初代トヨタ・チェイサー

  
 昔、トヨタの初代チェイサーに乗っていた時期がある。
 大ヒットしたマークⅡの兄弟車だ。
 
初代チェイサー007
 
 トヨタは、ひとつのコンポーネンツで、「エレガントな貴族的セダン」としてマークⅡを売り出し、「遊び心に満ちたスポーティなハードトップ(セダンもあったけど)」として、チェイサーを売り出した。
 
 どこが違うの?
 …というと、セダンとハードトップの差というのはあったが、それ以外は、グリルのデザインと、ヘッドランプ回りの意匠が違うだけ。
 あとは外板色と販売店の名前が違う。
 
 トヨタの方も、その程度のセグメントで、お客を納得させられるとは思っていなかっただろうけれど、お客の方もわりと醒めていて、そのようなお手軽なイメージ戦略に対しても、特にめくじらを立てる人もいなかった。
 で、私はチェイサーの方を買った。
 真っ赤なボディに、白いストライプが入ったSGS。
 
初代チェイサー003
 
 「ハーダーサス」という、少し硬めのサスペンションを入れた仕様で、確かにノーマルマークⅡのぐにゃりとしたサスよりは、 “凛とした” 乗り心地を実現しているように思えた。
 6発に乗ったのは初めてだったが、「さすが4発よりはシルキーだわい」と、エンジン特性にもけっこう満足した。
 
 このクルマは、今でも、なかなかスタイルのいいクルマだと思っている。
 キャビンを小さく絞ったロングノーズ、ロングデッキの “ジャガールック” で、当時の「美しい」とされたプロポーションをけっこう忠実に反映したフォルムだった。
 
チェイサー広告002
▲ スタイルはジャガー風であるのだが、アメ車風のキラキラ感もあって、そのちょっと “危険な甘さ” が、なんともいえませんな。
 
 CM(↓)では、草刈正雄がイメージキャラクターを務めていて、赤いボディに真っ白なスーツでクルマによりかかる姿がカッコ良かった。
 
チェイサー広告001
▲ ハリウッドのスキャンダラスなイメージと 「サムライニッポン」 という妙なキャッチの取り合わせが、きたるべきバブルの時代を先取りしていた感じだ。
 
 草刈正雄をまねて、私も白いスーツを買った。
 (足の短さ以外は、いい勝負だと思っていた)
 
チェイサーの前のアホ
 
 普段は革ジャンパーにジーンズで乗っていた。(その姿で通勤もしていた)
 頭をチリチリパーマにしていた時期で、どう見ても、遊び人だった。
 事実、遊び人だった。
 
 一度、そのクルマに乗っているときに、西湘バイパスで、暴走族の大集団に巻き込まれたことがある。
 いつの間にか、右を見ても、左を見ても、派手なエアロを付けて車高を落とした族仕様のハコスカとかゼットばかり。
 頭にハチマキを巻いた男の子の後ろでは、箱乗りした女の子が、隣のクルマの男と肉まんじゅうを分け合っていたりという、もう路上パーティ状態だった。
 
 逃げ出そうにも、大渋滞。
 身動きひとつ取れない。
 やつらをなるべく刺激しないようにして、窓をしっかり閉め、音楽の音も止めていたのだけれど、隣りの若造が「おらおら!」とこっちを向いて怒鳴り始めた。
 
 「やべぇ…」としばらく無視していたが、あまりにも大声で怒鳴るので、ついに窓を開けて、相手の顔を見た。
 そいつは、手のひらをメガホンのような形にして、私の顔を見るなり、
 「おい、気をつけろ! この先検問だぞ、検問!」
 と一生懸命教えてくれたのだ。
 
 仲間に思われたのだと分かった。
 元来調子の良い私は、
 「おう、そうか分かった!」
 と返事を返し、カセットテープの音楽をキャロルに変えて、大音量で鳴らすことにした。
 隣の若造が、指でピースマークを作ってニヤリと笑った。
 
 彼らが心配したような検問などというのはなくて、料金所を過ぎると、するするとクルマの列も動き出した。
 気がつくと、族仕様のクルマも、いつの間にか霧散していた。
 
 赤いチェイサーというクルマは、 “そういうクルマ” なのかと、よ~く身にしみた。
 実際その頃ぐらいからか、シャコタンにしたチェイサーをよく街で見かけるようになった。
 私はノーマルで乗り続けたけれど、どこかそういう “ワル” のイメージが漂うクルマであるということは、別にイヤではなかった。
 
初代チェイサー005
 
 そいつには、長男が幼稚園に入るまで乗った。
 それからおとなしいセダンを買った。
 チェイサーを降りた時点で、なんとなく自分の青春も終わったように思えた。
 
 

