山本馬骨氏の新著 『くるま旅くらし読本』

 『くるま旅くらし心得帳』 (新風舎 2006年) の著書を持つ山本馬骨氏が、その続編ともいうべき 『くるま旅くらし読本』 を今年 (2010年) 発行された。
 といっても、前著の出版を引き受けた会社がなくなってしまったため、今回は著者ご自身の手による手作り製本。
 
くるま旅くらし読本
 
 “手作り” といえども、しっかりした無線綴じで製本されたていねいな仕上がりで、ところどころ美しい写真が挿入され、巻末には紙色を変えて 「付録」 がつけられるという、贅沢な本になった。
 ただ、凝ったつくりのため、量産はできず、初版は20部だとか。
 
 その貴重な1冊を昨日お送りいただいた。
 
 素晴らしい本である。
 前著はプロの出版社から発行されたものであったため、本の体裁は整っていたが、大量生産品の匂いが強かった。
 しかし、今回は、装丁の色合いといい、誌面構成といい、中の写真といい、心のこもったつくりになっていて、 「アート」 の風格が漂う素敵な本になっている。
 
くるま旅くらし読本グラビア001
 
 もちろん、内容的にも深みが増している。
 「60歳からのくるま旅くらしの楽しみ方」 というサブタイトルからも分かるとおり、リタイヤされた方々のキャンピングカーライフのノウハウを伝授した本であるが、単なるノウハウ本とは違って、 「セカンドライフとどう向き合うか」 という、人生そのものを問う著者の眼差しが、なんとも鋭く、かつ温かい。
 
 第一章の 「定年後という人生」 という章を読んだだけで、早くも著者の透徹した視線の確かさに、居住まいを正すような気分になる。
 
 「現役時代に、自分の好きなことを好きなようにやって来られた人は、恵まれた人だと思います。
 しかし、そのような人はほとんどいない、というのが私の見解です。
 自由な意思決定を行えるような立場にいた人でも、自由な意思決定が許される場面など、ほとんどなかったというのが実態のような気がします。
 しかし、定年後の人生は自分自身が主役になり、自分の自由意思で、その行き方を判断し、決めてゆくことが可能なのです」
 
 定年を間近に控えた人で、このような言葉に触れて、心がときめかない人がいるだろうか。
 ようやく、自分の人生を手に入れられると、心が “はやる” ではないか。
 
 しかし、著者は続けて、このようにも言う。
 
 「ところが、この自分で主役となって物事を決めていくというヤツは、なかなか厄介なのです」
 
 つまり、自分が主役になったとたん、何をしたらいいのか、それがなかなか見つからないものなのだ…ということを、馬骨さんは自分の経験と照らし合わせて語る。
 ここには、哲学者をいつも悩ませた 「自由とは何か」 という普遍的な問題に迫る洞察が潜んでいる。
 
 さらに、素晴らしいなぁ…と思って、思わずアンダーラインを引いてしまった文章があった。
 
 「旅は発見である」 と書かれたあとの文章は、こう続く。
 
 「旅くらしでは、新発見というよりも再発見ということが多いように思います。
 今まで解っていたこと、あるいは観ていたつもりでいたことも、時間をかけてじっくり観たり聴いたりしてみると、今までとは違った新たな感慨に触れることが多いのです。
 駆け足の観光旅行では、ほんの上っ面だけしか見ていないものです。
 だからスピードを落とせば落とすほど、 “再発見” の可能性が高まります。
 スピードを落としても、失う時間よりも獲得する時間の方が多いように思えます」
 
 “スロートラベル” といわれるキャンピングカー旅行の真髄を、これほどまでに的確に表現した文章があっただろうか。
 
 結局、どんなに時間をかけて日本一周をしたとしても、 「再発見」 の目を持たない旅行は、何ももたらさない。
 本著は、その 「再発見」 の目をどうやって育てていくのか。それについて語っているような本でもあるのだ。
 
くるま旅くらし読本グラビア004
 
 かといって、難しい本ではない。
 基本的には、キャンピングカーを使った長い旅を、安全に、健康に、楽しく続けるための “指南書” であり、そのための鮮やかなヒントが、宝石箱につまった宝石のように、キラキラと散りばめられた本である。
 
