3時10分、決断のとき

 
 アメリカ映画で一番好きなのは西部劇だ。
 もちろん、60年代的な大掛かりなハリウッド製史劇も大好きなのだけど、西部劇とどちらが好きかというと、微妙だ。
 まぁ、作品の良し悪しで、そのとき史劇が好きになったり、西部劇の方が好きになったりしている。
 
 なんで、この二つのジャンルが好きなのか。
 昨日、映画 『3時10分、決断のとき』 を見てきて、ようやくその理由が分った。
 要するに、自分は 「馬」 が出てくる映画が好きなのだ。
 
3時10分、決断のときメイン
 
 荒野の砂塵を巻き上げながら、馬に乗った男たちが走ってくるという図を見るだけで、もうゾクゾクと身体が震える。
 時には、もうそういう画像を見ただけで、不覚にも目頭が熱くなる。
 
3時10分スチール01
 
 なんでそうなのか、その理由は自分でもよく分らないのだけれど、どうも幼い頃から、西部劇をさんざん見てきたせいもあって、この世でサイコーにカッコいい男というのは、 「馬を美しく駆る男」 だという刷り込みがある。
 
 自動車をうまく操る男もカッコいいけれど、馬という生き物は、その疾駆する姿そのものがもうカッコいいのであって、その馬を巧みに操る男には、神に与えられた乗り物を御する神々しさすら感じてしまう。
 
 で、この 『3時10分、決断のとき』 にも、役者たちが馬を巧みに操る画面がふんだんに出てくる。
 話の展開がどうであれ、もうそれだけで、私は大感激だった。
 
3時10分スチール02
 
 ストーリーをかいつまんで紹介すると、多額な借金を抱えた農場主が、報奨金目当てに、捕えられた強盗団の大ボスを輸送する役を買って出るという話。
 
 農場主は、借金の返済を守れなかったために、借主に納屋まで焼かれながらも、何も手出しもできないという弱い男で、妻にも息子にもバカにされている。
 
 その男が一念発起。
 強盗団の大ボスを救出するために追いかけてくるボスの手下たちと銃撃戦を繰り広げながら、なんとか使命を果たそうとする。
 
 さて、彼の使命は成就するのか。
 ネタバレになるので、ここでは書かないが、 「弱い男がミッションをこなしていくうちに、強い男へ生まれ変わり、男の尊厳を回復して、子供の尊敬を取り戻す話」 と書けば、およその筋はつかめるのではなかろうか。
 
 しかし、そういう話の展開はどうでもよく、私はただ馬を巧みに乗りこなす男たちの、芸術のような手綱さばきにひたすら参っていただけだった。
 
3時10分ラッセル・クロウ
▲ ラッセル・クロウ

 どの男がひときわ魅力的であったかというと、主人公を務めるクリスチャン・ベイルではなく、強盗団の大ボス役をこなしたラッセル・クロウにとどめを刺す。
 
 映画としてははるかに出来の良い 『グラディエーター』 や、これまた海の男の物語として秀逸な 『マスター&コマンダー』 で主役を演じたラッセル・クロウよりも、この映画で悪党の大ボスを演じるラッセル・クロウの方が私にははるかに魅力的に思えた。
 
 敵対する相手どころか、ヘマした部下をも無慈悲に撃ち殺す冷徹さを持ちながら、人の痛みや男の友情にも理解を示し、聖書への造詣も深く、緊張した環境の中でも巧みなデッサンで絵を描き、女の心の射止め方も熟知している “ワケの分らん” 悪党を、水をえた魚のように見事に演じて、もう神がかりの演技。
 ラッセル・クロウ。
 いいねぇ!
 
 次に惚れたのは、これまた主役のクリスチャン・ベイルではなく、強盗団の副頭目チャーリー・プリンスを演じたベン・フォスター。
 ラッセル・クロウの大ボスよりはるかにワルで、より冷酷で、人を裏切るなんて屁とも思わないような悪役なのだが、なぜか大ボスには無二の忠誠を示す。
 
3時10分ベン・フォスター01
▲ ベン・フォスター
 
 ボスが捕らわれた時、他の部下たちがボスを見捨てて逃亡しようとすると、このチャーリー・プリンスが、
 「お前たち、ボスの恩義を忘れたのか」
 と恐ろしい形相で他の仲間を脅し、執拗な追跡劇を展開する。
 
3時10分ベン・フォスター02
 
 映画の中では、もっとも凶悪な悪役を演じているのだが、ボスへの忠義を貫く姿勢には本当に涙が出てしまう。
 また、こいつの拳銃さばきがカッコいいんだわ。
 いいツラしているしさ。
 私は、こういうキャラクターに弱い。
 
 話の展開には無理があると思うし、結末も (賛否両論あるだろうけれど) 、私は大いに不満。
 だけど、カッコいい男たちとカッコいい馬の疾走シーンがふんだんにあって、大満足。
 西部劇、好きだ。
 

 

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