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 タバコの自動販売機を見つけ、セブンスターのスーパーライトを買おうと思って、足を止める。
 自動販売機の前では、先客が一人。
 間もなく定年退職…といった風情の地味なスーツを来た初老のサラリーマンが定期入れの中身を覗きながら、何やらぶつぶつ。
 自動販売機からは自動音声で、 「タスポを表示してください」 という機械の音声が流されている。
 
タスポ
 
 未成年へのタバコの販売を抑制するために、新しく導入されたタスポ制度。
 これが 「面倒くさい」 と悪評で、自販機からのタバコ販売は激減しているという。
 初老のサラリーマンは、どうやら定期入れの中からそのタスポを探しているらしいのだ。
 「タスポを表示してください」
 と機械はいい続ける。
 いらつくオジサンとは対照的に、機械の方はますます沈着冷静に、抑揚を抑え、声を低めて、
 「タスポを表示してください」 
 
 オジサン、
 突然、大きな声で、
 「うるせぇ!」
 
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 家路に向かう通勤客の姿が目立つ夕刻6時。
 取材をひとつ終えて、やきとりが食いたくなり、取材先の家があった駅の周辺をうろうろ。
 駅裏の住宅街を少し入ったところに、おあつらえ向きの安そうな店が一軒。
 近所のご隠居と思える先客が一人。
 
 そのご隠居をカウンターに座らせて、旦那がギャンブルにうつつを抜かしている間、けなげに店を切り盛りしているという風情の、ちょっと疲れた感じのママさんが話し相手を務めている。
 食器棚の上に飾られたテレビでは、お笑いコンビがファミレスの全メニュー90品目を完食するという番組をやっていた。
 
 満腹になって、不快感丸出しの表情になっても、さらに出された料理を腹に詰め込んでいくお笑いコンビ。
 「もう食えねぇ。何で俺がこれ食わなきゃいけねぇのよ」
 「あと2食だ。頑張ろう」
 励まし合う2人。
 やきとりを焼きながら、そのテレビを見ていたママさん。
 「アホらし」
 と一言。
 
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 信号のない住宅街の交差点。
 深夜になって雨がやみ、かわりに風が吹いた。
 開いたままのビニール傘が、その交差点をぐるぐると踊っている。
 通り過ぎる通行人は、ほとんどその傘に無頓着。
 ただ、それを見ていた一匹のノラ猫だけが、毛を逆立てて、
 「お前、怪しい!」
 とばかりに、フゥーっとにらみつけた。
 
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共感! への8件のコメント

  1. ミペット1号@試作品 より:

    「100人が共感できる一言」っていう本、作ったら売れるかなあ・・・。
    凄く下らないけど

  2. 町田 より:

    >ミペット1号@さん、ようこそ。
    『100人が共感できる一言』 という本は面白いかもしれませんね。
    ただし、何人のうちの100人なのか…ということですよね。1億人のうちの100人だとかだと、ジョークの本になっちゃうし。
    100人のうちの100人が共感するってのも、なんだか当たり前の内容ばかり揃いそうなので、つまらないだろうし。
    結局は内容次第ということでしょうか。

  3. ミペット1号@試作品 より:

     いっそうのこと、
    「吉本芸人100人が共感できる一言、超おもしろネタ」ってのはどうでしょうか・・長いかも・・・。
    芸人の個人的なネタとして持ってた、明日から営業で使える・・けど、出版したら使うに使えないところを、「大人のお付き合いで」の一言で泣く泣く提供しちゃいましたみたいな感じで。
    に・・してもありがちかもしれない

  4. ムーンライト より:

    共感と言えば・・・。
    町田さんが私への返信に書いてくださった「何を捨てると、何が見えてくるのか」という言葉に深く共感しました。
    町田さんがこれを書いてくださった前日、私がアマゾンに投稿した「阿修羅を究める」へのカスタマーレビューと共通するところがあったからです。
    「スーパーガイド」のカスタマーレビューを書いているさなかにアマゾンから届いたものがありました。
    それが、「東京下町歩く地図帳」と「阿修羅を究める」です。
    私は、この二冊についても別名でレビューを投稿したのですが、
    「スーパーガイド」のレビューを書き直し、三冊すべてをムーンライト名に変更しました。
    この三冊とも私のレビューの番外編ではなく、私そのものだと思ったからです。
    「スーパーガイド」については既に二票入っていたので書き直すのは申し訳なく思ったのですが、素直に自分の気持ちを書くことにしました。
    あの町田さんの巻頭の文章は良かったです。
    そして、写真もいいと思いました。
    これが、キャンピングカーから見た風景なんだと思いました。
    大木さんがブルース・ツアーのバスから見た風景もこんな風だったのかもと思ったのです。
    大木さんという存在をレビューに入れることで「キャンピングカー」の存在が薄れてしまったかもしれません。
    申し訳なく思っています。
    けれども、大木さんの著作・CDについて書いたものも同様ですが、私には「私」を書くことしかできないのです。
    時々、あの町田さんの巻頭特集を読み返しています。
    風が吹いてくるようですよ。

