「日本のキャンピングカーの歴史」 発行

 
 ようやくである。
 『日本のキャンピングカーの歴史』 という書籍の発行に漕ぎつけた。
 昨日、その表紙の校正が上がった。
 
 
 
 見本が上がるのが、2月5日。
 約90ページの書籍になった。
 
 もちろん、これが日本のキャンピングカーの歴史を完璧に網羅したものだと言い張るつもりはない。
 むしろ、取材しきれなかった部分の方が多い。
 しかし、人から人へ、つてをたどって、古い時代のキャンピングカーをご存知の方々には、かなりお会いできたように思う。
 かなり高齢な方もいらっしゃったが、お元気なうちに取材できたのはうれしいことだった。
 
 日本のキャンピングカー1号車は、今のところ、画家の桐野江節雄さんが東京マツダに造らせたオート3輪の 「エスカルゴ号」 ということになっている。
 しかし、本資料を作成しているうちに、どうやら演歌歌手の田端義夫さんがいすゞ自動車に造らせたバスを改良したキャンピングカーの方が年代的に古いということが分かった。
 
 田端さんの “バスコン” は、昭和30年 (1955年) に造られたということになっている。
 今回、その確証を得るために、当時いすゞ自動車にいらっしゃった方にお会いすることができたが、漠然と昭和30年代の初期…というところまでしか分からなかった。
 
 その方が、当時のいすゞのバスを担当されていたスタッフと連絡を取ろうと努力を重ねてくださったが、すでに連絡が取れない人が多かったという。
 エスカルゴ号の方は、昭和33年 (1958年) に製作されたことがはっきりしている。
 それを確実に裏付ける資料もあるし、その製作に立ち会った人からも話を聞いている。
 したがって本書では、暫定的に、このエスカルゴ号をもって 「日本のキャンピングカーの草分け的存在」 という位置づけにした。
 
 その後、現在のようなキャンピングカーのスタイルが生まれるまでには、10年ほど変化の乏しい歳月が流れる。
 しかし、その間、ワーゲンベースの輸入キャンパーなども導入されるようになり、それを参考にして、徐々に今のスタイルの車両が姿を見せるようになる。
 その大半は、ユーザーが自作したハンドメイドキャンピングカーだった。
 
 70年代に入ると、国産キャンピングカーは、ハンドメイドキャンピングカーの百花繚乱期を迎える。
 ワンボックスカーの室内を架装したものから始まり、今のピックアップキャビンの原型ともいえるトラックの荷台にシェルを積載したものまで、様々なスタイルが追及されていった。
 
 それと並行して、アメリカのバニングに影響を受けたカスタムカーのブームがスタートする。
 日本のキャンピングカーは、このハンドメイドとバニングの二つの流れにけん引される形で、次第に現在のスタイルを生み出すようになっていく。
 
 そこには、いろいろな人々のドラマがあった。
 本書は、 「キャンピングカーの歴史」 と称しながら、人物列伝のおもむきを呈しているようにも思える。
 すでに現役を引退された方々から取材するときは、古い写真や資料を見ていただきながら、時間をかけて、少しずつ思い出してもらうような形を取ることも多かった。
 しかし、その方の記憶がゆっくりと形を整え、ご本人も忘れていたような過去が蘇えってきたとき、そこには思いがけない感動的な青春ドラマが再現され、しばしば陶然と聞きほれたことも一度や二度ではなかった。
 
 惜しむらくは、この資料を制作中に、 「日本のオートキャンプの父」 ともいわれる日本オート・キャンプ協会の岡本昌光初代専務理事が亡くなられたことだ。
 岡本氏は、日本にキャンプ文化を根づかせた最大の功労者だが、また数々のイベントを通じて日本にキャンピングカーを紹介した功績においても、並ぶ者のいない偉業を成し遂げた人である。
 
