家族を育てるキャンピングカー

キャンピングカーライフは女性が創る時代  vol.2 (前回の続き
 
くるま旅6号表紙
 
 【 対談 ・ 家族を育てるキャンピングカー 】
 
 国産キャンピングカービルダー・社長  山口寿子さん
 輸入キャンピングカー販売店・社長  安達二葉子さん
 
《 女は常に家族の “調和” を大事にする 》

【山口】 旦那さんと奥さんで、キャンピングカーの判断基準が異なるのは、どうも、男性と女性の “文化” の違いが反映しているように思えるのです。
 やはり、小さい頃から 「機械」 に興味を感じる男の子と、 「おままごと」 を楽しめる女の子のそれぞれの “文化” がそのまま継続されているように感じます。
 そのため、男性の場合は圧倒的に機能的なものに関する関心が高く、 「サブバッテリーの増設は必要か」 とか、 「インバーターでどのくらい持つか」 とか、「ソーラーを付けたらどうなる?」 といった方向に話題が集中するんです。
 だけど、女性は、そういうことは分からない部分なんです (笑) 。
 女性は、それよりも、そういう 「電気」 が確保されたときに、部屋の中にどういう照明が実現されるのか? そのことにより、家族と過ごすダイネットがどういう雰囲気になるのか? そちらの方が大切なテーマなんですね。
 
【司会】 そのような違いは、どうして生じるんでしょうね?
【山口】 やっぱり、男性は昔から狩猟して、外でエモノをとってきて、妻子を養うという生活が “文化のDNA” みたいな形で残っているんじゃないでしょうか。
 だから、エモノをしとめる武器の構造とか、狩を効率よく行うシステムなどに関心が向く。
 それに対して、女性は、男がとってきたエモノをどう家族に分配するか。どう調理して、みんなでおいしく食べるか。男の労働をどうねぎらってやるか … というような、常に 「家族全体」 のことを考えながら生きてきたと思うんです。
 だから、女にとっては、 「家族の関係」 こそが大事なんですね。
 キャンピングカーも同じであって、そういう男性と女性の組み合わせのバランスがうまく取れたときに、 「よし買おう」 という家族の決断が生まれると思います。
 
【安達】 ヨーロッパの場合は、なおのことキャンピングカーを使う男女の分業体制がしっかり確立されています。
 クルマを安全に運転するのは男の役目。
 それを補佐して、男が眠くなったり、疲れたりしないように、話題にも気を配り、地図をチェックするなどしてケアするのは奥様の役目。
 だから、ヨーロッパのキャンピングカーの場合は、助手席を 「マダムシート」 などといったりすることもあります。

安達二葉子さん001
▲ 安達二葉子さん
 
【山口】 また、ファミリーのある家族には、 「キャンピングカーがあれば子供の心が豊かになる」 ということをぜひ理解してもらいたいと思うんです。
 たとえば、食事を介して、子供たちに健康な食生活を伝えることを 「食育」 などといったりすることがあるでしょ。
 
山口寿子さん001
▲ 山口寿子さん
 
 また、住宅などにおいても、住み方を工夫することで、子供に暮らし方を学ばせることを 「住育」 などともいいますよね。 
 それと同じように、 「車育」 という概念があってもいいように思うんです。
 つまり、家族のコミュニケーションが密に取れるようなクルマがあれば、子供たちだって豊かな家族関係を学んでいけるようになると思うんです。
 
キャンピングカーとファミリー003
 
《 これからは 「車育」 の時代 》
 
【安達】 「車育」 というのは、本当にいい言葉ですね。確かに、キャンピングカーには、子供たちとコミュニケーションをとる材料がたくさん揃っていますね。
【山口】 今の子供たちを見ていると、学校から帰ってきたらすぐ塾へ行って、10時頃家に戻ってきて、チラッとゲームして…。
 それでは、いつ家族と向かい合って、いつ団らんするの? と心配になってきます。
 昔の家では、4畳半と6畳ぐらいの間取りに、親子5人くらいで生活したりしてきたわけですから、否が応でも家族同士で話し合う時間と空間を共有できたわけですね。
 だけど、今の子供たちは贅沢に個室を持っていて、それぞれ自分のテレビを持っていて、しかも家族が一緒に食事をとることもない。
 それでは、親は子供が何を考えているのか知る機会もなくなるし、子供も、親が何を考えているか分からない。
 
