名古屋RVショー2010に見る客層の変化

名古屋キャンピングカーショー会場風景
 
 23日~24日の両日、ポートメッセなごや (愛知県・金城ふ頭) で開かれた  「名古屋キャンピングカーフェア2010」 を取材してきた。
 まず驚いたのは、来場者の熱気。
 来場者数も、昨年より増えているという。
 確かに、2日間とも、会場が開かれる前から行列ができていて、それが延々と駐車場まで続いていた。
 
▼ 会場が開かれる前から、入り口前には行列ができた
名古屋ショーの行列1
 
 各ブースの商談コーナーも、かなり盛況だった。
 成約にまで結びつかなかったと打ち明ける販売スタッフもいたが、それでも見積もりの数だけは多かったと口々に語っていた。
 
 ショーの来場者が多いということが、そのまま 「キャンピングカーユーザーの底辺が広がってきた」 ということとは結びつかないかもしれない。
 「最近話題になっているし、ブームらしいから、ちょっと見に行くか」
 という感じで、 “動物園に珍しい動物が来た!” …ぐらいの気持ちで来場した人々も多かったろう。
 
 しかし、それでも関心を持つ人が増えてきたということは、産業としての興隆が約束されているということでもあるのだ。
 
 ただ、…たぶん、短期的には、商売としてはむずかしい時期に入ってきたのかもしれない。
 「客層が明らかに変わっている」
 そんな感じを受けた。
 
 もちろん来場者のメインは、子育てまっさかりという感じの若いファミリーか、あるいは、子育てが終わって、夫婦の “2人旅” を楽しもうという熟年カップル。
 この二つの層は、相変わらず不動に思えた。
 
 しかし、子細に見ると、明らかに、今までとは違った客層が登場してきている。
 「キャンピングカーショー会場が、デートスポット化している」
 そういう光景を何度も見た。
 若い男女がけっこう手などをつないでクルマを見ているのだ。
 それも、結婚前という感じの恋人同士っぽい人たちだ。
 
 どこで分かるかというと、女性のファッションがいかにも 「デートしてます」 って感じで、着こなしにまだ生活臭が染みついていない。
 同じヤングカップルでも、すでに結婚している人たち (特に女性) は、着飾っても、その着こなしに安定感が出ている (→ ムダを省いている) ものだが、それに比べると、結婚前の人たちは着こなしのムダを楽しんでいるという様子が見える。
 
デートを楽しむ? 若者たち
  
 そういう若者たちが、水族館でアシカのショーを見たり、動物園でクマの昼寝を見物するかのように、キャンピングカーを見ているのだ。
 実際には、彼らがキャンピングカーを買うとしても、それはもっと先のことだろう。
 あるいは買わないかもしれない。
 だから、商売を短期的に考えた場合、 「顧客」 という形でカウントはできない人たちかもしれない。
 しかし、若いカップルがデートスポットとしてキャンピングカーショーの会場に訪れるということは、今まではあまりなかったことなのだ。
 
 こういう流れが生まれてきた背景には、何があるのか。
 
 一つには、若者の 「結婚観」 が変化しているということも見逃せないかもしれない。
 結婚は、立派な社会人として認知されるためのものでもなく、配偶者の経済力や家柄を誇るためのものでもなく、美男や美女の配偶者をゲットして友人たちをうらやましがらせるためのものでもない。
 「お互いに共通の夢を追いかけて、足りない部分を補い合い、助け合っていく」
 今の若い人たちの間では、そんなシンプルでストレートな考え方が復活してきているように思うのだ。
 
 日本で、 「見合い結婚」 が減って、 「恋愛結婚」 が一般化したのは、団塊の世代が適齢期を迎えたあたりからである。
 「恋愛結婚」 は、一見 “封建的な家制度” から解放された民主化時代の結婚形態のように思われがちだが、実際には、恋愛できなかった人たちを差別する形で生まれた結婚様式だった。
 男も女も、いくたの恋のライバルを排除して、選ばれた者同士が 「結婚」 というゴールにたどりつく。
 そういったハリウッド映画のラストシーンのような恋愛結婚が “当たり前” のようになったのが、70年代くらいから。
 