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初代トヨタ・チェイサー への7件のコメント

  1. TJ より:

    一番上の白黒写真で隣にスプリンターが写っているのが当時らしさですね!! チェイサーのカタログとサムライニッポンのポスター・・・今も持っています♂ この時代だとトヨタもセリカ、カリーナにもGTなるDOHCエンジンのグレードがあったり日産もスカイラインやZにローレルと若者に人気がある車種が多い良い時代でしたね!! その中でもチェイサーSGSはCMのインパクトは一番あったんじゃないですかね。マークⅡがとっつぁんイメージだったのに対してチェイサーはスポーティー&ゴージャス♂
    で、本業でも扱うことがあるこの型のチェーイサー、マークⅡは10年前はほぼ捨て値で取引されていましたが、5年くらい前から人気が出てじわじわと値上がりが続いていました。特にMT5速車が人気で、1番人気はチェイサーSGSです。マークⅡはどちらかと言うと俗に言う『族仕様』が人気です。現存台数もパーツの供給の問題もあってトヨタ系の車種は希少になっています。

  2. 町田 より:

    >TJさん、ようこそ。
    さすがですねぇ! 隣りのスプリンターまでしっかりチェックされるとは!
    懐かしい時代ですね。排ガス規制が厳しくなった時代でしたけれど、トヨタの18-RGとか、2T-GとかのDOHCは生き残っていましたしね。
    チェイサーのSGSあたりが、再び人気が出ているとは知りませんでした。
    でも、…そういえば、チラチラっとですけれど、あの型式のきれいなボディのクルマを見かけるようになりましたもの。
    そうかぁ…。再び人気なのかぁ。元オーナーとしてはうれしい限りです。
    知り合いに売ってしまったんですけど、手放さなければ良かったのかなぁ…。まさに、5MTに乗っていましたから。
     

  3. スパンキー より:

    町田さんって、その頃、チェイサーを題材にして、なんかキザなストーリーとか書いてませんでした?(笑)
    あの白いスーツ、平気で会社に着てきませんでした?(すげぇ度胸!)
    私は覚えているんですよ!
    町田さんは東京のシティボーイだったから、やることがいちいち派手だったので、いまでも思い出すとつい笑ってしまいます。
    悪になりきれなくて、ホントは文学をこよなく愛する青年。これが町田さんの正体だと、私は思うのです(爆!)

  4. 刀猫 より:

    2ドア車でもファミリー車として普通に買われていた時代って事もあったんだろうけど、デザインにそれぞれ個性がありましたよね。(中国の事笑ってられないコピーも多かったけど)
    懐かしいね・・・って言っているだけなら良かったんだけど、昭和57年式の280z買ってしまった。
    今日の西武園の商談会、とっても「まったり」してましたよ(笑)

  5. 町田 より:

    >スパンキーさん、ようこそ。
    >「チェイサーを題材にしたキザなストーリー」…… もしかしたら、そんなものも書いていたかもしれませんね。
    あの時代、新車が出れば、まずチーフエンジニアに取材して機構解説を行い、次号で自動車評論家の試乗インプレッションを載せ、その次にユーザー紹介をして、いよいよネタがなくなると、編集部がでっち上げたお手軽なカー小説を載せたりしていました。
    そんななかで、チェイサーネタのうそ臭いショートストーリーなんかを書いたかもしれませんね。
    何だかくすぐったいようなお褒めの言葉 (?) をいただきましたが、あの時代の自分を振り返ると、「シティボーイ」 というほど洗練もされていなかったし、悪」 になるほど根性もなかったし、「文学青年」 を気取るほど素養もなかったし、結局、そのままそれが今も続いて、何もかも中途半端な人生を送ってしまいました。
    でも、まぁ、良くも悪くも、自分のカラーみたいなものは貫いたのかな…と思う今日この頃です。
     

  6. 町田 より:

    >刀猫さん、ようこそ。
    ええっ! 昭和57年式280Zですかぁ!
    フェアレディZがいちばん光っていた時代の、しかも頂点に立ったクルマですよね。ひゃーっ!
    あれは一世を風靡しましたね。
    「カッコだけのスポーツカー」 なんていう人もいましたけれど、あれはやはり日本のスポーツカーの到達点の一つだと思います。それを今になって乗るというのは壮挙です!
    西武園の商談会。所用があって、昨日近くまで行ったんですけど、タコスには寄ったけれど、西武園には寄らずじまいでした。キャンピングカープラザ東京まで足を伸ばしたら、日が暮れてしまいました。
     

  7. はるあき より:

    草刈ファンだった高校時代、画期的なスタイルだという親父とチェイサーを見に行ったが、予算の関係で隣においてあったスプリンタになてしまった。

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