太古の犬は言葉を話した

 日本RV協会 (JRVA) の調査によると、キャンピングカーユーザーのペット保有率は64.8%だという。
 日本ペットフード工業会が調べたところ、一般世帯のペット保有率は29.5%だというから、キャンピングカーユーザーの64.8%という数値がいかに高いかということが分かる。
 
 実際、わが家の場合も、私一人が仕事でキャンピングカーを使うときを除き、夫婦や家族でキャンピングカー旅行をするときは、100%近く “犬連れ” であった。
 
キャンカーの中のクッキー0092
 
 犬がいると、旅にメリハリがつくのだ。
 犬のために散歩に出る。
 犬に食事を与える。
 
 そんなことが旅のアクセントになって、旅にリズムが生まれる。
 
 散歩させるときも、
 「お、なんだかやたらに草むらの匂いを気にしているな。野生動物の歩く道なのかな」
 といったように “犬目線” が加わるから、自然のいろいろなニュアンスにも敏感になる。
 
 そして、何よりも、人間と人間の 「緩衝材」 の役目を果たしてくれるからありがたい。
 
 長旅をしていると、仲の良い夫婦といえども、ときどき二人の間に “ドロン” とした空気が漂うことがあるが、そんなとき、犬の話題に振ると、そのドロンとした空気が、パァーっと散っていくから不思議だ。
 
 犬というのは、実に察しのいい動物で、夫婦ゲンカが起こりそうになると、それが会話の流れで解るらしい。
 それまでは、私とカミさんの間に割って入って、天井に腹を向けてゴロゴロと寝そべっていたにもかかわらず、夫婦の会話にとげとげしさが交じり始めると、人間の手足が及ばないくらいの距離まで、さぁっと移動する。
 
 さらにお互いの会話が激昂してくると、もう視界のなかにいない。
 とばっちりを食うのを恐れて、毛布の下なんぞに避難している。
 
 彼らには、人間の会話が全部分かっているのではないかと思えることがある。
 「利口な犬は2歳児ぐらいの知能を持つ」 などとよく言われるが、2歳児どころか、人間の大人並みの打算や計算を働かせているように思えて仕方がない。
 
 もしかしたら、彼らは人間と同じような言語能力を持ちながらも、それをおくびにも出さないしたたかな動物なのではなかろうか。
 その気になればしゃべれるにもかかわらず、彼らが沈黙を守っているのは、人間と対等にしゃべっても、今のところは得することが何ひとつないからである。
 
 おそらく太古の昔、犬は人間と対等にしゃべった時期があったのだ。
 エジプト神話に出てくるアヌビスなんていう神様は、人間にモノを教えられるくらいの犬がいたということを証明するための神話なのである。
 
エジプト神話のアヌビス
 
 当初、犬と人間の関係は良好だった。
 しかし、やがてケンカが始まった。
 人間より能力が優れた犬たちが、人間をバカにし始めたからだ。
 
 「お前、こんな匂いが分からないのか!」
 「俺のように速く走れないのか!」
 
 ある犬は、飼い主に向かって、
 「犬のように忠義というものを大事にしろ」
 なんて説教したかもしれない。
 
 当時、犬から諭されて心地よくなる人間は少なかった。
 そこで、哀れ、人間に意見した犬は、逆上した飼い主に惨殺されてしまうという事件があちこちで起きるようになった。
 
 その後、犬たちの間で 「言葉がしゃべれないことにしておこう」 という回覧が回ったと思われる。
 それでようやく、犬と人間は仲良く共存共栄するようになった。
 
 「ほら、チロがあなたのことを頼もしそうに見ているわ」
 「いや、君がきれいなので見とれているのさ」
 「チロが言っているわよ。 “私はこの家に飼われて幸せです” って」
 「そうか、ご褒美にチーズを一切れあげよう」
 
 かくして、犬が沈黙しているおかげで、その家庭は幸せになり、犬も得をする。
 
キャンカーの中のクッキー
 
 犬との会話を成り立たせようという、いろいろな研究が進んでいるという。
 止めた方がいいように思う。
 それは犬の平和を乱すことになりかねない。
 彼らは、人間が犬の立場になって感情移入するからこそ可愛がってくれていることを知っている。
 犬と会話が交わせるようになったら、各家庭で、夫婦ゲンカと同じ頻度で、飼い主と犬のケンカが始まるかもしれない。
 
 「いつまでもオレに赤ちゃん言葉使うなよ」
 「トイレ用のシートは、1回ごとに変えてくれない? 不潔でしょうがない」
 「何このエサ? 犬には賞味期限の切れたエサを平気で与えるわけ?」
 
 不況の時代に、ストレスが溜まっているのは人間ばかりとは限らない。
 犬だって、言いたいことはいっぱいあるだろう。
 だから犬にしゃべらせる前に、人間が、犬の気持ちを察してあげることが大事なのだ。
 犬の幸せをみんなで守ろう。
 
 

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太古の犬は言葉を話した への2件のコメント

  1. Dreamin' より:

    お久しぶりです。
    今回のわんちゃんのお話、すごくいいですね。
    ペットを飼った経験はほとんどないのですが(ザリガニぐらい?)、
    最近、道ばたを散歩している犬がやけにかわいく見えまして…。
    町田さんのわんちゃんもかわいいですね。
    二枚目の写真のつぶらなヒトミがイイ!
    ただ、犬と会話する研究は、町田さんと同じくあんまり賛成はできません。
    きっと、曖昧にしておくことが一番なんだと思います。
    もし、本当に犬との会話が成り立つ技術ができたとしたら、
    誰も犬を飼わなくなるかもしれません。
    人と犬との良好関係を今後も維持していくために、
    “ワン語技術”は速やかに極秘資料として封印をしてもらいましょう。
    町田さんの意見に一票です!

  2. 町田 より:

    >Dreamin’ さん、ようこそ。
    「一票」 を投じていただき、ありがとうございました。
    犬の幸せは、けっきょく飼い主の想像力によって決まるものであるように感じます。
    その犬が、いま何を感じて、何を求めているのか。
    それを察するのは、すべて飼い主の想像力ですよね。
    犬は、ただ 「お腹がすいた」 「散歩に行きたい」 などと要求しているわけではないのでしょう。
    彼らは、尻尾などの肢体を上手に活用して、様々なメッセージを送っているように感じます。
    想像力が豊かな飼い主であるならば、そのちょっとした犬の視線の変化などから、 “内面” を読むようになれるはずです。
    …と想像力の乏しい私がいっても、説得力はありませんが。

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