映画「ジェリー」

 
 わかんねぇ映画だったなぁ…。
 ガス・ヴァン・サント監督の『ジェリー(GERRY)』。 
 
 BSの「シネマ☆パラダイス!」で放映されていた映画で、途中から観たんだけど、あまりの異様さに最後まで目が画面に釘付けになってしまったにも拘わらず、結局「何なんだ? この映画…」という戸惑いだけが残った映画だった。
  
 Amazon の「商品の説明」によると、一応、次のような映画…ということになっている。 
 
 「砂漠をドライブ中、休憩のためにクルマを降りた二人の男は、荒野で道に迷ってしまう。3日間さまよった末に、死に直面した二人を待っていたものとは …。監督ガス・ヴァン・サント、主演マット・デイモンによるサスペンス・ドラマ」
 (「Oricon」データベース)
 
 「『エレファント』のガス・ヴァン・サント監督による異色スリラー。ドライブ途中の二人の男が砂漠に迷い込み、3日3晩さまよった末に一人だけが生還した実話を映画化。マット・デイモンとケイシー・アフレックが極限状態に陥る男たちを熱演している」
 (「キネマ旬報社」データベース)
 
映画「ジェリー」001
 
 … っていう言葉で  “釣っている”  わけだけど、実際はそんなもんじゃないんだな。
 むしろ「サスペンス」とか「スリラー」とか「熱演」の対極にあるような映画だ。
 
 砂漠の上に、二人の男を芸術品のオブジェとして、ただぽつんと立たせただけの作品。
 二人はただ立っているだけで、砂漠と雲だけが、二人の周りをゆっくりと流れていく。
 
 まぁ、印象をいえば、そんな感じ。
 シーンと静まり返った美術館で、動かぬ彫刻をひたすら見つめているような作品なのだ。
 
 映画が終わって、その解説をまかされた中野美奈子さんと玲子さんのボーゼンとした表情が印象的だった。
 
美奈子さんと玲子さん
 
 「今、この私たちが出ているシーンを見ている人ってすごいよね。だって、この映画を最後まで観た人だっていうことだもんね」
 
 「シネマパラダイスで、よくこの映画を採り上げたよね」
 
 「途中で (観るの) あきらめちゃった人って多いだろうね」
 
 「でも、最後まで観た人はえらいよ。 “生還”  した人っていうことだもん」

…………………………………………………… 
 まったく同感なのである。
 
 「こんな映画があんのかよ ?」
 …… と、ほとんどの人が、ボーゼンとした気分を味わったのではあるまいか。
 難解なゲージュツ映画が好きな私も、さすがにこれはマイッた。
 すべての “意味” が剥ぎ取られているのだ。
 
 こういうシチュエーションを描く映画だったら、普通「過酷な自然」vs「弱い人間存在」というお定まりのテーマに収まるものが多いのだが、ガス・ヴァン・サント監督にはそんな気持ちは毛頭なく、ただ「荒野を歩く人間のカタチ」という造形的な興味だけで、ひたすらカメラを回し続けていったような気がする。
 
 だから、背景となる砂漠は圧倒的に美しい。
 しかし、それは鉱物的な冷え切った美しさで、死を意識した人間の「末期の眼」に映る美しさのように思える。
 
 言ってしまえば、それは「価値のない美しさ」。
 迫り来る死を意識した人間にとって、いかに砂漠が美しかろうが、そんな「美しさ」はどうすることもできない。
 
 夕陽に赤く染まる静まり返った岩山。
 この世のものとは思えない青空と雲。
 それを「美しい」と鑑賞できるのは、この世に回帰できることを約束された人間だけであって、命のともし火が消えようとする二人には、意味のない造形に過ぎない。
 
 ただただ歩くだけの二人。
 
 最初は危機から脱出するための歩行だったが、いつしかその意味も失われ、だんだん自分たちが何のために歩いているのか、それすらも分からなくなる。
 
 そんな二人の背中を、延々とロングショットでカメラが追い続ける。
 
 この先、何が待っているのか?
 次に何が起こるのか?
 
 しかし、ずっと観ていると、この映画では「何も起こらない」ということが解ってくる。
 
 ただただ歩く。
 10分、いや20分……。
 
映画「ジェリー」002
 
 実際はそんな長い時間ではないけれど、体感的にはそれくらいの時間を、観客は “第三の遭難者” となって、二人の後を追わざるを得ない。
 
 二人のザク、ザクという無機的な足音が耳の奥に沈殿していく。
 ときおり、風の音なのか、音楽なのか定かならぬ効果音が入る。
 
 しかし、その効果音は、何の情緒も呼び覚まさない。
 
 生への渇望もない。
 死の恐怖もない。
 虚無へのおののきもない。
 
 …… でも、すべての画像が強烈な印象なって、脳裡のファイルに焼きこまれる。
 一つひとつのシーンが、一生忘れられない映像になりそうな予感がする。
 
 何なんだ?
 この映画。
 
 

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映画「ジェリー」 への3件のコメント

  1. てにす より:

    なんだかみたくなってきました^^

  2. kamado より:

    ↑どうかんです(・・;) 

  3. 町田 より:

    > てにす さん、ようこそ。
    > kamado さん、ようこそ。
    ぜひご覧ください!
    もちろん映画として作られたものなので、映画の基本骨格を持った作品ですが、見る人によっては、これは映画体験というより、前衛アート体験かもしれないです。

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