J キャビンミニ FC

 
 軽トラックにキャンパーシェルを載せるという、MYS ミスティックの 「J キャビンミニ」 が登場したとき、多くの人は、デフレ時代の低価格路線を狙った商品設定だと思ったかもしれない。

JキャビンミニFC外形001
▲ J キャビンミニ FC

 地方の軽トラ普及率は高い。
 その軽トラをベース車として、遊びに行くときだけキャビンを積載しようというニーズは確かにあるだろう。
 そうすれば、キャンピングカーとして架装されたクルマを新たに購入する必要がない。
 買うのはキャンパーシェルの部分だけ。
 コストパフォーマンスは無類によい。

 … ならば、ひとつ買ってみようか。
 J キャビンミニとは、そう計算した人々を狙った商品なのだろう…と分析した人は、
 「いい狙いどころだな」
 と感心したかもしれない。

JキャビンミニFCシェル003

 しかし、J キャビンミニを構想した MYS の佐藤正社長の思惑は、もう少し別のところにあった。

MYS佐藤さん001

 彼は、まず最近の軽トラックの上級グレードの驚くほどの走行性能の改善に注目した。
 
 「食わず嫌いでした。乗ってみてはじめて分かった。
 こんなに走りに余裕があり、かつ刺激的な走行フィールを持った乗り物だとは思わなかったんです。
  軽トラというのは、もしかしたら、今までの自動車のカテゴリーを大きく揺るがすものなのかもしれない」
 佐藤さんは、そう感じたという。

JキャビンミニFCリヤ002

 低コストで乗れる。
 小回りが利く。
 駐車スペースを取らない。
 そのようなエコロジカルな特性には収まりきらない、とてつもない魅力が軽トラにはある…と、佐藤さんは読んだのだ。

 その魅力を一言でいうと、 「走りのビート感」 。
 「たとえばスバルなんかの軽トラに、この J キャビンミニを積載しますよね。
 すると、カツン、カツン、カツンと乾いたビートを刻んで、感性を刺激する走りが生まれるんですよ。まさにフォービートかエイトビートという感じ…」
 それは、ハーレーの、タンタンタンという 3拍子のリズムにも拮抗するような、胸を騒がす 「生命の鼓動」 なのだとか。

 だから、この軽トラをベースにした J キャビンミニシリーズは、走る楽しみにおいても、従来のキャンピングカーとは一線を画する 「次世代 RV」 なのだと佐藤さんは位置づける。 
 
 ならば、その肝心のシェルの部分にも、 「次世代 RV」 を語るにふさわしい “意匠” を考案しなければならない。  
 単なる 「コストパフォーマンスに優れたキャンピングカー」 と見なされるのではなく、持つこと自体を誇れるような、究極のデザインを試みなければならない。
 そういう思いが 「形」 となって結実したのが、この 「J キャビンミニ FC」 である。

JキャビンミニFC外形001

 「FC」 とは、ファクトリーカスタムのこと。
 佐藤さんの念頭にあったのは、ハーレーのカスタムだった。
 ノーマルでさえ強烈な存在感を持つハーレーが、一つひとつクロームメッキパーツを身に付けて輝いていくときに生まれる “際だつ個性” 。
 その燦然と輝く 「個性」 を、ファクトリーとして鍛え上げられた自分たちの職人芸で、最高の仕上がりにまで持っていく。
 それが 「J キャビンミニ FC」 の思想である。

 このシェルの扉を開け、中に入っただけで、その 「思想」 に感染しない人はいないはずだ。
 ここまで手の込んだ作りを誇るピックアップキャビンというものは、かつて存在したことがなかったのではないか。

JキャビンミニFC室内003

 まず、丹念に仕上げられた木工家具のグレード感に、人はびっくりするはず。
 深い渋みを湛えた美しい塗装。
 それが室内に差し込む光の角度によって、微妙な陰影を室内に投げかける。

JキャビンミニFC002

 それとバランスを取るように、対照的な明るさを際だたせるシートの柔和感。
 「書斎」 の重厚感と、 「リビング」 の軽快感の絶妙なマッチングが、ここでは試みられている。

 ちなみに、シートは、中にチップを入れた 3層構造。
 座り心地も万全ならば、ベッドメイクしたときの感触も秀逸だ。
 壁紙にも、繊細なデザインセンスが発揮されている。
 竹を組んだように見えるアジアンテイスト・デザイン。
 ヨーロッパのリゾートとはひと味違う、アジア風高級リゾートの涼しげな感触が、この壁紙素材から伝わってくる。