  5. 町田 より:

    >ミペット1号@さん、ようこそ。
    いやぁ、ミペットさんもなかなかのアイデアマンですね。
    吉本芸人の「泣く泣く披露しちゃうネタ集」ってのは面白いですねぇ。
    ただし、1回こっきりですね、この企画は。
    「共感」 に関していえば、万人が同じものに共感するということは、よくよく考えてみるとあり得ないことなので、むしろ「笑いのネタ」と割り切った方がすっきりしますね。
     

  6. 町田 より:

    >ムーンライトさん、ようこそ。
    Amazonのレビューも含め、ムーンライトさんには感謝することばかりです。
    真意を理解してくださる、数少ない方の一人だと思っています。
    実は、正直に申しますと、今回のカイドブックの巻頭特集の世界を 「キャンピングカーから見た風景」 とは言いづらかったのです。
    キャンピングカーというのは、「家族のつながり」、「人との絆」を大切にする乗り物ですから、あのような一見 “荒涼とした” 風景とは馴染まないものがあります。
    しかし、いつまでも、今までと変わらない「人とのつながり」ばかり求めていても、そこには新しいものが何も見えてこない…という気持ちをずっと持っていました。
    いったんは、何かを捨てる。
    例えば、それまで「人間としての温かさ」とか「人間の優しさ」という言葉に代表される微温的な “甘え” を一度断ち切るような気持ちで、世界の素顔を眺めてみる。
    そういうキャンピングカーの旅ってのがあってもいいのではないか…とずっと思っていたのです。
    ただ、自分の立場からすると、なかなかそういう見方というのは、誤解を招く可能性もあるので、はっきりと公表できなかったんですね。
     
    その辺の真意を、ずばりムーンライトさんに見抜かれたように思います。
    「今まで使われたことのない言葉で、キャンピングカーから見える風景を描く」
    それが自分の使命だと思っているのですが、まだまだ途上です。
    今後ともいろいろご指導ください。
     

  7. ムーンライト より:

    町田さん。妙なことがおきました。
    アマゾンのカスタマーレビューは投稿後も編集ができるのです。
    大木さんへのレビューなどは、何度も直しています。
    「スーパーガイド」の文章が気になって、見直していたのですが。
    「スーパーガイド」を含め同時期に投稿した三作すべて編集ができなくなっているのに気づきました。
    (数日前までは、できたというのに)
    書き手である私を私であると認めないのです。
    「レビューをすべて見る」をクリックしても、大木さんへのレビューと一緒に出てこないので、一旦削除して、投稿し直そうかとも思っていたのですが、削除もできません。
    「後で書きなおせる」というのは、甘い考えだったのですね。
    出版にあったっては、世に出た後、書き直おすなんてことは不可能です。
    町田さんがどれほど心血をそそいで編集をなさったか・・・。
    単なるカスタマーレビューであっても、
    それくらいの気持ちで臨まなくてはいけなかったのだと、
    完全に私の手を離れてしまった私の「レビュー」にため息をつきました。

  8. 町田 より:

    >ムーンライトさん、ようこそ。
    Amazonのカスタマーレビューの投稿が、後で編集できたことも、またそれがあるときから編集できなくなってしまうことも、はじめて知りました。
    おっしゃるとおり、ブログなどもそうですが、ネットに公開する記事は、後で書き手がいくらでも修正を加えることが可能です。
    そこに、我々の甘えがあるという指摘も、そのとおりかもしれませんね。
    ムーンライトさんのコメントで、そのことに改めて気づくことができました。
    しかし、記録に残らないような口頭における発言も、いったん耳にした人からは取り戻すことができません。
    そういった意味で、何かを表現するということ自体が、常に “語り手” の手元を離れしまうということになるのかもしれませんね。
    よい教訓を与えて下さったコメントに感謝です。
     

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