 岡本氏は、この小冊子の完成を待たずにして亡くなられたが、原稿チェックの段階ではさんざん目を通してもらい、電話を通じて、ほぼ毎日こと細かなアドバイスをいただいた。
 氏は、本当にこの資料ができあがるのを楽しみにされていた。
 旧友と連絡をとるときも、ことあるごとに、この小冊子が現在制作進行中であることを話題にし、その感想を述べ、できばえを誉めたたえてくれたというから、完成本を直にお渡しできなかったことが本当に残念でならない。
 
 逝去されたのは、昨年の10月11日。享年78歳であった。
 また、現在キャンピングカービルダーとして名声を誇る会社の創業者たちの中においても、アム・クラフトの水鳥元社長、セキソーボディの中山元社長らのように、若くして永眠された方々がいる。
 本資料は、その方々にも見ていただきたかった本である。
 
 ともあれ、不完全な形かもしれないが、日本のキャンピングカーの流れをたどる原資料のようなものはできあがった。
 今後は、取材に漏れた方々の証言もさらに取り入れ、また、これを読まれた未知の読者からの正確な情報もつけ加え、より精度の高い資料集として再構築していくことも念頭に置いている。
 
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「日本のキャンピングカーの歴史」 発行 への12件のコメント

  1. ムーンライト より:

    『日本のキャンピングカーの歴史』
    タイトルはずばりと直球勝負でお付けになったのですね。
    とても良かったと思います。
    人物列伝のおもむきも呈しているとのことなので拝見するのが楽しみです。
    私が書いているカスタマーレビューのことですが。
    実は大木さんの新著が昨年12月に発売されました。
    下記にある『セラピードックの世界』という本です。
    http://therapydog.cart.fc2.com/
    アマゾンでも扱っていますので、カスタマーレビューをと思っているのですが、どう書いたらよいか一ヶ月以上迷っています。
    絶対出版しなければならない本だと思いますし、セラピードックについてだけでなく犬の健康管理について大変詳しく記述してあって、愛犬家には一家に一冊!とでも言いたい本ではあるのですが。
    この本の「まえがき」と「あとがき」を読んでいたら大木さんの声が聞こえてくるようでした。
    「あ~。そうだよね~」と頷きながら読みました。
    「まえがき」と「あとがき」は口述筆記なのではないかという気がします。
    だけど、だけどですよ。
    本を手にする方は大木さんと話をしたことがない方が圧倒的に多いはずです。
    大木さんの言葉はその独特の間、人生の深さで、心に響くのです。
    言葉そのままを書いたのでは、それが伝わるとは思えません。
    本当に良い本なので是非多くの方にお読みいただきたいのですが、私なら大木さんの言葉をどう「翻訳」するかということが心にかかって未だにレビューを書けずにいます。
    『ダンディー・トーク』のあとがきに「とくに町田氏には大いに感謝している」とありました。
    町田さん。編集のお仕事ってどんなことなのですか?
    口述筆記をなさることもあるのでしょうか?

  2. 町田 より:

    >ムーンライトさん、ようこそ。
    いやぁ、結局 “直球勝負” でいきました。書籍という感じではなく、基本的に “資料” というイメージがあったからです。
    ただ、「物語風」 というのは意識しました。資料といえども、読んで面白いという性格のものにしたつもりなんですが…。
    『セラピードッグの世界』 のレビュー、楽しみにしています。ぜひムーンライトさんでなければ書けないものに仕上げてください。
    忙しい人が口述筆記によって本を出すということは、わりとよくあるようですね。
    かえってその方が、ナマの声に近づいていって、筆をとって書くよりもインパクトが強まることが多いようです。
    徳大寺さんの 『ダンディー・トーク』 も、雑誌に連載しているときは口述筆記でした。
    月1で、徳大寺さんが定宿とされているホテルのロビーでお会いして、連載1回分の話をしてもらうのですが、いつも途中から雑談風に脱線してしまい、限られたページ数に収まりきらず、結局、もったいないけれど捨てなくてはならない話も多々ありました。
    でも、そんな雑談中のやりとりを、当時の徳大寺さんもけっこう楽しまれていたようです。
    書籍は、その連載分をもう一回整理して、さらに書き下ろしの原稿を頂き、1冊にまとめました。
     

