「天地人」 と歴女誕生

 
 「歴女 (れきじょ) 」 という言葉を、またマスコミが流行らせようとしている。
 歴史に興味を持った女性という意味らしい。
 
 今まで、本屋の歴史関連書籍のコーナーを訪れるのは圧倒的に男性であったが、この半年から女性客が増え始め、今は男性客と女性客の比率が半々ぐらいになったという報告もある。
 また、日本各地の旧跡・史跡を訪れる女性客も増加の一途をたどっているとも。
 『戦国無双』 や 『戦国 BASARA』 といったゲームの影響のほか、NHK の大河ドラマ 『天地人』 などの影響も見られるとか。
 
 ホントかな…。
 と、にわかに信用できないたちなので、それらのレポートを一応疑ってはみるものの、先週の日曜日久しぶりに 『天地人』 を観ていたら、…さもありなん…という気もした。
 
 出てくる若い俳優が、みな女性の好感度を得やすいイケメンぞろいなのだ。
 安全で、人の良さそうな雰囲気を丸出しにする主役の直江兼続を演じる妻夫木聡君を筆頭に、バサラな雰囲気もある石田三成を演じる小栗旬、 『ルーキーズ』 で人気の出た城田優が精悍な真田幸村を演じるなど、なるほど、 「歴女」 と称する女性たちが名乗りを挙げそうな、華やかなキャスティングに徹している。
 
直江兼続(妻夫木)
 
 しかも、彼らの演技が、かつてのアイドル系俳優たちの演技と違って、妙に板に付いている。ドラマとして見ていて面白いのだ。
 
 シナリオがまた憎い。
 彼らはみな男臭さを全面に出すのではなく、女性に対して優しい紳士だ。
 「ひとりの女の命も救えずに、なにが武士 (もののふ) だ!」
 などと叫んだりする。
 
 「女性の人権」 などという思想が全くなかったあの戦国時代に、そんなことを叫ぶ武士がいるもんか … などと突っ込みも入れたくなるが、まぁ、話の流れの中では、そんなセリフも自然に聞こえてしまう。
 時代劇も女性指導型のストーリーが重んじられる時代になったのだなと痛感した。
 
 しかし、彼らイケメン若手俳優たちの演技が光る背景には、彼らを引き立てるベテラン男優たちの存在があることを忘れてはならない。
 豊臣秀吉を演じる笹野高史、徳川家康を演じる松方弘樹、千利休を演じる神山繁。
 これらの渋みのある役者たちの名演技があってこそ、あのドラマに趣 (おもむき) が出ていることは間違いない。
 
 自分の好みからいうと、徳川家康の嫌らしさと不気味さを見事に演じきる松方弘樹が一番。
 大河ドラマの歴代家康役で、たぶん最も成功した家康ではないのか。
 彼が登場するだけで、画面全体がビシっと締まるのだ。
 
 笹野高史の、欲深さと狡猾さと度量の大きさを感じさせる秀吉役もすごい。
 「嫌なヤツ」 と思わせた直後に、思わずホロリとさせたりする緩急自在さがこの役者の真骨頂。
 日本には、まだまだうまい俳優がいっぱいいるな … と感じさせた。
 
 食えない男 … の凄さを演じるという意味で、千利休を演じる神山繁も素敵。
 千利休という人は、高潔な芸術家という側面と、野心に満ちた功利的な政治家の両面を持つ人物だが、その二面性が見事に伝わってきて、 「ああもうピッタリ!」 とうなるほどの名演技。
 
 『天地人』 、けっこう堪能できた。
 松方弘樹、笹野高史、神山繁などといった (自分好みの) 贅沢な役者が一堂に会するドラマというのも、最近他の局ではみることができない。
 史実を度外視したいい加減なシナリオで、時には腹が立つこともあるけれど、ドラマとしてはけっこういい線いっているのではないか。
 

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