独女の時代?

 
 世に 「婚活 (こんかつ) 」 という言葉が定着した時代というのは、どんな時代かというと、 「婚活」 を目指さない人々が、マーケットのキーを握る時代になったということである。
 
 一つのムーブメントが起きると、その流れに乗る人、乗らない人双方の意識にさざ波が立つ。
 人間の消費行動というのは、ブームが起こればそのブームに乗ろうとする人々だけで促進されるわけではない。
 ブームが起きることによって、それと異なるライフスタイルを目指す人たちも生まれるわけで、そこにまた別のマーケットが生まれる可能性がある。
 
 こういうことにマスコミは目敏くて、 『AERA』 の2009年6月29日号では、「 “独女マイ消費” 不況知らず」 というタイトルを掲げて、シングルライフを楽しむ女性たちの消費行動を特集していた。

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 世の中 「婚活」 ブームで、シングル女性の結婚願望がどんどん高まっているように思えるが、その一方で、なんらかの事情で結婚できなかったり、あるいは離婚したり、さらに人生に結婚以外の価値を見出そうという女性たちも輩出している。

 『AERA』 を見ると、そういう “独女” (シングルウーマン) たちは、同年代の既婚女性の2.7倍も、外食や洋服の購入にお金をかけているという。
 2008年に総務省がまとめた 「勤労者の単身女性」 の収支バランスでは、手取り収入の半分が 「食費」 「居住費」 「その他」 に当てられていたとも。

 注目するのは 「その他」 。
 ここに 「理美容」 「交際費」 など、生活を楽しむ、趣味を持つ、ゆとりを得るという人生をエンジョイするためのあらゆる消費が集中しているという。
 不況、給料カット、リストラなどと雇用をめぐる社会情勢が一向に明るさを取り戻せない状況のなかで、 “独女” たちの消費行動は、日本経済をけん引していくほどの活力に満ちている。

 …というような観測が、『AERA』 の特集で試みられていたように思う。
 とにかく、上野千鶴子さんの 『おひとりさまの老後』 という本が社会現象化したせいもあるのか、シングル女性の生き方にやたらとスポットライトを当てる企画が多くなった。
 
 私は以前から、シングル女性のキャンピングカーライフというものもありかな … と思っていた。
 もちろん現状では、キャンピングカー市場は圧倒的にファミリーかシニア夫婦で占められている。
 そのため、キャンピングカーメディアで展開される各業者さんの広告展開も、基本的にシニア夫婦とファミリーを中心に構成されるものが多く、シングルという視点を打ち出すときは、「男がきままにくつろげる書斎」 的な扱いにとどまるものだった。
 
 このような家族中心キャンペーンというのは、確かに 「キャンピングカーは家族の絆を強めるもの」 という発想に基づくものなので当然といえば当然なのだが、時にはメインストリームとは少し離れたところで起こっている動きに注目することも、新しい販売戦略を思いつく上で大事なことだと思う。

 『AERA』 の特集では、週末は一人で海に行ってウインドサーフィンを堪能する女性や、一人でスキーを楽しむ女性たちの颯爽としたシングルライフが紹介されていた。
 
 しかし、それは記事だけにとどまるものだった。
 このようなシングル女性の “一人遊び” をビジュアル的にカッコよく捉えるという視点がまだ日本のデザインにはない。
 また、そこにカッコよさを感じる消費者も育っていない。
 ハバナのバーで、独りで海を眺めながらフローズンダイキリを飲むヘミングウェイのカッコよさを理解するデザイナーたちはいても、同じ状況で女性をカッコよく見せる手法をまだ知らない。

 つまり、「温かい家族愛」 的な発想からは生まれてこないシャープさが、日本の広告界 … 特にキャンピングカー業界の広告には欠けていると思うのだ。

 既婚女性の2.7倍も、洋服の購入や理美容にお金をかけているといわれる彼女たちは、商品や広告展開を見る視点もシビアだ。イメージだけのカッコ良さなどには騙されないが、イメージ喚起力の乏しい宣伝の商品も信じない。
 独身女性の目にとまるような広告展開が行われるようになったときが、この業界の広告デザインのレベルが上がったときだと思う。
 
 

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独女の時代? への4件のコメント

  1. ミペット1号@試作品 より:

    そーいえば、経済的に見て循環効率の悪い物への投資には、男ってマニアックにのめり込んでいくけど、循環効率のいい物にはあまりお金かけないデイよね。
    その点、女性は凄いですよね・・遊ぶ金がないならないで、働いてしっかり作るし、行動力もあるし・・

  2. Take より:

    ミペット1号@試作品さんに賛同票1票。
    久々の友人が来た時、僕ら(僕だけか?)は少し贅沢をしておいしい店で一杯を楽しみながらお喋りをしますが、連れと友人は近くのファミレスでドリンクバーだけで2時間くらいおしゃべりをしています。
    どこかおいしいものを食べに行ったら?と言っても、おしゃべりするのが目的だからそこでいいと・・・・。
    不要なものは徹底してお金使わないですよね。
    でも、そんな財布の口をぎゅっと握っている連れ合いからキャンピングカーを買わせた我々の営業努力もすばらしいものがあるのかもしれません。

  3. 町田 より:

    >ミペット1号@さん、ようこそ。
    男が効率の悪い投資に対してものめり込めるというのは、そもそも生物学的な “雄” っていう存在が効率悪く生まれついているからかもしれませんね。
    戦いの歴史ばかりだった人類史において、雄ってのは戦争でどうせ死んでしまうんだから、神様が「すこし余分に造っておくか…」と考えたみたいな。
    まぁ、生物学的に「その大半は無駄」という存在として生まれてしまった雄の哀しさとでもいうところでしょうか。
    その点、人類をしっかり維持するために生まれてきた女性たちは、固体の目標も明確に規定付けられているので、無駄がありません。やっぱり凄いです。おっしゃるとおりですね。
     

  4. 町田 より:

    >Takeさん、ようこそ。
    男同士の場合、おしゃべりを楽しむことは、その雰囲気を味わうことと一体となっていますよね。
    それに比べ、女性たちの場合は、おしゃべりそのものを楽しむ場合と、おしゃべりの “周辺を楽しむ” 場合とを分けて考えているように思えます。
    彼女たちだって素敵な男性と時間を過ごしたいと思うときは、雰囲気に対する審美眼は男性よりも厳しいですから。
    これは、女性の方が合理的な思考訓練を積んでいるということかもしれません。
    そういう女性に、…つまり奥様に 「キャンピングカーという空間の居心地の良さ」 を理解させたTakeさんの営業センスって、確かに素晴らしいものかもしれませんね。

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