  3. aki より:

    ムーンライトさんのコメントを拝見して、思わず書棚の『ダンディトーク』を探してしまいました。自分には全く縁がない“都会の大人”の雰囲気を味わいたくて、貪るように読ませていただいたことを覚えています。
    やけに言葉がリアルに心に伝わるなぁって思ったら、やはり口述筆記だったんですね。
    昨夜はもうすぐ18歳になる息子と初めてのクルマ談義を楽しみました。あの頃とはクルマを取り巻く環境がすっかり変わって、エコか否か?という新しい判断基準が加わってしまいましたが、あの頃の熱い空気の中で息子と語り合いたかったなぁって感じました。

  4. 町田 より:

    >aki さん、ようこそ。
    『ダンディー・トーク』 をお読み頂いたんですね。
    びっくりしました。
    よもや、このブログの読者で、昔のあの本を読んでくださった方からコメントを頂くなど、思いもよらぬことでしたので。
    ご指摘の通り、当時と今ではクルマを取り巻く環境がすっかり変わってしまいましたね。
    当時は、日本人がまだ 「エコノミックアニマル」 などと言われていた時代で、経済重視、効率優先型の価値観が主導的だったように思います。
    そのなかで、『ダンディー・トーク』 は、超俗、非効率、貴族主義などを掲げて、その風潮に対抗しようとした書でしたが、今になって見れば、それ自体が、80年代風バブル期のパラダイムで考えられた世界であったように思います。
    しかし、あの時代には、少なくとも 「自動車が人間の思想を語る素材になりうる」 という発見と期待感だけはあったように思います。
    もうすぐ18歳になる息子さんと、クルマ談義をされたわけですね。
    いいですねぇ! 親子の枠組みを超えた 「男同士の対話」 って、父親からみれば感慨深いものがありますね。
    当時の “熱い空気” が、クルマから薄れようとも、 「時代」 を語る大切な素材であることには代わりありません。
    良い対話が生まれることを期待しております。
     

  5. aki より:

    ダンディトーク、ダンディトークII、ああ人生グランドツーリング、ぶ男に生まれて...書棚をざっと見渡しただけでも「間違いだらけ・・・」の全巻とともに徳大寺氏の著書が結構あったりします。もちろん全てが良い作品というわけではないし、徳大寺氏を全面的に信奉しているってのとは少し違うのだけれど、“男がカッコ良くありたいと願っていた頃”の記録簿のような本です。
    徳大寺氏の『こいつぁイイ!』のひと言に騙されて、イタリアの実用小型車を手にして以来、すっかり「教えを守って」20年近くを過ごしていますが、先日の息子とのクルマ談義を終え、徳さんに騙されて良かったなぁ、とつくづく感じています。
    80年代風バブル期のパラダイム?
    エコロジー騒動がひと息つく頃(その正体が暴かれる頃?)、きっと「ダンディトーク」な時代がきっと来る。そんな風に思っていますが、町田さんはいかがお感じでしょうか?

  6. 町田 より:

    >aki さん、ようこそ。
    >「徳さんに騙されて良かったなぁ」
    そのひと言で、aki さんのすべてが語り尽くされている感じがしました。
    そして、aki さんの言葉で、私も徳大寺さんの “騙し(?)” のお手伝いに少しでも関われたことが、今さらのように幸せであったと感じることができました。
    徳大寺さんは、ある意味で、今の私をつくってくれた人なんです。
    あの人が、「君も自動車評論家をやってみればいい。あなたならできる」 といってくれたひと言が、(そのときは、そんなぁ…無茶な…と当時は真剣に考えたこともなかったのですが)、結果的に今の自分を支えてくれたような気がしています。
    80年代風バブル期のパラダイム…ってのは、やはり多少感じます。なんといっても、徳大寺さんも (編集者としてお手伝いしていた私も) 若かったので、気分がイケイケドンドンでしたから。
    その波の捕えかた、波の乗り方に、なんとなく、あの時代の空気のようなものが作用していたという気がするのです。
    もし、徳大寺さんが、そろそろ 『ダンディー・トーク』 をもう一度やってみる時期かな…思われたとしたら、きっと今の時代でこそ華開く、より底の深いダンディズムが表現されそうに思えます。
    また、連絡とってみようかな…
     