キャンピングカーとファミリー002
 
【司会】 それを 「キャンピングカー旅行」 で解消しようと…?
【山口】 そうです。ファミリーでキャンピングカー旅行をすれば、どうしても狭いダイネットを中心に、家族がみんな集うしかないわけですから、自然に会話も復活すると思うのね。
 そのときに、ようやく子供は、自分の学校の交友関係の楽しさや悩みを話題にするかもしれない。
 親も、キャンピングカー旅行を通じて、 「ゴミを捨てる場所はどこか」 とか、 「公共駐車場で休むときのマナーはどうだ」 とかいうことを、実践を通じて子供に伝えることができるわけですね。それが 「車育」 だと思うんです。
 
キャンピングカーとファミリー001
 
【安達】 キャンピングカー自体が、 「旅」 そのものも豊かにするということも子供たちに伝えたいですね。
 塩野七生さんのエッセイに書かれていたことなんですけれど、 「海外旅行に行くと、日本人は景色を見る前に写真を撮る」 って。
 で、景色は見ないで、日本に帰ってきてから写真を焼き増ししたときに景色を確認すると… (笑) 。
 しかし、そういう旅は豊かさにつながらないように思うんです。
 日本人は、よく 「写真に残す」 とか、 「お土産を買う」 というように 「形に残るもの」 に気をつかいがちですけど、時には 「形に残さない」 旅も必要なのではないでしょうか。
 記録に残すよりも、 「今ここで味わっておかないと二度と見られない景色だ」 と思いながら風景を楽しんだ方が、後になって思い出すときに鮮明な記憶として残っていることが多いんです。
 結局、どんなに宝石とかお金を手に入れても、死ぬ間際にはすべて手放さなければならない。そこには 「思い出」 しか持っていけないわけでしょ。
 そういうことが理解できれば、キャンピングカーの中で家族と一緒に過ごす時間がどれほど貴重かということを、みんなで共有できると思うんです。
 車内で家族と楽しい交流ができれば、過ぎていく時間がダイヤモンドの輝き以上のものになりますよ。
 
ヨーロッパのキャンピングカー002
 
【山口】 そういう意味で、キャンピングカーというのは、日頃それぞれ別の生活圏で暮らす家族が、お正月などに集まって家族の絆を確かめあう 「ふるさと」 ですね。
 そういう場があってこそ、親子が共通した 「趣味」 を持てるようになると思うんです。
 「趣味」 というものは、親が本当に楽しんでいないと、子供に伝わらないんです。
 たとえば、お父さんもお母さんも音楽にあまり興味がないのにもかかわらず、子供を 「ピアノ教室」 に通わせたって、子供だって面白いはずがないんです。
 親が本当に 「楽しい」 と思わないと、子供は何も学ばない。
 絵画教室だって、親がスケッチひとつ楽しむこともしないで、子供だけ通わせたって、子供は何のためにそんなことをやるのか分からない。
 だけど、キャンピングカー旅行って、両親のどちらかが、あるいはその両方が、 「本当に楽しい!」 と思って始めたわけでしょ。これは絶対子供の心を動かしますよ。
 
【安達】 それが 「車育」 ですね。私は 「車育」 の中には、 「食育」 も 「住育」 もすべて含まれるように思うんです。
 だって、旅行に行けば、その産地の美味しいものをダイレクトに食べる機会が増えるわけですよね。
 いま食べているものの産地を知り、素材を知る。それがキャンピングカーの中ですべてできるんです。そして、ものを食べるときのありがたさとか、食べるマナーなどを学ぶわけですよね。
 
安達二葉子さん002
 
 また、キャンピングカーは動く 「住宅」 ですから、その中には 「住育」 も含まれます。
 そういうものが、子供たちの脳の中に蓄積していけば、キャンピングカーで育った子は、ものすごく豊かな感性を持つ人間に成長する可能性があるわけですよね。
【山口】 そうそう。だから、子供が思春期のむずかしい年頃になっても、キャンピングカーを通じて親子のコミュニケーションをとっている人々は、気持ちが通じ合うんですよ。
 
山口寿子さん002
 
 反抗期になって、子供が急に口を利かなくなると、たいていの親はあわてて、 「どうした? 何を考えているんだ? 話せ!」 ときつく迫るけれど、子供の気持ちを分かっている親は、無理にそんなことをしないんです。
 ただ、ギュッと抱きしめるような気持ちで、 「いいのよ、しゃべらなくても。私はあなたを信じているから」 というメッセージを、言葉にしなくても伝えることができると思うんです。
 それができるかどうかは、子供の小さい頃から親が一緒になって、キャンピングカー旅行を楽しんだかどうかという、その一点にかかっているんではないでしょうか。
 
《 親がキャンピングカーを好きなら子も習う 》
 
【安達】 日本ではすぐ 「中学生ぐらいになると子供が付いてこなくなる」 と言いますけれど、ヨーロッパでも、子供はある程度の年になると、付いてこなくなるんですね。
 ただ、向こうでは、中学生や高校生ぐらいになると、自分たちでキャンプを始めるんです。
 もちろん、若いからお金もないのでテントキャンプが多いんですけれど、大学生ぐらいになると、もうお爺さんが使っていた古いトレーラーなどを引いて、自分でキャンピングカー旅行を始めるんです。
【山口】 最近日本のキャンプ場でも、大学生ぐらい子供たちがコテージやバンガローなどを利用して泊まっているのを見るようになりましたね。まだキャンプ道具を揃えられないからそうしているのでしょうけれど、たぶん、その子たちは親がキャンプに連れていっていたのではないかしら?
 
