量への懸念。
 「成功」を達成した者が感じる虚脱感。
 
 そういった諸々の “負の因子” が幾重にも積み重なってきた環境から、ジョンは「楽になりたかったのだ」という気がする。
 
ジョン・レノン「イマジン」ジャケ
 
 『イマジン』に漂うおごそかな静謐感というのは、ジョンが得た安らぎを意味するとともに、精神的な隠遁生活への憧れをも意味している。
 そこには、すでに迫りくる死を予期するようなレクイエムの響きがある。
 この曲が人々の心に沁みわったのは、そこに “終末の調べ” が嗅ぎとれたからかもしれない。
 私には、それが哀しい。 
 
 私にとっての「最高のジョン・レノン」は、『ア・ハード・ディズ・ナイト』や『ヘルプ』の時代で凍結している。

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