デフレからの脱却法

 デフレの時は、 「腕振れ!」
 まずは、オヤジギャグで。
 元気よく腕でも振ってさ、朝早く起きて散歩する。
 とりあえず、そこから出発だね。
 
 ここんとこ、テレビのワイドショー見ても、新聞を開いても 「デフレ、デフレ」 の大合唱。
 専門家たちは、
 「もう日本は、デフレスパイラルに陥った」
 とか、
 「このままいけば、デフレスパイラルに突入」
 みたいなことばかり言うけど、
 「じゃーどうすればいいの?」
 ってことには、なに一つ答えてくれない。
 
 デフレスパイラルとは、企業の収益悪化 → 給与の減額やリストラ → 商品の売れ行き低下 → ますます企業の収益悪化 …という悪循環のことをいうわけだから、そのままいけば、 「日本沈没」 を意味する。
 
日本沈没
 
 これ、マスコミが悪いよ。
 そんな現象ばかり報道したって、何の意味もない。
 消費者の首はますます縮こまって、カメの首のように甲羅の中に潜り込んでしまうばかりだし、街を歩くエネルギーすら消耗しないように、家に閉じこもるだけだ。
 テレビなどで流す報道は、中小企業の経営者の悲惨な告白か、さもなければ、この不況下でも 「行列のできる店舗」 のどちらか。
 で、行列のできる店舗を紹介するときは、経営者がいかにコストを圧縮して、価格を下げたかという話ばかり。
 
 でも、そうやって、安売り大合戦ばかり繰り広げていても、そのうち消費者だって、安くモノが買えても別にハッピーになるわけじゃないってことが分かってくるから、 「安売り!」 のかけ声に対する反応も鈍くなっていくはずだ。
 
安売り
 
 今のデフレは、世界経済の構造的な変化を背景にしているわけだから、単なる 「値下げ」 で消費が回復するわけなんかない。
 生産技術の進歩や、生産拠点を人件費の安いエリアに移すことによって得られた 「生産性の向上」 が、結果的に需給バランスを崩してしまったことに起因するデフレなのだから、特効薬のような簡単な解決法なんてないんだ。
 
 あるとすれば、それは消費者の消費マインドを変えることだ。
 商品の供給システムをいじるよりも、消費者の嗜好を変えることが大事なんだね。
 それこそ、マスコミの仕事だけどね。
 
 結局さぁ、 「経済的に豊かになることがハッピーだ」 という価値観でずっとやってきたから、こうなる。
 バブル崩壊後、 「経済的な豊かさは、必ずしも人間の幸福を実現しない」 って、みんなさんざん言ってきたクセに、頭の芯では、なにも学んで来なかったんだね。
 
 まぁ、日本はさ、戦後から20世紀の終わりまで、経済的に右肩上がりの発展を遂げてきたわけだから、誰もがその成功体験の中でモノを判断するクセがついてしまっている。
 特に、政治や経済を動かすトップの人たちは年齢的に、みなこの 「右肩上がりムード」 の中で青春を過ごしてしまった人たちだから、そう簡単に自分の感性を組み替えることはできない。
 だから、 「モノを持ってる」 「金を持ってる」 ということが、幸せのバロメーターであるという感覚を捨てきれない。
 そういう感覚しか持ち合わせていなければ、誰だって貧乏は怖いよ。当たり前の話だ。
 そこそこの小金を持っていてさ、別に今日・明日のメシに困らない人たちだって、 「食えないことの恐怖」 に怯えるわけさ。
  
 じゃ、どうすればいいのか。
 みんなが、今までとは違った分野にお金をつかえばいい。
 そうやって、お金を回していくしかない。
 
 では、それって、何?
 「モノ」 より 「ココロ」
 「物質」 より 「精神」
 やっぱ、それっきゃない! って。
 手垢のついた陳腐な言葉だけど、でもやっぱりそういうベタな表現は、人間生活の一面を突いていると思う。
 
 今こそ、ココロを豊かにするものに金をつかうべきだよ。
 100円ショップへ行って、100円の品物を10個買うなよ。
 その1,000円があったら、映画にでも行けよ、本でも買えよ、スタンドカフェで250円のコーヒー飲むんじゃなくて、クラシック音楽でも流れる公園わきの喫茶店に行って、480円のコーヒーでも飲めよ。
 
夏目漱石千円
 
 ハウツーものやら自己啓発書なんか読むより、漱石でも読めよ。
 解らなくてもいいから、美術館にでも行って、絵でも見ろよ。
 そういう 「かったるい」 とか 「無駄だ」 …と思えるようなことにお金を投入するような気分が生まれないと、日本はよくならないって。
 今まで毛嫌いされていた 「知的スノビズム」 。
 そいつこそが、いま本当に必要なんではないか?
 ブンガクとか、アートとかいう “教養” をチラつかせる人間は、今までは鼻持ちならないヤツって嫌われてきたけれど、それは、自分の教養を “物質的価値” として使ってきた人が多かったからなんだね。
 