家族キャンプの風景003
 
【安達】 日本でも、ようやくそういう流れが生まれてきたのでしょうね。
 だから 「キャンピングカーの旅に子供が付いてこなくなった」 といってがっかりするのは早いんです。
 そのお父さんとお母さんは、もうすごい役割を果たしているんですよ。すぐに芽が出なくても、種まきをしたわけですから。
 キャンピングカーの旅を楽しいと思った子供たちは、絶対に自分たちでも始めるようになると思います。
【司会】 キャンピングカーの可能性が大きく広がるような結論が出ましたね。ありがとうございました。
(終わり)
 
※ 前回 「奥様から見たキャンピングカー」
 
※ 『くるま旅』 は、日本RV協会主催のキャンピングカーショー会場で無料で配布されています。
 
関連記事 「女性ユーザーの声」
  
関連記事 「奥様はまずキャンピングカーに反対」
  
関連記事 「ふたり旅の極意」
  
関連記事 「夫婦の微妙な関係」
 
関連記事 「関係する女、所有する男」
 

カテゴリー: campingcar   パーマリンク

家族を育てるキャンピングカー への14件のコメント

  1. hoso より:

    とても興味深い内容です。
    前回にはキャンピングカーを買うときに奥さんを納得させるヒントが・・・。
    そして、今回はキャンピングカーで家族を連れ出すヒントが有るように読ませていただきました。
     また後日、ブログネタに使わせてください。m(_ _)m

  2. aki より:

    我が家はついに立派なキャンピングカーを持つことは出来なかったけれど、子供が中学を卒業するまで小さなトレーラーやバンを改造した「旅するクルマ」で一年中あちこちを旅をしてきました。旅先ではカヌーでダウンリバーしたり、シーカヤックで海に漕ぎ出したり、登山やトレッキング、シュノーケリングなどなど、旅の間は家族がまさに半径5m以内でぴったり寄り添う遊びを楽しみました。
    そのおかげでしょうか?高校生になって、子供が急に口数が少なくなった時、山口さんの言われているように「いいのよ、しゃべらなくても。私はあなたを信じているから」って静かに見守ることが出来ました。
    僕らにとって子供が物心ついてから親離れを果たすまでの子育ての10年間...僕は“家族の黄金の10年”って呼んでますが...を存分に楽しめたのは「旅するクルマ」があったことが大きかったような気がします。次々と景色が変わって話題にこと欠かない“走る茶の間”...これは何も子育て時代だけに有効なのではなく、夫婦ふたりに戻った後も、最強の武器になるような気がして...子育て卒業を記念し、そしてズルズルと子離れ出来ない自分に喝を入れる意味も込めて、去年少し前倒しでこれまでよりも少し小型のVW CAMPERを買うことにしました。
    この春からは本当の意味で子育て卒業、夫婦の時間が始まります。10年前に妻の病気を経験し、夫婦がいつまでも一緒に居られないという現実を知ったこともあって、VW CAMPERでの旅はたとえ日帰りであっても本当に楽しく充実したものになっています。
    安達さんと山口さんの対談、これはキャンピングカーというジャンルにとどまらず、家族というもの、子育てというものの本質をとても上手く表現されていると感じました。hosoさんも書かれていますが、僕も是非ブログで引用あるいはリンクさせて下さいませ。

  3. (有)アート・くれない より:

    2009年5月1日に載っていた銭湯の富士山の写真についての問い合わせです。
    その写真のデータは、いただけませか?
    サイズW6000×H2000位にインクジェットプリントして、使用したいのですが。
    見積お願い致します。
    忙しい中、お手数で申し訳ないのですが、、早めにご連絡お願い致します。

  4. 町田 より:

    >hoso さん、ようこそ。
    この対談をまとめさせてもらったのは、私にとってもとても良い仕事でした。私もまた、このお二方から学んだことが多かったように思います。
    キャンピングカーと家族の関係を、女性がしっかり追求している姿勢に心を動かされました。
    >hoso さんのブログネタとして採用していただけるならとても光栄なことです。
    楽しみにしております。
     