 そして80年代になると、空前の消費ブームを背景に、男女とも (特に女性が) 結婚相手へのハードルをうんと高くして、収入、門地、外見、出身大学などにおいて完璧なエリートを求めるようになった。
 「本命君」 以外に、 「アッシー君」 、 「ミツグ君」 を何人抱えられるかが女の子のステータスになり、結婚する前までに何人の女をコマすかが、男の子のステータスになった。
 
 しかし、そういう人間同士が結びついたとしても、どこかに無理が生じる。
 仮に、当事者同士のもくろみ通りに進行したとしても、お互いが弱肉強食のフィールドを戦い抜いたエリート同士の結びつきであり、いわば1人を選ぶために、10人を排除してきたようなもの。
 逆に見れば、 「排除された」 という負い目のため、婚期を逃したりする人も多かったろう。
 
 当然、全体としての非婚率も高まり、少子化も進行する。
 
 今の社会の晩婚化傾向というのは、経済的な視点だけでは語りきれないと思う。
 若者たちは、そういう先輩たちの愚を犯さないという生き方を選び始めたようだ。
 
 90年代からゼロ年代へと至る過程において、日本の社会的・経済的なクライシスの高まりも、 「見栄やカネで結婚相手なんか選んでいる場合かよ」 という気持ちに拍車をかけたかもしれない。
 
 高学歴、高収入の相手を求めて結婚したつもりでも、それが大不況化においてあっけなく崩れ、メッキが剥がれてただのオッサンとオバサンになった先輩たちの姿を、今の若者たちはしっかり見ている。
 結婚相手に 「将来的な保証」 を求めても、結婚したときの地位とか財産なんてアテにならないという事例をあまりにも多く知ってしまったのだ。
 
 だから、収入だとか、家柄だとか、出身校なんかにこだわらない若者たちは、とりあえず 「現在の気持ちが通じ合えば、それが大事」 と思って、意外と半径10m内外に棲息する男女ですんなりカップルをつくったりする。
 結婚後にどのようなライフスタイルを築くかは、これから2人で考えていけばいい。
 2人で、共通の夢をこれから持つ。
 その同じ夢を持てるかどうかが、2人の絆になる。
 
 たぶん、キャンピングカー会場に現れるようになった若いカップルというのは、そういう人たちなのだ。
 彼らにとっては、キャンピングカーこそが、これからの2人で作り上げるライフスタイルの 「シンボル」 (象徴) なのである。
 
 このような若者の結婚観の変化は、逆に、 「結婚しない生き方」 をも正当化する。
 エリートサラリーマンとキャリアウーマンのカップルがいくつも誕生して、「結婚は仕事のできる人たちのあかし」 という風潮が生まれた80年代。
 それに乗り遅れた人たちは、不適合者の烙印を押されたような扱いを受けた。
 
 しかし、そのような結婚観が崩れた今、適齢期が過ぎた 「おひとりさま」 は決して哀れでも、ミジメでもない。
 むしろ、 「おひとりさま」 同士の気楽な横の連帯を通じて、家庭とか育児にとらわれない新しいフィールドで遊ぼうという人たちが増えているように思う。
 
 実は、今回のショーの会場で、そういう人たちの姿も目撃した。
 「旅行するのは私一人だから、取り回しのいいキャンピングカーが欲しいの」
 と説明員に語る初老の女性がいた。
 「女性同士で旅をする場合、故障したらどうすればいいのか?」
 と尋ねる中年女性もいた。
 
 販売店のスタッフに聞いても、最近はシングル女性からの問い合わせが増えているという。
 これも新しい傾向だと思う。
 
 私も、あるキャンプ大会で、犬を旅行の友として気楽にキャンピングカー旅行を楽しんでいるシングル女性と知り合うことがあった。
 キャンピングカーが、確実に 「おひとりさまライフ」 をエンジョイしようと思っている人たちのアイテムとして浸透しているように思えた。
 
 一方、男たちはどうしているのか?
 これもショー会場でのことだが、学生風の若い男の子2人が、それぞれパンフレットを集めながら、楽しそうにキャンピングカーの中を覗き込んでいる姿を発見した。
 
 こういう男の子同士の来場者というのも、今まではあまりその姿を見たことがなかった。
 年齢的に、小さい頃に家族でキャンピングカー旅行をしていたか、あるいはテントキャンプを楽しんだか…という世代である。
 キャンピングカーを覗き込む2人の視線の先を追ってみると、若いなりにキャンピングカーの見方を知っているという印象を受けた。
 