  7. aki より:

    町田さんが自動車評論家に?
    たぶんコアなファンは出来るけれど、本は売れない“孤高の評論家”になられたことでしょう(失礼!)。アルトからフェラーリまでを論じるgeneralな評論ではなく、キャンピングカーに特化したspecialな評論が町田さんらしい気がしますけど(笑)
    もし徳さんに会われることがあれば、12歳の時に初めて手にした「間違いだらけ...」がその後の田舎の少年の人生をどれだけ変えたことか?で、FIATしか乗ろうとしないその妻や、ファーストカーにバルケッタを選ぼうとしているその息子...2世代に亘って与えた悪影響の責任とってください!ってお伝えください(苦笑)
    あ、またスレッドが長くなりましたので(笑)、例によってお返事は無用に願います。

  8. 町田 より:

    >aki さん、ようこそ。
    お見通しですね! “孤高の評論家” といえばカッコはいいのでしょうけれど、要するに売れない評論家。おっしゃるとおりですね。
    それにしても、2世代にわたって同じ著者の書物を論じ、同じテーマを語り合えるなんて、素晴らしいですね。そういう“悪影響”なら、著者にとっても本望でしょう。
    もし会える機会がありましたら、ぜひお伝えしておきます。
     

  9. solocaravan より:

    RVショーでさっそく購入しました。
    まだ読了しておりませんが、私の好きなトレーラー黎明期のエピソードも盛り込まれておりうれしくなりました。
    準備号とあるのが気になりますが、ということはいずれ本号発売予定なのでしょうか。
    一般書店では販売されないとのことで残念ですが、街の書店で本号がデビューになることを願っています。できればカラー写真満載で!

  10. 町田 より:

    >solocaravan さん、ようこそ。
    『日本のキャンピングカーの歴史』 、さっそくお買い上げいただきまして、ありがとうございました。
    「準備号」 と銘打った理由は、土曜日のエントリ記事に書き添えました。
    実は、ちょっと 「こいつはライフワークになるかもしれない」 という気分も少しあるのです。
    今後は、個々のキャンピングカーの機構的な特徴や、さらに詳しい開発秘話なども織りまぜ、少しずつ精度の高い情報を集めて、「決定版」 を作ってやろう…なんて思っています。
     

  11. 小張佐恵子 より:

    町田さんがキャンピングカー1号車とされた「エスカルゴ号」の持ち主というか、なんというべきか、桐野江節雄の娘です。日本で始めてのオートキャンプの大会も、富士山の裾野での世界大会も一緒に参加しました。
     車を提供してくださった東京マツダの社長さんは父が亡くなるまで、本当に良くして下さって、偲ぶ会も開いてくださいました。
    今日たまたまその話が出て、ふと検索して、ここに着きました。
     出版おめでとうございます。1冊送ってくださいませんか。お代金は郵便振込みでお願いできればと存じます。個メールでご連絡ください。 

  12. 町田 より:

    >小張佐恵子さん、ようこそ。
    はじめまして。
    驚きです。桐野江様のお嬢様からコメントをいただくなど思ってもおりませんでした。
    この 『日本のキャンピングカーの歴史』 という本は、桐野江さんのエスカルゴ号があったればこそ作り得たような本で、あの冒険旅行がなければ、日本のキャンピングカーの歴史には、夢もロマンも盛り込めなかったと考えてもいいくらいに思っています。
    そのために、桐野江様の奥様…お母様にも許可をいただき、エスカルゴ号を表紙にも使わせていただきました。
    桐野江様のご家族の方なら代金を頂戴するわけにはいきません。
    どうか、桐野江様にも捧げてください。
    個人メールにこちらの連絡先を打ちますので、送付先をお教えいただければ幸いです。
    今後ともよろしくお願い申し上げます。
     

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