観光立国の実現とキャンピングカー (幕張RVショーフォーラム)

 キャンピングカーシーンが、未来に向かって力強い前進を開始している。
 そんな感触を得ることができた今回の 「幕張キャンピング & RVショー2010」 。
 
幕張キャンピングカーショー2010全景
 
 それは展示された新車群からも感じられたのだが、それ以上に、“場の空気” として、日本にもしっかりとした “キャンピングカー文化” のようなものが根づきそうだという予感が、このショーには漂っていた。
 
 どういうことかというと、ようやくこの国で、アカデミズム、行政、ジャーナリズムが一体となって、 「キャンピングカーを日本を支える産業として育成しようではないか」 という動きが始まったように思えたからだ。
 
 その具体例が、初日に開かれた 「開催記念フォーラム」 である。
 討議内容は、 「観光立国の実現にキャンピングカーは貢献できるか」 。
 
幕張ショーフォーラム001
 
 遠大なテーマである。
 過去、このようなテーマを追求するフォーラムが、キャンピングカーショーの会場で行われたことはなかった。
 それが、今、なぜキャンピングカーショーの会場で開かれるようになったのか。
 
 そこには、国交省・観光庁の目指す 「観光立国」 というプロジェクトの推進に、キャンピングカーの果たす役割というものが、少しずつ認知されてきたという背景がある。
 
 少子高齢化に伴う人口減少は、日本の地域経済に深刻なダメージを与え始め、人口の集中している大都市圏と各地方の 「地域格差」 がはっきりと際立つような時代がすぐそこまで迫ってきた。
 
 それを解消するため、政府は、平成19年1月に 「観光立国推進基本法」 を施行することに踏み切り、日本を 「観光立国」 として立て直す方向に大きく舵を切った。
 つまり、各地方の 「定住人口」 の減少を、観光による 「交流人口」 の増加でおぎない、観光客の誘致とその長期滞在を促進することによって、地域経済の活性化をうながそうという方針が確立されたわけである。
 
 そのためには、 「日帰り中心」 の観光客を、いかに 「1泊」 させるか。
 「1泊」 の観光客を、いかに 「連泊」 させるか。
 そのような、観光客の長期滞在化が観光産業の育成を図るカギとなってくる。
 
キャンピングカー旅行(BCヴァーノン)
 
 そこで、行政やジャーナリズムが注目し始めたのが、キャンピングカーユーザーの旅行形態だった。
 2008年度の調査に基づく 『キャンピングカー白書』 によると、 「ユーザーが将来してみたいこと」 の筆頭に、 「日本全国をゆっくり一周したい」 (80.7%) という声が掲げられ、2番目は 「気に入った場所を見つけて2~3週間滞在したい」 (55.4% ※いずれも複数回答) という回答が寄せられている。
 
 また、つい最近、日本RV協会が行なった 「北海道旅行に対するアンケート調査」 においても、年々観光客の旅行日程が短縮化されるなかで、キャンピングカー旅行客だけは長期滞在の傾向を示し、62.2%のユーザーが、北海道では  「1週間以上」 の長期旅行を楽しんでいるという。
 
 このような長期旅行が成立する背景には、日本RV協会などが繰り広げてきた 「団塊世代マーケット」 の掘り起こしによる、リタイヤ層の拡大が原動力となっているが、もともとキャンピングカーユーザーは、ファミリーユースにおいても長期旅行を楽しむ傾向が強いという特徴がある。
 それは、旅館やホテルなどの予約を取らなくても旅行できるという気楽さと、宿泊費・滞在費を圧縮できるという、キャンピングカー旅行ならではのメリットが作用しているからだ。
 
喜連川キャンプ場サイト
 
 今回、幕張のキャンピング& RVショーで行なわれたフォーラムは、そのようなキャンピングカー旅行の特徴をいかに地域の観光産業の活性化と結びつけるかという、行政、アカデミズム、ジャーナリズムの知者たちの問題意識から生まれたものだといえよう。
 
 参加した講演者・パネリストたちの顔ぶれは、下記の通り。
 
● 国土交通省観光庁・国際交流推進課の 河田敦哉 課長補佐。
● 松本大学・観光ホスピタリティ学科の 佐藤博康 教授。
● フリーランスライターの シェルパ斉藤 氏。
● 財団法人ボーイスカウト連盟事務局の 小林孝之助 事務局次長。
● 日刊自動車新聞社・取締役主幹の 佃義夫 氏。
● 日本RV協会の 福島雅邦 会長。
● 日本アウトドアジャーナリスト協会代表の 中村達 氏。
 
 いわば、行政の代表、アカデミズムの代表、アウトドアや自動車を専門に語るジャーナリストの代表、RV業界の代表といったそれぞれのスペシャリストたちが、キャンピングカーと観光産業を語るために集まったといえよう。
 
幕張ショーフォーラム002
 
 討議されたテーマは多岐にわたった。
 議論は、日本人観光客を増やすだけでなく、外国人観光客を誘致するためのレンタルキャンピングカーの整備という課題にまで及んだ。
 
 観光庁がめざす 「観光立国」 という理念には、日本人観光客を日本全体に循環させようという意図もあるが、もうひとつ、外国人観光客をもっと日本に誘致させようという狙いも含まれている。
 