▼ 駐車場前から行列が
名古屋キャンピングカーショー行列2
 
 確実に、客層が新しくなり、世代交代が起ころうとしている。
 その多くは今すぐにキャンピングカーを買えるような人たちではないかもしれない。
 (だから、短期的には、商売としては難しい時代に入ったのかもしれない)
 
 しかし、その人たちの期待を裏切るような商品開発や売り方をしてしまうと、その先の展望が広がらない。
 販売店のスタッフの中には、ごく一部だけど、すぐ買いそうもない客だと分かった途端に、言葉づかいがぞんざいになったり、タメ口になったりしてしまう人がいる。
 限られた時間の中で、成約率の高いお客さんと効率的に話したいという気持ちがそうさせるのだろうけれど、だけど、 「将来のお客さん」 を失望させてしまうと、どんな良いクルマを造っていても、そのお客さんは二度とそこに近づかない。
 
 

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名古屋RVショー2010に見る客層の変化 への4件のコメント

  1. cbr929 より:

    こんにちは
    先日、私も男三人(還暦三人衆)で、この名古屋RVショー出かけてきました。カミさんはパスということで友人を誘い出しました。
    まあカミさんが車キャンプに興味がない(何度も話し合ったのですが)なら、まさに町田さんの言う「おひとりさまライフ」にぴったりの軽キャンを主に物色しました。
     結局、ある展示車両が気に入ってしまいその場で契約までしてしまいました。多分これかな?↓
    http://www.tosuken.com/blog/2010/04/post_526.html
    これ、キャンピングカーというよりどちらかといえば車中泊仕様(ギャレーなしタイプ)ですが、架装の品質・充実、プロ仕様のサブバッテリー電源、フラットベッドの広さに惹かれたのです。ともあれこれからの週末が、そして定年後の長期旅行が待ち遠しくなりました。
     懲りずにカミさんを誘ってみるつもりです。

  2. 町田 より:

    >cbr929 さん、ようこそ。
    最近のショー会場を見ていると、一人で軽キャンパーを熱心に見学されているご年配の男性をよくお見かけします。
    聞くと、やはりcbr929 さんのように、「カミさんが着いて来ないけど、一人で遊ぶなら、このくらいの大きさで十分なんだよ」 とおっしゃいます。
    「寂しいのかなぁ…」 と顔を覗くと、みんなけっこう楽しそう。
    「夫婦2人のくるま旅」派が増える一方、「おひとりさま旅」 を楽しまれる方々も増えているように実感しました。
    cbr929 さんがご覧になったクルマは、トスケン (鳥栖建材屋 = 島田商事http://www.tosuken.com)さんのところの 「OKワゴン」 ですね。
    『キャンピングカースーパーガイド2010』 でも紹介したところ、読者からの反応が多かったクルマです。
    素敵な「おひとりさまライフ」をお楽しみください。
    もちろん、そのうちきっと奥様もご同行されると思いますよ。

  3. MC より:

    わたしも同じように客層が広がっている感じを受けました。
    若いカップルと男だけのグループがいましたね。
    不思議な感じです。
    彼らは確かに買うお金と機会を持ち合わせていないでしょうね
    でも彼らは近い将来必ず、仕事や家庭で成功したらまた訪れると思います。
    彼らの将来のニーズを当てた人が勝てるような気がしました。
    その彼らが挑戦している車中泊が社会と共存できる
    ルールを作って、かつキャンピングカーに心を繋ぎとめられるのか?
    実は今が大切な時なのかもしれません。

  4. 町田 より:

    >MCさん、ようこそ。
    MCさんも、名古屋のショーに行かれたわけですね。確かに、客層が広がっているという感じを受けて、私もこれから先のキャンピングカーシーンに非常に興味を持ちました。
    若い人たちの興味を喚起したという意味で、やはりハイエースの存在は非常に大きなものだったと思います。それに呼応するように、その世代のニーズをすくいあげるようなコンセプトのクルマをたくさん作られてきたと感じます。
    しかし、新車に関しては、価格の面でまだまだ開きがあるのでしょうね。今の新しいコンセプトのクルマたちが中古として出回るような時期に、ひとつのブレイクがあるのかもしれません。
    社会と調和する車中泊のルールをどう確立していくのか。MCさんがおっしゃるように、ここが正念場なのかもしれませんね。
     

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