不思議な味の味噌

 夢の話なんだけどさ。
 夕べ、寝る前に、ちょっとYOU・TUBEでドラマっぽい画像を見ているうちに、そのまま眠くなって寝てしまったの。
 で、それから後に見た夢なんだけど、目が醒めてからも、しばらく変な気分でさ。
 
 夢の話って、本人は 「面白いだろ」 と思って人に話すんだけど、聞いている人間にとっては、それほど面白いと思わないことが多いんだよね。
 これも、そんなもんかもしんないけれど、あまりにもリアルに脳裡に刻まれているんで、ちょっと書いてみる。
 少し怖い話だけどね。
 
 夢の中で、自分は、どこかの海岸ばたに広がる町のジジイになっているわけ。
 で、 “みやげ物屋 兼 食堂” という店の縁台に腰掛けたまま、海を見つめながら、味噌をなめて、昼間から酒を飲んでいるの。
 
 食堂のつくりってのは、時代劇に出てくる 「茶屋」 の雰囲気でね。
 それが、海を見下ろす国道沿いにあって、景色はいいのよ。
 
 実は、その食堂のオーナーというのがオレなの。
 でも、今は引退して、悠悠自適なのね。
 孫かなんかいてさ、
 「おじいちゃん、また味噌だけで酒飲んでいる。お母さんが、いろいろなモノを食べないと体に悪いって言ってたよ」
 なんて、オレにいうわけ。
 
 でも、 「大丈夫じゃ、この味噌は栄養価が高いのじゃ」 とかニコニコ笑って、孫に答えているわけね。
 
 その味噌というのは、うちの店で開発されたオリジナル味噌で、それを考案したのはオレなの。
 それが観光客の間に、じわじわと評判になって、今じゃ大都市からもわざわざその味噌を買うために、ドライブしてくるお客が後を絶たなくて、それでオレの店は、けっこう儲かっているんだけど、でも、わざとパッケージングなんかは、昔の竹の皮かなんかで包んだものにして、 「無添加ですから購入したらなるべく早くご賞味ください」 なんてラベル貼って、売っているわけね。
 
 だけど、それがまた評判になって、クールボックスみたいなものまで持参してくる熱心な客が多いのよ。
 オレはそういうお客の姿を眺めながら、縁台に腰掛けて、昼間から酒飲むのが楽しみなの。
 
 そこで、パァッと画面が変ってさ、少年時代のオレになっているわけ。
 5人ぐらいの仲間と、味噌蔵のそばで遊んでいるんだよね。
 オレの家が持っている蔵なんだね。
 蔵の裏は、見事な竹林が続いていてさ。
 
竹林001
 
 なんでも、 「竹林の間を通ってくる風」 に味噌を詰めた樽をさらしておくと、味噌から変な匂いが抜けて香りがよくなる … っていうんだよね。
 それで、代々味噌を作っているオレの家は、竹林のそばに蔵を建てているわけね。
 (もちろん夢の中の情報だからさ、現実的な根拠なんて何もないんだけどさ)
 
 で、蔵の周りには、空いた樽かなんかがゴロゴロ転がっていて、その樽の上を 「竹林を抜けた風」 が優しくなでていて。
 オレの友だちは、みんな、その空いた樽かなんかにもぐり込んだりして、かくれんぼをしているわけよ。
 鬼になったやつが、隠れている仲間を4人ほど見つけて、最後の4人目がオレなのかな。
 あと1人だけが樽の中に隠れているわけ。
 その樽も、どの樽なのか見当がついているのね。
 
 誰かが、 「上から味噌、詰めちゃおうか」 って意地悪く笑って、目配せしたの。
 で、俺たち4人は、 「よ~し!」 ってんで、新しい樽の中に詰まっていた味噌を、最後に隠れていたやつの上からばんばん放り込んで、隠れていたやつが 「やめてよ」 って泣いても許さないで、ぎゅうぎゅう味噌を詰め込んで、出られなるくらいペタペタと押しつぶしてさ。
 そして 「へへへ…」 とか笑いながら、放っておいてしまったの。
 
 で、しばらく経って戻ってきたんだけど、味噌を押しのけて這い上がってきた気配がなくてさ。
 急いで、味噌をかき出してみたんだけど、そいつ、もう窒息死しているわけ。
 
 みんな、やべぇーっと思ったけど、4人とも同時にうなづきあって、この味噌樽を、蔵の中で古い樽が並んでいる場所のいちばん奥に入れちゃおうってことになったの。
 
 なんか怖い話でしょ。
 自分で思い出しても、いい気分じゃないものね。
 似たような少年事件が、現在でもときどき起こるしさ。
 
 やがて、オレは、成人して、味噌屋と食堂を継いでさ。
 そのうち、昔、友だちを詰め込んだ樽のことを思い出してさ。
 こっそりと開けてみたら、もう死体も融けてしまって、見た感じは何でもないのね。
 本当だったら、骨なんかが残っているんだろうけれど、夢だから、そんなものも、きれいさっぱり融けているの。
 
 指ですくって、そいつを舐めてみたら、なんとも不思議な、いい味がするんだよね。
 しかも、香りも、なんかいいわけよ。
 
 そのとき、はじめてさ、「竹林の風に味噌の樽をさらす」 … っていう意味が、オレにわかったの。
 ああ … そういうことだったのかァ …… って。
 
 「これを売ろう!」
 と、とっさにひらめくわけ。
  
 で、売り出したら大評判。
 それが、今の店の隆盛につながっているわけだけど、オレの住んでいる町では、毎年、小さな子供が 「神隠し」 に遭うって騒がれていてね。
 
 ま、その “犯人” ってのが、オレなわけでさ。
 
 目が醒めて、すぐ浮かんできたのが、この夢のことなの。
 だけど、最初はそれが夢だとは思わなくてさ。
 夕べ、怖いドラマをYOU・TUBEで観たな … なんて思いながら、しらばく寝床の中で、その記憶をたどっていたけれど、 「まてよ …」 と、ふと思って、そんなドラマ、別に観ていないじゃん…ってことに気づいてさ。
 ああ、夢か … と思ったのだけれど、嫌な気分がこみ上げてきたのは、なんだか、それがはじめて見た夢でもないような気がしてきたからなのね。
 
 前にも、そっくり同じような夢を見ている……。
 起きてからそう思うと、トリハダが立つように、ぞっとしてさ。
 
 その衝撃で、けっこうそのまま記憶に焼きついたんだろうね。
 耳の奥で、竹林の中を過ぎていく風の音が鳴っているようでさ。
 
 「前世」 とかいう話は、ほとんど信じていないけど、オレにもなんかあんのかなぁ。
 実際に味噌をつくっている人たちには、申し訳ないような話で、ごめんなさいね。  
  
 

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