トリハダ

 『トリハダ』 っていうテレビドラマを、この前、偶然に見た。
 何回か再放送されたもののうちの一つらしい。
トリハダ画面01
 家人も隣りの家も寝静まっている深夜の時間帯。
 文字通り、 「鳥肌が立つ」 ようなおっかない話がオムニバス形式で何本か綴られているドラマだったけれど、これがチョー怖いんだわ。
 眠れなくなっちゃったよ。
 でも、基本的に、ドラマでも映画でも小説でも、自分はホラー系が好きなので、しっかり楽しんだ。
 はっきり 「お化け」 と分かるようなモノが出てくるわけじゃないけれど、どれもサイコサスペンス風の味付けがなされていて、現実の中に超自然現象が流れ込み、その境界線がぐちゃぐちゃ溶解していく奇妙な世界に主人公が引きずり込まれていくという設定のものが多い。
 
 何篇か観ているうちに、どれも、ある程度共通した世界を持っていることが分かった。
 キーワードでいうと、
 「都会」
 「一人暮らし」
 「監視」
 「ストーカー」
 「携帯電話」……って感じだ。
 分かるでしょ? この感じ。
 現代の恐怖ってのは、もう、町外れの墓地に浮かぶヒトダマじゃないんだね。
 場合によっては、バスの中だって、地下鉄が行き来するプラットホームだって、客でにぎわう白昼のファミレスだって、立派なホラーの舞台になるという着眼点が面白い。
 たとえば、循環バスが舞台となるようなストーリーでは、主人公のOLが深夜バスに乗って、一人で家路に着くという設定になっている。
 バスの中はガラ空きで、OL以外に乗客は一人もいない。
 なのに、途中から乗ってきた女性が、スゥーッと主人公のOLの隣りの席に座る。
 バスはガラ空きなのだから、その女性も好きな席に座れるはずなのに、なぜかOLの隣りの席を選ぶ。
 
 ……なぜ?
 ……なぜ、私の隣りなの?
 そして、次に乗ってきた乗客は、主人公の隣りに座った女を見て、恐怖に顔を引きつらせて、バスから降りてしまう。
 主人公から見ると、普通の女性なのに。
 現代社会の恐怖ってのは、そういう恐怖なのだ。
 別の話では、携帯電話が重要な小道具となる。
 これまた主人公は若いOLなのだけれど、ある時から、意味不明の絵文字ばかり並べた謎のメールが携帯に入るようになる。
 消しても消しても入ってくるその奇怪なメールに、主人公は、
 「むかつくぅ!」
 と思って、
 「いい加減にしろ!」
 と返信を送る。
 その直後に、
 「オレニ クチゴタエ ユルサナイ。オマエ モウ オワリ」
 という不気味なコメントが入り、そのコメントの下に、主人公の帰宅途中の姿を写した画像が貼られている。
 
 いたずらメールの主は、いつ主人公の姿を写したのか。
 ストーカーに対する恐怖が、まず主人公を襲う。
 やがて、主人公のアパートのドアを外から撮った画像が送られ、そこで、またメール。
 「キタヨ」
 ドアに鍵がかかっていることを確認し、急いで友達に助けを求める電話をかける主人公。
 しかし、それを相手は知っているのか、
 「ツウホウシテモ ムダ」
 その次に送られてきた写メールは、なんと、鍵をかけた部屋の内側で、恐怖に怯えてうずくまる主人公そのものの姿。
 ……え? いつ部屋の中に入ったの?
 ……どこにいるの?
 ここで、 「ストーカーへの恐怖」 が、もっと別の、意味不明の根源的恐怖に変る。
 
 こわぇぇ~!
 大都会で一人暮らしをしている人間にとって、高層ビルの上層階にある自分の部屋だって、決して安全な場所ではない。
 ガラス戸で仕切られたお風呂場も、見晴らしのよいベランダも、ある時を境に、自分の力ではコントロールできない“魔界”に変化する。
 結局、 『トリハダ』 に描かれる世界は、強烈なネオンライトによって、妖怪や化け物を追い出したはずの大都会こそ、魔物が跳梁跋扈 (ちょうりょうばっこ) する闇の世界であったというわけだ。
 YOUTUBEにいくつか紹介されていたものの中から、いま述べた話を貼ってみた。
 くれぐれも、深夜一人で観ないように。

 ホラーネタ 「ホラーの時代」
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トリハダ への4件のコメント