 馬骨氏は、キャンピングカーを使った 「くるま旅くらし」 が、高齢化の進むこれからの社会では老人医療の負担を軽減するという視点を明確に打ち出しており、キャンピングカーライフがいかに心身の 「健康維持」 をもたらすかという分析は、傾聴するに値する。
 
 「くるま旅くらし」 というものが、どういうものであるか。
 手っ取り早く知りたい人は、巻末に集められた付録の 「くるま旅くらしに関する何でもQ&A」 を見ることをお薦めする。  
 ここには、車種選びから、装備品目の使い方、泊まる場所の選び方から、ゴミ処理に至るまで、馬骨氏の豊富な経験から得られた貴重なノウハウがぎっしり詰まっている。
 おそらく、これだけ徹底したノウハウ集は、専門誌に掲載されることもないと思う。
 
くるま旅くらし読本グラビア003
 
 ところどころのページに彩りを添える、奥様の撮られた写真も美しい。
 長い時間をかけた旅だから撮ることのできたベストショット集。
 贅沢な本である。
 
山本馬骨夫妻
 ▲ 山本馬骨 夫妻
 
 送料・手数料込みで、1,000円。
 お問い合せは、直接、馬骨さんのブログに 。
 
 http://blog.goo.ne.jp/vacotsu8855
 

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山本馬骨氏の新著 『くるま旅くらし読本』 への8件のコメント

  1. ムーンライト より:

    「旅は発見である」。
    いいな~と拝見していて、写真に目が留まりました。
    この花畑の写真。美瑛の丘だったりして・・・。
    (富良野かもしれないけれど)
    「愛のスカイライン」というCMを覚えていらっしゃいますか?
    あの頃、私は車にも愛にも関心がありませんでしたが、あのCMにはとっても惹き付けられました。
    「恋人と車に乗って旅にでる」というバラ色の夢が描けた時代だったのかもしれません。
    このCMの舞台である「ケンとメリーの木」があるのが北海道の美瑛町です。
    「美瑛の丘」として有名なところで、一度行ってみたいとは思っていたのですが・・・。
    今月28日にこの美瑛町で大木トオルさんの講演会&ライブが開催されるそうです。
    JRを乗り継いで行ってみようと思っています。
    もしお会いすることができれば・・・。
    何か一つだけお聞きするとしたら、何なのだろう。
    何も言えないかもしれませんが・・・。
    私は旅で何かを発見することができるのでしょうか。

  2. 町田 より:

    >ムーンライトさん、ようこそ。
    さすが、北海道にお住まいだけあって、すぐにお分かりになるんですね。
    馬骨さんの奥様が撮られたお花畑の写真は、中富良野町のファーム富田の景観だそうです。
    それにしても、きれいな写真ですね。このブログではそれをスキャニングして取り込みましたが、きっと原版はもっときれいなんでしょうね。
    美瑛の画像も、この本にはふんだんに出てきます。下の方にある雲と大地だけの丘の画像などはそうです。スケールの大きさが伝わってきますね。
    28日の美瑛町の講演会とライブ。楽しみですね。
    お話を交わす時間ができれば、どんなに素敵でしょう。
    でも、実際に話す時間が取れなくても、「何か一つだけ聞いてみたい」 という気持ちが大事なのかもしれません。たぶん、それがムーンライトさんが大木さんに求め続けたテーマの根幹にあるものだろうし、それが新しいものの 「発見」 につながるのかもしれません。
    だけど、「ひとつだけ」 って、案外難しいですね。
    思いが強くなりすぎて、いざとなったら、本当に “どうでもいいこと” しか聞けなかった…ということは、よくあることですから。
     

  3. 「くるま旅くらし読本」

     山本馬骨氏の「くるま旅くらし読本」が届きました。  キャンピングカー スーパーガイドの編集長、町田さんのブログで知り、3日(水)に注文。昨日届きました。  町田さんのブログによると「

  4. 町田 より:

    >hoso さん、トラックバックありがとうございます。
    さっそく、hoso さんのブログにお邪魔しました。
    素敵ですね。私よりも馬骨さんの著書の大事な箇所を捉えていらっしゃるように感じました。
    馬骨さんも、hoso さんのような読者を持たれたことを喜ばれると思います。
    私が、山本馬骨さんの最初の著書を読んで感心したのは、キャンピングカーによるロングツーリングを論じたはじめての著書に出会ったということでした。
    自分でも、キャンピングカーの長旅を経験しています。
    しかし、いちばん長い旅行で2週間でした。
    ところが、馬骨さんの旅は、2ヶ月、3ヶ月を超えることもある。
    すると、1週間、2週間単位の旅行と、まったく違ってくるんですね。
    旅そのものが、別のものになっていくことが分かりました。
    たかだか2週間ほどの旅で、「キャンピングカーの長期旅行は…」 なんて、いい気な記事を書いていた自分が恥かしくなりました。
    まだ自分は1ヶ月を超えるキャンピングカー旅行を経験していません。
    だから、本当の意味で、馬骨さんの著書の大事なところが身に沁みて理解できるようになるのは、まだこれから先なのかもしれないと思っているところです。
     

  5. hoso より:

    遅くなりましたが、山本馬骨氏の「くるま旅くらし読本」、ご紹介頂きありがとうございます。
    こちらのブログで知り、手に入れることが出来ました。
    また、トラックバックが2度入ってしまい、お手数をおかけし、申し訳ありません。m(_ _)m
    私の場合、5月の連休が運良く重なったて、最長1週間。
    それも、「一週間あれば」と移動に1~2日かけてしまうので、いつもバタバタと忙しい旅行になってしまいます。
    ま、列車や飛行機の時間に左右されない分。生き返りもそれなりに楽しかったりはしますが。(^▽^;)
    仕事をリタイヤしてからも、人生にリタイヤした訳ではなく、みなさんそれからが大変楽しそうに見えます。
    60からも楽しく生きるために、今何をしなければいけないか、今からがんばらなければ。
    そんな気持ちになりました。

  6. 町田 より:

    >hoso さん、ようこそ。
    やはり現役で仕事に携わっていらっしゃる方の場合、長期休暇といっても、1週間ぐらいが限度であるように思います。
    ヨーロッパあたりの普通の庶民が夏期休暇が “1ヶ月” というような国々とはやはりずいぶん違いますね。
    しかし、観光庁などでは、休日が集中するGWやお盆時期の休日を分散化させるなど、観光に出向きやすくなるようなシステムを整えていこうという構想も抱いているようですね。
    そうなれば、日本の観光旅行の環境も大きく変わっていくかもしれません。
    観光地の短期的な観光客数の集中や、交通渋滞が解消する方向に向かえば、キャンピングカーによる “のんびりトラベル” にもさらに注目が集まるかもしれません。
    60を過ぎてからの人生設計を 「くるま旅」 に求めた馬骨さんの著作が生きてくる時代が訪れようとしている気もします。
     

  7. 今晩は。ブログを愉しく、且つ又、「今日は東西南北、どっちだ!!」と感じで感嘆しつつ、「私小説的エッセイ」では「仮説的ワタクシ」を演じられていると思います。
    閑話休題
    馬骨様より「くるま旅くらし読本」を送って
    貰いました。正に「くるま旅」をしながら
    「馬骨様の人生」そのものだと、読みながら
    感じ、いっています。いいですねぇ。
    軽キャンパーより、始めようと思っています。
                  では、また
                   マッキー旅人

  8. 町田 より:

    >マッキー旅人さん、ようこそ。
    馬骨さんの著書を買われたわけですね。これから 「くるま旅」 を始められるのなら、巻末の付録がそうとう役に立つと思います。
    私のブログはいつも “ヨタ話” ばかりですみません。
    最近、頭が仕事中心で回り始めていますので、ちょっと新刊書など読むヒマがなくて、思いついたままのお手軽な記事ばかり書いています。
    なんとか、更新できる時間のある限りは更新していきたいと思っているのですが、そろそろ時間的に厳しいかも…。
    頑張ります。
     

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