 昔は、「わたくし文化的なものに関心を持ってざぁますの」
 って感じで、教養というものを、 “目に見えない” 宝飾品 とか調度のようにひけらかす人たちが本当にいた。
 
 でも、そういう時代は終わってさ、これからは人に誇示する教養ではなく、自分自身を楽しませるための教養ってのが見直されてくると思うのね。
 で、そういうものに投資するっていう精神が生まれないと、この大不況からは抜け出せない。
 つまり 「見返りのないもの」 、 「即効性のないもの」 。
 そういったものに価値を認め、そこにお金を投入しようという気分を持った人がたくさん出てこないと、今のデフレから脱却できない。
 
 今日役に立つものではなく、将来になってもあまり役に立たないかもしれない…ってものにお金を使おう。
 「豊かな暮らし」 を買うのではなく、 「心の豊かさ」 に投資しよう。
 で、「心の豊かさ」 があれば、空に浮かぶ雲を見ているだけで楽しいんだよ。
 土手の上から、川を眺めているだけでも面白い。
 心の中で培われてきた教養が、「雲」 とか 「川」 の中に内在するドラマを見出すようになるからね。
 旅行に行ってさ、ただの雲を見ても、
 「あ、フェルメールの絵に出てくる雲だな」
 なんて感じれば、劇的といえるぐらい景色の見え方が変わる。
 
フェルメール「デルフトの眺望」
 
 雨の降りしきる川を眺めるときだって、与謝蕪村の句のひとつでも知っていれば、その雨の風情さえも心地よく感じられる。
 画も大事。書も大事。
 だから、メディアの役割は大きいんだよ。
 「浮き世ばなれ」 したものにお金をつかうって、わりと人間を豊かにするよ、ってことを伝えられるのは、メディアしかないからね。
 

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デフレからの脱却法 への6件のコメント

  1. 右京パパ より:

    町田編集長、おっしゃるとおりです!!
    映画?そのうちDVDが出たらレンタルで借りてコピーするから?とか好きなアーティストはダウンロードして携帯プレーヤーに保存とか、、、、
    映画はスクリーンで観て、感動したらその思い出をDVDなりで購入して保存する。音楽は聴いてCDなりを購入してアーティストの経済的な助けをするのが本筋!!
    見たり聞いたりでは心は豊かになりません、、、よね?
    コピーやダウンロードは便利な反面、芸術を衰退させてるように思います。

  2. らぶまり より:

    まったくもって大賛成です。
    「モノ」 より 「ココロ」!
    昨日、老母の下着を買いたいと思って、安売り合戦をやってる西友に行きました。優しい商品まったく無し!店員さんに聞いても、まったく反応無し。優秀な店員さん(おそらく長く働いている年かさの女性とか)を減らして、ラックばかり大きくして、暗くあたたかみの無い店になってました。優しい商品を売っているのは、やっぱり昔からある一見ダサイ衣料品店でした。

  3. より:

    ど田舎出身の同級生は、某最大手の企業に勤めていて、年に数回海外に家族旅行に行く。
    この話を聞く度に凹んでしまう自分がいた。
    が、空・風・草木を見て感動したり、家族とココロを通わすこと(本音で暮らす)がどれほど幸せか、お金は最小限で良いと思ったのでした。
    先日あのビッグイッシュー大阪で買いました。
    松井えり菜ちゃんと言う画家が載っていてびっくり。次女と同級生の近所の子でした。

  4. 町田 より:

    >右京パパさん、ようこそ。
    便利な世の中になると、「情報」 の入手も簡単になり、アートも音楽も、確かに、手軽に、安価に手に入るようになりましたね。
    それ自体は悪いことではないのでしょうけれど、やはりアートや音楽をつくる人たちの生活がしっかり保証されるような経済システムが確立されないと、私たちの文化はどんどん先細りしていくように思います。まさに、ご指摘のとおりだと思いました。
     

  5. 町田 より:

    >らぶまりさん、ようこそ。
    おっしゃるとおりですね。ただ商品を安くするだけで、接客に 「心」 が通っていないようなお店は、やがてつぶれてしまうように思います。
    ショッピングというものは、ただお金とモノとを交換するだけでなく、顧客は 「買ってよかった」 という満足感も購入するわけですよね。その満足感の中には、お店との “心地よい交流” も含まれると思います。
    「昔からある一見ダサいお店」 でも、優しい店主のいるお店は応援したくなりますね。
     

  6. 町田 より:

    >南さん、ようこそ。
    松井えり菜さんが、お知り合いだったとはびっくりですね。写真で見ると可愛らしいお嬢さんなのに、すごくインパクトのあるアートを創造される方ですよね。あの記事は楽しく読みました。
    おっしゃるように、空や草木を見るだけで感動したり、家族と心を通わせることで幸せを感じたりできることが本当の 「豊かさ」 なんでしょうね。
    海外に出かけても、日本でも買える品物をショッピングしたり、絵ハガキでも間に合うような風景を写真に収めたりしているだけでは、「豊か」 とはいえないように思います。
     

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