  1. Take より:

    以前、一人暮らしのプリンセス天功さんが仕事から帰ると、テーブルの上に知らない人形がおいてあった、というのを聞いたときに、まさに「鳥肌」が立ったのを覚えています。
    物がなくなったり、光やラップ音を感じたり、という「物の怪」の類と違って、明らかに作為的な人間の営みとしての恐怖というのでしょうか・・・・。
    それは横溝正史の世界にもあい通じていまして、村のおきてに背いて見てはいけないものを見て、逃げようとする車を鍬や釜を持った人間が囲んで・・・・、と言った方が、お化けを見るよりも怖いですね。
    連れの実家の周辺のお盆の墓参りは、夜です。最初は、驚きもしましたが、なるほど農作業が終わってから夕食を食べてから墓参りに行くのだと思うと、涼しい墓まいりは「恐怖」は全くなく、少し暗いですが村の社交場の雰囲気があります。
    連れの実家の墓には一人で行くこともいやではないですが、当初のプリンセス天功さんの例、町田さんのご紹介の例、いずれも周囲の人すべてが無関心で孤独なマンションの一人暮らしは好きになりそうもありません(笑)

  2. 町田 より:

    >Takaさん、ようこそ。
    思い出しましたけれど、プリンセス天功さんの、ミッキーマウス人形事件は怖い話でしたね。そういう、どこかに人の作為を感じるけれど、その正体が分からないというのが、「現代の恐怖」というところなんでしょうね。
    考えてみると、田舎のお墓で繰り広げられる昔風の “肝だめし” とか、昔の人たちが語り継いだ 「怪談」 とか、今考えると、のどかで、のんびりしたものだったように思います。
    昔の 「怪談」 はどこかに救いがあるんですね。四谷怪談にせよ、番町皿屋敷にせよ、結局は、「愛欲」 とか 「物欲」 とかで、あまりにも過剰な「欲」を抱えすぎた人間が祟られるようになっています。
    つまり、「だから、こんな人間になっちゃいけないんだよ」 という教訓話のようなオチがついていて、「そういうルールを守れば、お化けに祟られることもないんだな…」 という、どこかホッとした感情がわくようになっています。
    それに比べると、現代の 「ホラー」 というのは、あまりにも不条理です。
    良い人にも、悪い人にも、みさかいなく恐怖が襲ってきます。
    コレって、共同体の崩壊と歩調を合わせているような感じも持っています。
    つまり、昔の村とか、あるいは町の町内会とか、みんな仲良く集まってその村なら村だけの独自のルールやしきたりを共有できた時代は、「恐怖」 は、「掟を破った者」 にしか取り付いたりはしませんでした。
    しかし、今の時代は、もう昔のような 「農村共同体」 的な集まりも希薄になってきたし、核家族化が進行した都会の暮らしの中では、 「町内会」 的な結束も弱くなってきましたね。
    「現代のホラー」 というのは、そういう共同体が崩壊した隙間に、じわじわっと広がってきたように思います。
    だから、この『トリハダ』 のように、大都市が舞台になるのでしょうね。
    「都市伝説」 が流行ってきたのも、そういう理由からかもしれませんね。
     

  3. Take より:

    なるほど・・・・。
    共同体の崩壊、そうですね。隣の人が「人でなく」自分のSOSに際して無視されるから、「鳥肌」の恐怖は、隣に「人」がいるところでおこってしまうのでしょう。
    親が子を殺し、子が親を殺し、そしてのりぴーの事件では旦那が奥さんを売るような形で、信頼はどこにもない、みんな孤独なのかもしれませんね。そんな隙間を悪魔が狙っているのが都市伝説といったところなのかもしれませんね。

  4. 町田 より:

    >Takeさん、またのお越しありがとうございます。
    昔、何かの本で読んだのですが、今でも呪術的世界観の中に生きているアフリカのある部族は、森の中には、人を喰う悪鬼や妖怪がうようよいると信じているそうです。
    しかし、彼らがそれを怖がっているかというと、そうでもないらしい。
    なぜなら、彼らはその悪鬼や妖怪を撃退する部族のお守りを肌身離さず持っているからなんですね。
    それを持っている限り、祖先の霊が悪鬼や妖怪を弾き返すと信じているそうなのです。
    だから、彼らは 「森の中には恐怖はない」 と言い切るとか。
    つまり、ここには 「怪談」 や 「ホラー」 がないのです。
    「部族の祖先の霊が守ってくれる」 という信念を部族の構成員が持てるということは、その部族の共同体がしっかり機能しているということなんでしょう。
    共同体への帰属意識が希薄になってきた現代の都会生活者は、「自由」を得た代わりに、「恐怖」 もまた取得してしまったということなのかもしれませんね。
     

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