JキャビンミニFC006

 インバーターで回すエアコン (オプション) には、省電力タイプのものが採用されているので、少ない電力でも相当な涼風が約束されるという。
 そこから流れ出る風が、アジアデザインの壁紙をかすめるとき、中でくつろぐ人は、窓の外に、ヤシの木陰の向こうに広がるインド洋か東シナ海を夢想するかもしれない。

 照明は、あえて流行の LED を使わず、蛍光灯も避けて、昔ながらの電球を使った。
 そこにも “こだわり” があり、ランプのような光がもたらす自然な温かみを狙ったのだという。

JキャビンミニFC005

 小物入れも豊富。
 趣味にこだわる人は、自分にとって大切な “秘密のアイテム” をそっと貯め込んでおきたくなるもの。
 大人の風格を備えながらも、男が 「少年に還る」 ときの楽しさを、このクルマは失っていない。

JキャビンFC004

 「コストを度外視しても、凝りに凝ったものをつくってみたかった」 という佐藤さん。
 そこに実現されたものは何だったのだろう。

 私は、 「男が自分の “精神” に出会う場」 だと思った。
 自分がどこから来たのか
 自分はどこへ行こうとしているのか
 自分とは何か
 忙しい日常生活の中で、忘れてしまった 「自分を問う心」 。
 そのような 「問い」 は、日常性を超える異次元空間でなければ生まれない。
 自分が、キャンピングカーの中にいることすら忘れるような、至上の愉楽を約束する空間があってこそ、生まれる 「問い」 なのだ。

JキャビンミニFC001

 もちろん、そのような 「問い」 に、本当の答などない。
 それでも、答を求めながら、この贅沢な空間で、ゆっくり自分の好きな酒を飲み、好きな音楽を聞く。
(佐藤さんなら、そこでフジコ・ヘミングのピアノ曲を聞くことだろう)

 そして、答を求め続け、けっきょく分からないままに、快適なベッドの上に、酔った身体を横たえる。
 ほのかなランプの光が、火照った頬を優しく撫でていくのを感じながら、いつしか眠りの底に落ちていく。
 「幸せ」 ってのは、そういうものだ。
 J キャビンミニ FCは、その 「幸せ」 を約束してくれるクルマだ。
 
 
 参考記事 「これぞトラキャン ! (トラックキャンパーの思想) 」
  
 

カテゴリー: campingcar   パーマリンク

J キャビンミニ FC への2件のコメント

  1.  石原 謙 より:

    こんにちはj-cabin mini sいいですね。
    私もj-cabin mini に似せたキャビン(fnxのブログ)を自作して軽トラックに積載しています。
    最近はキャビンの積載が面倒になりここ3ヶ月くらいは乗せたままです。
    お値段がもう少し安ければ嬉しいかなと思っていますが、作る側からするとかなりコストがかかってしまうのかなとも思います。
     私が気になるのはj-cabin mini の後部が車体からはみ出してすこしカッコ悪いと思いますがどうでしょうか。

    • 町田 より:

      >石原 謙 さん、ようこそ
      素晴らしい ! 
      j-cabin mini に似せたキャビンを自作されたとのこと。
      もしかして、サイディングもやっぱりアルミの波板なんですか?

      ミスティックさんの J‐キャビンに “思想” というのは実に汎用性の高いものとして練り上げられてきて、カムロードベースのキャブコン「アンセイエ」だって、いわばこの J‐キャビンの発展形といえなくもないし、2017年の幕張ジャパンキャンピングカーショーで参考出展された事業者向けレンタルキャンピングカー用車両(マクレントジャパン専用モデル)も、J‐キャビンシリーズの思想をベースにしたものですよね。
      やはり、日本のキャンピングカーづくりにおける進化の一系統をはっきり示すものだと思っています。

      キャビンの後部が荷台から少しはみ出す …
      うん、確かにこのあたりがカッコ悪く見えるということもありますね。
      ただ、これは構造的にやむを得ない部分なのではないでしょうかね。
      視覚的な好き嫌いというのは、たぶんに慣れの問題でもあります。
      私は、見ているうちに、この部分にはそんなに悪い印象を持っておりません。
       

 石原 謙 への返信 コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">