ユー・ガッタ・ア・フレンド

  
 キャロル・キングとジェイムス・テイラーの日本公演があるらしいじゃない。
 たぶん観に行っているような余裕もないと思うけれど、白髪頭のキャロルと、頭の禿げ上がったジェイムスが仲良く並んでいる写真を見たら、いい雰囲気だった。
 
キャロル&ジェイムス
 
 ロックとR&Bの申し子のつもりでいた私だったから、
 「オレにはこういう音楽は合わねぇんだ」
 と突っ張っていたけれど、結局、当時、ギター弾いていちばん歌っていたのは、彼らの 「ユー・ガッタ・ア・フレンド」 だったり、キャロル・キングの 「ソー・ファー・アウェイ」 だったり、ジェイムスの 「クローズ・ユア・アイズ」 だったりした。
 
 あの感覚は何だったんだろう。
 夏の終わった、人気のない避暑地に、ふと通り過ぎる秋の風 … という雰囲気だった。
 好きだった70年代ソウルが、ただのディスコミュージックになっちゃって、ロックは退屈になっちゃって、 「ぎらぎらした緑で身を包んでいた木々がみな葉を落とし始めた」 という空漠とした気分のときに、ふと耳を澄ますと、彼らの音が、舗道を浸す枯れ葉のようにひたひたと鳴っていたんだな。
 
 だから、キャロル・キングやジェイムス・テイラーの曲を聞いたとき、
 「あ、もう秋が来ていたんだ」
 と、気づいた。
 
 その頃、仲間とバンドを組んで、クリームのコピーをやっていた後輩と親しくなった。
 体格の良い男で、縮れたロングヘアで、口元に立派なヒゲをたくわえて … 。
 見るからに、ロック野郎でさ。
 そいつが学園祭なんかで、ジンジャー・ベイカーよろしく派手なドラミングでステージを沸かすと、けっこう音楽にうるさい連中も盛大な拍手を送っていた。
 
 そいつが一度だけ、家に遊びに来たことがある。 
 なんか、憂鬱そうだった。
 「オレ、他のメンバーと、音楽が合わなくなってきてさ」
 と、そいつはティーバックの紅茶をすすりながら、ぽつりと言う。
 
 「どういうことよ?」
 と聞くと、やにわにそいつが私のギターを取り上げ、ジェイムス・テイラーの 「ユー・ガッタ・ア・フレンド」 を歌い出したんだ。
 
 ありゃりゃ …… お前にも 「秋」 が来ていたんか、… と思った。
 
 二人して、アコースティックな曲ばかり選んで一緒に歌った。
 キャット・スティーブンスの 「雨に濡れた朝」 とか、CSN&Yの 「ヘルプレス・ホーピング」 とか、ニール・ヤングの 「ハート・オブ・ゴールド」 だとか。
 
 外では枯れ葉がどんどん舞っていき、弱い光が、地平線の彼方まで届きそうに、長く伸びた日だった。
 ジェイムス・テイラーの作った曲は、その透明な光の中を、枯れ葉といっしょに宙にたなびいていた。
 ウィスキーでも、ビールでもなく、紅茶が似合う日だな … と思った。 
  
 
 
  

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ユー・ガッタ・ア・フレンド への2件のコメント

  1. el (エル) より:

    最初にこちらのブログを拝見させて頂いてから随分な時が経っていますが、コメントは初めてです。
    ROM専の私がなぜ初のコメントを書きたくなったか?
    それは、町田さんの記事の中にでてくる「カウンターカルチャー時代」のお話、特に今回のようにJ.Tの記事となると、、、です。
    以前から町田さんの「物事の切り口」が好きだったりします、
    思考する方向も似ていると感じます。
    これからも楽しい記事を期待して、九州の田舎から応援しています、頑張ってください。

  2. 町田 より:

    >el(エル)さん、ようこそ。
    はじめまして。
    はじめてのコメントだというのに、返信が遅くなりまして申し訳ございませんでした。
    うれしいコメントをいただいたと思っております。
    「物事の切り口が似ている」 などというご指摘は、自分の書いているものにも共感される方がいらっしゃるという実感を得ることができて、とても励みになります。
    書かれていらっしゃるブログ、楽しませていただきました。
    プロフィールを拝読すると、私とほぼ同年代でいらっしゃるようですね。
    美しい写真にも魅了されました。
    今後ともよろしくお願い申しあげます。
     

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