  5. 町田 より:

    >aki さん、ようこそ。
    キャンピングカーが親と子のコミュニケーションツールになるということを、私もまた息子との “北海道二人旅” から学んだことがあります。
    親と子が難しい関係になりそうなときに、キャンピングカーが 「無言の助け舟」 を出してくれたように思います。
    それがあったからこそ、今、息子との関係が非常に良好なのかもしれません。
    その顛末を、一度このブログでも書いたことがあります。
    もしよろしければ、ご笑覧ください。
    http://campingcar.blog.hobidas.com/archives/day/20090129.html (2009年1月29日 「息子との長い旅」)
    VW CAMPERでの充実した旅を期待しています。
     

  6. 町田 より:

    >(有)アート・くれない さん、ようこそ。
    はじまして。
    この画像は、実は私が撮ったものではなく、知人に 「富士山を描いた銭湯の画像で、なんかいいものない?」 と尋ねて、送ってもらったものです。
    くれないさんからの問い合わせがあったので、その方に、元画像を融通してもらうよう尋ねてみましたが、何かのイラスト集か画集からスキャンしたものだということでした。
    そのようなわけで、誠に申し訳ございませんが、ここに掲載された写真画像以外のデータを持ち合わせておりません。
    ご期待に添えず心苦しいのですが、事情を斟酌いただき、ご理解いただければ幸いです。
    しばらくパソコンが離れていましたので、お返事も遅くなり恐縮しています。
     

  7. 原田肇 より:

    突然にお問い合わせしてすみませんでした
    その写真がとても気に入ったのですが残念です 他に似た様な写真があれば嬉しいのですが?
    介護施設のブロック塀に貼りたいのですが・・・
    サイズはW4500×H2000(単位ミリ)です誠に勝手なお願いで申し訳ございません。

  8. 町田 より:

    >原田肇さん、ようこそ。
    私も銭湯にはよく行きました。家庭に風呂が付いてからも、銭湯の開放感が好きで、息子と一緒に自転車を漕いで近所の銭湯めぐりをしたものです。
    昔の銭湯の壁絵は、たいてい富士山でしたね。
    当時はそれが当たり前だったので、そのありがたみがよく分からなかったのですが、銭湯の壁絵が少しずつなくなるようになり、富士山の絵の貴重さがだんだん分かってくるようになりました。
    似たような写真があれば、本当に原田様に差し上げたいのですが、あいにく手持ちのものはこれだけです。
    これを送ってくれた知人に、もう一度 「伸ばせる画像があるかどうか」 尋ねてみます。
    銭湯そのものが少なくなり、富士山の壁絵も消えつつある時代。このような画像を残しておくことは大切なことかもしれませんね。
     

  9. 女性目線で見たキャンピングカー

     ブログネタの無いときは、何書こうか悩む物ですが、書きたい事が溜まってしまった時も困るものです。 まだ、過去のブログを貯めてますが、…

  10. 町田 より:

    >hoso さん、トラックバックありがとうございます。
    すごいですね! 実践編ですね。
    このブログで紹介した女性経営者お二方のご意見を、ものの見事にキャンピングカー購入の方法論として捉えた分析は読み応えがありました。
    きっと、キャンピングカー購入を計画されている世のお父さんたちに対する良きアドバイスとなるでしょう。
    hoso さんの戦略を、もっと多くの方々にも研究してもらいたいと思いました。
     

  11. hoso より:

    私は文才が無いので、お恥ずかしい限りです。
    最初は「ためになる事が書いてありますよ」って書こうと思ってたのですが、
    書いてるうちにこうなってしまいました。m(_ _)m

  12. 町田 より:

    >hoso さん、ようこそ。
    hoso さんがお書きになったものからは、こちらも勉強させてもらいました。
    素晴らしいまとめだったように思います。
    文章というのは、書く前に考えていたこととは違ったものになってしまうことが多いですね。
    私なんかも、書く前に考えていたことが、そのまますんなりまとまってしまうことなど滅多にありません。
    でも、だからこそ面白いのかもしれませんね。
     

  13. (有) より:

    先日は勝手なお願いをしてすみませんでした
    お風呂の写真の件は変更になり介護の職員がペンキで書く事になりました。
    お手数をお掛けしお詫び申し上げます 有り難う御座いました。 原田

  14. 町田 より:

    >原田さん、ようこそ。
    こちらこそ、何のお役にも立てず、申し訳ありませんでした。
    でも、職員の方がペンキで描くというのが、いちばん心のこもった作品になるように思います。
    きっと素晴らしい富士山の絵になるでしょう。
    期待しております。
     

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">