 政府が外国人観光客の誘致に自信を持っている理由は、
 「日本の観光資源は、世界でもトップレベルの豊かさに恵まれている」
 ということにある。
 
 日本には四季があり、南北に長い。
 同じく国の中で、スキーもできれば、スクーバ・ダイビング、史跡めぐりなど何でも楽しめる。かつ、どこの土地もみな風光明媚だ。
 
 街に出れば、アニメや日本食など、外国人が求める文化やサービスが簡単に手に入る。
 そのためのインフラを整備するとき、高コストのハコモノを次々と開発するよりも、低コストで、しかも環境負荷の少ない都市型キャンプ場などを設けていった方が、よほど環境保全にも貢献するし、時代の求めるスロートラベルの趣旨にもかなう。
 なぜなら、そのような場所にキャンピングカーを止めておけば、そこから先はウォーキングなり、自転車などによる移動手段と有機的に連携できるからだ。
 
 議論は、そのような展開を見せながら、少しずつ観光とキャンピングカーの将来的展望を築き上げるのに成功した。
 
幕張ショーフォーラム003
 
 このような外国人観光客の旅のツールとしてキャンピングカーを選択肢に入れるという企画には、実は、もうひとつのもくろみが潜んでいる。
 
 そこには、キャンピングカーマーケットの中国大陸への拡大というモチーフが隠されているのだ。
 年々増加の傾向を見せる中国人観光客に、キャンピングカーによる日本観光をプレゼンしてみせることによって、キャンピングカーの快適さと利便性を感じとった中国人による大陸マーケットが生まれるとしたら、いったいこの業界は、どれほどの産業規模に広がるか。
 
 もちろん、今はまだ遠い夢だ。
 それを実現するための現実的課題は山積している。
 しかし、そのような巨視的な展望がないかぎり、マーケットの成長どころか、車両開発の進歩も停まってしまう。
 
幕張ショーフォーラム004
 
 もちろん、簡単に結論が出る問題ではない。
 討議したところで、すぐにユーザーの利便性を図るインフラ整備が実現するわけでもなく、即効的にマーケットが広がるようなものでもない。
 現に、テーマが膨大に広がりすぎて、2時間という枠内では消化しきれない課題が数多く残ってしまった。
 また、聴講者との質疑応答の時間を採る余裕もなかった。
 
 しかし、キャンピングカーが、 「行政」 や 「社会」 に認知される産業に成長するためには、避けては通れない道程であったように思う。
 少なくとも、キャンピングカーを造る人たち、使う人たちが、 「自分たちはどこに向かえばいいのか」 という指針は示されたように感じる。
 
 このフォーラムが実現されたおかげで、今回の幕張ショーは、この業界にとっては記念すべき年になったような気がする。
 
※ 「若者の旅行離れ」 に続く
 
 なお、今回フォーラムに参加された方々のプロフィールは下記のとおり。
 
 佐藤博康 (さとう・ひろやす)
 1949年生まれ。松本大学・観光ホスピタリティ学科教授。
 専門は国際観光、エコツーリズムなど。NHK 「Cool Japan」 に出演中。
 著書に 『インバウンド観光の現状と課題』 、 『外国からのお客様をお迎えするために』
 
 シェルパ斉藤 (しぇるぱ・さいとう) 氏。
 1961年生まれ。フリーランスライター。 『BE-PAL』 、 『東京生活』 などの雑誌に連載中。
 著書に 『シェルパ斉藤の東海自然歩道全踏破』 、 『犬連れバックパッカー』 、 『スローな旅で行こう』 など多数。
 
 小林孝之助 (こばやし・こうのすけ) 氏。
 財団法人ボーイスカウト連盟事務局次長。平成23年8月に、静岡県富士宮市で約2万人を集める日本大会開催を予定。
 
 佃義夫 (つくだ・よしお) 氏。
 1970年、日刊自動車新聞社に入社。86年より編集局部長を歴任。2002年に取締役に就任。
 著書に 『トヨタの野望、日産の決断』 、 『この激動下、トヨタだけがなぜ大増益なのか』 など。
 
 福島雅邦 (ふくしま・まさくに) 氏。
 1991年に株式会社フィールドライフを設立。世界初の量産型軽自動車キャンピングカーを開発・販売。
 2000年に国産初のフルコンバージョン (クラスАタイプキャンピングカー) の発売を開始する。
 2009年より日本RV協会会長を務める。
 
 中村達 (なかむら・とおる)
 1949年、京都生まれ。日本アウトドアジャーナリスト協会代表理事。NPO法人アウトドアライフデザイン開発機構副代表理事。東京アウトドアズフェスティバル総合プロデューサーなど、アウトドア事業に深く関わる要職を務める。
 著書に 『アウトドアマーケティングの歩き方』 、 『アウトドアビジネスへの提言』 、 『アウトドアズがライフスタイルになる日』 など。
 
※ 関連記事 「日本のアウトドアの考察 1」
 
※    〃    「日本のアウトドアの考察 2」
 

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